活動報告

活動報告
連帯しよう/古い政治はもう終わり/法政大学名誉教授田中優子さん/日本共産党委員長田村智子さん

ジェンダー平等、選択的夫婦別姓/軍拡、裏金、縦横に語る
 国際女性デー(3月8日)では、世界中でジェンダー平等を求める共同行動が繰り広げられました。日本の深刻なジェンダー不平等の現実を変えるには何が大事か。東京6大学で初の女性総長(法政大学、2014~21年)を務めた田中優子さん(法政大名誉教授)と、日本共産党初の女性委員長となった田村智子さんが語り合いました。

 「委員長になってお忙しいでしょう。田村さんに持ってきたものがあるんです」。田中さんが手にしたのは黄色いスカーフ。田中さんらが結成した「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」で作ったものです。「ミサイルをハトに変えよう、というデザインです。口に出して言えない方も、スカーフを身に着け連帯することができたらと思って」と田中さん。田村さんはさっそく首にまき「すてきですね。ありがとうございます」と感謝をのべました。

 「女性総長として努力したことをぜひお聞きしたい」という田村さん。田中さんはこうエールを送りました。

 「女性が総長になったことでのイメージの変化は大事でした。だから私は、今じゃないとできないことは全部やるつもりで大学憲章づくりや『ダイバーシティ宣言』をやりました。注目をあびているときに変化を見せ、アピールするのは大事ですよ。頑張ってください」

 田村さんは「いま、メディアの取材に、できるだけ応じているのですが、アピールですね。頑張ります」。

 二人の対談は、ジェンダー平等社会の実現から岸田軍拡や裏金問題、さらには「自由」についてまで。ジェンダー平等社会の実現を阻んでいるのは自民党政治です。「何より政治が変わらなければ。一気に変える時代」と田村さん。田中さんも「それは心強い。そのためにも女性議員に増えてもらわなくては」と語りました。

 

「女性が働く場」が固定化/低賃金が当たり前の構造を打ち破る・田村

 田村 田中さんのコラム「国際女性デーに寄せて」(3月10日付東京新聞)に共感しました。女性たちは歴史的に働く場所が極めて限られていたことに鋭く着目し、「そういう時代は終わらせねば」とあります。
 田中 ここに書いたのはシングルマザーだった祖母のことです。平塚らいてうが創刊した雑誌『青鞜(せいとう)』を読み、祖母は栃木から飛び出した。けれど、働く場所は限られお茶屋のおかみをして生きました。女性が一人で生きていく大変さを身近で見ました。だから祖母は母に「結婚しろ」と言った。だけど問題は、結婚するかしないかではなく、歴史的に女性の働く場が大変限られていることです。今、女性の職種は広がりましたが、正社員でも男性より3割くらい賃金が低く、働く女性の5割以上が非正規です。
 田村 日本共産党はジェンダー平等社会を築く上で、男女賃金格差の是正を第一にすえています。コロナ危機は、女性たちの苦しみを可視化しました。飲食業など、どれだけの女性がたちまち職を奪われたか。医療・介護なども、ギリギリの状態で多くの女性が支えていました。これらの労働は、低賃金で「当たり前」という構造がつくられ、「女性の行く場」として固定化されてきた。こうした構造をどう打ち破るかが課題です。
 田中 そうですね。その背景には「家族制度」の問題があると思います。専業主婦が基本で、税金がかからない程度の働きをすればいい、それが女性の働き方だと固定されていきました。同じことを繰り返してはいけない。
 私は6大学初の女性総長となり、企業のトップに女性が次々就任しています。それだけでいいのでしょうか。女性が分断されていると感じます。
 田村 私が国会質問でしつこく取り上げてきたのが公務員の働き方です。図書館の司書、婦人相談員、消費者相談員、スクールカウンセラーなど、市民に直接対応する専門職が、低賃金の非正規にされ、圧倒的に女性が多い。〝家計の主たる生計者ではない女性がそこで働けばいい〟という考えです。しかし男尊女卑の古いイデオロギーはもうまかり通らない時代に突入しています。

 

選択的夫婦別姓

 田中 家族イデオロギーとでもいうのでしょうか。自民党の「日本国憲法改正草案」(12年)に非常に色濃く反映されていて、天皇を国民の上に戴(いただ)き、下を支えるのは家族だという考え方です。改正草案は「個人」という言葉を消して抽象的な「人」としてしまった。何か突破口があるとすれば、選択的夫婦別姓の導入の議論が一つです。なぜ今まで変わらなかったのか、多くの方が関心をもち考えることが必要です。同性婚など、婚姻、家族の在り方の多様性を実現することは、すごく大事なことです。
 田村 選択的夫婦別姓は、家族の中でも「個」を大切にする新しい制度として実現しなくてはいけないですね。3月8日には、企業のリーダーのみなさんが、私たち議員も集めて政府に実現を要望しました。ここ数年大きな変化が起きています。
 田中 歴史的にも「同姓」はおかしい。日本はドイツを見習って明治31年(1898年、旧民法成立)に「夫婦同姓」になります。それまでは別姓が当たり前でした。東アジアでは、中国も韓国も北朝鮮も伝統的に夫婦別姓です。ドイツも、今は選択的夫婦別姓です。
 田村 明治憲法下の家父長制が日本の「伝統的」な家族のあり方だ、と型にはめている。これだけ要求が強いのに、実現を阻んでいるのは自民党です。

 

「性搾取」は人権侵害です/なくすためにも女性議員増やさなきゃ・田中

 田中 私は、性搾取を止めるには、「買う」側を処罰する、買春禁止法の制定が大事だと思います。「痴漢は犯罪です」というポスターでだいぶ意識が変わったように、「買うのは犯罪です」という考え方が根付かないといけません。
 田村 「痴漢は犯罪」「痴漢をゼロに」という運動は東京都議会で共産党の議員が質問したこともあり、全国に広がったもので、内閣府も対策に動きました。性搾取は、ジェンダー平等のより根源的問題として取り組む必要があります。
 田中 そうなんですね。性搾取は何百年も続いてきました。初めて戦後憲法は人権を柱にし、個人を柱にしました。性搾取をなくすためにも、この憲法は失ってはいけない。一人の女性という全体の中から「性」の部分だけ取り出し、消費、酷使するのは人権侵害です。そういう人権の考え方を広めていかなければなりません。
 田村 一人の人間として女性の人格をどうとらえているのか。ここに目が向き、「#MeToo」運動も含め、劇的な変化が起きています。私たちも1月の党大会で、「女性の世界史的復権」とも呼ぶべき時代がやってきたと評価しています。何より政治が大きく変わらなければいけません。一気に変える時代だと思います。
 田中 それは心強い。そのためにも女性の議員に増えてもらわなくては。

 

岸田軍拡に女性たち怒り/教育予算「お金ない」はウソだった〟・田中

 田村 田中さんは、「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」の共同代表ですよね。昨年2月、国会での署名提出の記者会見は、みなさんの怒りがびんびん伝わりました。岸田政権が進める軍事費倍増や外国の基地を攻撃するミサイルの配備などは、歴代自民党政権が「平和国家」の「理念」としてきたものを投げ捨てるものです。
 田中 第2次安倍政権からいろんなことが起こってきました。14年に「武器輸出三原則」も撤廃され、翌15年には安保法制(の成立)。岸田政権の22年12月には安保3文書で(軍事費を5年間で)43兆円という数字が出てきて驚きました。コロナ後生活に困っていた女性たちが一番反応しました。それまで国に教育に予算をと要求しても、出さない。「高齢者が多くなった。社会保障費がばく大になった」というのが理由でした。それが、軍事費にはお金をかけます、と。これまでの説明はウソだったんだと思いました。
 田村 安保3文書の閣議決定前と比べて軍事費増額分は2・5兆円。これだけあれば学校給食も高校授業料も無償化し、大学学費を半減できます。軍事対軍事の大軍拡は、日本の平和、国民の命と安全、暮らしの予算とも両立できません。
 田中 私が気になっているのは、南西諸島に基地がどんどんつくられていることです。

 

米中対立解決には外交しかない・田村

 田村 米中対立、緊張の火種を外交でどう解決するのか。岸田政権は、外交戦略が一切なく、次々とミサイル配備を進めています。私たちは昨年、「日中両国関係の前向きの打開のために」という提言を出し、中国大使館にも岸田文雄首相にも申し入れました。「互いに脅威とならない」という両国の合意を共通の土台にして、外交の努力をと呼びかけたのです。日本政府も中国も「その通り」といった。だったら外交努力しかありません。
 田中 その通りです。
 田村 東南アジア諸国連合(ASEAN)は、米国側にも中国側にも立たない。どっちも排除しない。対立が軍事的衝突にならないように話し合いのテーブルにつかせる努力をしています。日本も米中双方に軍事対立にならないよう働きかけなければならないのに、その外交戦略がない。
 田中 自民党はアメリカとの関係では、従属といわれても仕方がないことをずっとやってきた。「女たちの会」では、どこから突破すればいいかとずいぶん話し合ってきました。すぐさま日米安保条約解消までいかなくても、日米地位協定の見直しから入って、米国との関係を考えていく姿勢が大事だと思います。
 田村 全国知事会も地位協定見直しを求めています。私たちは日米安保条約の廃棄を目指していますが、同時に、その是非を超え、緊急の一致点での共同を大切にしています。こんな米国いいなりの自民党政治で良いのか、と大きく問いかけて、共同を広げたい。

 

裏金暴いた「赤旗」の報道/市民との連携が自民党追い詰めた!・田中

 田中 私は「赤旗」の調査報道にはすごく感心しているんです。日曜版(23年2月26日号)が、「強靱(きょうじん)化」の名で全国300の自衛隊基地を強化しようとしていることを報じました。今回の裏金問題もそうです。発端となった日曜版の記事は、1年以上前です。それが今みたいに自民党を追い詰めることになった。「桜を見る会」のときもそうでした。他の新聞社はできていないですよ。
 田村 自民党と財界の癒着を追及する立場だからこその報道です。政治資金パーティーは、派閥や議員個人には禁止されている企業・団体献金の〝抜け道〟です。企業からパーティー券でカネをかき集め、それを裏金にした、自民党ぐるみの組織的犯罪です。「赤旗」の調査報道を受け、神戸学院大学の上脇博之教授が告発し、東京地検の捜査にまでなりました。
 田中 市民と調査報道の連携が自民党を追い詰めたことは本当にすごいことです。
 田村 こんな自民党政治は終わりに、というみなさんと一緒に頑張っていきたいです。

 

誰もが自由を生き抜ける/尊厳守られる社会へ希望届けたい・田村

 田村 田中さんは総長として最後の学位授与式(21年3月)で、学生たちに〝自由を生き抜いてほしい〟と。さらに自分だけでなく、どんな人も自由に生き抜ける社会をつくることの大切さを語られました。感動しました。
 田中 ありがとうございます。総長になり、まず法政大学の大学憲章をつくりました。そのタイトルが「自由を生き抜く実践知」です。誰もが自由に生き抜ける社会をめざし実践していくという理念です。
 田村 ある意味で社会変革のメッセージですね。私たちは、先の党大会で「『人間の自由』こそ社会主義・共産主義の目的であり、最大の特質」だと特徴づけました。社会主義・共産主義に進むことで、資本主義の「利潤第一主義」から自由になり、貧困と格差、長時間労働、環境破壊などのさまざまな害悪から自由になることができる。搾取や浪費がなくなることで労働時間はぐっと短くなり、自由な時間をもつことで自分の可能性を発揮できる。このように未来社会への展望を発展させました。田中さんのいう自由とはカテゴリーが違うかなと思いますが「どんな人も自由に生き抜ける社会」は、私たちのめざす方向性と重なると、共感しています。
 田中 新自由主義、お金を稼ぐ自由…。弱肉強食のことです。いま「自由」がはき違えられている。自由についての新しい考え方、社会像を打ち出すってすごく大事なことだと思います。
 田村 人権や個人の尊厳が大切にされる社会に向けて、自由の獲得が求められているということですね。みなさんに希望を届けたい。
 田中 そうですね。
 田村 楽しいお話ができました。ありがとうございました。


2024年3月31日(日) しんぶん赤旗 日曜版


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