日本共産党の田村智子政策委員長は4日、NHK「日曜討論」で、統一協会による被害救済の新法案や岸田政権が出した原発運転期間延長の方針、軍事費の国内総生産(GDP)比2倍化などについて各党代表と議論しました。田村氏は救済法案における寄付勧誘の際の「配慮義務」を「禁止規定」にして、実効性のある法案にすべきだと主張しました。
田村氏は、統一協会による被害の特徴は、マインドコントロール下においてしまえば、自ら寄付をしてしまうことだと指摘。個別に「取り消しできる場合がある」と岸田首相は答弁したが、「行政として寄付が取り消せるのか否か、その基準はどうあるべきなのかを条文上も明確にすべきだ。やはり配慮義務は禁止規定にすることは必要だ」と主張しました。
経済産業省が発表した(11月28日)原子力政策の行動計画に、次世代型原発の開発・建設の推進や原発運転期間の延長などが明記されている問題で、田村氏は「(福島)原発事故後の方針の転換だ」と指摘。「原発事故は収束のメドさえ立っていない。終わったことにするのか」と批判。「老朽原発が安全だなどと言うのは、新たな安全神話の復活でしかない」と強調しました。自民党の新藤義孝政調会長代行は「本来動いているものが動いていないのであれば、復活させないと経済自体が難しくなる」と原発再稼働に固執する姿勢を示しました。
岸田政権が狙う軍事費の2倍化について、田村氏は、巡航ミサイル・トマホークを500発配備との報道をあげ「安保法制のもとで、アメリカの軍事行動によって、日本が攻撃を受けていなくてもアメリカ軍と一緒に相手国を攻撃することを可能だという方向にかじを切っていけば、憲法9条に基づく日本のあり方をまったく変えて、周辺国の日本に対する見方も変えてしまう」「こういう大軍拡に踏み切れば、赤ちゃんを含めて国民1人当たり年間5万円の大増税が必要になる」と厳しく批判しました。
NHK「日曜討論」/田村政策委員長の発言
被害者救済新法案は徹底審議と修正協議を
統一協会被害者の救済新法案について、自民党の新藤義孝政調会長代行は、野党の意見が「反映された」と発言。立憲民主党の長妻昭政調会長はマインドコントロール下の寄付勧誘の定義がなく、「ほとんど取り締まれない」と批判しました。
田村氏は、国会審議で岸田文雄首相が「個別のケース」で判断し、寄付の取り消し権が認められる場合があると繰り返したことに言及。「これだと裁判所の認定次第、あるいは当事者の主張次第ということになってしまう。行政による勧告や命令の規定もあるのだから、行政が寄付を取り消せるのか否か、その基準はどうあるべきかを条文上も明確にすべきで、『配慮義務』を禁止規定にすることは必要だ」と主張しました。
また、「配慮義務」の一つに正体を隠したり、寄付の使途を誤認させたりしないようにとの規定があるが、いずれも詐欺行為で、禁止できる行為だと指摘。寄付勧誘の際の「困惑」させる行為の禁止についても、「統一協会の場合、まず入信させるために不安をあおり困惑させるが、そのときは寄付を求めない。マインドコントロール下に置いてから寄付を求めていくが、『これは禁止できるのか』とのわが党議員の質問に、(河野太郎消費者)担当大臣も答弁が混乱し、途中でやめてしまう状態だった。禁止規定が明確ではない。徹底審議とともに修正協議を」と呼びかけました。
原発「最大限活用」方針は新たな安全神話の復活
岸田首相が示した60年超への原発運転期間延長や次世代型原子炉開発も含む「最大限活用」方針について問われた田村氏は「(福島)原発事故後の方針の転換だ」と指摘。「原発事故の収束のめどさえ立たないまま、終わったことにしてしまうのか」「老朽原発が安全だというのは、新たな安全神話の復活でしかない」と批判しました。
その上で、再生可能エネルギーによる自給率引き上げや省エネルギーへの戦略的投資が必要なのに、その議論がなさすぎると批判。「1970年代には再エネ・省エネの先進国だったが、なぜこれほど世界から遅れをとったのか。原発への大きな依存という政策があったからにほかならない」と強調し、政策の転換を主張しました。
消費税減税による家計全体の負担軽減と賃上げこそ
再エネなど「新しいエネルギー」による家計負担増大への懸念について問われた田村氏は、電気料金だけを見た部分的な対策ではなく、消費税減税による家計全体の負担軽減や、物価高騰に負けない賃上げへ最低賃金再改定に踏み切るべきだと主張しました。
その上で、「なぜ電気料金だけを見て、〝だから原発だ〟などという議論になるのか」と批判。何年かかるか分からない技術革新による原発新増設に投資するより、「再エネ、省エネへの技術革新と普及にまともな投資を行うことこそまっとうなエネルギー政策だ」と主張しました。
公明党の高木陽介政調会長は再エネ・省エネへの投資は最大限やるが、「(供給が)間に合わなかったらどうするのかという一つの選択肢」だなどと発言。田村氏は「原発が再エネの普及を遅らせてきたのは事実だ」と重ねて指摘しました。
軍事費GDP2%は軍事対軍事のエスカレーションに
岸田首相が2027年度に関連経費を含む軍事費を国内総生産(GDP)比2%に増額するよう指示した問題について問われた田村氏は、岸田首相が「額ありきではない」「必要な防衛装備を積み上げる」と繰り返してきたが、積み上げる装備には米国製巡航ミサイル・トマホーク500発などの先制攻撃兵器が含まれ、自公両党が敵地攻撃能力保有に合意したことに言及。「安保法制のもとで、アメリカの軍事行動によって、日本が攻撃を受けていなくてもアメリカ軍と一緒に相手国を攻撃することが可能だという方向にかじを切っていけば、憲法9条に基づく日本のあり方をまったく変えて、周辺国の日本に対する見方も変えてしまう。これは軍事対軍事のエスカレーションも呼んでいく」と警告しました。
また、大軍拡の財源として国民1人当たり年5万円の大増税が必要だとして、「重大な問題で、認めるわけにいかない」と表明しました。
2022年12月5日(月) しんぶん赤旗