活動報告

活動報告
民党政治、根本転換迫る/運動に連帯、社会動かす/田村委員長が代表質問/参院本会議

 日本共産党の田村智子委員長は2日、参院本会議で代表質問に立ちました。能登半島地震への対応、自民党の裏金問題についてただすとともに、経済でも、安保・外交でも行き詰まった自民党政治を根本から転換する対案を示して実現を迫りました。ジェンダー平等などを求める運動に連帯し、社会を動かす決意を示しました。

 田村氏は、能登半島地震について、避難所などの深刻な現状を直視し、生活支援にあらゆる手だてを尽くすよう要求。被災地では断水が深刻で、被災地支援にも大きな支障をもたらしている実態を示し、「応急水道の設置、上下水道の本格復旧の費用を国が全額負担することを明確にすべきだ」と迫り、被災者生活再建支援金を600万円以上に引き上げ、対象を拡大するよう求めました。

 岸田文雄首相は、応急水道の設置について「自治体に必要な財政支援も行っていく」と述べるにとどめ、半壊以上の高齢者世帯などに限り新たな交付支援金を支給するとの考えを示しました。

 田村氏は、自民党の裏金事件について、安倍派(清和政策研究会)が過去5年間で約6億8000万円もの政治資金収支報告書への不記載があったと認め修正したことを批判。安倍派は改選を迎える参院議員に売り上げの全額を還流していたと指摘されているとして、「自民党国会議員の4分の1以上が関わった組織的犯罪の全容を洗いざらい明らかにするのは、自民党総裁たる岸田首相の責任だ」と追及しました。

 「中小企業・小規模事業者、非正規ワーカーへの直接の賃上げ政策なしに、労働者全体の賃上げは進まない」。田村氏は、非正規ワーカーの大幅賃上げが求められているとして、日本共産党の「非正規ワーカー待遇改善法案」を紹介。公務専門職の非正規ワーカーには国の責任で賃金格差の是正と安定雇用の保障を行うよう迫りましたが、岸田首相はまともに答えませんでした。

 田村氏は、岸田政権の「多子世帯の学費無償化」について、子ども3人が同時に扶養家族の時しか対象にならず、批判の声が吹き荒れていると指摘。岸田首相は「多子世帯の学費無償化」の対象は「学生等の15%前後」と答弁。85%の学生が対象外になることが明らかになりました。

 田村氏は、選択的夫婦別姓制度の導入を市民社会も経済界も求めていると指摘。「ジェンダー平等、個人の尊厳を掲げる大きなムーブメントは日本社会を変える力となっている」と述べ、連帯を表明しました。

 

暮らし、経済立て直し平和の道へ/希望示し、日本を変える/田村委員長の参院代表質問

 日本共産党の田村智子委員長は2日の参院本会議で岸田文雄首相に対する代表質問を行い、能登半島地震対応や自民党の裏金事件など重大問題を追及し、暮らし・経済の立て直しや平和外交への転換、選択的夫婦別姓の実現を求めました。

 

自民党の裏金事件/真相究明・金権腐敗の一掃
 田村氏は、自民党の政治資金パーティーをめぐる巨額の裏金事件について岸田首相の認識を追及。自民党の安倍派が2020年からの3年分で4億2726万円もの不記載があったとして、政治資金収支報告書を訂正し、5年間で6億8000万円近い不記載を認めたことをあげ、「悪質極まりない組織的犯罪ではないか」と批判しました。
 さらに、議員本人が受けたと説明するキックバックと安倍派の訂正報告では額に大きな開きがあると指摘し、「安倍派は改選をむかえる参院議員に(パーティー券の)売り上げ分を全額キックバックしていたと指摘されており、全容解明が不可欠だ」と迫りました。岸田首相は「関係者の聞き取りを行っていく」と述べるにとどまりました。
 「しんぶん赤旗」日曜版(2月4日号)は、岸田首相が昨年12月15日に開催予定だった自身の政治資金パーティーを延期し、会費を返金していないことを報じています。田村氏は、パーティー券をどの企業がいくら購入したかが返金によって明らかになることを免れるために「中止」ではなく「延期」としたのではないかと指摘。開催のめどがなければ寄付そのものであり、企業購入分は違法献金になるとただしました。
 岸田首相は延期の事実を認めた上で、「(延期後の開催に)参加困難の方には返金を行うので批判はあたらない」と強弁しました。
 田村氏は、企業の金の力で政治がゆがめられてきたのは明らかであり、「投票権を持たない企業の政治献金は、国民の参政権を侵害するものだ」と批判。金権腐敗政治を一掃するために企業・団体献金の禁止を決断すべきだと主張しました。岸田首相は「論理の飛躍だ」などと背を向けました。

 

暮らしと経済/非正規改善・教育負担減を
 「国民の暮らしと経済の立て直しが緊急に必要だ」―。田村氏は、昨年11月の名目賃金が前年同月比でわずか0・7%増、実質賃金が20カ月連続でマイナスになるなど、賃上げが進まない現状を示し、「労働者数で7割を占める中小企業の賃上げが足踏み状態だからだ」と指摘。赤字企業には何の恩恵もない「賃上げ減税」を批判し、「赤字で苦しむ中小企業への賃上げ直接助成になぜ踏み切らないのか」とただしました。
 岸田首相は、相変わらず「賃上げ減税」に固執しました。
 日本共産党は、大企業の内部留保の一部に課税して、これを財源に社会保険料減額などで中小企業・小規模事業者の賃上げを直接支援し、全国一律で最低賃金を時給1500円に引き上げるよう提案しています。田村氏は「これ以上に効果のある賃上げ政策はあるのか」と迫りました。
 田村氏は、非正規ワーカーの大幅賃上げが求められるとして、共産党が提起している非正規ワーカー待遇改善の法案を紹介。ハローワークの職員や保育士、図書館司書などの多くが非正規の公務の専門職についており、国の責任で賃金格差の是正と安定雇用を保障し、民間企業に範を示すよう要求しました。
 岸田首相は「随時改善してきた」というだけで、賃金格差の是正に背を向けました。
 田村氏は、今年度、全国の自治体に広がった学校給食の無償化に国が踏み出すべきだと主張しました。また、大学など高等教育の学費無償化として、岸田政権が打ち出した「多子世帯の学費無償化」について、「子ども3人が同時に扶養家族である時だけという、あまりにも狭い政策で、歓迎どころか批判の声が吹き荒れている。この政策で全学生の何割が無償化となるのか」と批判。日本政府は、高等教育の漸進的無償化という国際人権規約を批准しているとし、「この約束を実現するつもりはあるのか」と迫りました。
 岸田首相は、「今後とも高等教育費の負担軽減を着実に進めていく」などとしましたが、多子世帯に対する学費無償化の対象となる学生の割合がわずか15%前後との見込みを示しました。
 「安保3文書」の閣議決定後、軍事費増額は2・5兆円規模。田村氏は、学校給食無償化、高校授業料の完全無償化、大学・専門学校などの入学金廃止と学費半額をすべて実現できる予算規模だと指摘し、「軍事費2倍化と子育て支援はぜったいに両立しない」と強調しました。

 

安保・外交/辺野古固執は普天間固定化
 田村氏は、岸田政権が進める長射程ミサイルの配備や、自衛隊を米軍指揮下に組み込む「統合作戦司令部」の創設などは、米国の対中戦略のもと「いざというときに日米一体で軍事介入するためだ」と指摘。基地の強靱化なども挙げ、「戦争の準備だ」と批判し、「日本国憲法に反する」と迫りました。岸田首相は「憲法の範囲内で『専守防衛』を堅持している」と強弁しました。
 田村氏は、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設について、玉城デニー知事が求め続けた対話に応じず、「代執行」による着工強行後に、林芳正官房長官が知事と面会したのは「あまりに不誠実だ」と批判しました。
 さらに、「岸田政権は、普天間基地の返還はいつなのかという沖縄県民の根本的な問いに答えていない」と強調。軟弱地盤を抱える新基地建設は不可能だとして、「完成しなければ延々と普天間基地は使用されるのか」とただしましたが、岸田首相はこれに答えられませんでした。田村氏は「民意を無視し、辺野古に固執する政府の姿勢が、普天間基地を固定化させる最大の要因だ」と迫りました。
 また、米中対立が強まるもとで、米国の言う通りに軍事的対応を強めれば緊張は高まると指摘。東南アジア諸国連合(ASEAN)が「対話の習慣」をつくる外交努力をしていると紹介し、「ASEANと協力して平和の地域協力を進める自主独立の外交への転換が必要だ」と求めました。

 

ジェンダー平等/選択的夫婦別姓に賛成多数
 田村氏は、経団連が1月、自民党などが主張する通称使用は国際機関などで通用しないとして、選択的夫婦別姓の導入を政府に要望したことを紹介。姓を変え、不利益を受け入れるのは9割超が女性だとして「間接差別そのものだ」と批判しました。
 市民社会も経済界も選択的夫婦別姓の実現を求めていると指摘し、「それでもまだ自民党は妨害するのか」と迫りました。岸田首相は「国民の間にさまざまな意見がある」と言い放ち、後ろ向きな姿勢を改めて示しました。
 田村氏は「ジェンダー平等、個人の尊厳を掲げるムーブメントは日本社会を変える大きな力となっている。この力に連帯し、誰もが自分を大切にして生きられる社会へと一気に動かす」と表明しました。


2024年2月3日(土) しんぶん赤旗

 

 

 

 

○田村智子君 私は、日本共産党を代表して、岸田首相に質問いたします。

 初めに、能登半島地震で亡くなられた方々へ心より哀悼の意を表し、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

 発災から一か月、避難所での生活はなお過酷を極めています。段ボールベッドや、男女別で洋式の仮設トイレもない、プライバシーが保障され安心して休める場所もない。一か月がたってなおこうした実態が残されていることを総理はどう受け止めているのでしょうか。災害関連死を防ぐためにも、またジェンダーの視点からも、直ちに改善を図るべきではありませんか。

 水が欲しい、切実な要求です。水がないために、入浴、洗濯、温かい食事の提供も困難、復旧工事や自治体への職員派遣も、現地に滞在できず、片道二時間、三時間掛かるなど、生活にも被災地支援にも大きな支障をもたらしています。本格復旧には相当な時間が掛かるとされており、応急水道の設置が必要です。これを進めるためにも、応急水道の設置、それに続く上下水道の本格復旧、どちらの費用も国が全額負担することを明確にすべきではありませんか。

 輪島朝市の皆さんが朝市を応援する会を立ち上げて、復興のために来られる全国の皆さんに食事を提供することから始めて事業を再開していこうと語っておられます。前を向いて頑張ろうという皆さんに希望となる思い切った支援が必要です。

 政府が示したパッケージは、半壊、一部損壊にも家屋解体の費用は出す、しかし、住宅再建の費用は従来のままです。異例の措置を講ずるというのですから、被災者生活再建支援金を少なくとも六百万円以上に引き上げ、対象を拡大することが不可欠ではありませんか。
 以上、被災地の皆さんの希望となる答弁を求めます。

 今回の地震によって、志賀原発は原子炉を冷却する外部電源の損傷など、重大なトラブルが相次ぎました。柏崎刈羽原発も使用済核燃料プールから大量の冷却水があふれ出ました。稼働中であったらどうなっていたのか。

 しかも、原発再稼働の前提となる避難計画は、地震・津波災害に対応できないことがいよいよ明瞭となりました。避難計画にある道路は破損、土砂崩れが多発し、集落は孤立状態になりました。逃げようにも逃げられません。また、避難計画は屋内退避が原則ですが、倒壊の危険性がある建物にとどまれというのか、津波から逃げずにとどまれというのか、命を守ることと根本的に矛盾します。

 ところが、総理はこの問題に一言も触れず、原子力発電について安全優先で引き続き活用を進めると表明された。一体、地震による原発の重大トラブル、避難計画の破綻をどう認識しているのでしょうか。

 既に福島第一原発の事故で明らかなように、地震・津波国で安全な原発などない、大災害時に避難計画は全く機能しない、この事実を認めるべきではありませんか。志賀原発、柏崎刈羽原発を直ちに廃炉とし、原発ゼロを決断すべきです。答弁を求めます。

 自民党の政治資金パーティーをめぐる巨額の裏金事件は、主要派閥がそろって政治資金収支報告書を偽造していた自民党ぐるみの違法行為です。

 昨日、安倍派は、二〇二〇年からの三年分で四億二千七百二十六万円もの不記載があったとして政治資金収支報告書を訂正し、五年で六億八千万円近い不記載を認めました。これが事務的ミスですか。悪質極まりない組織的犯罪ではありませんか。

 橋本聖子参議院議員は、五年間で二千五十七万円のキックバックを受けていたと御自身が説明しましたが、訂正された三年間では僅か二百八十九万円です。安倍派は、改選を迎える参議院議員に売上分を全額キックバックしていたと指摘されており、いつキックバックが行われたのか、裏金が何に使われたのか、いつからシステム化されたのかなど、全容解明が不可欠です。

 総理、自民党国会議員の四分の一以上が関わった組織的犯罪についてその全容を洗いざらい明らかにすることは、自民党総裁たるあなたの責任ではありませんか。

 しんぶん赤旗日曜版は二月四日号で、昨年十二月十五日に開催予定の岸田総理の政治資金パーティーが延期されたと報じています。総理、なぜ中止しないのですか。まだ政治資金パーティーを開くつもりですか。

 中止すればパーティー券の返金が必要となり、一万円を超えるものは返金先、返金額を支出として全て政治資金報告書に記載しなければなりません。総理、どの企業が幾ら購入したか、返金によって明らかになることを逃れるために中止ではなく延期としたのですか。開催せず返金もしなければ、パーティー券収入は寄附そのものです。企業、団体の購入分は、政治家個人への違法な企業・団体献金になるのではありませんか。

 総理自身の疑惑について全てを明らかにすることなしに政治刷新を語る資格はありません。明確な答弁を求めます。

 金権腐敗の根本にある企業・団体献金を、パーティー券購入を含め全面的に禁止することが必要です。ところが、岸田総理は、企業にも政治活動の自由があるとして背を向けています。企業が献金によって行う政治活動とは、金の力で政治を動かそうという利権政治そのものではありませんか。

 例えば、消費税をめぐって、国民の大多数が導入、増税に反対したにもかかわらず、企業献金を提供する経済界の意向に応え、自民党などの数の力で庶民増税が強行され、併せて法人税が減税されました。企業が金の力で政治をゆがめてきたことは明らかであり、投票権を持たない企業の政治献金は国民の参政権を侵害するものではありませんか。総理の見解をお示しください。

 九四年の政治改革では、企業・団体献金の禁止といいながら、政党と政党支部への献金、企業、団体によるパーティー券の購入を認めるという二つの抜け穴をつくり、その上、政党助成金を導入しました。

 日本共産党は、企業・団体献金の全面禁止、政党助成金の廃止を一貫して主張し、そのための法案を繰り返し提出してきました。

 国民が一票を投じて政治に参加する、これが議会制民主主義の大原則です。政治資金規正法は、政治資金について、民主政治の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財であるとしています。主権者である国民一人一人の自覚的な献金を政治資金としてこそ、健全な民主政治の発達がもたらされます。

 今、他の政党も企業・団体献金の禁止を主張しています。金権腐敗政治を一掃するため、自民党が企業・団体献金の禁止を決断すべきではないのか、総理の答弁を求めます。

 国民の暮らしと経済の立て直しが緊急に必要です。
 総理は、昨年は三十年ぶりの高い賃上げ水準と胸を張りましたが、昨年十一月の名目賃金は前年同月比僅か〇・七%増、実質賃金は十九か月連続でマイナスです。労働者数で七割を占める中小企業の賃上げが足踏み状態だからではありませんか。

 賃上げ減税は、日本経団連傘下の一部大企業の賃上げを支援しても、赤字企業には何の恩恵もありません。赤字で苦しむ中小企業への賃上げ直接助成になぜ踏み切らないのか、その必要はないという認識なのですか。

 我が党は、大企業の内部留保の一部に課税して、これを財源に社会保険料減額などで全ての中小企業・小規模事業者の賃上げを直接支援し、全国一律で最低賃金を時給千五百円に引き上げることを二年にわたって提案しています。なぜ検討さえ拒否するのか。これ以上に効果のある賃上げ政策があるというのか、お答えください。

 非正規ワーカーの大幅賃上げが求められます。ところが、施政方針演説ではパートの年収の壁解消支援策が示されただけです。

 我が党は、非正規ワーカー待遇改善の法案を提起しています。理不尽な雇い止めをなくして雇用の安定を図る、不当な格差や差別をやめさせ、均等待遇の実現を図るというものです。この中でハローワークの職員、保育士、図書館司書、消費者相談員など公務の専門職の多くが非正規であり、国の責任で賃金格差の是正と安定雇用を保障し、民間企業に範を示すよう求めています。これらの非正規ワーカーは、既に国家資格や専門的スキルを持つ職員です。直ちに正規職員との賃金格差の是正を行うべきではありませんか。

 中小企業・小規模事業者、非正規ワーカー、ここへの直接の賃上げ政策なしに労働者全体の賃上げは進まない、その認識があるのかも含め、総理の答弁を求めます。

 子育て支援、若い世代への政策として、教育費の無償化に進むのかどうかが問われています。今年度、学校給食無償化が自治体に大きく広がりました。市民の切実な要求に何とか応えようという自治体の努力があってのことです。今度は、国が要求に応えて給食無償化に踏み出すべきではありませんか。

 大学など高等教育の学費無償化に向けて、まず入学金の廃止と授業料半額をと我が党は提案しています。ところが、岸田政権が打ち出したのは多子世帯の学費無償化、子供三人が同時に扶養家族であるときだけという余りにも狭い政策で、歓迎どころか批判の声が吹き荒れています。一体この政策で全学生の何割が無償化となるのでしょうか。子供が一人であろうと、大学に進学した途端に貯金が一気に百万円単位で減っていく、この衝撃がどれほど大きいかが分からないのでしょうか。

 日本政府は、高等教育の漸進的無償化という国際人権規約を批准しています。学費を値下げし、無償化に向かうということです。この約束を実現するつもりがあるのか、それともほごにするつもりなのか、総理、明確にお答えください。

 社会保障の予算を抑え付け、教育無償化は棚上げ、その一方で、岸田政権は軍事費の二倍化に突き進んでいます。安保三文書の閣議決定後、軍事費増額は二・五兆円規模です。これは、学校給食無償化、高校授業料の完全無償化、大学、専門学校の入学金廃止と学費半額、これら全てを実現できる予算規模です。軍事費二倍化と子育て支援は絶対に両立しない、このことが来年度予算案ではっきりと示されたのではありませんか。総理の答弁を求めます。

 軍事費の大幅増額で何を進めるのか。周辺諸国を直接攻撃するための長射程ミサイルの更なる配備と量産です。陸海空三自衛隊の統合作戦司令部をつくり、自衛隊を米軍の指揮下に深く組み込む体制づくりです。これらは、アメリカの戦略に付き従い、中国包囲網づくりを進め、いざというときには日米一体で軍事介入するためのものではありませんか。しかも、相手国からの反撃を受けた下でも戦闘を継続するという想定で、全国の自衛隊施設の強靱化、日米共同訓練が行われています。まさに戦争の準備です。その上、国際紛争を助長しないという憲法の理念を投げ捨て、殺傷武器の輸出を閣議決定しました。

 侵略戦争への痛苦の反省の上に立ち、政府の行為によって再び戦争の惨禍を繰り返さないという決意の下に制定された日本国憲法に、真っ向から反するものではありませんか。

 米軍辺野古新基地建設は、沖縄県民の圧倒的な民意に背き、県知事から軟弱地盤工事の設計変更の承認権限を取り上げ、国交大臣による代執行という前代未聞の乱暴なやり方で強行しています。

 玉城デニー知事が求め続けた対話に応じず、代執行を強行してから林官房長官が知事と会うとは、余りにも不誠実ではありませんか。しかも、岸田政権は、沖縄県民からの根本的な問いに答えていません。普天間基地の一日も早い返還が必要といいますが、それはいつなのか。辺野古新基地建設は政府の見込みでさえ十二年も掛かるという、これでは日米合意から四十年間、普天間基地は一ミリも動かないではありませんか。そもそも軟弱地盤を抱える辺野古新基地建設は不可能です。完成しなければ、延々と普天間基地は使用されるというのでしょうか。

 総理、沖縄県民の民意を無視し、辺野古に固執する政府の姿勢が普天間基地を固定化している最大の要因ではありませんか。危険極まりない普天間基地は直ちに閉鎖、撤去し、辺野古新基地建設を中止すべきです。答弁を求めます。

 米中対立が強まる下で、アメリカに言われるままに軍事的対応を強めれば、結局、北東アジアでの軍事的緊張は高まる一方です。

 我が党は、ASEANとの国々との協力こそ、戦争の心配のない北東アジアをつくる道だと考えます。昨年十二月、私は、インドネシアのASEAN本部を訪問し、長年の外交努力をお聞きしました。国家体制も経済力も異なる十か国が年間一千五百回もの会議を行い、今や対話せずにはいられない、対話の習慣がつくられている。平和と安定があってこそ繁栄するという立場で、平和の地域協力を東アジア全体に広げようと東アジア・サミットという枠組みをつくり、対抗でなく対話と協力の東アジアを目指すASEANインド太平洋構想、AOIPを推進する。実にダイナミックで粘り強い平和外交です。

 米中対立の下で、ASEANは、どちらか一方の側に立つことも、一方を排除することもせず、自主独立の立場を貫いています。大国に積極的に関与し、大国の関与も歓迎する、しかし、どの国の言いなりにもならず、ASEANの中心性を貫く、ここに学ぶべき外交努力があるのではないでしょうか。アメリカ言いなり、アメリカの顔色をうかがうのではなく、ASEANと協力して、平和の地域協力を進める自主独立の外交へ転換が必要ではありませんか。総理の答弁を求めます。

 最後に、ジェンダー平等についてお聞きします。
 一月十七日、日本経団連が女性活躍担当大臣との懇談で選択的夫婦別姓の導入を要望しました。自民党などが主張する通称使用は、とりわけ国際機関では通用せず、現に深刻な不利益を被る女性たちがいることも具体的に示しての要望です。同姓にしなければ民法上の婚姻が認められず、結果として女性が姓を変える夫婦が九割以上、不利益を受け入れているのは圧倒的に女性、これは間接差別そのものではありませんか。

 既に若い世代を中心に、市民社会は選択的夫婦別姓に賛成が多数です。経済界も認識を発展させています。それでもまだ自民党は妨害するのか、それとも変わるのか、総理、お答えください。

 今、ジェンダー平等、個人の尊厳を掲げる大きなムーブメントは、日本社会を変える力となっています。この力に連帯し、誰もが自分を大切にして生きることのできる社会へと一気に動かす、この決意を述べ、質問を終わります。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 田村智子議員にお答えいたします。

 能登半島地震における避難所運営についてお尋ねがありました。
 避難所の生活環境の改善のため、御指摘の段ボールベッドのほか、和式の仮設トイレを洋式と同じように使うための便座、プライベート空間を確保するためのパーテーションなど、様々な物資をプッシュ型で支援しているところです。また、避難所の運営に関し、女性の視点からの避難所チェックシートの活用を促すなど、男女共同参画の視点に立った災害対応についても取り組んでおります。
 今後とも、被災地の状況をきめ細かく把握しながら、避難所の良好な生活環境の確保に取り組んでまいります。

 上下水道の復旧対応についてお尋ねがありました。
 上下水道施設の復旧に当たっては、発災当初から全国自治体の上下水道技術者等を派遣するなど、国が関係機関と協力して、被災自治体に代わり、上下水道一体となった復旧支援を行っています。こうした技術的支援とともに、災害復旧事業における四月以降の水道施設の補助率のかさ上げを前倒しして適用することで、応急復旧としての仮設管や仮設浄水施設の設置に加え、上下水道の本格復旧に迅速に進むよう、水道事業の主体である自治体に対し必要な財政面の支援、これも行ってまいります。

 そして、被災者生活再建支援金についてお尋ねがありました。
 被災者生活再建支援金は、災害による財産の損失を補填するものではなく、見舞金的な性格のものとして被災者を側面的に支援するものと位置付けられています。このため、被災者生活再建支援金については迅速に支給することといたします。

 その上で、被災により住宅の被害を被った被災者への追加的な支援の在り方については、様々な他の支援制度を俯瞰した上で、税制上の対応を含め、総合的に必要な施策を検討いたしました。

 その結果、今般、生活福祉資金貸付について、災害援護費、住宅補修費の特例措置を導入するに当たり、高齢者の割合が著しく高い地域では長期の貸付けという従来の手法がなじみにくい、こういったことを勘案して、特に高齢化が著しく進み、半島という地理的な制約から地域コミュニティーの再生が乗り越えるべき課題となる能登地域六市町を中心に、地域福祉の向上に資する新たな交付金制度、これを創設いたします。

 その際、半壊以上の被災をした高齢者のいる世帯を対象として、家財等の再建支援に最大百万円、住宅の再建支援に最大二百万円、合計最大三百万円を目安に、地域の実情に応じた支援が可能となるよう早急に制度設計を進め、成案を得てまいります。

 また、同制度の対象とならない若者、子育て世帯についても、過疎地が多い能登半島からの人口流出を防ぐ観点から被災地に住み続けていただくことが重要であり、遜色のない対応、これが必要です。

 このために、足下の物価、金利情勢を踏まえた住宅融資の金利負担の助成など、地域の実情を踏まえたきめ細かな事業を行うことが可能となるよう、石川県と調整を進めてまいります。

 そして、原発についてお尋ねがありました。
 先般の原子力規制委員会において、志賀原発については原子力施設の安全機能に異常はなく、その他の原発についても安全確保に影響のある問題は生じていない、このようにされたと承知をしております。

 志賀原発及び柏崎刈羽原発の立地地域においては、既に自然災害と原子力災害との複合災害を想定し、地震と原子力災害が同時に発生した際には、まずは地震に対する安全確保を優先するという防災基本計画の考え方も踏まえながら、緊急時対応の取りまとめに向けて取り組んでいるところであり、今般の地震で得られた教訓をしっかり踏まえて取りまとめを行ってまいります。

 いずれにせよ、高い独立性を有する規制委員会が新規制基準に適合する、このように認めない限り原発の再稼働は認められることはない、これが政府方針であり、今後ともこの方針は変わりません。それを前提として、個別の原子力発電所を廃炉するかどうかはそれぞれの事業者が判断することとなります。

 自民党における政治資金収支報告書の不記載の問題に関する調査方法についてお尋ねがありました。
 現在、自民党の各政策集団、議員側の政治団体において政治資金収支報告書の訂正作業が順次行われているところであり、党としても、私の指示の下、これらの状況を把握するとともに、関係者の聞き取りを行ってまいります。そして、この聞き取りの進捗状況を踏まえながら、党として必要な説明責任を果たしてまいります。

 そして、私の政治資金管理団体における政治資金パーティーについてお尋ねがありました。
 お尋ねの政治資金パーティーについては、諸般の事情により当初の予定日である開催が困難となったものですが、私の政治活動のために支出していただいた方々の心遣いに可能な限り応えるため、一度延期することといたしました。

 なお、支出いただいている方の御負担を考え、会費については、この延期後の開催分に充てる旨御連絡をいたしましたが、参加困難との御連絡をいただいた方については当然返金を行う方針であり、御批判は全く当たらないと考えております。

 企業・団体献金についてお尋ねがありました。
 企業は、憲法上の政治活動の自由の一環として政治資金の寄附の自由を有する、こうした最高裁判決があるにもかかわらず、企業・団体献金は金の力で政治をゆがめ、そして国民の参政権を侵害するというのは論理の飛躍があると考えています。

 企業・団体献金については、各党各派による長年の議論を経て現在の姿になっているものであり、政党等がその受取を行うこと自体が不適切なものとは考えません。

 いずれにせよ、企業・団体献金の在り方については、政党、政治団体の政治活動の自由と密接に関連をしている問題です。民主主義のコストを社会全体でどのように負担していくかという観点も踏まえつつ、各党各派に、会派における真摯な議論を経て結論を得ていくべき問題であると認識をしております。

 中小企業の賃上げについてお尋ねがありました。
 賃上げ促進税制を拡充したところであり、税額控除の繰越措置は、赤字でも優秀な人材確保のために賃上げに挑戦する中小企業の後押しになると考えています。あわせて、労務費の価格転嫁や省力化投資の支援等の施策を総動員することにより、中小企業の賃上げ、後押ししてまいります。

 御指摘の社会保険料の負担軽減については、医療や年金給付の保障を通じた就労基盤の整備が事業主の責任であり、働く人の健康保持や労働生産性の推進を通じ事業主の利益にも資することから事業主負担が求められているものであること、また、内部留保への課税については、二重課税に当たるという指摘があることから慎重な検討が必要であると考えております。

 また、最低賃金については、公労使三者構成の最低賃金審議会で毎年の賃上げ額についてしっかりと御議論をいただき、その積み重ねにより、二〇三〇年代半ばまでに全国加重平均が千五百円となることを目指してまいります。

 そして、公務の非常勤職員の給与改善についてもお尋ねがありました。
 国及び地方公共団体の非常勤職員の給与については、常勤の職員や民間との均衡を考慮し、随時改善してまいりました。例えば、国の非常勤職員のうち職務内容等が常勤職員に類似する非常勤職員に関して、基本となる給与について、職務内容を踏まえ、知識、技術及び職務経験等を考慮して決定することとしております。

 今後とも、非常勤職員の適切な採用プロセスを経た上での常勤採用も含め、処遇改善に取り組むとともに、賃上げ促進税制や最低賃金の引上げといった取組を通じて、中小企業やパート、非正規で働く方々の賃上げを後押しし、物価高に負けない賃上げ、これを実現してまいります。

 そして、学校給食費や高等教育の無償化についてお尋ねがありました。
 学校給食費の無償化については、全国ベースの実態調査を行い、その上で、小中学校の給食実施状況の違いや法制面等を含めた課題を整理し、速やかに結論を出してまいります。

 また、令和七年度以降の多子世帯における大学等の授業料等の無償化については、対象となる学生等の割合は一五%前後と見込んでおります。

 御指摘の国際人権規約で定められている高等教育の漸進的無償化については、これまで実施してきた低所得世帯向けの大学授業料等の無償化に加えて、令和六年度や令和七年度の無償化の対象を拡大すること、こうした取組を行い、今後とも高等教育費の負担軽減、これは着実に進めてまいりたいと考えております。

 そして、防衛費及び子ども・子育て予算についてお尋ねがありました。
 子ども・子育て政策については、前例のない規模で抜本的な強化を図り、こども未来戦略の加速化プランの実現に全力で取り組んでまいります。

 また、現在も我が国の安全保障環境が厳しい状況にあることに何ら変わりはなく、国民の命と平和な暮らしを守るため、必要な予算を令和六年度に計上し、防衛力の抜本的強化、これを実現してまいります。

 このように、岸田政権は、防衛力の抜本的強化と子ども・子育て政策の抜本的強化、どちらか一方という二者択一の問題とするのではなく、政府の責任として、共に必要な予算、しっかりと措置をしてまいります。

 我が国の安全保障政策についてお尋ねがありました。
 まず、三文書に基づく取組は、あくまで国民の命と平和な暮らしを守り抜くために必要となるものであり、憲法の範囲内で専守防衛の考え方を堅持しております。

 その上で、自衛隊及び米軍はそれぞれ独立した指揮系統に従って行動するため、日米一体で軍事介入するという御指摘は当たりません。
 我が国が戦後最も厳しい安全保障のただ中にあることを踏まえて、我が国自身の努力として防衛力の抜本的強化、これ着実に進めてまいります。

 普天間飛行場の辺野古移設についてお尋ねがありました。
 代執行については、沖縄県知事が司法判断に従った対応を行わなかったため、国土交通大臣が法令にのっとり必要な対応を取ったところです。

 その上で、世界で最も危険と言われる普天間飛行場の固定化、これは絶対に避けなければなりません。これは地元の皆様との共通認識であると思っています。

 政府としては、辺野古移設か普天間飛行場、辺野古移設が普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し、その危険性を除去するための唯一の解決策であると考えています。
 今後とも、様々な機会を通じて地元の皆様へ丁寧な説明を行いながら辺野古への移設工事を進めてまいります。

 ASEANの中心性及びASEANとの協力についてお尋ねがありました。
 我が国は、一貫してASEANの中心性並びにインド太平洋に関するASEANアウトルック、AOIPを支持しており、昨年十二月の特別首脳会議においても、私自らASEANの首脳との間でこの点を改めて確認をいたしました。

 引き続き、ASEANが中心となった地域協力の取組を尊重しつつ、その他の国、地域とも連携しながら、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の推進及びこれを通じた地域の平和と安定に向け、積極的な外交を展開してまいります。

 そして、選択的夫婦別氏制度についてお尋ねがありました。
 現行の夫婦同氏制度については、平成二十七年及び令和三年の最高裁大法廷において、性別に基づく法的な差別的取扱いを定めるものではなく、憲法十四条第一項には違反しない旨判断されていると承知をしています。

 いずれにせよ、選択的夫婦別氏制度の導入については、現在でも国民の間に様々な意見があることから、しっかりと議論をし、より幅広い国民の理解を得る必要があると考えております。

 


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