活動報告

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大工不足は危機的/建設業法改定案 参考人質疑で田村委員長/参院国交委

 参院国土交通委員会は4日、建設業法等改定案について参考人質疑を行いました。日本共産党からは田村智子委員長が質問しました。

 田村氏は大工職人が減少し、「最高時から3分の1になっている。2020年度で29万8千人、そのうち30歳未満はわずか2万1千人、担い手のうち43%が既に60歳以上で、本当に危機的だ」と指摘。「どうやって若い方々に入職してもらい、その後働き続けてもらうのか」と質問しました。

 全国建設労働組合総連合の小倉範之書記次長は「建築大工でも、木材加工の経験や構造、継ぎ手などの理解が十分ではない技能者が相当数いる。技能者を育成しなければ、適切なリフォームの実施や、災害時における住宅の復旧に支障をきたしかねないと懸念している」と述べ、学校でのキャリア教育など若者の入職促進への取り組みを紹介しました。

 田村氏は、建設技能者の賃上げの原資になる新設の「標準労務費」の制度と、建設技能者を4段階で技能評価し、レベル上昇に伴った年収の試算額を示す「建設キャリアアップシステム(CCUS)」との関係を質問しました。

 建設産業専門団体連合会の岩田正吾会長は「CCUSのレベル別評価は、職人から見れば資格と経験年数で与えられる権利だ」と説明。「標準労務費」に基づいた費用が事業者に支払われ、CCUSによる評価に応じて職人に賃金を払っていくと述べました。


2024年6月13日(木) しんぶん赤旗ホームページ

 

 

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 まず、三人の参考人の皆さん、本当に建設業の危機を打開するんだという共通の思いで、大変今後の審議に生かせる御意見いただいたことに感謝をしたいと思います。

 今の最後の浜口議員の質問と重なるんですけれども、やはり建設業がこのままだったら本当に崩壊しかねないほどの就業者の減少なんだというところを国民的な認識にしていかなければ、ハウジング含めたその適正な価格ということに、適正な労務費を確保するということになっていかないんだろうというふうに思います。

 そこで、まず小倉参考人にお聞きをしたいんですね。
 その建設で働く方々の減少の中でも、先ほどの御意見の中でも大工さんの、大工職人の減少というのがちょっと私も数字を見て背筋が凍る思いなんですね。最高時から三分の一になったという御指摘があったんですけれども、一番新しい数字で、二〇二〇年度で二十九万八千人と。そのうち三十歳未満が僅か二万一千人、担い手のうちの四三%が既に六十歳以上という状況だというのは本当に危機的だと思うんです。

 というのは、今、住宅は新築のときには組立てでもいいんだと、切られた木材が来て組み立てればいい。だけど、今ストックということが言われているわけで、そうすると、リフォームというのは臨機応変に、かんなも掛けられて、一定の図面も引けてということも求められてきますし、災害からの復旧って考えたときにも、やはり個々の御自宅をどう復旧していくかというところで圧倒的にもう人手が崩壊的に少なくなってしまうというような状況にもなりかねないと思うんですね。

 こういう認識と、それから、ではどうやってここに若い方々に入職してもらうのか、その後定着して働き続けてもらうためにはどうしていくことが必要なのか、全建総連さんは独自の取組もされていると思いますので、そのことも含めて御答弁いただきたいと思います。

○参考人(小倉範之君) 建築大工の就業者が激減をしている中での懸念の御意見だったというふうに思います。
 建築大工については、ピーク時の三分の一まで縮小し、かつ、二〇三〇年には、先ほど約三十万人というふうに申し上げましたけれども、二〇三〇年には二十万人、十万人減少、更に三分の二になる、そういった試算も出されているところであります。

 今後、人口減少社会を踏まえてフローからストックへの施策転換が想定をされている中、リフォーム市場については、先ほども御指摘ありましたけれども、一定規模維持をされる、あるいは増加をすると推計をされているところであります。主に建築大工が担う木造住宅につきましては、一九九〇年代にはプレカット率が九〇%を超えまして、現状では、現場で木材加工の経験や構造、継ぎ手などの理解が十分ではない技能者が相当数に今なっておりまして、技術、技能を有した技能者を育成しなければ、適切なリフォームの実施、あるいは災害時における住宅の復旧、そういった住宅はかなり古い住宅になっておりますので、そういったものにも支障を来しかねないんだろうというふうに懸念をしているところであります。こうしたことから、住宅ストックの活用に向けては、建築大工の担い手確保、育成というのは焦眉の急であるというふうに思っております。

 それから、入職促進について先ほど御質問をいただきました。
 この間、全建総連としましても、キャリア教育の充実というものを行っておりまして、入職をするためには、小学校、中学校、高校、こういったタイミングでのキャリア教育、具体的には、例えば建設業がどういった産業であるのかですとか、特に高校になりますと将来の進路を左右するタイミングになってきますので、現場実習、インターンシップも含めてでもありますが、民間工事、公共工事、こういった現場の視察、こういったことが非常に重要になってくるというふうに思っております。

 それから、入職促進で特に重要なのは、高校を始めとした教員の意識改革であります。もうそもそも建設業自体が全く魅力ある産業として現状映っておりませんので、進路指導の際に進路担当の教員がまず建設業を勧めないというのが実態としてあります。あとは、先ほども話がありましたけれども、給与自体が固定月給制ではなく日給月払になっていますので、そもそもそういった業態、事業者に対しては教員はまず勧めませんし、親も反対をします。年間の休日数でいえば、百二十日を下回っていれば、ハローワークで実際に就職先としてはほとんど相手にされないということでありますので、まずは教員に対するしっかりした連携強化というのもありますし、キャリア教育を充実をさせる、その上で個々の事業者が実際に入職をしてもらうための環境整備をしていかなければいけないんだろうというふうに思っております。

○田村智子君 ありがとうございます。
 今、環境整備、事業者のところでも固定では、固定給になっていくようにということもお話がありました。
 それで、今度の法案は、やはりこれまで議論あったとおり、標準労務費の確保ということが大きなまさに焦点となってくると思います。

 これ、三人の参考人の皆さんにそれぞれお聞きをしたいんですけれども、先ほどもその重層下請で結局その経費さえも出なかったというお話も含めてありました。私たちは、この重層下請そのものの規制が必要じゃないかということも、この間意見として持ってきました。何らかの規制をしていくことが必要じゃないかと。

 今回の法案では、標準労務費というふうに定めることで、言わば本当に全てのその現場で働く人にこの標準労務費に大体見合うお金がきちんと支払われることということがこの法案の趣旨になっていくんだろうと思うんですね。そのこととの関係で、先ほど岩田参考人からはお話あったんですけど、重層下請構造にどういう変化が出てくるのかということと、これがやっぱり五年後の見直しに向けても、これうまく機能しなければ、私は重層下請そのものの規制ということも考えるような状況が出てくるのではないかというふうに思いますが、そこも含めて御意見をお聞きできればと思います。三人順番で。

○参考人(岩田正吾君) まず、その重層下請、適正な重層下請ということも先ほどちょっと申し上げましたけれども、そこもあると思いますので、その基準をやっぱり明確にまずすべきではないかと。

 その上で、重層下請になってきた背景を考えると、はねて下に流すというような行為、ここについて厳格に適正に管理をしていただきたいというお願いをしているわけですけれども、その基準を示すものが標準労務費になってきますので、労務費が地に足を付いた形で固定化することによって、上にある経費で競争していくということになっていくと、重層化で下に出すというよりも自社でやっちゃった方がいいわけですよね。利益が得られるし、自社の社員に対して処遇をもっと厚くできるし、自社の社員の処遇を良くすることによって次の担い手も、あっ、この会社に入ったらこれだけもらえるんだというような、価格が決まってくることによって処遇改善競争に行くんではないかと。それで、よその産業よりも魅力ある建設業界というものを打ち出して人を確保していくと、その競争を我々、中でやるべきではないかというふうに理解をしています。

○参考人(小倉範之君) 重層下請構造の規制をすべきではないかと、こういった御意見であったかというふうに思います。
 今回の建設業法の改正につきましては、標準労務費を定めた上で、それが元請から下請まで行き渡らせることで、労務費を原資とした価格競争を是正をするということが盛り込まれているところであります。これがしっかり機能すれば、中間に介在をする下請業者が更に下請契約を結ぼうとした際に利益や経費を差し引きにくくなることになりまして、あわせて、労務請負のみの一人親方が適正に雇用されていく、結果的に重層下請構造が解消されるということは十分あり得るんではないかというふうに思っております。

 既に大手の建設企業におきましては、原則二次、あるいは三次までと、こういった取組が進められておりまして、こうした動きについても注視をしていく必要があるんだろうというふうに思っております。

 また、規制措置の導入につきましては、様々な弊害がある中で是正に向けた対策は必要だというふうに認識をしておりますけれども、建設業の業態の特性も踏まえつつ検討すべき課題だというふうに思っているところであります。

○参考人(小岸昭義君) 適正な重層下請構造であれば問題ないとは思うんです。それは、建設業は御存じのとおり閑散期と繁忙期がすごい波がありまして、仲間同士で助け合うというような形も多く見受けられるのかなと思います。

 原則二次、三次というような大手企業さんも出てきているのですが、実際に現場の声を聞くと、二次までしかうちの会社入れないから、君たち三次、四次なんだけど、取りあえず二次で名簿作っておいて、書類作っておいてというような抜け道、また建設業の悪いところなんですけど、抜け道を進んでいるような方もたくさんいらっしゃるというような話も聞いているので、そういったところは解決していかないといけないのかなとは思っています。

○田村智子君 ありがとうございます。
 標準労務費そのものがどのように設定されるのかということも、本当の処遇改善に向けては重要になってくると思うんですね。

 そこで、ちょっとお聞きしたいのが、建設キャリアアップシステム、ここで皆さん、この技能に合わせて技能評価でレベル一からレベル四までの四段階と、レベルが上がればそれに伴って年収が上がるということでこの間進めてこられたと。これと標準労務費との関係をどういうふうに考えるのかということと、今進めてきていて、この建設キャリアアップシステム、その試算ですね、昨年六月に出された年収の試算、これ現状の年収と開きがあるんですね。こういう問題含めて、少し現状と課題についても御意見いただければと思います。岩田参考人から順番でお願いします。

○参考人(岩田正吾君) まず、標準労務費というのは中建審が勧告するようになると思うんですが、まず歩掛かりに設計労務単価を掛けると。一つの建物を想定して、その歩掛かり、その歩掛かりに、これであれば何人ぐらい掛かるというものに対して設計労務単価を掛けて、それに経費を掛けるといって出てくるわけですけれども、この出てきて、ある程度相場観といいますか、これぐらい必要であるというものを国が示していただくことによって、我々は原資が流れてくるようになるわけですね。

 そうすると、じゃ、このお金を誰にどれだけ払おうかというものは、これまで親方の裁量権のみに任されてきたわけです。だから、お金が流れてこないときは、おまえちょっと今回頑張りが低かったからこれだけなというような形にしたり、それか、現場が終わって少し残ったから、おっ、頑張ったから賞与でやろうというような調整をしてきたわけです。結局、労務費がアジャストされてきたわけですね。

 ですので、これからは、価格が決まればCCUSによって、CCUSによって、それは資格と経験年数で自分が与えられる権利ですから、職人からすると、その権利に対して我々がどれぐらい最低払っていきますよというものを見せていく。そうすることによって、働き手からすると、この業界に入っていいかどうかというのは、何年働いてこの資格を取ったらこれだけもらえるというようなものを見せることが重要であると。そのためにCCUSがあるわけです、評価するために。

 ですので、CCUSが先ほど増えていくというお話させていただきましたけれども、ここに登録をして評価してもらわないと我々も評価のしようがないので、技能者からすると入りたい資格に変わっていくわけです。お金に換わるんやったらそれはもうどんどん入るということに進んでいくかと思いますので、標準労務費でお金が流れてきて、その評価をCCUSですると、それに対して対価を払っていくという流れになっていきます。

○委員長(青木愛君) 小倉参考人、端的に答弁お願いいたします。

○田村智子君 済みません、時間来ちゃったので、ごめんなさいね、小倉参考人までで。済みません。

○委員長(青木愛君) 承知しました。
 小倉参考人、お願いいたします。

○参考人(小倉範之君) CCUSのレベル別年収と標準労務費の関係性ということでありますが、実際は相関関係はあるんだというふうに思っています。

 標準労務費については、設計労務単価では歩掛かりというのが一つの方向性として示されておりますけれども、設計労務単価自体はそもそも五十一職種しかありませんので、じゃ、全て今後、標準労務費を設計労務単価をベースにしてやっていくことができるかというと、それは多分なかなか難しいだろうと。

 そうすると、CCUSの能力評価基準に基づく例えば賃金水準あるいはレベル別年収、こういったものが活用されてくるというのは十分あり得るんだろうというふうに思っております。

○田村智子君 ありがとうございました。

 


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