離島発展や島民の生活安定などを目的とした離島振興法改正案が15日の参院国土交通委員会で全会一致で可決しました。田村智子議員は質疑で、島外診療への財政支援や介護制度の拡充などへの国の支援を求めました。
田村氏は、離島の高齢者が安心して暮らすための支援策は「一歩、二歩、踏み込むことが必要だ」と主張。式根島(東京都新島村)住民が都内の病院に行く場合、島民割引を利用しても航空運賃が1万7300円、宿泊費が1泊1万円以上かかる例を示し、「交通費や宿泊費が大変だというのが離島共通の声だ」として付添人も含む助成の検討を求めました。
伊佐進一厚生労働副大臣は「離島振興計画に基づいて都道府県が行っているものだが、輸送事業や離島患者が特定の医療機関に通院、入院せざるをえない場合、財政支援を行っていく」と答えました。
田村氏はまた、離島振興対策が実施されている約250の島のうち、介護事業者がない島は22・7%にのぼるとして、「介護が受けられない事態をなくす特別の支援が必要」「介護事業が成り立ち、保険料に大きく跳ね返らないような手だてを」と要求。厚労省の斎須朋之審議官は「離島の介護サービス体制の確保は重要。介護報酬への加算、地域密着型サービス整備の補助加算を行っている」と答えました。
2022年11月22日(火) しんぶん赤旗
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
まず冒頭、十年に一度の改正に尽力をされた皆様に心からの敬意を表するものです。
離島にお住まいの方々にお話をお聞きしまして、これからの十年、高齢者の方が島で安心して暮らしていくための支援策というのは、一歩も二歩も踏み込むことが必要だというふうに受け止めました。年齢を重ねれば慢性疾患やがんなどになりやすくなると、これはもう自然の摂理です。そうすると、定期的な島外受診、また付添いの方というのも必要になってまいります。交通費や宿泊代が本当に大変だというお声は離島に共通する要求だと思います。
新島村の式根島、三五%の島民割引を使っても、飛行機代は往復で一万七千三百円になると。宿泊費は都内一泊一万円から一万三千円は掛かる、検査なども含めて数日間都内で宿泊しなければならないような場合もある、付添いも含めて財政的な支援をというお声が大変切実でした。
新島村は比較的これ様々な助成を独自に行っている方ではないかと思うんですね。一回四千円、がんの方は年十二回を限度、そうでない方は上限四回などですね。付添いも、子供さんだけでなく七十五歳以上の方への介助も認めていると。しかし、ほかの島見ますと、非常に制度がばらばらになっています。
法案では、国及び地方公共団体は医療の充実が図られるよう特別の配慮をするものと規定をしています。交通費、宿泊費、そして付添いの方も含めた助成、ここに、国やあるいは都道府県ですね、ここがどうするのかということが問われてくると思いますが、いかがでしょうか。
○副大臣(伊佐進一君) 離島振興対策実施地域における医療につきましては、都道府県が、離島振興計画に基づきまして、患者輸送車あるいは船、輸送艇の整備などの事業を実施しているというふうに承知をしております。
この患者、またその家族の皆様への交通費、宿泊費に対する直接的な支援というものは厚労省は行っておりませんが、ただ、都道府県が実施します例えば輸送事業でありますとか、あるいは離島に居住する患者が特定の医療機関に通院、入院せざるを得ない場合、こういう場合には、患者、またその家族の皆さんのための宿泊施設の整備事業に対して財政支援を行っているという状況でございます。
また、令和四年度から、実施要綱におきまして、最寄りの医療機関までというふうな輸送に限定をされていましたものを、これは最寄りの医療機関の輸送に限らずに、例えば本土への輸送を含む適切な医療機関に輸送できるように支援の拡充を行わさせていただきました。
引き続き、離島における医療提供体制確保のために支援に努めてまいりたいというふうに思っております。
○田村智子君 都道府県が計画に盛り込むことで助成が進むと思いますので、是非、地方議員と一緒に取り組んでいきたいと思います。
御蔵島の方にお聞きをしましたら、介護事業者がないために介護サービスが受けられないという深刻なお声がありました。これもこれからの十年の大きな課題になると思います。
離島振興対策が実施されている二百五十四の島で介護事業者がないという島がどれくらいあるのかというふうに資料を求めましたら、一番新しいもので二〇一六年度の実態調査だというんですね。それを見てみますと、離島の圏域二百五十一の二二・七%、五十七の圏域で介護施設、介護事業所が存在していないということでした。二〇一八年三月、国交省が公表した離島地域における振興施策には、島民の意見(福祉・介護)として、介護施設がないということが示されています。二〇二一年六月の離島振興計画フォローアップでも、自治体から示された主な課題として、島内に介護サービス提供事業者はなく、離島介護サービス提供事業者を確保する必要ということが指摘をされているんですね。
介護サービスが受けられないという事態をなくすためには特別の支援策が必要だと考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(斎須朋之君) お答え申し上げます。
国といたしましても、離島の介護サービスの提供体制を確保することは重要だと考えております。
具体的に申し上げますと、訪問系サービスの介護サービスの提供に対する介護報酬の加算に加えまして、地方自治体と連携いたしまして、地域密着型サービス施設の整備に関しまして補助単価の加算を行っておりますほか、ホームヘルパーの養成等の離島等サービス確保対策事業等を実施しております。また、こうした各般の施策につきまして、離島振興施策に係る関係都道県、政令指定都市担当者会議を含め、様々な機会を捉えまして周知活動を行っているところでございます。
引き続き、離島に対する介護サービス提供の支援に取り組んでまいりたいと考えております。
○田村智子君 これ、介護事業者にとっても、事業が成り立つことが必要なんですね。また、保険料に大きく跳ね返ってしまうと、人口規模が少ないですから。まさに特別の手だてが離島については必要になってくると思います。医師派遣は仕組みがあるが、介護と看護師については人を派遣する仕組みがない、これが実情です。是非踏み込んだ支援策を求めます。
次に、水の問題についてです。
資料をお配りしました。東京二十三区、それから八丈島、大島、この水道料金を示しました。島によって、水の豊かな島もあれば、地下から取水をして塩を抜く脱塩処理が必要なところもあります。給水管の呼び径二十五ミリ、使用量五から十立方メートルで比較をしますと、東京都二十三区は一立方メートル当たり二十二円、八丈島百十円、大島町は二百円。十立方から二十立方メートルでは、二十三区百二十八円、大島は二百七十円なんですね。二十三区は基本料金が高いので実際の水道料金がこのままの格差になるということではないんですが、大島のように脱塩処理を必要とすると、電気料金の高騰が大きく影響を与えて水道料金更に値上げということになりかねないんですね。
離島振興法は、生活環境の整備の中で水の確保を明記しています。老朽化した水道管の更新や耐震化、それから現在補助制度がないランニングコストへの支援、ここも是非検討をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(山本史君) お答え申し上げます。
水道事業につきましては独立採算制が原則となっておりまして、水道施設の整備につきましては、水道料金により必要な予算を確保し、計画的に行うことが基本ではございます。
しかしながら、地形や水源からの距離等の条件によりまして施設整備費が割高となるなど、経営条件が厳しい水道事業者が行う施設整備事業を対象としまして、その整備に要する費用の一部に国庫補助を行っているところでございます。特に、離島におきましては地理的事情により経営条件が厳しい場合が多いため、離島地域における水道施設の整備に対しては、補助率のかさ上げを行うことにより離島の実情に配慮した補助制度としているところでございます。
今後も、引き続き、地方公共団体の御意見を伺いながら必要な支援を行ってまいりたいと考えております。
○政府参考人(馬場健君) お答え申し上げます。
水道事業は公営企業でございまして、事業の費用を利用者からの料金収入で賄う独立採算が原則であります。
自然条件などのやむを得ない事由により建設投資が割高となり資本費が極めて高い水道事業に対しましては、他団体との料金格差の縮小に資するため、高料金対策として地方財政措置を講じております。具体的には、上水道事業には資本費が全国平均の二倍を超えるなどの要件を満たす団体、簡易水道事業は資本費が全国平均を超えるなどの要件を満たす団体に対して一定額を一般会計から繰り出すこととし、その八割を地方交付税措置をしてございます。
今後とも、関係省庁と連携しながら、引き続き支援を行ってまいりたいと考えております。
○田村智子君 もう一つ、この物価高騰の中で、ガソリン代、灯油代、非常に切実になっています。特別な手だてをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(定光裕樹君) お答え申し上げます。
足下の原油価格高騰に対しましては、離島を含めて、ガソリン、灯油含む燃料油に対する激変緩和事業、これ累次にわたって強化してございます。先般閣議決定されました総合経済対策におきましても、現在のこの事業を来年度前半にかけて引き続き延長して実施するということにしてございます。
また、離島につきましては、従来から、輸送形態と本土からの距離に応じてガソリンの輸送コスト相当分を補助する離島のガソリン流通コスト対策事業を実施しておりまして、各島の状況に応じてリッター当たり七円から七十円程度で補助をしているところでございます。
今後も、油価の動向、離島と本土の価格差などをしっかりモニタリングしながら、これらの制度、適切に運用してまいりたいと考えてございます。
○田村智子君 最後に大臣にと思ったんですけど、時間が来てしまいました。是非、これからの十年、特に高齢化の問題って非常に切実ですので、振興になるようによろしくお願いしたいと思います。
終わります。