高速道路の料金徴収期間を2115年まで先延ばしし、新たな高速道路建設を推進する道路整備特別措置法改定案について23日、参院国土交通委員会で参考人質疑があり、「料金徴収を延長する根拠が不明で、『立法事実』が不明だ」と参考人が指摘しました。
3人の参考人のうち、長谷川茂雄さん(道路住民運動全国連絡会事務局長)は「交通需要などの推計は長いものでも2070年までとなっており、2100年代の需要を見通すことは不確実だ。法案が2115年までの枠組みを決めたのは理解できない」とのべました。
また長谷川さんは、「法案には重要な欠陥がある。維持補修費の見通しや高速料金の徴収推移、新規事業の費用負担など全く分からない」と指摘しました。
日本共産党の田村智子議員は、「下関北九州道路や東京外環道など、凍結されていた計画が急に復活することもある。各事業を全国の道路計画にどう位置づけるのか、精査する仕組みが必要だ」と指摘しました。
参考人の根本敏則・敬愛大学教授は、2115年まで年800億円かかるとの試算を示し、「将来の更新投資にいくら必要か大まかに見通すことが必要だ」と指摘。「新規建設の精査は、『費用対効果』の原則で決めればいい」と答えました。
2兆3575億円と当初事業費から2倍化した東京外環道について、長谷川さんは「費用対効果が1を切る(中止か見直し対象)ことは確実だが、増え続ける負担をどこが負担するか、国はあいまいだ」と指摘しました。
2023年5月24日(水) しんぶん赤旗
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。今日はありがとうございます。
まず、ちょっと根本参考人にいただいた資料で御説明いただきたいことがありまして、ある意味、根本参考人の御説明が国交省が説明していない部分をかなり詳しく説明していただいたなというふうに思いながら陳述を聞いておりました。
これ、後ろから二枚目の資料でしょうか、これ、二〇三五年度から二一一五年度まで更新工事で年八百億円を見込んだというシミュレーションをされています。それで、更新については、国交省の答弁は、すぐに必要となるのが一・五兆円分と、これに加えて六・八兆円分が今後蓋然性が高いと。これ、合わせると八・三兆円なんですよ。すると、この八・三兆円というのを一つの根拠として年八百億というようにシミュレーションされたんでしょうか。このシミュレーションの基が何なのかを御説明いただけないかなと。
○参考人(根本敏則君) 一番分かりやすく言えば、これだけの資産額があって、その資産が耐用年数が何年だろうかと、橋とかだったら百年ぐらいの耐用年数で架け替えなきゃいけないでしょうと。そうすると、五十年前に造った橋は五十年後に架け替えるような形で、そういうような形で更新投資を推計してみたら大体八百億円ぐらいではないかというふうな、そういう何というか推計なんですね。
国交省さんのやっているやつは、多分、実際のここの箇所、ここの箇所でこういうふうな更新工事が必要でこれだけ掛かるというふうなのが、何ですかね、ちゃんと分からないとどういうふうに借金していいか分からないと、そんな無責任なことはできないと、ある意味真面目にやっているんだと思うんですね。だから、将来の更新投資はこれぐらいだろうということを言えない。
僕はむしろ、でも、そういうことをちゃんと言わないと、ある程度精度は落ちても、将来これぐらいの更新投資があるんではないだろうかというようなことを、まあ誤解があるかもしれませんが、大ざっぱに見通すということもやっぱり大事な仕事じゃないかと。きちっきちっとその財源調達計画を作る、返済計画を作ると、きちっとやるのも大事なんだけど、大まかな予想をするというのも大事じゃないかなと思う。我々のやつはまさに大まかなやつなんですね。だから、現場から上がってきているやつじゃないんですね。
○田村智子君 やっぱり、笹子トンネル事故を受けて、根本参考人もおっしゃるとおり、私は、この更新事業についてどれぐらいをどう見込んでいるのかというのを出さないと、今後の道路のお金に一体どれだけ掛かるのか、それが料金徴収との関係でどうなのかというのは検証できないんじゃないかというふうに思いますので、そういうシミュレーションが皆さんのところでもなかなか困難な状況だということが分かりましたので、これ、後の委員会でただしていきたいというふうに思います。
次に、長谷川参考人にお聞きをしたいんですけれども、本当に高速道路事業は、言わば今のスキームというのは、機構から投資を受けて造ります、それを料金で償還していきますというふうに言いながら、御指摘あったとおり、国直轄事業という言わば抜け道、薄皮まんじゅうというふうにおっしゃいましたけれども、これを使ってどんどん道路を造ることができますよと。言わば現在のスキームというのが矛盾というか破綻というか、そういう状況にも陥っているんじゃないかというふうにも思います。
じゃ、そういうやり方も含めて、どういうふうに道路建設を今後も続けていくのかということを、更新とそれが両立できるのかということも含めて、大規模な検証ということをやっていかなければならないんじゃないかという問題意識を持っています。
その道路を建設していく上で、今まではその事業の評価としてBバイC、費用便益比、これというのが言わば大きな指標であったというふうに思います。お話あったとおり、あの二〇二〇年七月の事業再評価時点で一・〇一と、その後に調布の陥没事故も起きていると。
この国土交通委員会で私も、じゃ、一を切ってもいいのかという質問をしましたら、国交省はこれ答えないんですね。一を切っても事業としてこれは進めていいものなのかどうかを答えない。
このことについて、長谷川参考人の御意見を伺いたいと思います。
○参考人(長谷川茂雄君) やはり一を切れば、それは私は見直しや中止の対象にすべきであると。それは、要はコストと便益。メリットは、造った後のメリットですか、プラスアルファの経済的な効果というのを考えて、費用の方が高いのは、通常、民間会社の事業であればそういう事業は始めないわけですから、百億掛けても十億ぐらいしか利益がないような事業、普通の民間会社では事業としては採用されないわけですから、それは国が行う事業であってもそれはやっぱり同じような視点で検証すべきであろうというふうに思います。
あと、最初の方であった、どうやって必要な道路を造るかということについて言えば、例えば国がきちんと説明すれば、例えば国と高速道路会社が半分ずつ負担して、どうしてもこの地域の維持にとってこの道路は必要ですというふうにきちんと説明をすれば、別に税金を使うことに対して全部が反対するということにはならぬというふうに思うんですね。先ほど言いましたように、物流をきちんと支えている一部になっている道路もあるわけですから、そういうことでいうと、地方の皆さんの生活を支えるためにはこの路線は必要ですということを丁寧にきちんと情報も出して説明すれば、税金と高速道路管理会社が半分ずつみたいなことも別に、当然それはあり得るのではないかというふうに思っております。
以上です。
○田村智子君 その造る方なんですけれども、私が危惧しているのは、更新は、あのトンネル事故を見ても、私最優先にやっていかなければならない事業だというふうに思います。また、暫定二車線のところも、本当に危ないところ、これは交通事故を防ぐためには進めなければならない事業だというふうに思います。
ただ、それが、どこが必要性が高いのかということが全国的なこの道路計画として示されないわけなんですよね。全国的に示されたものはあの四全総が最後じゃないかというふうに思っていまして、高規格道路が一万四千キロ、地域高規格道路等々の建設について、じゃ、これ四全総のとおりに造るんですかというふうに聞いても、これ、国交省は、国交大臣は、今も四全総が生きていて、それを造ることが国としての事業計画なんですとは言わないわけですね。個々に上がってきた事業について必要性を評価しますという言い方になってしまう。
私は、これは本当に、例えばこの間いろいろ問題にしてきた下関北九州道路というのは、かなり政治力もあって事業が復活したりということがあるんじゃないのかと。あるいは、東京外環なんかも、もう本当に凍結してもう造られないと思っていた道路がいきなり大深度地下だったらということで、これも大臣が視察をすることから始まって急に浮上するというようなことで、そうすると、これらの事業が、全国的な道路事業の計画との関係とか本当の必要性がどうなのかとか、そういう精査する仕組みというのが本来求められているんじゃないのかというふうに思いますが、これ、三人の参考人の方にお聞きをしたいと思います。順番に。
○参考人(根本敏則君) 更新工事がまず優先されるべきでしょうというのは、それは私も賛成です。
あと、暫定二車線区間の四車線化に関しては、やはりいろいろな箇所があって、全国要望もいろいろ出てきていますから、公平公正に選んでいく必要があると思うんですけれども、国土幹線道路部会というところに私所属していますけれども、そこで評価項目をたくさん立てて、BバイCもあるんですけれど、それ以外に、交通事故が多いとか、それから災害時の代替路になるとか、いろいろな指標で総合的に評価して、千六百キロある、千四百キロ残っているうちの優先的に整備する区間というのをみんなで相談して決めるような手続を取っています。
それ以外でほかにも新規着手すべきところがあるじゃないか、あるいは自動運転に対応した進化のための投資があるじゃないか、これはそれやっぱり大事だと思いますけれども、それはそれでやはりみんなで議論して、多分国会の先生方も加わって議論していくということでよろしいんじゃないでしょうか。
○参考人(近藤宙時君) やはりメンテナンス、安全な交通を確保する高速道路という点でメンテナンス費用は絶対に必要だというふうに思っております。これについては、かなり詳しく幾ら掛かるかというのは発表していただけてもいますし、これからも発表していただけるものであると、既存の施設でございますので大体の状況は分かるものじゃないかなと。
それから、二車線から四車線というような拡充につきましては、渋滞度合い、それから先ほどお話にありましたような緊急時の避難場というような総合的なもの、それからGDPが影響とかそういったものを総合的に勘案されて、最も必要というような係数を出された上で優先的に必要なものからやっていくと。
新規につきましては、もう本当にGDPとか住民の利便性、そういったものについてどれほど影響があるか、また地元の求めている度合いについて相当に勘案し、これらの数値も発表した上でやられるのが妥当なのではないかなというふうに思っております。
○参考人(長谷川茂雄君) 私も同じような考え方で、やはり既に供用されているネットワークというのは国民生活に貢献している社会インフラということでありますので、万が一の事故などが起きないようにきちんと維持補修というのを最優先でやっていくべきだろうというふうに思います。
暫定二車線の四車線化の部分とあと新規事業の部分については私は考え方としては同じような捉え方をしていまして、きちんとした客観的な評価がされて四車線化にしなければならない、あるいは新規にこの路線を造らなければならないというきちんと指標が示されて根拠が示されるのであればそれは必要なんだろうと思いますけれども、単純に、暫定二車線になっちゃっているので、取りあえず計画は四車線なので、計画しているから四車線に単純にするというようなことでは私はちょっとおかしいのではないかと。それはもう既に暫定二車線として一定程度供用されていて使われている実績がありますので、二車線では足りないという明らかな要因とか根拠がなければ別に四車線化する必要はないんではないかと、そういうふうに思っていますので、これは新設路線と同じですね、どうしてもこの路線が必要だというのであれば、客観的な事業評価というのをきちんと大臣がおっしゃったような形で根拠も示して、ああ、それであれば造った方がいいねということであれば、きちんと説明した上で造ればよろしいのではないかというふうに考えております。
ありがとうございました。
○田村智子君 今ので、皆さん、その優先順位があるということのお話だったんですけれど、問題はその優先順位というのが見極められる仕組みがあるんだろうかということなんですね。国会の審議にはほとんどかからないわけです。今回も、こういうスキームで示されるとかからなくなりますね。こういうスキームで造れますよと、民間の中で投資が行われる、償還計画こうやる、で、一つ一つの事業の審査についてはそれぞれの審査機関でやると。
そうすると、優先順位をつくるその仕組みというものをどういうふうにつくったらいいのか。これ、ちょっと御所見のある参考人の方いらっしゃいましたら、お手を挙げてお答えいただけないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○委員長(蓮舫君) いかがでしょうか。
根本参考人。
○参考人(根本敏則君) 新規に着手すべき路線というふうな話でいえば、ある意味、BバイCという原則があってそれで決めていくということでいいと思うんですけれども、例えばさっき議論になった自動運転トラックのための投資をどうするんだと、全く質の異なる道路投資が必要になってくるという、この政策判断はある意味今ないわけですよ。どういうふうにそれを、それが大事だというふうに思うのか、思わない、それはいろいろ利害関係者によってまた違うでしょうし。そういうふうなものはやっぱり国会のマターになってくるんじゃないでしょうか。
以上です。
○田村智子君 ありがとうございました。
終わります。