赤字ローカル線の在り方について自治体と事業者が協議する「再構築協議会」の設置などを内容とする地域公共交通活性化・再生法改定案が20日の参院国土交通委員会で自民、公明、立民、維新、国民の賛成多数で可決しました。日本共産党とれいわは反対しました。共産党の田村智子議員は質疑で、貨物輸送でのローカル鉄道活用の可能性について国が戦略を持つべきだと主張しました。
田村氏は、北海道JA芽室の農産物出荷先が関東から九州まで広範囲に及んでいると紹介。「貨物の全国ネットワークなしに農産物輸送はありえない」と指摘しました。
北海道新幹線延伸(新函館北斗―札幌間)後、並行在来線の函館線はJRから切り離され、路線維持のためには自治体負担が必要です。田村氏は、同線が廃線となれば、北海道の農産物が運べなくなると指摘。「農林漁業の振興を考えれば、鉄道貨物の再構築に国が乗り出すべきだ」と迫りました。
国交省の上原淳鉄道局長は、函館線の貨物路線維持について「道庁と協議を開始している」と述べる一方、貨物路線拡充には触れませんでした。
田村氏は、再構築協議会が「ファクト(事実)とデータに基づき議論を進める」としているが、中国地方の芸備線についてJR西日本は利用者の属性など詳細なデータを地元の広島県、岡山県に開示していないと指摘し、「協議会では自治体や住民が求めるデータは開示されるのか」と質問。上原局長は「必要なデータ開示は求める」と答えました。
鉄道網 切り刻むもの/改定地域公共交通法 田村氏、修正案
赤字ローカル鉄道の在り方を話し合う「再構築協議会」の設置などを盛り込んだ改定地域公共交通活性化・再生法が21日、参院本会議で自民、公明、立民、維新、国民などの賛成で可決し成立しました。日本共産党とれいわは反対しました。
同改定法は、各地域でのローカル線の存廃について国が主導する「再構築協議会」を設置し、地元自治体と事業者が話し合う仕組みを創設。「鉄道維持」「バス等への転換」などで両者が合意した場合「再構築方針」をまとめます。鉄道やタクシーの運賃設定を関係者の合意に基づく届け出だけで認める協議運賃制度も入っています。
日本共産党の田村智子議員は20日の参院国土交通委員会で、同改定案の修正案を提出(れいわ賛成も委員会で否決)。修正案は▽「再構築方針」を、鉄道輸送の維持・高度化に特化させる▽JRローカル線を国が責任をもって維持存続させる義務をもつことを明確にする▽鉄道事業廃止を国への「届出制」から「許可制」に戻す▽協議運賃制度の規定削除―が内容です。
趣旨説明への質疑で田村氏は「不採算路線も含め事業全体で採算を確保する国鉄分割・民営化時の制度設計が維持できないならローカル鉄道の廃線ではなくJRの在り方そのものを根本から問うべきだ」と主張。「(政府法案は)鉄道が有している公共性、広域性、ネットワーク性の視点がなく、狭い視野で廃線に導き、鉄道網を切り刻んでしまう」と批判しました。
2023年4月22日(土) しんぶん赤旗ホームページ
○田村智子君 私は、日本共産党を代表し、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、修正の動議を提出いたします。その内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。
修正案の趣旨及び概要について御説明申し上げます。
ローカル鉄道は、沿線住民の生活に必要な移動手段であるとともに、まちづくり、観光や産業振興など地域経済社会再生の基盤です。また、鉄道は、他の輸送機関に比してCO2排出量が少なく、脱炭素社会を目指すために失ってはならない地域の共有財産です。
ローカル鉄道が今日の危機的状況にあるのは、自然現象ではありません。地方の人口減少を招いた東京一極集中の推進、マイカーへの転換を加速した高速道路整備の促進など、国の政策がもたらした結果にほかなりません。一方で、地方の移動手段としてのローカル鉄道の役割は縮小させられてきました。
国鉄分割・民営化から三十六年が経過しました。不採算路線も含めて事業全体で採算を確保するとの当時の制度設計が維持できないというのであれば、ローカル鉄道の廃線ではなく、JRの在り方そのものを根本から問うべきです。
国鉄分割・民営化を反省し、ローカル鉄道を維持、活性化させることこそ、国が取るべき責任です。
政府案は、大量輸送機関としての特性を発揮できていない路線、区間を対象に、鉄道事業者等の要請に基づき、国土交通大臣が再構築協議会を組織し、協議の結論として、ローカル鉄道の廃線、バス等への転換を選ぶことを認める内容です。ここには、鉄道が有している公共性、広域性、ネットワーク性の視点がなく、狭い視野で廃線に導き、鉄道網を切り刻んでしまうものです。
今、国がやるべきは、自ら組織する再構築協議会において、ローカル鉄道を廃線の危機から脱し、維持、活性化させるための協議を行い、方策を打ち出すことです。
同時に、これまでの鉄道事業者任せ、地方自治体任せを改め、国自身がインフラ部分を保有するなど積極的に乗り出し、関与し、国の責任を果たすことです。このようなことから、修正案を提出することとした次第です。
次に、修正案の主な内容について説明します。
第一に、再構築協議会が作成する再構築方針の交通手段再構築は、鉄道輸送の維持、高度化に特化させることとして、国が責任を持って鉄道ネットワークを維持、活性化させるため、ローカル鉄道の利用促進、利用者の利便確保、輸送サービスの向上など、検討、協議を優先することとします。
第二に、JR会社のローカル鉄道に関する施策については、国が責任を持って維持存続させる義務を有することを明確にすることとします。
第三に、鉄道事業の廃止に係る手続を国土交通大臣への届出制から許可制に戻すこととします。
第四に、協議運賃制度に係る規定を削除することとします。
以上が、本修正案の趣旨及び主な内容であります。
委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。
○田村智子君 私は、日本共産党を代表して、地域公共交通活性化再生法等の一部改正案に反対、修正案に賛成の討論を行います。
鉄道は公益事業であり、公共の財産です。とりわけJRは、全国ネットワークの鉄道網であり、ローカル鉄道を沿線地域だけの問題として捉えることは国策の誤りだと言わざるを得ません。
欧州では、気候危機対策として鉄道へのモーダルシフトの戦略を立て、貨物輸送を含め、各国内だけでなく国境を越えた鉄道インフラ整備も進めています。また、公益事業として、運賃を安く抑え、主に国による公的負担を当然の制度としています。ところが、日本は、国鉄分割・民営化後、整備新幹線の並行在来線をJRから切り離し、存続には自治体に重い財政負担を求め、ローカル線の災害復旧さえ国の責任を果たさず、廃線も届出制へと規制緩和し、公共の財産である鉄道網を著しく衰退させてしまいました。
地域鉄道の再構築には、EUでは当然の公費負担制度の創設、ローカル線の貨物輸送での活用など、国の戦略こそ求められます。ところが、本法案は、国が果たすべき責任には一切手を着けず、ローカル線の赤字区間について、再構築協議会で事業者と自治体等の協議、バス等への転換を含む再構築方針を作成することを求めています。赤字ローカル線の廃止を望むJR旅客各社の要請により再構築協議会が設置されることは明らかです。既に北海道を始め、ローカル線の廃止、バス転換が行われてきました。
法案審議では、バス転換によって利便性が向上したかのような答弁がありましたが、国交省は廃線が地域にもたらした中長期の影響について調査も検証もしていないことが明らかとなりました。鉄道や駅を廃止して活性化した地域はありません。バス等への転換ではなく、ローカル線を含む鉄道網の活用、利便性向上への事業者の努力がなされるよう、国が責任ある方策を示し、自治体、鉄道事業者との協議を進めることが必要です。
また、協議運賃制度の創設は、ローカル鉄道の大幅な運賃値上げをもたらすものです。鉄道運賃は認可制で、上限運賃も設定されています。しかし、協議運賃は、自治体、鉄道事業者、地方運輸局長との協議によって定め、大臣の認可も必要とせず、民間運賃よりも高い運賃を可能とし、利便性を著しく阻害するものです。
タクシーの協議運賃は下限割れが起こり得ると審議の中で明らかになりました。規制緩和による価格競争が乗客の安全や労働者の賃金に深刻な影響を与えた反省こそ必要です。
我が党の修正案は、以上の問題点を法案から削除し、鉄道事業の廃止手続を届出制から認可制に戻すなど、国の責任の下で鉄道網の活用による地域の活性化に資するものです。
さらに、JRの国有民営化など、鉄道政策の抜本的な転換を求め、討論を終わります。