日本共産党の田村智子議員は10日の参院国土交通委員会で、港湾法改定案に関連し、港湾を含む臨海部での二酸化炭素(CO2)削減への政府の姿勢をただしました。
田村氏は「臨海部は石炭火力発電、鉄鋼など最もCO2を排出する産業が集積しており、2030年までのCO2削減目標をどう進めるかが急務だ」と指摘。法案説明では30年までに港湾での水素、燃料アンモニアの取扱貨物量を水素換算で100万トンにするとあるが、「これによるCO2削減はどう見込んでいるか」と質問しました。
国交省の堀田治港湾局長は「水素・アンモニアで1000万トンの削減」などと答弁しました。田村氏は、この1000万トンは臨海部に集積する産業の排出量のうち「何%の削減となるのか」と追及。堀田局長は「(臨海部は)日本の排出量の6割にあたる5億8000万トンで、1000万トンは2%に当たる」と答弁しました。
田村氏は「30年までの日本政府のCO2削減目標は13年比で46%と全世界平均より低いが、これすら達成できない」と指摘。「水素、アンモニアは製造過程も、大型貨物船で日本に輸送する過程も、CO2が大量に排出される。石炭火力を温存し、カーボンニュートラルというのは、国際的には『やっているふり』とみなされる」と批判し、再生可能エネルギー、省エネルギーによる思い切った戦略を持つべきだと主張しました。
2022年11月17日(木) しんぶん赤旗
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
今月六日から気候変動枠組条約締約国会議、COP27が始まりました。八日には、国連のグテーレス事務総長の下につくられた専門家会議が、温室効果ガスネットゼロ、実質ゼロを自治体などが掲げる条件として、先進国では二〇三〇年までに石炭火力発電を廃止することなどを求めました。
本法案は、臨海部に集積する産業と連携し、港湾においてカーボンニュートラル、CO2排出実質ゼロを推進する仕組みをつくるとしています。港湾を含む臨海部は、石炭火力発電、鉄鋼など最もCO2を排出する産業が集積をしていて、二〇三〇年までの削減目標をどうするのか、そして実効性がある取組をどう進めるのかが急がれています。
法案の説明資料で示された二〇三〇年までの目標というのは、一つに、水素、燃料アンモニアの取扱貨物量を水素換算で百万トンとすること、そして二つに、港湾施設でコンテナを取り扱う低炭素化荷役機械の導入割合を七五%とすると、この二つが示されました。それでは、それぞれCO2の削減はどういうふうに見込んでいますか。
○政府参考人(堀田治君) お答え申し上げます。
本法案で掲げている目標を達成した場合のCO2削減量について、国土交通省港湾局において一定の仮定を置いて試算したところ、港湾における水素、燃料アンモニア等の取扱貨物量を二〇三〇年、水素換算で百万トンとする目標を実現した場合、この百万トンによるCO2削減量は約一千万トンです。また、コンテナを取り扱う低炭素型荷役機械の導入割合を二〇三〇年度に七五%とする目標を実現した場合のCO2削減量は約一万トンとなっております。
○田村智子君 これ、法案の説明資料になかったので、資料一で皆さんにもお配りしました。こういう試算だということなんですね。
二〇二〇年度、日本のCO2排出量は十億四千四百万トンと発表されています。このうち臨海部に集積する産業の排出量はどれくらいで、ここで示された約一千万トンというのは何%の削減になるんでしょうか。
○政府参考人(堀田治君) お答え申し上げます。
二〇二〇年度、日本全体のCO2排出量は約十億四千万トンでございまして、港湾、臨海部に多く立地する発電、鉄鋼、化学工業等の部門からのCO2の排出量はこの約六割に当たる約五億八千万トンとなっております。国土交通省港湾局が試算したCO2排出削減量約一千万トンをこの約五億八千万トンと比較すると、約二%に相当いたします。
○田村智子君 今の御説明もメールでも受けましたので、皆さんにお配りしました。
日本政府の削減目標、二〇一三年度比で二〇三〇年までに四六%削減、これは全世界平均よりも低い目標です。しかし、これと比べても、僅か二%、数値で示されたものは。しかも、水素、燃料アンモニアの輸入量が増大することが本当にCO2削減に結び付いていくのか。
百万トンというのは、いつからどういう産業でどれだけ使うことを見込んでいるんですか。
○政府参考人(南亮君) お答え申し上げます。
水素、アンモニアですが、これは発電、輸送、産業など幅広い分野の脱炭素化に資するカーボンニュートラルの実現に向けた鍵だと、そのように考えております。
水素、アンモニアは主に発電部門での需要が見込まれまして、二〇二〇年代後半にも石炭火力へのアンモニア二〇%混焼技術、さらには二〇三〇年頃にはガス火力への水素混焼や専焼技術の商用化が予定されております。二〇三〇年度の電源構成において、水素、アンモニアで一%程度を賄うということを想定しているところでございます。
加えて、水素、アンモニアは、電化が困難な産業用の熱や化学分野での利用、燃料電池自動車や船舶といった運輸部門などの利用、こういった需要が見込まれているところでございます。
○田村智子君 水素、アンモニアは、現在、その製造過程でも、また大型貨物船での輸送でもCO2を大量に排出することになります。石炭火力発電でのアンモニア混焼もCO2を排出するのは当然なんですね。しかも、いまだ実証実験の段階だと。
冒頭指摘しましたとおり、そもそも石炭火力を廃止せずカーボンニュートラルというのは、国際的には実体を伴わない、つまりは、やっているふりとみなされます。水素燃料などの新技術は、航空機や大型船舶でのCO2排出ゼロのために必要です。
しかし、ここは二〇三〇年にその技術は間に合わない、二〇五〇年までにその新たな新技術での燃料をどうするのかということが専門家や科学者の方々から指摘されているんですよ。だから、二〇三〇年に間に合わないから、船舶とか航空機のところは、だから、それ以外の電力、製造などの産業は既に開発されている再エネ、省エネの技術によって脱炭素を進めることが直ちに求められているんです。
例えば、鉄鋼も、古鉄を原料に電気で精製する電炉方式は、鉄鉱石から精製する高炉方式、燃やしてやるやつですね、この高炉方式よりも三割エネルギー削減が可能とされています。ガス火力発電は、熱エネルギーの六割が排熱されてしまっている、現在の技術でもエネルギー効率を八割程度まで引き上げることが可能だと、こういうふうに専門家は指摘をしています。このような省エネへの投資というのは経済的な効果も大きいと考えられます。
大臣、冒頭申し上げたとおり、石炭火力なんですよ、結局、港湾局が試算したのも。石炭火力前提なんですよ、の削減計画。それは、国際的にはやってるふりにされてしまいます。必要なのは、港湾、臨海部という最もCO2を排出されるその部署、産業において再エネと省エネを思い切って進めるという戦略、これを持つことが求められているのではないですか。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 本法案では、港湾における水素、燃料アンモニア等の取扱貨物量を二〇三〇年で水素換算で百万トンとする目標を定めております。
この目標は、エネルギー基本計画において水素供給量を二〇三〇年に最大三百万トンに拡大することを目指すとされていることを踏まえ、現在からの増加分の約百万トンを海外調達や内航輸送の活用を前提に、全量を港湾で取り扱える環境整備を図ることを目標に設定したものでございます。
このように、本法案のKPIは政府の水素供給量に関する目標に沿って設定したものであり、国土交通省としては、政府のエネルギー政策に沿って、港湾における脱炭素化の推進など、港湾における必要な対応を講じてまいりたいと思っております。
○田村智子君 ならば、政府のエネルギー計画の大胆な見直しがなければならないと。国際的にもう日本取り残されていきますね、こんな計画で進めていったら。
法案では、港湾管理者が港湾脱炭素化推進計画を作成できるとしています。衆議院の質疑で、せめて努力義務、できる規定ではなく努力義務規定にすべきではなかったのかという質問に対して、地方自治を尊重するという答弁がありましたが、気候危機打開のために自治体に協力と努力を促すということは地方自治の尊重と対立などしません。
また、ほかの法律との関係でも説明が成り立ちません。例えば、地域公共交通活性化再生法では、第五条一項で、地方公共団体は、地域旅客運送サービスの持続可能な提供の確保に資する地域公共交通の活性化及び再生を推進するための計画を作成するよう努めなければならない。これは、二〇二〇年の法改正で、できる規定から努力義務規定への引上げが行われたんです。
港湾脱炭素化の計画策定は努力義務にする必要がないという判断だったんでしょうか。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 港湾における脱炭素化の取組は、各港湾の機能や利用状況に応じて異なるとともに、関係する多岐にわたる民間事業者それぞれの事情を踏まえて対応することが必要です。また、港湾法の基本原則である地方自治を尊重する観点を踏まえ、港湾管理者が港湾脱炭素化推進計画を作成することができるということとした次第でございます。
国土交通省としましては、各港湾において港湾脱炭素化推進計画の作成に取り組んでいただけるよう、港湾管理者と連携しながらしっかりと取組を進めてまいりたいと思っております。
○田村智子君 政府の後ろ向きな姿勢がこういうところにも表れていると思うんですね。
この臨海部に集積する産業の脱炭素化、これ温暖化対策、気候危機打開にとって極めて重要なんです。我が党は、昨年九月に発表した気候危機打開二〇三〇戦略で、電力については、二〇三〇年までに石炭火力、原発の発電量ゼロ、再エネ五〇%という大転換を行うこと、そして、産業分野では、CO2排出量の多い企業が政府と協定を結んで、政府も企業も削減への責任を明確にして推進することを提起いたしました。これはイギリスなどの取組に学んでのものです。
今回、港湾管理者として自治体が計画を立てる上でも、企業がどう関わるのかが大変問われてきます。ところが、そもそもどの事業者がどれくらいのCO2を排出しているのか、基礎的なデータがないというのが今の自治体の現状なんですよね。これでは実効性ある計画を立てることもできなくなります。
港湾管理者が計画を策定するためには、まず政府が、今排出量これだけという試算をしているわけですから、それぞれの産業や企業についての何らかのデータをお持ちでしょう。そういう基礎的なデータを自治体に提供すべきだと思います。そして、大企業については、消費電力量や、化石燃料を直接使う産業では、そのCO2排出量、国も自治体も把握できるという仕組みをつくることが必要だと考えますが、いかがですか。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 国もCO2の排出、CO2量で目標を定めておりますので、港湾における脱炭素化の推進に当たっては、港湾及びその周辺地域におけるCO2排出量が重要な指標の一つであると、このように我々も考えております。
港湾管理者によるCO2排出量の算定方法については、民間事業者への聞き取り調査等により得た情報に基づき推計することを基本としつつ、補足的に企業の生産量等からCO2排出量を推計する仕組みを構築しております。また、国土交通省が港湾管理者が設置する協議会へ参画しカーボンニュートラルの取組の支援を行うことで、民間事業者の協力が得やすい環境の整備を行っております。
国土交通省としましては、港湾管理者がCO2排出量を算定し、港湾脱炭素化推進計画をスムーズに策定できるよう、引き続き支援してまいりたいと思っております。
○田村智子君 これ、今いろんな物の取引でも、我が社の製造品はCO2全く排出しない電力などで作っていますということが取引の条件になったりもしてきていますよね。だから、こういう、どの企業がどれだけ排出しているのか、特に排出量の多い産業においては見える化をしていかなければ、目標では達成できないですよね。現状がどうなのか、どこまで削減されているのか、その仕組みをつくることを是非急いでいただきたいと思います。
最後に、法案では、港湾緑地を民間が借りて収益施設を造り緑地を活用することを可能とする規制緩和が盛り込まれました。民間事業者が港湾環境整備計画を作り、港湾管理者、自治体の認定を受けることとしていますが、この認定の要件が条文上大変緩いものになっています。
港湾環境整備事業というのは、そもそも物流等が集中する港湾での環境悪化への対策として、港湾で働く人の環境整備、また地域の憩いの場としての緑地等が整備をされてきました。こうした意義を踏まえれば、計画策定の過程で、港湾で働く人やあるいは地域住民、現在緑地利用している方々、こういう皆さんの意見が反映される仕組みが必要ではないでしょうか。
また、貸付けの面積であるとか施設の規模であるとか、先ほどもいっぱい集まっちゃったら大変なことになると指摘ありましたけど、こういう何らかの上限などの規定も必要になってくるのではないかと考えますが、いかがですか。
○政府参考人(堀田治君) 今、二点の御質問があったと思います。
まず最初の御質問でございますが、本制度におきましては、緑地等の利用者を始め広く市民の皆様から御意見をいただくために、民間事業者が作成した港湾環境整備計画を港湾管理者が認定する際には、あらかじめ公衆縦覧等を行うなど、手続の公平性、透明性を確保するために必要な措置を講ずることを義務付けております。国土交通省としては、こういった公衆縦覧等の手続が着実に行われるように、適切に制度運用に努めてまいりたいと思います。
あともう一つ、その施設の規模に関する制限でございますけれども、これにつきましては、そもそもこの制度を活用する場合には港湾管理者による公募が行われることを想定しておりますので、新たに整備される収益施設については、民間事業者の提案を踏まえて港湾管理者が判断するということになります。
ただ、この制度におきまして、民間事業者が作成いたしました港湾環境整備計画を港湾管理者が認定する際には、港湾計画の適合に加えまして、当該港湾の環境の向上への寄与であったり、あるいは利用者等に支障がないかなど、事業者が整備する収益施設等も含めて計画の内容を審査することとしておりまして、港湾の機能に著しく支障を来すおそれがあるものが整備されることを想定はしておりません。
○田村智子君 終わります。