日本共産党の田村智子副委員長は30日のNHK憲法記念日特集の討論番組に出演し、自民、公明、維新、国民各党代表が改憲発言を繰り返す中で、岸田政権が狙う敵基地攻撃能力の保有と大軍拡は、憲法9条を持つ日本では許されないと批判し、憲法を生かした外交による平和構築を主張しました。
田村氏は憲法問題で議論すべきことは、岸田政権による憲法違反だと批判しました。敵基地攻撃能力の保有と大軍拡は、「専守防衛」の大原則を投げ捨てるものであり、「他国に攻撃的脅威を与える兵器の保有は憲法の趣旨ではない」という歴代自民党政権が示してきた憲法解釈を「百八十度変える」と強調。さらに、集団的自衛権の行使を可能とする安保法制のもとで、アメリカのミサイル戦略に組み込まれ、日本が攻撃を受けていなくても、在日米軍の軍事行動によって、自衛隊の敵基地攻撃が可能になり、相手からの猛反撃で日本に戦火がおよぶ危険性を指摘しました。田村氏は「戦争をしない、武力で相手を脅さないという日本国憲法9条に背くことは明らかだ。徹底的にたださなければならない」と強調しました。
ロシアの侵略を受けているウクライナへの支援をめぐり、自民、公明、維新、国民各党が防衛装備移転三原則の運用指針見直しによる武器輸出の拡大を主張したことに対して、田村氏は「ウクライナの侵略戦争に乗じているとしか言いようがない」と批判しました。今求められているのは、国連憲章違反を許すなでの国際社会の一致結束、連帯だと述べ、「同盟国や同志国に、規制を緩和して殺傷能力のある武器でも移転輸出ができるようにするという議論は、国際社会の一致、結束にも反する」と厳しく批判しました。田村氏は、日本は人道支援や復興インフラ整備への支援を行うべきだと主張しました。
憲法9条に対する考え方を聞かれた田村氏は、9条の生命力を生かして国際協調をつくっていくことが、「現実的な戦争の心配のない日本とアジアをつくる道だ」と強調。主要7カ国(G7)の外相会合の宣言でも、東南アジア諸国連合(ASEAN)インド太平洋構想(AOIP)への協力が明記されたことをあげ、「考え方の違い、国家体制の違いで分断排除しないということだ」「(日本は)もめごとを決して武力衝突にしない、戦争にしないという包摂的な平和の枠組みをアジア全体でどう作るかに尽力すべきだ」と主張しました。
NHK「憲法記念日特集」/9条の生命力で国際協調を/田村副委員長の発言
違反をただす
憲法議論の焦点について問われた田村氏は、「いま必要なことは岸田政権による憲法9条違反を国会で徹底的にただすことだ」と指摘し、敵基地攻撃能力の保有は歴代政権が国会で示してきた憲法解釈を百八十度変えるものだと批判。岸田大軍拡は「戦争をしない、武力で相手を脅さないという憲法9条に背くことは明らかだ」と強調しました。
ロシアによるウクライナ侵略に関わり、支援のあり方が話題に。政府が武器輸出のルールを定めた「防衛装備移転三原則」の運用指針見直しを表明したことについて、日本維新の会の馬場伸幸代表は、「ミサイルや無人機を迎撃するような『防御的な武器』については認めていくべきだ」などと前のめりの姿勢を示しました。公明党の北側一雄副代表も「地雷処理機などの輸出は認めるよう緩和してもいいのではないか」と述べました。
田村氏は、「ウクライナ侵略をめぐっては、武力による領土拡大という国連憲章違反を許さない国際社会の一致結束、連帯が求められている」と指摘。「防衛装備移転三原則」の運用指針見直しは、同盟国・同志国に対する規制を緩和し、殺傷能力のある武器の移転・輸出を狙うものであり、「国際社会の一致結束に反する。国際平和に対する日本の責務を投げ出す議論だ」と批判しました。
田村氏は、「憲法9条の生命力で国際協調をつくる―これこそ戦争の心配がない日本とアジアをつくるための道だ」と主張。主要7カ国(G7)外相会合で、東南アジア諸国連合(ASEAN)が進める「ASEANインド太平洋構想」(AOIP)にも触れたことや、2008年の日中首脳会談の共同声明で「双方は互いに脅威とならない」とする合意があることなどを示し、「これを足掛かりにして、対話によって包摂的な平和の枠組みをアジア全体でつくることに尽力すべきだ」と述べました。
核兵器廃絶を
G7広島サミット開催に関わって、核兵器廃絶に向けた考えを問われた国民民主党の玉木雄一郎代表は、核不拡散条約(NPT)の第6条の核軍縮義務の重要性を確認すべきだと述べました。自民党の新藤義孝衆院憲法審査会筆頭幹事は、「1カ国も核保有国がない」などとして核兵器禁止条約への参加に背を向けました。
田村氏は、「核兵器禁止条約とNPTは決して矛盾していない」と指摘。昨年8月のNPT再検討会議の最終文書案では、(1)「核兵器の使用がもたらす壊滅的な人道的結末への深い懸念」(2)NPT第6条のもとで合意されている「核兵器の全廃を達成するという核兵器国の明確な約束の再確認」(3)核禁条約の発効と第1回締約国会議の開催を「認識」する―とした3点が、述べられているとして、「G7広島サミットでは核兵器禁止条約への前向きな姿勢をどう盛り込むかが問われる。また、『抑止力』論をどうやって乗り越えていくかを協議していかなければならない」と主張しました。
立憲民主党の中川正春憲法調査会長は、「唯一の被爆国として核の廃絶に向けて積極的にリードしていく役割を果たしていくべきだ」と述べました。
個人の尊重へ
個人の尊重の問題をめぐり、同性婚や選択的夫婦別姓の実現について問われた田村氏は、「現に同性のカップルによる家族や別姓夫婦は存在する。ところが法律上は家族として認められない。憲法13条(個人の尊重)や14条(法の下の平等)が侵されている」と指摘。LGBTQに対する差別を禁止する法案の成立が阻まれるなかで、政治家や政府中枢から差別発言が繰り返されてきた経過があると批判し、「差別解消法案は直ちに国会の中で審議されるべきだ」と強調しました。
れいわ新選組の山本太郎代表は、「全ての愛し合う者たちが不利益を被らないように、法の下で守られるように政治が動く時だ」と述べました。
最後に田村氏は、「いま国会では数々の憲法違反ともいうべき法案が次々に議論されている」と指摘。5年間で43兆円の大軍拡のための「軍拡財源確保法案」は、社会保障費の削減、消費税の大増税につながる危険性があると批判し、徹底的な議論を求めました。
2023年5月1日(月) しんぶん赤旗