日本共産党の田村智子政策委員長は23日、NHK番組「日曜討論」で、各党の政策責任者と討論し、異常な円安と物価高騰が暮らしを直撃する中で、賃上げを軸とした構造的な経済政策を主張し、消費税減税や大企業の内部留保への課税などが必要だと訴えました。
田村氏は、アベノミクスの「異次元の金融緩和」の下で、「円安に歯止めがかからない」ことが、物価高騰の大きな要因だと指摘。「金利を上げても大丈夫という経済状況を早くつくらなくてはいけない。それには賃上げを軸とした構造的経済政策だ」と主張しました。
田村氏は、物価高騰に「部分的な支援だけでは暮らしを守ることはできない」と述べ、全部の物価を引き下げる「消費税減税に踏み切るべきだ」と強調しました。国民民主党の大塚耕平政調会長などが消費税の減税を主張。れいわ新選組の長谷川ういこ政策審議会経済担当は消費税廃止を訴えました。公明党の伊藤渉政調会長代理は「消費税は社会保障を支える極めて重要な財源」と減税に反対する姿勢を示しました。
田村氏は、アベノミクスの金融緩和政策のもとで、実質賃金が上がらず、「大企業の内部留保が驚くほど積み増した」と指摘。内部留保に課税し、それを中小企業への支援に使い、賃上げをし、「実体経済を良くしていく道に切り替えなければ、経済は本当に破綻してしまう」と強調しました。
自民党の新藤義孝政調会長代行が、賃上げには経済成長が必要だとして、「新しい投資先」などが必要と強調したことに対し、田村氏は「物価高騰に見合う賃上げはすぐにやらなければいけない。賃上げで経済が回って投資ができる環境が生まれる」と主張しました。
田村氏は賃上げとともに、社会保障や教育の負担軽減を主張。政府が物価高騰のなかで、年金支給額を減らし、75歳以上の高齢者の医療費の窓口負担を2倍にしたことを批判し、「(医療費負担は)元に戻し、年金は物価高騰に見合った額に引き上げるというところまでやるべきだ」と述べました。
NHK日曜討論/田村政策委員長の発言
23日のNHK「日曜討論」に出演した日本共産党の田村智子政策委員長は、円安・物価高対策や賃上げの実現に向けて各党の政策責任者らと次のように議論を繰り広げました。
物価高対策―賃上げと消費税減税を
冒頭、田村氏は深刻な物価高について「大きな要因は異常円安だ。アベノミクスの異次元の金融緩和をどうするかが問われている」としたうえで、金利が上がれば中小企業の融資返済や住宅ローンに影響が出るため、「金利が上がっても大丈夫な経済状況を早く作らないといけない。それは何といっても、思い切った賃上げだ」と強調。「賃上げを軸とした構造的な経済政策が『日本は金融・経済政策を変えるぞ』というメッセージになって円安にも歯止めがかかっていく」と述べました。
番組では、9月の消費者物価指数を見ると電気代が前年同月比21・5%上昇、ガス代が同19・4%上昇と値上げ幅が特に大きいことが指摘されました。しかし、自民党の新藤義孝政務調査会長代行は「目に見える形で負担軽減ができるような制度を考え、対策を打ち出していく」などと答えるだけでした。
田村氏は「電気・ガス代への支援策はもちろん必要だ」としたうえで、「部分的な支援をやっているだけで暮らしを守ることはできない」「消費税の減税に踏み切らないといけない。例えば先行的に電気やガスのところを引き下げるということも含め、いろんな検討ができる」と提案し、こう力説しました。
「この半年間そういう提案をしてきたが、できない理由ばかり並べ立てられてきた。しかし、世界を見れば、100ぐらいの国と地域がすでに消費税にあたる税金、付加価値税を引き下げている。日本も早くやるべきだ」
国民民主党の大塚耕平政務調査会長は、家計の直接支援が必要だとして「消費税は少なくとも5%に引き下げるべきだ」と述べ、れいわ新選組の政策審議会経済担当の長谷川ういこ氏は野党4党共同で提出した「消費税減税法案」に触れ、「与党が審議拒否をしている。ぜひ国会で議論を」と求めました。
対して、公明党の伊藤渉政務調査会長代理は「消費税は社会保障を支える、きわめて重要な財源だ」と強弁。田村氏は「この物価高騰の最中に年金を減らしたじゃないですか。そして、この10月から75歳以上の高齢者で医療費負担が2倍になった方がいるわけです。ありえない。元に戻すべきだ。年金で言えば、物価高騰に見合った額に引き上げるところまでやるべきだ」と厳しく批判しました。
子育て支援―高すぎる教育費の負担軽減を
番組では子育て支援について話が進みました。田村氏は賃上げとともに、「高校無償化」の拡充や大学・短大・専門学校の学費半額、学校給食費の無償化、奨学金の拡充などで、高すぎる教育費の「思い切った負担軽減を」と提起しました。立憲民主党の大西健介政務調査会長代理は、現行の高校授業料の無償化などは「中間(所得)層は所得制限で受けられない。所得制限はなくしていくべきだ」と発言。公明党の伊藤氏が、所得制限のない支援を「拡充してきた」と自画自賛すると、大西氏は政府が10月から児童手当制度の「特例給付」の所得制限を厳格化したことをあげ、「中間層は『子どもを産むな』と言われている感覚だと思う」と反論しました。
異次元の金融緩和―大企業の内部留保への課税こそ
次に異次元の金融緩和について議論が交わされ、自民党の新藤氏は「金融緩和の出口は常に考えなければならない」「物価を安定させるためには結局、賃金上昇がなければいけない」と答えました。
田村氏は異次元の金融緩和で賃金は上がらず、大企業の内部留保が驚くほど積み増しされたとして「金融緩和政策の行き詰まりを認め、どう打開するかに向かわなければならない」と指摘。「たまりすぎている大企業の内部留保に課税し、中小企業に思い切った支援をして賃上げをする、これで実体経済を良くする道に切り替えないと経済は破綻する」と警鐘を鳴らしました。
新藤氏は「いまの話は一面の真理がある」と認める一方、内部留保課税は拒否。賃上げをどう実現するかについては、「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」など「新しい市場をつくってお金が流れるような政策を打たなければだめだ」「学び直し(リスキリング)によって労働職場を変わったら賃金が上昇する国にしなければいけない」と悠長な発言に終始。伊藤氏は〝労働生産性の低さ〟などが問題だと語りました。
田村氏は「物価高騰に見合う賃上げはすぐにやらなければならない」とぴしゃり。各都道府県の最低賃金審議会では〝中小企業を直接支援して賃上げを〟という声が相次いでいると述べ、内部留保課税は年2%だけの課税で5年間で10兆円が賄えるうえ、▽大企業が内部留保を従業員の賃上げに回せば、その分を課税対象から控除▽グリーン投資に回しても課税対象から控除―するという「成長分野への投資のインセンティブにもなる提案だ」と説明しました。
さらに「リスキリングというものも出てきたが、労働生産性が低いのは、能力があっても不安定雇用で切られてきた人がたくさんいるからです。長時間労働で低賃金だからです。小泉構造改革以来、人件費を抑えなければ企業が生き残れない状況をつくった政治の転換が必要です。8時間労働で生活できる賃金や安定雇用で、給料が上がる、希望が持てる、スキルが上げられる、こういう経済政策の転換を求めていきたい」と力を込めました。
2022年10月24日(月) しんぶん赤旗