国会会議録

国会会議録
コメ輸入拡大は論外 TPP交渉脱退求める 参院決算委
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質問する田村智子議員=10日、参院決算委

 日本共産党の田村智子議員は10日、参院決算委員会で、環太平洋連携協定(TPP)交渉について甘利明TPP担当相が2月中にも日米協議をまとめる姿勢を示し、米国産のコメ輸入拡大を不可避だと発言(1月27日)したことをとりあげ、「こんな要求をのまなければならないのなら、交渉から脱退すべきだ」と追及しました。

 田村氏は、甘利担当相の発言について「関税ゼロでの輸入上限であるミニマムアクセス77万トンとは別に、コメの輸入はありえない」と西川公也農水相に迫りました。西川農水相は「主食用のコメの輸入は慎重に」と述べつつ、特別枠でのコメ輸入については否定しませんでした。

 田村氏は「国産のコメは昨年秋、40年前の価格に戻るほど暴落した。今でもミニマムアクセス米のほとんどは国内で売却されており、別枠でコメを輸入・売却したら、国産米の米価はさらに下落するのではないか」とただしました。しかし、佐藤英道農林水産大臣政務官は、「仮定の質問にはお答えできない」と答弁を拒否しました。

 田村氏は、コメをはじめ重要5品目などの聖域を確保できない場合は交渉脱退も辞さないとする国会決議を示し、「ミニマムアクセスを超えた輸入など、この決議からはありえない」と交渉脱退を求めました。さらに、西川農水相が「アメリカに対して譲るつもりはない」と発言していることを指摘し、「2月中の日米合意など絶対にあり得ないと明言すべきだ」と迫りました。

 西川農水相は「交渉(の担当)は甘利大臣。私どもの考え方をよく聞いて交渉してくれると思う。期限については答えない」と無責任な態度をとりました。

(「しんぶん赤旗」2015年2月11日付)

 

【議事録】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 一月末から二月初めにかけて、TPP交渉参加十二か国による首席交渉官会合、さらに日米の実務者協議が行われ、マスコミは一斉に、二月中に日米協議がまとまり、三月にも十二か国の大筋合意かと報道しています。甘利TPP担当大臣も二月三日の記者会見で、春の早いうちに十二か国の閣僚会合が持てることが望ましい、その逆算のスケジュールでいければより良い段取りが持てると思いますと述べられました。
 TPP交渉は、アメリカと新興国の隔たりはいまだ大きく、短期に合意ができるような状況にはないと思います。なぜ日本が合意を急ぐのですか。
○副大臣(西村康稔君) お答え申し上げます。
 TPPは、物のやり取り、貿易だけではなくて、サービス、投資、さらには知的財産、金融サービス、電子商取引あるいは国有企業の規律、こういった幅広い分野で二十一世紀型の新しい経済取引のルールを作っていこうということでありますので、日本にとりましては、成長特に著しいアジア太平洋地域においてしっかりと利益を確保していく、いわゆるバリューチェーンをつくり出していくということで、非常に大きな意味があるというふうに考えております。
 また、TPPも含めて、アジアで議論されておりますRCEPとか日中韓のFTAの取組等、こうしたことも含めて日本の国益にかなう高いレベルの経済連携交渉を戦略的かつスピードを持って推進していくということが、我が国の成長のため、成長戦略の大きな柱の一つというふうに認識をいたしております。
 したがいまして、関係国とも協議しながら、協力しながら、早期妥結に全力を尽くしているところでございます。
○田村智子君 今の御説明を聞いても、特段、二月中にまとめたり、春のうちにとか、早く日本がこの協議まとめなければならないという事情は、これ私は分からないんですよ。事情があるのは明らかにアメリカですよね。来年はアメリカ大統領選挙で、TPP合意をオバマ大統領の実績にしたいと。秋の米国議会で承認を得るには、十二か国の合意は春がタイムリミットだと言われています。この米国の事情に合わせるような拙速な交渉は、これ絶対に認められないわけです。
 しかも、この日米合意を急ぐ余り、豚肉、牛肉の関税大幅引下げ、米の輸入拡大など、アメリカ側の要求に次々と譲歩しているのではないかと、報道を見ればそう思わざるを得ないわけです。
 事実、甘利大臣は一月二十七日の記者会見で、米の輸入枠について、一粒も増やすなということは不可能だと明言をされました。これはどういう意味ですか。甘利大臣の言う一粒というのは何万トンのことですか。
○副大臣(西村康稔君) お答え申し上げます。
 日本としては、昨年から、そして今年に入っても、できるだけ早くに日本の国益を実現する形で、守るべきものは守り、攻めるべきは攻め、そういう方針でできるだけ早く妥結をしようということで臨んできております。それの中で、アメリカの政治日程も含めてそういう機運が盛り上がっているということは事実であろうというふうに思います。
 その上で、日米間の協議につきましては、米の問題も含めてまだ多くの課題が残っております。現在、日米でその課題についていかに間合いを詰めることが可能かどうか着地点をめぐって議論を、交渉を重ねているところでございまして、甘利大臣の発言はそのような趣旨で、そのような状況の中で述べたものというふうに認識をいたしております。
 いずれにしましても、米は最大のセンシティブな品目であることは私ども十分に承知をしておりますし、国会決議もよく認識をしておりますので、国益にかなう最善の道を追求し、最大限努力をしていきたいというふうに考えております。
○田村智子君 これは一粒なんという単位はあり得ないわけで、何万トンという単位でしかあり得ないんですよ。そういう発言を甘利大臣はされていると。ミニマムアクセス米七十七万トンとは別に、特別枠で五万トン程度、関税ゼロあるいは低い税率でアメリカ産の米を輸入する方向だと、マスコミはこう報じています。
 農水大臣、午前中の民主党徳永委員の質問に、主食用米の追加輸入は考えていないと明言をされました。ミニマムアクセス米とは別枠輸入、これ自体が大問題で、これがあり得ないと明言していただきたいと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(西川公也君) ミニマムアクセス米七十七万トン、そのうちアメリカの割当てが大体半分で来ていますね。それで主食は僅かだと、こういう状況が現況かと思います。
 それで、私が先ほど申し上げたのは、昨年の秋のこの米価下落の問題が物すごく大きな問題で、農家の方々に大変心配を掛けました。そういう状況のときに、主食用の米を輸入云々なんていう議論すら私は非常に農家の皆さんの心配をあおることになる、だから、この交渉の中で農林水産省としては、主食用の米については慎重な上にも慎重に交渉していただいて、私どもは日本の主食用のバランスが崩れるような方策は取らないと、こういう意味で申し上げたところでございます。
○田村智子君 これ、そうすると、特別枠ということを拒否されないという答弁に聞こえますよね。
 国産の米、確かに大臣言われるとおり、今や四十年前の価格に戻るほどの暴落に昨年秋なってしまいました。私も千葉県の農家の方々にお話をお聞きしましたが、肥料代も払えないと、今年何とかしのいでも、同じことが続いたらもうやっていけないと。極めて深刻な事態です。
 二〇一三年度決算では、ミニマムアクセス米の購入は七十一万トン、売却は六十九万トン。過去五年を見ても、一年に七十万トンを超える購入、八十万トンを超える売却で、しかもその売却のほとんどは国内です。主食用、僅かだと言いましたが毎年十万トン、加工用で二十から三十万、飼料用三十万から四十万トンと、こうなっているわけです。
 これ、ミニマムアクセスというのは、元々、ここまでは関税ゼロで輸入の機会があるよというものであって、そこまで輸入しなくていいんですよね。しかし、日本政府は言わばその上限に張り付くような輸入と国内の売却ということ、ほとんど国内売却ですから、これ続けてきているんですよ。
 当然農家から、供給過剰だといいながらなぜ輸入量を減らさないのかと怒りの声が上がるわけです。その上、ミニマムアクセスと別枠で米を輸入し売却をしたら、国産米の米価、主食用もそうですけど、飼料用、加工用含めてですよ、これ下落するということになるんじゃないですか。
○大臣政務官(佐藤英道君) TPP交渉につきましては、全体をパッケージとして交渉しており、何ら確定しているものではなく、仮定の質問にはお答えできないこと、御理解を賜りたく存じますが、米については、ただいま大臣から発言があったとおり、慎重が上にも慎重な対応が必要と考えております。引き続き、衆参両院の農林水産委員会決議が守られたとの評価をいただけるよう、政府一体となって交渉に全力を尽くす考えであります。
 いずれにしても、TPP交渉いかんにかかわらず、主食用米に対する需要が減少傾向にある中で米の需給と価格の安定を図っていくためには、今後とも主食用米から飼料米等への転換を進めることが極めて必要であると考えているところです。
○田村智子君 答えになっていないんですよね。
 今、報道では、輸入拡大で供給過剰となる分、政府が国産米の買取りを増やすことも検討しているんだということも言われています。昨年秋、米価が暴落したとき、農家の皆さんは緊急対策として政府の買入れを求めましたが、政府はこれを拒否しました。ところが、アメリカからの輸入拡大のためには買取りをするという、こんな議論があるとしたら、もう本末転倒、支離滅裂ですよ。絶対認められない。
 西川農水大臣は一月十四日の参議院農水委員会で、衆参の農林水産委員会の決議を守り抜いたと評価をいただけなければ、TPPの交渉は幾ら合意をしても効力を発しないと答弁をされています。
 決議には、もう皆さん御存じのとおり、米を筆頭に、重要品目は交渉対象からの除外又は再協議の対象とすること、十年を超える期間を掛けた段階的な関税撤廃も含め認めないこと、重要五品目などの聖域の確保を最優先し、これが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとすることとあるわけです。当然自民党を含めた全会一致の決議です。
 一粒も増やすなというのは不可能だという大臣の発言、ミニマムアクセスを超えた輸入などはこの決議からはあり得ません。こんな要求をのまなければならないのならば、交渉からの脱退しかないと思いますが、大臣、いかがですか、西川大臣。
○国務大臣(西川公也君) 私どもはTPPに参加をいたしました。その中で、国益を守って、成長著しい国々と一緒になって日本経済を更に活性化させていこうと、こういう考え方があるのも事実です。そういうことで参加をいたしました。
 その中でも、重要五品目を守り、日本の農業に影響を与えないと、ここを交渉の私どもは最大の課題としてやっておりますし、また、さきに、一月十五日に効力を発生した日豪のEPAにおいても同様の文章の国会決議をいただきました。この日豪のEPAは、残念ながら共産党さんだけは反対でありましたが、ほかの皆さんは賛成をいただけたということで、国会の皆さんに御評価をいただけたと、こういうことであります。
 今度のTPPも国会で審議をいただき、評価をいただかなければ、これは効力を発生しない、そういうのは当たり前のことでありまして、国会の皆さんの御評価がいただけるような交渉にしてまいりたいと、こう考えております。
○田村智子君 米は交渉対象からの除外とまで決議に書いてあって、何で一粒も増やすななんてことは不可能だという発言が担当大臣から出てくるのか。全くおかしいですよ。農水大臣も御自分の国会での答弁に是非責任を持っていただきたいと思うんですね。
 先ほどの委員会で大臣はこういう答弁もされています。日本側としてはアメリカに対して譲るつもりはありません、期限も切らずにしっかり待ち続けながら交渉をして、日本の農林水産業に悪影響を及ぼさないと、こういう判断をいただけるような形になるまで私どもは交渉をしっかりやっていきたいと。報道では譲りっ放しの情報しか出てこないわけですよ、米の特別枠とかね、そういう話とか。こんな報道がある中で、二月中の日米合意なんかあり得ないです。大臣言われるとおり、アメリカが下りてくるまで待つと大臣言われているわけですから。
 これ、二月中の合意なんてあり得ない、これは少なくとも明言していただきたいと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(西川公也君) この交渉は、日本側は甘利大臣でありますから、甘利大臣が私どもの考え方をよく聞いていただいて交渉してくれると思っておりますし、交渉のことについては、期限については切るわけにいきませんので、そこの部分はお答えいたしません。
○田村智子君 決議を守り抜くということの意味を本当によく考えていただきたい。決議をもう一度よく読んで考えていただきたい。今後、また農水委員会で我が党も質問していきたいと思います。


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