活動報告

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難病新法に政府答弁/小池・田村両氏の質問主意書に

質問第一七号

難病新法と診療報酬に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年十二月二十六日

田村 智子   
小池 晃   

       参議院議長 山崎 正昭 殿


   難病新法と診療報酬に関する質問主意書

 来年一月に、難病の患者に対する医療等に関する法律(以下「難病新法」という。)が施行され、難病新法に基づく新しい難病医療制度(以下「新難病医療制度」という。)がスタートする。新しい制度にふさわしい医療提供体制の整備や、そのための国の支援が求められる。しかし、新難病医療制度においても指定医療機関に対する特段の支援は行われず、現行制度と同様に医療機関に対しては診療報酬上の手当がなされているにすぎない。この点で医療体制構築のための医療機関への支援の拡充が必要である。
 一方、実際上難病の治療を行う医療機関に対して診療報酬上以外の手当がなされないもとで医療体制の整備を進めるためにも、一月の難病新法の施行に伴い新たに加わる疾病の治療に対して難病外来指導管理料など難病患者について規定している診療報酬上の手当が行われる必要がある。
 この立場から、以下質問する。

一 現在、特定疾患治療研究事業の対象となっている疾患(以下「特定疾患」という。)の患者について規定している主な診療報酬上の点数にはどのようなものがあるか。点数の名称と対象となっている疾患を明らかにされたい。

二 難病患者に対する医療は不採算のため、これまでも治療を受けられる医療機関が少ない、入院受入れ可能な病院が広がらないなどの問題が指摘されてきた。診療報酬上の手当が行われていない特定疾患以外の難病においては更に問題が深刻である。難病外来指導管理料など難病患者について規定している診療報酬上の点数について、新難病医療制度の対象となる疾患についても診療報酬上の手当を行うことは、難病の医療体制整備を進める上で重要なことと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 本年四月の診療報酬改定前まで、入院期間の計算の規定や療養病棟入院基本料に関する医療区分の定義などに特定疾患についての規定があり、この対象となる疾患は「「特定疾患治療研究事業について」(昭和四十八年四月十七日衛発第二四二号)の別紙の第三に掲げる疾患」とされていた。これらの規定は本年四月の診療報酬改定において「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)」(平成二十六年三月五日保医発〇三〇五第三号)の別添一の別紙四十四(以下「別紙四十四」という。)に掲げる疾患と変更されている。これはどのような理由によるものか、難病新法の施行に備えてのものか。難病新法に備えてのものであれば、難病新法が施行される来年一月には見直しが行われるのか。

四 1 六十五歳以上の者が、療養病床に入院したときの食費、居住費の自己負担額(健康保険法第八十五条の二第二項に規定されている入院時生活療養費の生活療養標準負担額のこと。以下「生活療養標準負担額」という。)について、医療区分二、三と分類される入院医療の必要性の高い患者は、一般病床に入院している患者並に減額されている。現在は、特定疾患の患者は医療区分二、三とされており、生活療養標準負担額は減額となっている。
 医療区分二、医療区分三の対象となる疾病は別紙四十四に掲げるものに限定されており、このままでは、難病新法が施行されても、新難病医療制度の対象になる特定疾患以外の疾患は生活療養標準負担額の減額の対象とはならない。そこで厚生労働省は、難病新法の施行に伴い厚生労働大臣告示を改正し、特定疾患以外の新難病医療制度の対象となる疾患についても、生活療養標準負担額の減額の対象とすることとした。このような制度改正を行う理由を示されたい。
2 難病新法施行時に新難病医療制度の対象になる特定疾患を除く疾患を、生活療養標準負担額の減額の対象に加えることによって国庫のほか、国民健康保険、健康保険、共済などの各保険者の財政に影響が及ぶと考えられるが、国庫、国民健康保険、協会けんぽ、健康保険組合、共済の別に財政影響の額はどの程度と見込んでいるのか。また、各保険者に財政に対する影響について説明を行っているのか。

五 1 特定疾患の患者を対象とした生活療養標準負担額の減額については、財政に対する影響があっても必要な対策を行い、難病新法の施行と同時に手当がされることとなる。同様に、難病新法の施行によって新難病医療制度の対象となる特定疾患を除く疾患についても、難病外来指導管理料など難病患者について規定している診療報酬上の点数の対象となるように、難病新法施行時に診療報酬改定を行うべきではないか。行わないとすれば、その理由は何か。見直しに伴う財政への影響が理由か。行わないとすれば、診療報酬改定をいつどのように行うのかという方針とともに示されたい。
2 今後、難病新法の対象疾患が拡大した場合には、拡大した時点で、それらの疾患についても、難病外来指導管理料など難病患者について規定している診療報酬上の点数の対象となるよう、診療報酬の改定を行うべきではないか。行わないとすれば、その理由及び診療報酬改定を、いつ、どのように行うのか。政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。


答弁書第一七号

内閣参質一八八第一七号
  平成二十七年一月九日

内閣総理大臣 安倍 晋三   

       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員田村智子君外一名提出難病新法と診療報酬に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員田村智子君外一名提出難病新法と診療報酬に関する質問に対する答弁書

一について

 診療報酬における御指摘の特定疾患(以下「特定疾患」という。)に罹患している者を対象に含む主なものについて、①項目及び②対象となる疾病は、以下のとおりである。
①難病外来指導管理料 ②ベーチェット病、多発性硬化症、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、スモン、再生不良性貧血、サルコイドーシス、筋萎縮性側索硬化症、強皮症、皮膚筋炎及び多発性筋炎、特発性血小板減少性紫斑病、結節性動脈周囲炎、潰瘍性大腸炎、大動脈炎症候群、ビュルガー病、天疱瘡、脊髄小脳変性症、クローン病、難治性の肝炎のうち劇症肝炎、悪性関節リウマチ、パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病)、アミロイドーシス、後縦靱帯骨化症、ハンチントン病、モヤモヤ病(ウィリス動脈輪閉塞症)、ウェゲナー肉芽腫症、特発性拡張型(うっ血型)心筋症、多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症及びシャイ・ドレーガー症候群)、表皮水疱症(接合部型及び栄養障害型)、膿疱性乾癬、広範脊柱管狭窄症、原発性胆汁性肝硬変、重症急性膵炎、特発性大腿骨頭壊死症、混合性結合組織病、原発性免疫不全症候群、特発性間質性肺炎、網膜色素変性症、プリオン病、肺動脈性肺高血圧症、神経線維腫症、亜急性硬化性全脳炎、バッド・キアリ(Budd-Chiari)症候群、慢性血栓塞栓性肺高血圧症、ライソゾーム病、副腎白質ジストロフィー、家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、肥大型心筋症、拘束型心筋症、ミトコンドリア病、リンパ脈管筋腫症(LAM)、重症多形滲出性紅斑(急性期)、黄色靱帯骨化症並びに間脳下垂体機能障害(PRL分泌異常症、ゴナドトロピン分泌異常症、ADH分泌異常症、下垂体性TSH分泌異常症、クッシング病、先端巨大症及び下垂体機能低下症)
①難病患者等入院診療加算 ②多発性硬化症、重症筋無力症、スモン、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病)、多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症及びシャイ・ドレーガー症候群)、プリオン病、亜急性硬化性全脳炎、ライソゾーム病、副腎白質ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(開胸心手術又は直腸悪性腫瘍手術の後に発症したものに限る。)、後天性免疫不全症候群(HIV感染を含む。)及び多剤耐性結核

二について

 難病の患者に対する医療に係る診療報酬の在り方については、難病の患者に対する医療等に関する法律(平成二十六年法律第五十号。以下「難病法」という。)第四条の規定に基づき定める基本方針の内容も踏まえ、疾病ごとの継続的な医学的管理の必要性等の観点から中央社会保険医療協議会において議論を行う必要があると考えている。

三について

 お尋ねの「対象となる疾患」の変更については、平成二十六年度の診療報酬改定時において、特定疾患治療研究事業(以下「研究事業」という。)の今後の取扱いを検討している段階であったため、研究事業の対象となっていた疾病を個別に示すこととしたものである。また、お尋ねの「対象となる疾患」の範囲については、疾病ごとの継続的な医学的管理の必要性等を踏まえ、中央社会保険医療協議会において議論を行う必要があると考えている。

四の1について

 難病法第五条第一項に規定する特定医療費の対象となる疾病は、平成二十七年一月一日前に研究事業の対象となっていた疾病と同様に、入院医療の必要性が高いと考えられることから、入院時生活療養費に係る生活療養標準負担額の減額の対象に加えたものである。

四の2について

 お尋ねの「国庫、国民健康保険、協会けんぽ、健康保険組合、共済の別」の財政影響の額については、各制度別の数値を把握しておらず、試算を行っていないため、お答えすることは困難である。なお、医療保険給付費に対する財政影響は極めて小さいものと推計される。また、各保険者に対しては、「「健康保険法施行規則第六十二条の三第四号の規定に基づき厚生労働大臣が定める者」の一部改正について」(平成二十六年十二月十九日付け保発一二一九第十七号厚生労働省保険局長通知)等により制度改正の内容を説明している。

五について

 診療報酬においては、各々の指導管理、処置等の項目ごとに評価の対象となる者を設定しており、継続的な医学的管理の必要性が高い等の理由から、特定疾患に罹患している者を対象に含む項目を設けているところである。この対象となる疾病の範囲については、疾病ごとの継続的な医学的管理の必要性等を踏まえ、中央社会保険医療協議会において議論を行う必要があると考えている。