活動報告

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LGBT法4党案可決/田村智子氏批判「これが少数者守る法か」

 LGBTQなど性的少数者の願いに逆行するLGBT法4党案の採決が15日の参院内閣委員会で、古賀友一郎委員長の職権で強行され、自民、公明、維新、国民民主の賛成多数で可決しました。日本共産党、立民、れいわは反対しました。

 共産党の田村智子議員は反対討論で、最大の問題は、維新、国民の案をベースに「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう留意する」との条文が持ち込まれたことだと主張。「マイノリティー(少数者)にマジョリティー(多数派)の安心を脅かすことのないよう『わきまえろ』と求める。これがマイノリティーの人権擁護の法律か」と批判しました。

 田村氏は、法案審議で取り上げられたトイレや公衆浴場などのスペースは、「誰にとっても安全であるべきだ」と強調。その上で、「女性の安全が脅かされている現状は、性暴力の防止、被害者支援の法整備と取り組みの不十分さが問題であって、LGBTの権利に関わる法案の焦点として語るなど、全くのお門違いだ」と批判しました。

 また、学校での教育・啓発は「家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつ」行うとする条文も、“多数派が許容する範囲で”性的少数者の人権を認めることになりかねないと指摘。同条文を根拠に「学校の実践をやり玉に挙げるようなことはあってはならない」と主張しました。

 田村氏は、当事者の根底にある思いは「私が私として生きたい、ただそれだけだ」と述べ、「個人の尊重、ジェンダー平等、多様性の尊重へ私たちは決して絶望することなくともに歩み、必ず時代を動かす」と表明しました。

 

性的少数者への差別解消へ 法整備は一刻を争う/田村智子氏に参考人

 日本共産党の田村智子議員は15日、参院内閣委員会のLGBT法4党案の審議で、性的少数者が抱える困難という原点に立ち返った議論が必要だと述べ、参考人への質疑を行いました。参考人は、性的少数者への差別を解消するための法整備は「一刻を争う状況だ」と訴えました。

 性的少数者のための法整備を目指す「LGBT法連合会」の神谷悠一事務局長は、カミングアウトしていない大多数の当事者は「気付かれないようひっそりと暮らしている」と指摘。差別や偏見を恐れ、プライベートの生活などありのままに話せない苦しさは、24時間365日続いていると強調しました。

 一方、カミングアウトした人たちも、職場や就活などで差別や不利益を被っており、トランスジェンダーが性暴力の標的になっていると説明しました。

 田村氏は、法案が学校での教育について「家庭及び地域住民らに協力を得る」としていることについて質問。神谷氏は、親の理解が最も困難で、学校で理解ある先生と出会うことが孤立を防ぐと強調しました。

 田村氏は、修正で追加された「全ての国民が安心して生活できるよう留意する」との条文について質問。神谷氏は、「国民の間に分断を生む。いじめや差別の原因となる無理解を擁護し、差別を温存するために活用される懸念がある」と指摘。法案の基本理念である基本的人権を享有し個人として尊重されることに反し、「百八十度真逆の効果をもたらす」と語りました。

 田村氏は、これまでの審議で当事者の苦悩が議論されておらず、法案採決はできないと主張しました。

 

LGBT法4党案/田村智子議員の反対討論要旨

 最大の問題は、第12条が、維新・国民案をベースに持ち込まれたことです。「全ての国民が安心して生活できるよう留意する」―法律の目的を百八十度転換し、マイノリティーにマジョリティーの安心を脅かすことのないようにと求める、これがマイノリティー人権擁護の法律なのでしょうか。審議でLGBTの方が直面する問題ではなく、トイレなど女性スペース問題ばかりが取り上げられたことに、12条の意味するところは明らかです。

 上野千鶴子氏など22人が呼びかけ人となり「LGBTQ+への差別憎悪に抗議するフェミニストからの緊急声明」が発表されました。「女性の安全がトランスジェンダーの権利擁護によって脅かされるかのような言説は、トランスジェンダーの生命や健康にとって極めて危険なものになりかねません」との批判は、法案審議にも向けられたものと受け止めるべきです。

 トイレや公衆浴場は、だれにも安全であるべきです。女性の安全が脅かされている現状は、性暴力の防止、被害者支援の法整備と取り組みの不十分さが問題であって、LGBTの権利に関わる法案の焦点として語るなど全くのお門違いです。

 トランスジェンダーも深刻な性被害を受けているのに被害を認められず、支援や相談の対象にもならない、自分の性的指向・性自認による差別排除への不安を24時間、365日抱え続けている―参考人から示された生きづらさ、孤独、差別は命に関わる問題です。LGBTQ+の人権擁護、差別解消の緊急性は明らかなのに、審議でそこに焦点が当たらないのは異常です。

 学校での教育、啓発は家庭・地域住民の協力を得つつ行うとの条文も、多数派が許容する範囲で認めるということになりかねません。性的違和感を抱く子どもが学校を通じて理解あるおとなとつながる機会が奪われ、孤立を深めてはなりません。

 「差別は許されない」が「不当な差別はあってはならない」と書き換えられ、国に義務づけた調査研究が学術研究に置き換えられ、「民間団体などの自発的な活動の促進」も削除するなど、法案はずたずたに後退させられました。

 国会の全政党に何度も足を運び、対話を続けてきた当事者のみなさんに心からの敬意を表します。根底にある思いは、私が私として生きたい、ただそれだけだと思います。その切なる願いに応えた理解増進、差別解消の取り組みは、全ての人が個人として尊重される社会を実現するでしょう。個人の尊重、ジェンダー平等、多様性の尊重へ私たちは決して絶望することなくともに歩み、必ず時代を動かします。


2023年6月16日(金) しんぶん赤旗

 

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 超党派の議員連盟が二〇二一年にまとめたLGBT理解増進法案、与党がこれを変え、維新、国民との修正で更に中身が変わり、連日、これでは差別増進だ、廃案にしてほしいという当事者の集会が国会の前で行われています。

 今必要なのは、LGBTQ+の方々がどんな問題に直面しているのかという原点に立ち返った議論だと思います。
 何年にもわたって全ての政党と対話をしてこられたLGBT法連合会の神谷悠一さんに参考人として出席いただきました。ありがとうございます。

 まず、神谷さんに、皆さんが直面している問題、なぜ差別禁止を求めているのか、総論的にお話しいただきたいと思います。

○参考人(神谷悠一君) お答え申し上げます。
 まず、大前提として、多くの方がいまだに誤解されておりますが、性的指向や性自認は自分の意思で変えることはできません、選択することもできません。繰り返しになりますが、同性を好きになるか異性を好きになるかを自分自身で選択したり変えたりすることはできず、自分自身を出生時の性別と同じだと自認するか違和感を感じるかどうかについても自分自身で選択したり変えることはできない。これは、精神神経学会含め、科学的に確立した知見だと承知をしております。

 性的指向や性自認に関する差別による様々な困難については、子供、教育、就労、福祉、民間サービス、公共サービスなど、当会では九つの分野、総計三百五十四項目にわたる困難リストを取りまとめております。こちらはウェブサイトで公開しておりまして、自民党の皆様から共産党の皆様まで、参考として御活用いただいているというふうなこととともに、参議院内閣委員会調査室の参考資料にも掲載されているというふうに承知をしてございます。

 資料一ページ目を御覧ください。
 まず、厚生労働省の委託事業の調査によりますと、性的マイノリティーのうちカミングアウトをしている方というのは一割前後になってございます。七割から八割もの方が、職場で自分が性的マイノリティーだと気付かれないようひっそりと暮らしていると。

 しかし、カミングアウトをしていない、できない場合の生活も決して平易なことではありません。例えば、週末何をしていたかと聞かれた場合に、カミングアウトをしていない間柄ですと、自分が性的マイノリティーの当事者であると知られて差別や偏見を受けることがないよう、ごまかして話さざるを得ません。

 資料二ページを御覧ください。
 例えばゲイ男性の場合は、本当は同性パートナーと過ごしていたにもかかわらず、異性のパートナーと過ごしていたかのように周囲に話す必要があります。差別や偏見を恐れるためです。パートナーと行った場所、例えば服屋などは男女で分かれていますので、これは同性であれば同じ服屋ですが、異性だと別の服屋に行った、別の売場に行ったというふうに話さざるを得ませんし、店員に対する反応に至るまで自分たちが異性カップルであると周囲に思われるよう話を言い換え、周囲の人に語らなくてはなりません。

 資料に記載ありませんが、私自身も経験があるところでは、同居している同性パートナーの存在を周囲に言えない場合、住んでいる家の間取り、カップル向けの間取りではなく、単身向けの間取りに置き換えて話す場合などもございます。

 また、資料三ページ、トランスジェンダー男性の場合、差別を恐れるなどして、職場では法律上の性別で過ごし、プライベートでのみ性自認に基づいて過ごしている場合についてでありますけれども、その場合は、自分の性別、そして場合によっては一緒に行った方の性別を変えてプライベートの話をする必要があり、週末、やはり楽しんだ洋服屋、お店の店員の対応に至るまで話を換えて周囲に語る必要が生じます。

 このようなことは、カミングアウトをしていない場合、たとえ家族や親友であったとしても、二十四時間三百六十五日必要な対応となります。厚生労働省のリーフレットでは、カミングアウトしない場合の困難にも言及されていると承知をしてございます。

 一方、カミングアウトをすると別の困難が出てまいります。例えば職場でございます。取引先の人に結婚しないのか、彼女はいないのかとしつこく聞かれたので、正直に、自分はバイセクシュアルであり男性パートナーがいますと告げたところ、職場に苦情が来た。トランスジェンダーであることを周囲にカミングアウトした後、やっぱり声が高いから元女だねと心ないことを言われ、今度は、座ると、座っている姿勢をやゆして、やっぱり座り方は男っぽいねなど、一つ一つの言動に、その都度、男や女を引き合いに出され、傷つけられるということがございます。

 そのほかにも、おかまに営業は向いていないから異動させられた。ゲイであることが知られた途端、退職するよう言われた。トランスジェンダーであることをカミングアウトしたところ、連続十社、採用を断られたが、トランスジェンダーであることをカミングアウトすることをやめたらすぐに採用されたといった差別的な事例も、差別的取扱いの事例も報告されています。

 また、より深刻な事例として次のような事例がございます。レズビアンは女が好きなんだろうと言われ、同僚の社員から男性向けのポルノ雑誌を無理やり見せられた。レズビアンであることをカミングアウトしたところ、俺が治してやる、男を知れば変われるなどといってレイプをされたなどといった事例もございます。

 更に深刻な事例として、四十代のトランス女性がタクシーの運転手として働いていたところ、三人組の男性乗客に公園に連れ込まれ、レイプをされ、売上金を全部取られた。しかしながら、直近の性犯罪刑法改正前のことではありますけれども、戸籍上男性であるため、警察では盗難事件としてのみ行われ、強姦事件としては扱われなくなり、うつになり、パニックが起きるようになり、仕事を辞めざるを得なかったという事例もございます。

 さらに、昨年事件として報道された事案では、トランスジェンダー女性が、同じ会社の執行役員の男性上司から腰に手を回された上、わいせつな言葉を掛けられたり、別の機会には、キャバ嬢にしか見えない、ハプニングバー通いしてそうな顔だなどと性的な暴言を浴びせられた。しかし、その後発覚し、謝罪をされた際に、男だから平気だと思った、これからはおまえを一人の女性として見るなどと言い放たれ、その後も、手を握られた上で性的な質問をする、原告の陰部に顔を押し当てられるなどといった深刻なセクハラが続き、顔を押し当てる際の様子を撮影した写真もあるというふうに報じられてございます。

 トランスジェンダーの生きづらさ、困難さの一つに、おまえは男なのか女なのかと都度都度言われ、時に都合よく言われ続けるということもございます。

 雑誌新潮に掲載されたトランスジェンダー女性の手記には、誰かが私を彼と呼び、誰かは彼女と私を紹介する、その一々に引き裂かれそうとあります。ちまたでは、男が女の格好をした変なやつなどと単純に捉える方がいらっしゃいますが、同じ手記では、メークやファッションの華やかさにときめいて楽しんでいるし、好きという気持ちもしっかりある、全く主体性がないわけじゃない、けれど、義務感も拭えない、自分のために美しくありたいというより、女性として整合性が取れているかどうかいつも不安だからとされています。自分がその格好をしたいというより、性自認に基づく格好に見えるように必死で歩き方や振る舞い方を研究し、実践をしています。ちょっと服を着てみたい、そういう格好をしてみたいというものではございません。このような生きづらさは、困難、統計的にも明らかになってございます。

 例えば、資料四ページ、埼玉県の調査では、中学生の頃に不快な冗談、からかいを受けることの経験が、性的マイノリティーで五三・八%、性的マイノリティー以外で二四・八%、暴力、言葉の暴力やいじめを含む、を受けることは、性的マイノリティーで三七・五%、性的マイノリティー以外で一六・八%と、大体二倍以上ということになってございます。成人十九歳以降で見ましても、約二倍、性的マイノリティーはこれらの被害を多く受けています。

 また、レイプやセクハラなどの性被害経験について、宝塚大学の日高教授が調査したところによりますと、女性を自認するトランスジェンダーは五七%、男性を自認するトランスジェンダーは五一・九%、レズビアンは五二・二%、トランスジェンダーが性暴力の標的にされているということが、これは報じられてもおります。

 このような日常的な差別、困難が積み重なり、資料五ページ、先ほどの埼玉県の調査では、最近一か月で絶望的だと感じたことにつきまして、性的マイノリティーは五九・八%、性的マイノリティー以外は三二・四%。このうち、高い頻度でそういった絶望的に感じたことがあるについては、性的マイノリティーが一五・八%、性的マイノリティー以外が四・一%と四倍近く差が顕著になってございます。

 さらに、次の資料でございますけれども、科研費グループ、科学研究費グループの調査では、LGBは多数派の六倍、Tは十倍、自死未遂経験の比率が高いことが明らかになってございます。

 このような事態を一定程度解決するそのスタートラインを切るために、私どもは性的指向及び性自認等による差別の解消並びに差別を受けた者の支援のための法律に対する私たちの考え方、困難を抱えるLGBTの子供たち、子供などへの一日も早い差別解消をと題した、通称、差別禁止、LGBT差別禁止法市民案を八年前に発表しているところでございます。実効性ある法整備は、これを発表した八年前から一刻を争う状況で待たれているというふうに思ってございます。

○田村智子君 恐らく、これでもまだ言い切れないほどの実態があるんだというふうに思います。
 法案に関連してもお聞きします。

 法案第六条、十条で、学校での教育、啓発について、家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつとあります。
 子供たちへのLGBTQ+に関わる教育、啓発に家庭や地域住民が異議を唱えたらできないのかということを私思えてしまうんですね。この条文を根拠に、教育、研修、集会などへの介入などあってはならないと思います。

 そこで、LGBTQ+の子供が家庭や保護者との関係で抱えている困難、学校に期待される役割などお聞かせください。

○参考人(神谷悠一君) お答え申し上げます。
 資料七ページ、科学研究費グループの調査では、近所や同僚に当事者がいる場合、嫌だと回答した人は三割を切っていますが、自分のきょうだいだと五割、子供だと六割との結果が出ています。当事者にとって、親の性的マイノリティーへの差別や偏見こそが一番の悩みであるということは表されているのではないかと思います。

 こうした状況から、困難の事例としては、例えば、親にカミングアウトしたところ、ゲイの息子なんて要らない、おまえなんか死んだ方がましだ、嫌らしい、気持ち悪いと言われた。あるいは、自分の性自認や性的指向について家族から理解を得られなかったため家から追い出されホームレスとなった。カミングアウトをしたところ、家族の中で自分の存在を無視をされたり死んだものとして扱われたりしたといったことが挙げられます。

 一方で、例えば、性同一性障害学会の理事長である中塚氏によれば、ジェンダークリニックを受診した千百六十七名が自分の性別違和感を自覚し始める時期は、小学校入学以前が五八・六%、小学校高学年までで約八割に上ります。性的指向については思春期以降だというふうな指摘がされています。

 しかし、カミングアウトをしたり相談、カミングアウトをしたり相談することはそうした子供たちにとって難しく、先ほどの大人を対象としたカミングアウトの調査、厚生労働省の委託事業の調査にも表れていますし、三重県が高校生を対象にした調査では、性的マイノリティーについて他人に相談した人というのは僅か当事者で七・七%にとどまっております。

 そのため、自分が当事者であると自覚していたとしても、高校生まで誰も相談できず、また、この課題は見た目にはなかなか同じ当事者が分からないということもあり、県でたった一人の当事者と思い悩み、まさに孤独、孤立状態だったという事例も聞くところであります。NPO法人ReBitの調査によれば、孤独感をしばしばあるいは常に感じた十二歳から十九歳の当事者は二九・四%となっており、内閣府実施の全国調査の八・六倍も高い値となっております。

 性的マイノリティー以外にも様々なマイノリティーがおりますが、性的指向、性自認はなかなか見た目からは当事者であっても分からないということがあります。見た目で分からないように、差別や偏見を受けないように子供たちも努力をしている。だからこそ、仲間や同じ悩みを持つ当事者を見付けることは容易ではありません。けれど、子供たちは否定的な環境下では、繰り返し申し上げますが、なかなか親には相談できません。むしろ、親から嫌われたり、まかり間違って家から追い出されることのないよう息を潜めて生活していることが少なからずございます。

 子供の生活の基本は学校と家の往復です。家庭で自分自身が性的マイノリティーであることが受容されない場合、受容してくれる学校の先生が一人でも見付かるかどうかが重要であり、そのような人を見付けるためには、授業内容や取組からその人が性的マイノリティーに理解があるか一人一人が見極めなくてはなりません。

 このような性的マイノリティーが置かれた厳しい状況を踏まえますと、法案第六条の、教育を行う上で家庭に協力してもらって進めるというのは、性的マイノリティーが置かれている厳しい実態を踏まえないものではないかというふうに考えます。

 教育をすると性的なことを覚えて危ないのではないかという声も聞かれますが、ユネスコ等によれば、早期に性について教育することは、むしろ初婚年齢が遅くなる、性交渉の頻度が減る、リスクが高い行動が減る、自分らしくあっていいという自己肯定感が向上するとされております。

 他の問題と異なり、親に頼れず、親こそが最も理解を得るのが難しいというのが統計的にも特徴として表れているにもかかわらず、家庭に協力してもらって教育を進めるというのは大変ナンセンスな発想ではないかというふうに考えるところであります。

○田村智子君 子供のちょっともう孤独と命に関わるような問題を本当に起こしちゃいけないのでね、介入しないでくださいよね、本当に、独自の実践に。

 法案第十二条は超党派議連案にも与党案にもなかった全く新しい概念です。LGBT理解増進の施策は、性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、全ての国民が安心して生活することができることとなるよう留意するもの、この場合において、政府は、その運用に必要な指針を策定するものとするとあります。法案第三条は、全ての国民が、その性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとりというふうにあるのに、わざわざ第十二条を置けば、全ての国民の安心のために、LGBTQ+の側にわきまえる、配慮する、このことを求めることになってしまう。

 LGBT法連合会の皆さんは、十三日の声明で、求めてきた法案とは真逆の内容として、特にこの十二条、厳しく批判をされております。この点について説明をお願いします。

○参考人(神谷悠一君) お答え申し上げます。
 十二条は、議論の経過を拝見しておりますと、性的マイノリティーを差別する人、性的マイノリティーに困難を与える側の、諸外国を見ても統計的には根拠が出てきていないこのような言説を基に制定され、留意しなければならないというもので、国民の間に要らぬ分断を生むことになるのではないかというふうに考えてございます。この条項が出てきた経緯、また、それらは、一部議員のブログなどの発信を見ておりますと非常に懸念されてなりません。

 既に何人かの法学者が報道などで指摘しておりますように、十二条は法の効果を百八十度回転させ、いじめや差別などの原因となる無理解の解消ではなく、いじめや差別の原因となる無理解を擁護し、差別構造を温存するために活用されることがあり得る懸念される規定だと考えております。

 民間の性的マイノリティーへの支援団体について、あそこでは居場所づくりといって変な人が来て不安、変な教育をして不安、変な人たちを増やす政策は不安、十二条の全ての国民が安心して生活することができるに違反しているといって自治体や教育現場に対して要請書を乱発するような、一部海外で見られる、あるいは過去に日本でも見られたようなことが実施されるとすれば、それは法の基本理念である性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念に反するものとなり、まさに百八十度真逆の効果をもたらすと考えております。

 例えば、毎年代々木公園で行っている東京レインボープライドには今年二十万人が来場し、一万人がパレードを歩きました。数十社の大手企業がブースを出し、各国大使館、NGOもブースを並べました。各主要政党の皆様からも、国会議員の先生方、御参加いただいております。こういった催しに安心できないということになると、差し止められるのか。そういうことが誤解であるというならば、基本計画、指針に書いていただきたい。そうでないと、混乱をもたらし、分断をもたらすのではないかと考えます。

 逆に、安心できない、不安だといって施策を停滞させてきたこれまでの事例を真摯に研究し、十二条が基本理念に反する使われ方をする条項とならないようにすることが肝要であり、法は基本理念に即して運用されるべきだということを繰り返し申し上げたいと思います。

○田村智子君 今の答弁も受けて、小倉大臣にもお聞きしたいんですね。
 昨日、LGBTQ+への差別・憎悪に抗議するフェミニストからの緊急声明が発せられまして、資料としても配付しております。賛同者は、今朝八時四十分現在で三百三十三人だということです。この中で、女性の安全がトランスジェンダーの権利擁護によって脅かされるかのような言説は、トランスジェンダーの生命や健康にとって極めて危険なものになりかねませんとして、既に殺害予告が発せられていたりとか、性別違和を抱える子供たちに居場所を提供する活動に困難が生じているという事例も書かれている。

 痴漢を含む性暴力は断じて許されない、トイレや公衆浴場は誰にとっても安全であるべきで、女性の安全が十分に守られていない現状があれば直ちに改善すべき、そんなことは大前提なんです。当たり前なんです。女性専用車両など女性の人権のために進めてきたことを後退させることもあり得ないんです。そのことを大前提にして、今の社会システムではこぼれ落ちてしまうマイノリティーがいることに光を当てようということなんですよ。

 トランスジェンダーの性被害が被害として認知されない、相談や支援の受皿もない。男性用、女性用で分かれているトイレの前で自分はどうしたらと日常的に苦悩する人がいる。学校の宿泊行事で入浴、部屋割りが苦痛で心がずたずたになる子供がいる。ここに気付く、考える、みんなの人権を守るためにどうするのか、連帯して取り組んで社会を更に前向きに変えようということだというふうに思うわけです。

 大臣、この十二条にある指針なんですけれども、やっぱり性的指向、性自認の観点から、人権が擁護されてこなかった人たちの人権を考える取組を進めるんだと。第三条の基本理念、これが十二条にある政府の指針が策定されるときの一番の土台であると、こう考えますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(小倉將信君) 現在審議中の法案の評価につきましては、議員立法でもございますし、まさに現在御審議中なので、政府としてはコメントは控えさせていただきたいと思います。

 ただ、政府の立場を説明をさせていただきます。
 政府としては、多様性が尊重され、性的マイノリティーの方もマジョリティーの方も含めた全ての人々がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる社会の実現に向けて、これまでも、様々な国民の声を受け止め、しっかりと取り組んできたところであります。

 具体的には、職場や学校等を始めとして、社会での理解増進に向けた啓発活動の充実、適切な相談対応や人権救済等、それぞれの分野を所管をする各府省庁において取り組んでまいりました。

 引き続き、こうした立場に立って関係府省庁が連携協力することにより、政府全体として更に取組を前に進めてまいりたいと考えております。

○田村智子君 この指針は、LGBTQ+の皆さんが抱えている問題、直面している差別、これを何よりも直視した指針でなければならないということを重ねて要求しておきます。

 もう一問、小倉大臣に聞いておきたいんですけれども、本当に女性スペースの問題では、私は、客観的な事実に基づかない、自民党の皆さんたちも必死に打ち消すような言説が流れているわけですよ。

 ですから、内閣府は今、エビデンス・ベースト・ポリシー・メーキング、EBPM、ここに力を入れていて、性的指向、性自認の多様性を認める、理解を増進する、不当な差別を許されない、こうした取組でもこのEBPMの徹底、根拠のない不安による国民の分断は排していく、こういう取組が重要だと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(小倉將信君) EBPMの推進は、政策の有効性を高め、国民の行政への信頼の確保に資するものでありまして、本法案における理解の増進に関する施策の推進等におきましても大事にしなければならない視点だと考えております。

 本法案が成立、施行された際には、法律の趣旨や御指摘の視点等も踏まえながら、先ほど申し上げた性的マイノリティーの方もマジョリティーの方も含めた全ての人々がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる社会、これを目指してしっかりと取組を進めていきたいと考えています。

○田村智子君 是非お願いしたいと思います。
 残る時間、神谷参考人にもう一度お聞きしていきたいと思います。

 法案第十条、知識の着実な普及等では、民間団体等の自発的な活動の促進という文言が修正によってわざわざ削除されました。何か極めてレアなといいますか、何か極端なケースのことを持ち出して、こういう団体もあるから削除したんだと言うんですけど、そんなこと言われちゃったら、障害者の問題とかあらゆる問題で、それはいろんな団体ありますよ、だから法案から削除するというのはどうしても理解は私はできない。元々、私たち国会議員だって、当事者団体の皆さん、当事者の皆さんから様々な事実を、差別の実態、皆さんの思い、そういうことをお聞きしなければ、私たちも、ほとんどがマジョリティーの側にいますからね、いろんな施策に取り組めないわけですよ。

 こういう当事者団体、支援団体、今民間団体がこのLGBTQ+に関わってどんな役割を果たしておられるのか、御紹介いただきたいと思います。

○参考人(神谷悠一君) お答え申し上げます。
 通称LGBT法連合会と当会申しますが、百二が加盟しておりますけれども、この加盟団体では、電話相談やSNS相談などを行っている団体もございます。家族に相談できない、友人に相談できない、そのような場合に電話やSNS相談は重要な役割を担っているというふうに承知をしております。また、居場所づくりなどを行ったり、行政の窓口に同行支援などを行う場合もございます。

 資料八ページを御覧ください。
 NPOの調査では、性的マイノリティー当事者が、障害に関する行政・福祉サービスの四六%、生活困窮に関する行政・福祉サービスの五二・四%が、必要なときも利用できない、サービスにアクセスできないというふうに回答してございます。背景には、その窓口等の対応の不安や困難があるというふうにされてございます。

 このような状況には、まだまだ支援が必要な状況でございます。これは孤独・孤立問題にも非常に親和的な問題であるというふうに考えておりまして、行政の支援が乏しい現状、あるいは行政からは当事者が見えにくい中で、当事者の支援団体がつなぎの役割を果たしているというふうに考えてございます。

 こうした支援者が重要であることは企業内、職場でも同じでございまして、企業内で当事者や支援グループ、アライなどと言われますが、アライグループがあるときに、そのメンバーの多くは企業側にカミングアウトができないということも、先ほど調査をお示ししましたが、多く、参加するところでございます。その際、当事者グループのリーダーや支援グループのリーダーが、カミングアウトが難しい社員と人事など会社側のつなぎ役として意向の聴取やニーズの把握などを行っている例が多数ございます。

 第十条の民間団体等の自発的な活動の促進という例示を削除したのは、こうした支援者の重要な役割を十分に認識しているとは言えず、あえて削除したことが行政にとってマイナスイメージとなることが懸念されるところでございます。削除された民間団体等の自発的な活動の促進は極めて重要であり、孤立した当事者の支援こそが今求められているというふうに考えてございます。

○田村智子君 私も、この困難リストを見ても、例えば介護を受ける、医療を受けるというときに、性転換している方が、それを言っていない方も含めてですけれども、本当に様々な困難抱えている。そういうことに国も自治体もノウハウがないじゃないですか。民間団体に本当に力を得て、協力を得ていかなかったら、一体どうやって理解増進や差別なくしていくということができるのかというふうに本当に指摘せざるを得ないと思うんです。

 じゃ、最後に、前向きなこともちょっとお聞きをしたいんですね。
 LGBTQ+への差別をなくすということは、私は、社会を豊かに発展させるし、日本の経済、ここも豊かに発展させていく、そういう道でもあるというふうに思います。

 超党派議連の役員会では、先ほどアメリカからの介入ということがいろいろ言われていましたけど、でも、アメリカ大使館通じて大統領特使の方とのやった懇談というのは非常に私は有意義でしたよ、他国の方の取組をいろいろ聞くことができて。そのときに、アメリカで同性婚の法制化への動きが前へ進む上では企業や経済界が果たした役割がとても大きかったんだという指摘があったんです。労働者が安全に安心して働いてこそ、パフォーマンスが上がる、企業の生産性も向上するんだと。これ、日本がこれから進む方向にとってもとても重要な指摘だったというふうに思います。

 ここを神谷参考人に、最後、三十九分まで時間がありますので、思いのたけをお話しいただけたらと思います。

○参考人(神谷悠一君) お答え申し上げます。
 この問題は、人権問題であることは言うまでもございませんが、経済発展、企業にとっても重要な問題であり、例えば、先日は、経団連の会長の御発言、経済同友会代表幹事の御発言、新経済連盟の声明などにそれは表れているというふうに考えてございます。国際労働機関、ILOは、この課題に取り組まないことが人材や技術の流出、教育のコストの無駄を企業に招くというふうに指摘をしてございます。

 一体なぜこうしたところに関係あるのかということでございますけれども、先ほども資料の二ページ目、三ページ目でお示ししましたとおり、カミングアウトできなければ、週末何していたと言われるだけでも、一生懸命言い換えて、どっちが男でどっちが女でと、どこに行って、どこに行ってというふうに言い換えて話さなくてはならず、このように言い換えに気を取られていたら、神経を使っていたら、仕事に集中できません。力を発揮することもできない。これは当たり前ではないかというふうに思います。

 国内でも、JILPT、労働政策研究・研修機構の調査では、LGBTの自殺、うつ対策や、これの一因となる職場のいじめ、ハラスメント対策を積極的に実施することで一千九百八十八億円から五千五百二十一億円の経済的損失を回避できるというふうに推計をしてございます。国内ではこのような調査研究は緒に就いたばかりでございますけれども、グーグルが心理的安全性が高いことが組織に良い効果をもたらすとの研究結果を発表しているところもこうした指摘に重なるところであるというふうに考えてございます。

 日本が議長国を務めたG7の環境大臣コミュニケでは、環境分野における性的マイノリティーへのエンパワーメントのための措置が気候変動や環境汚染への取組に寄与するのだというふうに明記をされておりますし、昨年の首脳コミュニケでは、外交安保の項目にも性的指向、性自認に関する記載がなされていたというふうに承知をしてございます。

 このように、政策横断的に影響があるということ、これは日本政府も認めているところであるというふうに考えておりますし、以上のことから分かりますとおり、性的マイノリティーの不利益や困難を解消することは社会的損失、経済損失を回避することとなり、安定的な社会保障費の確保にもつながるものというふうに考えます。よって、性的マイノリティーの不利益や困難を解消することが十二条の全ての国民の安心につながるということも指摘をしたい、このことを踏まえての基本計画や指針の策定も重ねて指摘をしたいという、いただきたいということも要望申し上げたいと思います。

○田村智子君 やっと当事者の皆さんの本当にリアルな実態が国会の中でも示されて、ここから私は審議が始まるものだと思います。

 私は衆議院での会議録も読みましたけれども、その衆議院の会議録の中で、今、神谷参考人からお話のあったようなLGBTQ+の皆さんが直面している問題、議論されていたでしょうか。その問題がきちんと示されて、みんなで考えようという議論だったでしょうか。女性トイレの問題ばっかりでしたよ。女性スペースの問題ばっかりでしたよ。もちろんその安全確保が大切だというのは、別の文脈の話なんですよ。

 性暴力被害が許されない、安全確保しなくちゃいけない。何で、このLGBTの皆さんの権利についての法案で、LGBTの皆さんが抱えているその困難の問題が議論されていないのか。とても法案を採決できるような現状にはないと思います。こんな状態で、本来、法案の審議さえできない、こういうことだったというふうに思います。
 改めて、丁寧な審議、本当の人権擁護何なのか、この審議を求めて、質問を終わります。

 


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