活動報告

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女性の住まいの権利を/参院国交委 田村智子議員が迫る

 日本共産党の田村智子議員は5日の参院国土交通委員会で、住宅開発を重視した行政から「人を重視した住まい保障の住宅政策への転換を」と迫りました。

 田村氏は、日本の家賃負担が特に低所得者で突出して重いことを国立社会保障・人口問題研究所の調査で示し、「イギリスでは全世帯の14・6%が家賃補助を受けている。欧米各国の制度を調査して日本でも検討を」と求めました。

 また田村氏は、横浜市男女共同参画推進協会などの調査を示し、単身女性にとって、家賃負担はとりわけ重く「住居費を払うと余裕がない」と指摘。「単身者への家賃支援、女性の住まいの権利を住宅政策の中で検討すべきだ」と強調しました。

 斉藤鉄夫国交相が住宅セーフティーネット政策についての従前の答弁を繰り返したのに対し、田村氏は、家賃が低廉化した住宅は、2022年度実績でわずか452戸だと指摘。住まいは就労、就学、社会保障の基礎だと強調し、「一般的な家賃補助制度の議論をすべきだ」と重ねて求めました。


2023年12月10日(日) しんぶん赤旗

 

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。

 物価高騰が暮らしに襲いかかっています。食費や日用品などを節約している多くの国民にとって節約のやりようがないというのが家賃なんですね。これまで、派遣村、ネットカフェ難民、コロナ危機など、住まいの保障ということは幾度となく政治の課題になりながら、本格的な政策は検討されないままになっています。

 まず、資料一なんですけれども、国立社会保障・人口問題研究所が二〇二一年に出版した「日本の居住保障」から取ったものです。

 住居費が可処分所得の四割を超える世帯の人数が総人口に占める割合、これを住居費過重負担率、住居費の負担が重過ぎる人の割合として算出をして国際比較をしています。日本は一九・三%、民間賃貸住宅では三五・五%、しかも、所得が下位二〇%では七三・二%の人たちが住居費が重過ぎるということになるんですね。

 国際比較で全体として高い数値なんですが、特に低所得者の過重負担率というのは突出して高くなっています。これは日本の住宅政策の貧困を表していると思いますが、大臣、どうでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) 今、田村委員から住居費過重負担率についてお示しがございました。
 この住居費過重負担率については、OECDの二〇二〇年の調査によりますと、持家と賃貸の合計では日本は八%程度となっておりまして、北欧諸国やイギリスといった国々と大きく変わらず、フランスやドイツよりは高いものの、アメリカよりは低い数値となっております。ですから、今、田村委員お示しになったこの資料とちょっと数字が違うわけでございますけれども、OECDの資料ではそうなっております。

 その傾向は、人口、世帯構成や地域的特性、歴史的背景、住まいに対する志向といった事情によって異なり、必ずしもその数値が住宅困窮に直接的に結び付くものとは言えないと考えております。他方、そうした数値にかかわらず、現に住宅の確保に配慮が必要な方もいることから、誰もが安心して暮らせる居住環境の整備は重要な課題であると認識しております。

 住宅政策につきましては、戦後の絶対的な住宅の不足の中で、公営住宅の整備など、全世帯数を超える住宅供給を確保することから始まり、居住水準や住宅性能の向上を図るとともに住宅セーフティーネット制度を充実してきたところであり、こうした施策に引き続き取り組んでまいりたいと思います。

○田村智子君 これ、配った資料もよく見ていただければ、例えば、ちょっと見えにくいんですけれども、非民間の賃貸、つまり公営住宅ですよね、日本の高さってひどいですよ、これ負担の高さ、この表で見てもね。

 それで、今イギリスの話ありました。しかし、イギリスというのは、この住居費過重負担率の中に家賃補助は考慮されていないんですよ。二〇一九年三月時点で、イギリスの家賃補助は三百九十八万件、住居世帯率は一四・六%、平均支給額は一世帯当たり月額四百三十四ポンド、日本円にして約六万円なんですね。ですから、資料の二見ていただくと、二〇一五年、政府支出の住宅手当は、イギリス、GDP比で一・四%になるんですよ。

 それから、フランス。二〇一八年、住宅予算の四三%が住宅手当なんです。一人親世帯の六二%に住宅手当が支給されています。もちろん、家族手当は日本よりも格段に充実している上での住宅手当なんです。

 ですから、日本は非常に家賃が高いのに住宅手当がないという、そういう国でもあるんですよ。持家については住宅ローン減税などの支援制度がある、だけど賃貸の居住者に対して一般的な家賃補助制度がない。これ、なぜなんでしょうか。

○政府参考人(石坂聡君) 住まいは生活の基盤であり、持家のみならず賃貸住宅も対象に、様々なニーズに応じた住まいの確保を支援してございます。

 賃貸住宅につきましては、全ての賃借人の家賃について消費税が非課税となってございます。加えて、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で住まいを賃貸する公営住宅の供給に加え、セーフティーネット住宅の確保や家賃低廉化の支援を行ってきたところであります。

 御指摘の一般的な家賃補助につきましては、市場家賃の上昇を招く懸念はないか、適正な運営のための事務処理体制が必要ではないか、住宅扶助を始めとする社会保障制度との関係を整理する必要があるのではないかといった課題があり、慎重な検討が必要と考えてございます。

 先生御指摘のこの②の資料でございますけれども、日本のこの支出の割合は、恐らくこれは生活保護の住宅扶助、約六千五百億円程度でございますけれども、そういったものと私どもの家賃対策の補助の合計があるものと考えてございますが、恐らく生活保護の占める割合が非常に大きいデータとなってございます。

 こうした観点から、引き続き、その福祉政策を所管する厚生労働省や地方公共団体とも連携して取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

○田村智子君 いや、日本はその生活保護の住宅扶助ぐらいしかないんですよ、ということなんですよね。

 それで、国交省もいろんな家賃についての調査やっていますよね。大変興味深いと思うんです。
 資料の三。三十歳未満の勤労単身世帯一か月当たりの平均消費支出に占める住居費の割合、一九六九年は四%台、八九年一〇%台、二〇一九年には男女とも二五%を超えているんですね。

 この三十年間で実質賃金は上がらない、若年層は特にね、非正規雇用増えた、奨学金の返済額も増えた、そして家賃負担は倍以上になったと。これ、何かの事情で収入が減ったり思わぬ出費となればたちまち家賃が払えなくなって、一か月滞納すれば生活困窮、もう住まいを失いかねない、こういう状態なんですね。

 こういう家賃による生活困窮が日本では当たり前のようになっているということが異常だと思うんです。だから、家賃補助制度、これ日本でも検討が必要だと考えますし、是非、今いろいろ検討課題あると局長言われたんだけど、海外の事例とかも是非研究してみてはどうかと思うんですよ。
 大臣、どうでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) 住まいは生活の基盤であり、住宅の確保に配慮が必要な方も含め、誰もが安心して暮らせる居住環境の整備が重要です。

 先ほど局長から答弁がありましたけれども、国土交通省においては、公営住宅の供給に加えて、セーフティーネット住宅の確保や家賃低廉化の支援を行ってきたところです。さらに、令和五年度からセーフティーネット住宅に係る家賃低廉化補助の支援期間を一定の場合に延長し、支援の充実も図っております。

 引き続き、福祉政策を所管する厚生労働省や地方公共団体とも連携しながら、誰もが必要な住まいを確保できる環境整備に取り組んでまいりたいと思っております。

○田村智子君 今のセーフティーネット住宅については後でもう一回聞きたいと思うんですけれども、大臣言われたとおり、その住まいというのは、就労、就学、そして社会保障を受けるときの基礎になるわけですね。住まいを失うと、これらが全部がたがたと崩れていってしまうわけですよ。ですから、人間が社会の中で生きる土台というのが住まいであって、その住まいを保障するということを住宅政策の柱に据える必要がいよいよ出てきているというふうに思うわけです。

 もう一点、ジェンダーの視点からも見てみたいんです。
 資料の四、横浜市の単身世帯の住まいの状況・ニーズ調査報告書から取りました。これ、横浜市男女共同参画推進協会が、三十五歳から六十歳で働いている単身の男女それぞれ二百五十名を対象に調査を行った報告書です。賃貸住宅の居住者は、単身女性の六五%が家賃六万円以上、これは単身男性よりも一二%多いんです。

 もう一つ調査をお示ししたいんです。これ、任意団体のわくわくシニアシングルズというところが、二〇二二年中高年シングル女性の生活状況実態調査というのをやっています。

 四十歳以上のシングル女性二千三百四十五人が回答しているんですけれども、民間住宅に居住している方が約四割、その四割近くが住居費が七万円以上と、そして全体の六割以上が住居費を払うと生活に余裕がないと答えているんです。

 書き込まれた意見も、五十代正規職員、家賃の負担非常に重い、失職、年金生活になった場合、現在の家賃が払えない、家賃の安い部屋に引っ越そうとしても単身高齢女性は容易に部屋を借りることができない、政府には家賃補助金や単身女性が公営住宅に住む権利を要求したい。四十代非正規職員、収入が大幅に減ったときに家賃が払えるかどうかが将来の不安の中で一番大きな割合を占めている、住居がなければ何もできない、単身者への住宅支援をしてほしいと。こういうような意見がいっぱい書かれているんです。

 女性が自立して働く時代になっても、その女性たちは非正規が当たり前、正規雇用でも昇給、昇格の格差が当たり前されてきました。単身者への家賃支援、あるいは女性の住まいの権利、こういうこともやっぱり住宅政策の中で検討が必要になってくると思うんです。いかがでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) 単身者や女性の中にも住宅の確保に困難や不安を感じている方がいらっしゃる、このように認識しております。このような方々も含め、誰もが安心して暮らせる居住環境の整備を行っていかなくてはなりません。

 このため、国土交通省では、低額所得者や一人親世帯など住宅の確保に配慮が必要な方に対して、公営住宅の供給に加えて、セーフティーネット登録住宅の確保や居住支援を推進しています。

 また、現在、国土交通省、厚生労働省、法務省の三省合同で設置した有識者検討会におきまして、住宅セーフティーネットの機能の強化に向けて住宅政策と福祉政策が一体となった居住支援の在り方などの検討が行われているところです。

 引き続き、単身者や女性の住まいの課題や現状を踏まえ、支援の充実に取り組んでまいりたいと思います。

○田村智子君 本当に公営住宅の入居の条件が非常に狭過ぎるんですね、日本の場合。これ、単身女性入れるかって、入れないですよ、ほとんどの自治体が。そういう要件にしてないですよ。物すごい不安を今シングルの女性たちが抱えている。ここに応える政策検討を是非行ってほしいんです。

 今まで答弁の中で住宅セーフティーネットのことが何度も言われてきたんですね。二〇一七年、この住宅セーフティーネット法改正時、最大月額四万円の家賃低廉化を国交省、宣伝しました。しかし、予算僅か三億円なんですよ、三億円。しかも、昨年度の実績というのを見ると、全国で僅か二十三自治体。セーフティーネット住宅で、その家賃低廉化された住宅と言われているのは四百五十二戸しかない。国の支出は、予算三億と言ったけれど、七千二百万円弱にとどまっているんですよ。これ、だから設計が駄目だと思うんです、制度設計が。貸し手側に手を挙げてくださいねと、で、貸し出す部屋に対してお金を出しますよと、これでは全く普及しないということが既に明らかになっているんじゃないでしょうかね。

 この住宅セーフティーネット法、五年の見直し、先送りにされています、今。是非検討していただきたいのは、住宅困窮者はもちろんなんですけれども、今、家賃負担によって生活が苦しいという人を広範に対象にして一般的な家賃補助制度がどうしたらできるのかと、こういう検討が必要になると思うんですよ。そうであってこそセーフティーネットの名にふさわしいと思うんです。こういう、人に対する家賃補助、ここを住宅政策全体の、位置付けるという抜本的な改革、必要になってくると思うんです。

 幸いといいましょうか、本当はやるべきだった見直しが先送りになっていますから、ここは思い切った検討に踏み切っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) 住宅に困窮している方々は、住宅だけではなく様々な生活上の課題を抱えております。このため、先ほど申し上げました三省合同の検討会におきましては、これらの方々の課題や現状を踏まえ、賃貸住宅に円滑に入居し安心して生活できるようにする観点から幅広く議論が行われているところでございます。九月に検討会が取りまとめた中間とりまとめ素案では、今後の住宅困窮者に対する居住支援の在り方として、入居時のみならず、様々なニーズに応じた入居中のサポートの充実や地域の支援体制整備の推進など幅広く御提案いただいているところです。

 引き続き、居住支援法人や関係省庁ともしっかりと連携し、この御提案も踏まえまして、住宅政策と福祉政策が一体となった住宅セーフティーネット制度の強化に取り組んでまいりたいと思います。

○田村智子君 やっぱり公営住宅の再構築、それからUR賃貸住宅も法律の条文どおりに家賃減額制度を機能させる、これぐらいはすぐできることだと思うんですね。ところが、今こういう公的な住宅というのは減少の方向なんですよ。一方で、都市部では、大手ディベロッパーの要求のままに、容積率の緩和でタワーマンションどんどん建つと。で、その周辺地域は家賃高くなって、むしろ市民が追い出されていくという状況ですよね。地方も、インバウンドだといって高付加価値ホテルが建てば、周りがやっぱり家賃上昇になっていくわけですよ。これでいいのかということが問われています。

 是非、欧州などの住宅政策、調査研究して、住宅とか建物というところを重視した行政から、住まいを保障する、人を尊重した住宅政策、この転換を求めて、質問を終わります。

 


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