活動報告

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鉄路復活を独に学べ/参考人が田村智子氏に説明/参院国交委

 参院国土交通委員会は18日、赤字ローカル線の在り方を協議する再構築協議会の設置等を内容とする地域公共交通活性化・再生法改定案の参考人質疑を開きました。桜井徹日大名誉教授は、鉄道を安易に廃止しバスに転換せず、総合的なインフラ投資計画を持ち廃止路線を復活させたドイツの経験に学ぶべきだと説きました。

 桜井氏は「ローカル線の問題はローカルだけの問題ではない」「鉄道事業は公益事業だと理解する必要がある」と指摘。鉄道事業者と自治体だけの問題とせず、「国が全面に出て、全国的視点が必要だ」と述べ、自治体とJRなど事業者からなる同協議会の在り方に疑問を呈しました。

 桜井氏は、鉄道をバス路線に転換しても、多くの実例が示すように利用者がさらに減少し、「うまくはいかない」と断言。「ドイツは鉄道を公共サービスととらえ、(運営は事業者、インフラは国が担う)上下分離を行っており、廃止路線も復活している」と語りました。

 日本共産党の田村智子議員は、鉄路廃止が相次ぐ北海道を例に、「鉄道ネットワークを旅客だけでなく貨物でも位置付けるべきではないか」と質問。桜井氏は「JR北海道は、自身の収支の枠のなかで取り組み、(JR)貨物と共同で北海道の再生をどうするか話し合わない」と批判。ドイツは費用対便益を分析し、鉄道再開で生まれる便益を証明し、廃止路線を再生させてネットワークをつないでいると紹介しました。


2023年4月20日(木) しんぶん赤旗ホームページ

 

 

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 今日は本当にありがとうございます。

 本当に、皆さんの意見を聞いて、ローカル鉄道を本当にまちづくりや地域の活性化というところに生かしていこうということで、自治体も事業者も住民も利用者も、本当みんなで力を合わせるということがとても大事だということを本当に実感をいたしました。

 その議論の前提として、桜井参考人にお聞きしたいんですけれども、やっぱり協議会の出口がバス路線への転換ということになるとネットワークが失われるということも指摘をされて、私、ここの議論が全く抜け落ちているんじゃなかろうかというふうに思うんです。

 今、JRがとりわけ全国に持っているものは鉄道網なんですよね。その鉄道網であって、ローカル線のこの区間が赤字だからとか、このローカル線が赤字だからということで、ぶつ切りとか、そのネットワークの網が破れていく、なくなっていくということは、非常に私は、国としてそれをどう考えるのかということをきちんと議論しなければならないと思っています。

 そこで、そのネットワークとしての鉄道の意義、役割ということについて少しお話を伺いたいと思うんですね。
 一つ、その中で、整備新幹線を造ったときに並行在来線はもう第三セクターにしていって、まさに、言わばぶつ切りにされていってしまったわけですよね。しかし、その並行在来線というのは、人の移動だけでなくて、貨物も含めて非常に利用しなければならない線であったのではないだろうかと。

 そういう大量輸送というときに、旅客だけではなくて、貨物を含めてこのネットワークということをもっともっと考えて活用していくということが必要ではないかという問題意識を持っているんですけれども、いかがでしょうか。

○参考人(桜井徹君) 今、貨物の話が出ました。
 ネットワークを一番発揮できるのは貨物です。人間の場合は行ったら帰ってくるので往復交通が成り立つんですけど、貨物は一方的交通でなかなか難しいわけです。そこで、ネットワークを密にしてこの貨物の営業政策を考える必要があります。

 ネットワークの外部性というのがありまして、Sイコール二分のn括弧nマイナス一ということなんですけど、要するに、放射線状の対角線ですけれども、多角形になればなるほど放射線状の線が密になるという非常に単純なものですけど、そういうのをネットワークの外部性といいます。ネットワークが粗雑になればなるほど、密じゃなくなればなくなるほど外部性が失われていくわけです。

 また、最後に、一つ、一つ、あるいは一つというように、もう最後は新幹線しか、整備新幹線しか残らないというようになってくるわけでありまして、やはり、この特に貨物輸送、気候変動対策でも貨物のモーダルシフトがどこでも言われていますけれども、日本はやはりJR貨物が悲惨な状況で、モーダルシフトに十分対応できないような状況です。ましてや、今回、北海道で長万部などで貨物が利用できない、タマネギ列車が走れないというような状況が生まれたら非常に困るわけですね。

 また、第三セクターも貨物のネットワークとして今重要になってきているわけで、そこを自治体が所有する第三セクターだけで十分に輸送力を賄えるかどうかという問題があるので、そういう意味でも、ネットワークは全国的なネットワークと地域的なネットワークをプラスして、相乗効果でネットワークの外部性をより高めていってもらいたいなと思っております。
 以上です。

○田村智子君 ありがとうございます。
 桜井参考人にもう一問なんですけれども、やっぱり今言われた北海道は本当にネットワークがずたずたにされてしまっていて、本来その貨物は、農林漁業の振興で、いかにやっぱり全国結んで産業を活性化していくかということにもつながっていくのに、これほど北海道のネットワークがずたずたにされた状態で果たしてどうなっていくんだろうという危機感を持っています。

 この間のJRは、災害などがあると復旧せずに廃線ということも繰り返してきました。それを許さなかったのが只見線で、本当に福島の会津地域の皆さんが、鉄道が通っていない自治体も含めて、会津全体の問題だとしてこの廃線を許さなかったというのは非常に重要な取組だったと思うんですね。

 いただいた資料の中で、ドイツの取組の中で、近年廃止した線路を復活させているということが資料として挙げられています。このところをちょっとドイツの鉄道改革のこととしてもう少し御説明をいただきたいのと、その取組から、私たちも、日本は国有、民営などのやり方でやっぱり鉄道網を維持すべきだというふうに我が党考えているんですけれども、どういうふうに日本の鉄道の改革がなされるか、御意見を伺いたいと思います。

○参考人(桜井徹君) その前に、今、北海道の例が出ましたけども、やっぱり北海道の問題を考えたときに、私は貨物と一緒に考えるべきだと思っていたわけです。それをしないで、JR北海道は自分の利益でと、これは何ですか、自分の枠の中で閉じこもってやってしまっている。JR北海道とJR貨物が共同して北海道の産業をこういうように再生するんだというような話合いをしないで、JR北海道が収支の枠内でどうするんだということで、赤線区、黄色線区とか、信号みたいなことやってしまっているわけで、そこに大きな問題がある。それが日本の国鉄分割・民営化の分割の弊害なんですね。別々の会社が自分の利益をまず考えてということです。

 そこで、そういうようなネットワークを更に深めるために、ドイツでは、小さい路線で、廃止された路線でここをこういうように活性化したら、アンシュルースというんですけど、つなぐことができるということで、そういう効果も狙って、再活性化、レアクティビールングというんですけど、再活性化が行われるようになってきて、最初は市民のイニシアチブでやっていたんですけど、だんだんドイツ連邦交通、今、デジタル・交通省というんですけど、デジタル・交通省も真面目に、本気に取り組むようになって、そしてドイツ国鉄もそれをやるようになってきています。

 その際に重要なのは、路線の再開に当たって費用便益分析が、日本でもそうですが、行われるわけですけど、費用便益分析を一以上にするためには、費用を下に、分母、それで分子に便益を置くんですけど、この便益に、ちょっとそこにも書いていますように、CO2排出量とか、土地利用の問題とか、第一次エネルギー消費量とか、アクセスですね、生存配慮って書いていますけど実際にはアクセスです、どれだけのアクセスが増えることができるか、そういうのを全部測って、鉄道を再開することによってこれだけの便益が増えるんだ、だから費用便益分析が一以上になるんだということを実際に証明して、再開するようになっています。

 日本でも、やっぱり費用便益分析の便益が、恣意的に行われる場合もあるんですけど、もう少し鉄道に有利なような便益、実際にもそういう便益があるわけですから、クロスセクター分析のように。そういうのでやっていただければいいのではないかと思っております。
 以上です。

○田村智子君 ありがとうございます。
 いや、本当に、今回、だからこの法案の中で貨物を除いているんですよ。貨物でどう使うかということを抜きにして再構築協議会になっちゃうんですよね。ここ、非常に私、問題だなというふうに考えます。

 済みません、次、富山の例をお聞きしたいんですけれども、ごめんなさい、森参考人、済みません。
 高山線のお話があって、JR西日本に本数を増やして利便性の向上をしてもらったんだというお話がありました。これとても大切で、私、大糸線を視察に行きましたら、長野県の場合は東日本と西日本で県内で分割されてしまって、大糸線は南小谷という駅で東日本と西日本に分かれてしまって、実は同じ線路なのに二時間待たなきゃその南小谷の先に行かれないとか、大変なダイヤの不便性が指摘されていたりするんです。あるいは、雪の警報というか注意報とかが出ると、実際には全く雪がほとんど降らないような状態でも止めてしまうと、計画的に止めてしまうというのが、何か非常に回数が多いように感じるって住民の方が言っていて、利便性がどんどん悪くなって、使う人を少なくしよう、少なくしようとしているんじゃないかと疑念を持つような状態があるわけなんですね。

 ですから、その高山線の利便性を向上させるという話合いがどういうふうにして行われて実現したのか、お聞かせいただきたいと思います。

○参考人(森雅志君) 一言で言うと、当初は物すごく苦労しました。そういう協議をする制度がなかったわけで、JR金沢支社とその辺りを随分何度も協議をして取り組んできました。

 現在も増発分の負担をしておりますが、予定した乗客数を超えた場合に、その超える分は返ってくるという仕組みになっておりまして、簡単に言うと、三千万円年間負担して一千万円返ってくるみたいな今は状況です。

 ですけど、結果として、本数減らしても利用者がなお伸びているわけですので、元の三十六本に戻して、今四十一本走らせているんですが、三十六本に戻すとそれでも増えるかということは恐ろしくて挑戦できていませんけれども、おっしゃるとおりです。何も制度もない中で協議をして、のみ込んでもらったということです。

○田村智子君 つまり、ダイヤ改正等々はまさに事業者任せになっているので、いかに住民の意見、利用者の意見を反映させるかという仕組みがないということでしょうか。

○参考人(森雅志君) 小さなホームだけの駅を一つ造りました、高山本線に。それも最初は社会実験として位置付けてやったわけですが、一定程度の利用者が、四千人だったかな、一日、超えれば常設駅に向こうは認めるということなどがありまして、現在は時刻表にもうちゃんと載っている駅です。

 なかなかJRでこういう取組は全国でも珍しいというふうに聞いていますけれども、やっぱりそこは最後は、市民の生活の質を上げるために取り組んでいるわけですから、全く聞く耳を持たないという姿勢ではなかったわけです。だから、その中で合意点をどう見付けていくか。

 本数を増やすというのは、すごく向こうは御苦労されています。車両も持ってこなきゃいけませんし、乗車人員、運転手を含めて、管理者も含めて、そういう手配もありますので、難しいのは難しかったと思いますが、しかし、結果としていい参考事例になったかなというふうには思います。

○田村智子君 吉田参考人にお聞きします。
 今のような、利便性を向上させる事業者の側から、まあ駅を造ろうという努力もされているということなんですけど、やはりその費用の負担、それから経営上の赤字の問題がというのは、事業者の側からその利便性と経営の問題をどういうふうに整理しながら進めているのかということと、やっぱりそうなると、皆さんからお話あったとおり、公益事業であると。そして、公からどういうお金を入れるのかということをもっと議論する、その仕組みもないわけですから、仕組みがなくて、まさに自治体に任せて事業者との話合いの中で決めているような状況があるので、この辺りについて、御要望も含めてありましたらお聞かせいただきたいと思います。

○参考人(吉田千秋君) 割とうちの会社がスムーズにいけたのは、一つはまず、行政の方が鉄道頑張っていきましょうねということで市民に声を掛けていた。その中で、例えば本数増やしましょうねという話をする。行政の方にやっぱり要望が来るわけです。これは、形としては、ああ、ひたちなか市って市に言えば何か聞いてくれることあるのかな、鉄道、という雰囲気はできちゃっていたので、それを受けて鉄道の方が、じゃ、本数増やすのにどうしたらいいだろうと。そのときに、途中の駅の交換設備が要るよねという話になって、それについてはこのぐらい掛かるし、ただ、鉄道側にそれだけのお金がないからということで、国のコミュニティ・レール化という制度を使って造るという流れで割とスムーズにできていて、あとは、今、森前市長おっしゃられたみたいな社内の人員の問題とか。

 これについては、正直、他社さんを批判するわけではないんですけれども、鉄道というのは今までお客さん目線じゃなくて自分目線で動いていて、例えば鉄道自体が、普通スーパーだったら、たくさん買ってほしかったら安売りするとか、まとめて買ってもらったらちょっと安くしますよということを、別に鉄道でやっちゃおかしくないんだけどやってこなかったというのがあって、社内で工夫してみると、運転手はこれだけしかいないんだけども、ただ、あっ、車両の整備工場に運転免許持っている人がいるわと、で、彼に朝だけちょっと運転してもらおうかなという話だとか、運行管理者にちょっと運転してもらってその間代わりの者を入れるというようなことで、鉄道会社もそれに従ってちょっと工夫できる余地があるものですから、工夫する余地をやると。すると、財政負担はほとんどなしで増便ができて、当然それが便利になって高校生が増えましたしということがあるので、その辺りはやっぱり鉄道会社ももうちょっと工夫が必要だし、そういうのをみんなで一緒にやっていったら、結果的にお客さんの要望が出て、それに従った運行ができたという形になるのかなという気はしています。

○田村智子君 ありがとうございました。

 


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