政府のこども家庭庁設置法案と自公提出のこども基本法案が14日の参院内閣委員会で自民、公明などの賛成で可決しました。日本共産党は反対しました。
日本共産党の田村智子議員は、子ども関連予算の「将来的倍増」を語る岸田文雄首相に「ならばまず子どもの減少に伴う予算減額や、子ども関係で新たな予算が必要になったからと他の子ども施策を削るやり方はやめるべきだ」と主張。首相は「子ども政策同士のやりくりだとの指摘を受けないためにも全体像を考えていく」などと述べるにとどまりました。
田村氏は、今年度の内閣府の子ども関連予算は3・8兆円弱だが、自民党が掲げる軍事費の5年以内の対国内総生産(GDP)比2%目標は増額分だけで5兆円以上になり、子ども予算倍増とはとても両立しないと追及。首相は軍事費について「政府の骨太の方針には目標とする数字はどこにも書いていない」などと釈明しました。
田村氏は反対討論で、政府は結局、子ども予算について少子化による自然減をやめ充実に回す検討さえ約束しなかったと批判。日本の子どもの置かれた過度に競争的な環境を懸念する国連の勧告にも向きあわず、従来の子ども施策への反省もないと強調しました。
また、自民党内の圧力で子どもの権利を擁護する子どもコミッショナー制度が設置法案に盛り込まれず、基本法案に子どもの養育は「家庭が基本」とあえて書き込まれたと指摘。日本では子育てが自己責任にされているが、貧困対策さえ「真に必要」と政府がみなす子どもに限定してきた政策を転換し、すべての子どもを社会で支えるべきだと主張しました。
2022年6月15日(水) しんぶん赤旗
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
まず、こども家庭庁の設置で子供に関わる専門職の人が増えるのかと、こちらの方を先に質問します。
骨太の方針二〇二二、私も読みましたが、児童相談所の体制強化、スクールソーシャルワーカーの配置の促進ぐらいしか見付けることができませんでした。
そもそも国の制度では、このスクールソーシャルワーカーは非常勤で複数の学校を担当することを想定しています。専門性を必要としながら、典型的な不安定雇用です。学校では、深刻な教員不足の一方で、学級担任を臨時教員が務めているというのも当たり前のようになってきました。臨時教員というのは、もう一年で学校替わらなきゃいけないんですよね。保育士の方も、非常勤、非正規雇用、これ増え続けています。
子供との信頼関係を築く上でも、ケースワークを積んで専門性をより深める上でも、子供に関わる専門職の方が安定した雇用であるということはとても重要だと思います。子供に関わる専門職のそもそもの人数を抜本的に増やすこと、そしてその低処遇、不安定雇用を解消すること、これはすぐにでも必要と考えますが、いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、子供を取り巻く課題、深刻化する中にあって、御指摘のスクールソーシャルワーカー、さらには保育士、放課後児童支援員など、子供の支援に関わる方々の果たす役割、ますます重要になってきています。非常勤であるがために雇用が不安定であったり給与が低い、こうした声があること、承知をしております。
こうした声を受けて、まず、スクールソーシャルワーカーの常勤化に向けた調査研究、これを政府として今進めています。そして、保育現場で働く方々に加えて、放課後児童支援員、さらには児童養護施設等の職員の給与、本年二月から三%程度、月額平均九千円相当引き上げるための措置を講じるなど、累次の処遇改善、これを実施しているところです。
子供の支援に関わる方が安心してキャリアパスを描けるような安定した雇用環境を整備することは重要であり、保育士や放課後児童支援員等について更なる処遇改善に取り組むとともに、スクールソーシャルワーカーなどの配置促進を通じて雇用の場の確保、これを図っていきたいと考えております。こうした取組、進めてまいります。
○田村智子君 スクールソーシャルワーカーの配置って、私、二〇一三年ぐらいに文部科学委員会担当したんですけど、そのときからもう本当にこういう複数校担当でいいのかと言われていて、常勤化についてまだ調査研究必要ですか。調査研究やっているどころか、制度変えればいいじゃないですか。定数の中に入れればいいんですよ、学校に配置する定数の中に。なぜこども家庭庁をつくってもそこにすぐに踏み出さないのか、まだ調査研究なのかというのはちょっと厳しく指摘しなければならないと思います。
それから、子供施策については、今日繰り返し指摘があります、参考人質疑での明石の泉市長の、所得制限なし、明石市の施策ですね、十八歳までの子供の医療費、二人目以降の保育料、学校給食など、これ所得制限なしで無料化してきた。子供への支援、特に現物給付は全ての子供を対象とすることが重要だと強調されました。私も同じ立場です。子供を世帯所得で分断せず、保育、教育、医療など、全ての子供の権利として保障する、同時に子供の貧困対策を充実させる、そういう政治への転換が必要だと考えます。
これまでの子供の施策は、一人親家庭への児童扶養手当でさえも、離婚件数が増えたことを理由に所得制限強化などを行って、一人親家庭への支給を一方で抑えて支給対象を増やす、また、児童手当も所得制限で一部の子供に支給せず、その分を保育所待機児童対策に充てると、こういうことをやられ続けてきたんですよ。子供関係の支出を増やすときに、別の子供施策、子供施策のどこかを削らなければできないと。その上、子供の人口減少に伴う予算減はただただ予算減当たり前と。
総理、十八日の本会議で、将来的に予算の倍増を目指すと答弁されました。ならば、まず人口減少に伴う子供の予算の減額はしない、子供関係で新たな予算が必要になったからといって子供施策のどこかを削減するということはやらないと、この基本方針が必要だと思います。いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 委員の方から、今までの政府のありようとして、子供政策を進めるに当たって、この一方で子供政策の予算を削っている、こうしたことがあったのではないか、こういった指摘がありましたが、その際にもいろんな議論がありました。だからこそ、今回こども家庭庁をお認めいただいたならば、このこども家庭庁において、必要な子供政策は何なのか、この全体像を体系的に整理することをさせていただきたいということを申し上げています。この全体像をしっかりと示した上で、必要となる予算についても社会全体でどう負担するのか、これを考えていく、そしてその延長線上に予算倍増を目指していく、こうした考え方を示させていただいています。
今言ったような、今御指摘があったような子供政策同士の様々なやりくりをというような指摘を受けないためにも、改めて全体像を考えていくことが重要であると思っております。
○田村智子君 何度も指摘してきたんですけど、体系的に整備している間に少子化が進むので、子供の予算はどんどん減っていってしまうんですね。それを今止めなければ予算は倍増に向かわないわけですよ。整備する上での基本的な考え方として、予算を減らさないということが必要だと思うんですね。
実は先週、若者向けに参議院選挙に向けた各党の若者施策というのを話し合う討論会というのがあって、私、参加したんです。そこで、自民党からは厚労副大臣も務めた牧原衆議院議員が出席をされていて、私が言ったとおりのことを言ったんですよ。児童手当を引き合いに出して、少子化で必要額が減っている、これを減らさずに子供施策の充実に回すことが必要だということを若者向けに公約を語る場で自民党からも話されたわけですよ。
これ、選挙のときだけというわけにいかないわけですからね。総理、せめて検討ぐらい言いましょうよ。減らさない、少子化に伴う予算減やらない、いかがですか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 何か今までの政権が子供政策の予算を削り続けてきたかのような御指摘でありますが、そんなことはありません。先ほど申し上げたように、この幼児教育の無償化、保育の受皿確保、一・四兆円、さらには少子化対策関連予算、これ当初ベースでも六兆円、子供・若者育成支援施策関連予算、これも当初ベースで五兆円、こうした予算をしっかり用意をしています。そして、細部においては様々な御指摘があるのかもしれませんが、改めてこの全体像を整理して体系的に考えてみようということをこども家庭庁の発足を機にしっかりやっていこうということを申し上げさせていただいています。
是非、これを機に予算の在り方についてもしっかりと検討していきたいと思っております。
○田村智子君 予算を増やすときに子供の別のところを削って付けるのは違うでしょうということを言っているだけであって、少子化で減っているのは事実ですから、児童手当だけだって三百億ぐらい人口減で減っていくわけですから、それを減らさないということを求めているんですから、それぐらいは一緒にできるところだと思いますよ。やっていただきたいと思うんです。
もう一点、実は本当にそれを増やすことができるのかということを私はとても危惧しています。
骨太の方針には、防衛力について五年以内に抜本的強化、これは年限を明記されていました。この中では、わざわざ、NATO諸国では国防予算を対GDP比二%以上とするということにも言及をしています。自民党も、五年以内に対GDP比二%以上の目標を念頭に防衛力の抜本的な強化ということを提言し、一部の党からは選挙の公約にもされていますね。
これは現状から五兆円以上の増額になるわけですね、防衛予算が。今年度の内閣府の子供関連予算、児童手当、保育所、幼稚園などに関する子ども・子育て支援給付、高等教育の修学支援は合わせて三・八兆円弱ですよ。これをはるかに上回る規模での防衛予算の増額、ここに踏み出したら、私は子供予算の倍増とはとても両立できないと思う。いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、防衛予算につきましては、政府の骨太の方針の中で御指摘のようにNATO諸国の状況について紹介はさせていただいておりますが、その目標とする数字、これはどこにも書いてありません。従来から政府が申し上げておりますように、年末の国家安全保障戦略の改定を始めとするこの議論の中で、国民の命、暮らしを守るために何が必要なのか、これをしっかりと整理をし、そしてそれを積み上げた上で予算、財源とセットにして議論を行う、こうしたことを申し上げています。こういった道筋を五年以内にやる、こうしたことを骨太の方針の中に書かせていただいております。
子供予算については、先ほど申し上げました、整理をした上で、全体の負担をどのように社会全体で担うのか、こうした議論を行った上でしっかり予算を考えていきたいと思っております。
○田村智子君 防衛予算については、財源なんか関係なく、五年以内と年限示して抜本的強化と言うと。子供については、いつになるかも分からない、財源確保してからだと。これは本当にこれからこの国どうなってしまうのかと大変危惧される状況だということを申し上げて、質問を終わります。