活動報告

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日本共産党議員の国会質問/専門職配置を増やせ/田村氏、子どもデータ連携で

 田村智子議員は2日の参院内閣委員会で、政府が設置を目指すこども家庭庁が進めようとしている子どもに関するデータの連携や利活用の問題点についてただしました。

 政府は、児童や家庭の情報をAI(人工知能)に分析させ、児童相談所の「一時保護」の判断の参考となる指標を表示させるシステムの開発を進めています。実証実験が採択された広島県の事業は、生活保護の利用状況から両親の喫煙の有無まで幅広い情報を集めて〝虐待リスク〟を評価するものになっています。

 同事業について田村氏は、支援制度を利用することで虐待が疑われるのなら、苦しいことを隠す保護者も出てくるのではないかと指摘しました。

 田村氏は、実際に英国では子どもデータベースがソーシャルワーカーの役割を監視に変えて当事者との信頼関係を損なったと批判され、〝必要なのは情報の海ではなく情報を判断する専門職の力量だ〟と全国規模のデータベースが廃止されたと指摘。「日本で足りないのはケースワークの時間と人だ」と専門職の配置を抜本的に増やすよう求めました。

 田村氏が「データ連携が、必要とする人から支援を遠ざけ、予算や支援の充実の足を引っ張ることにならないか」とただすと、こども基本法案の提出者・鈴木英敬衆院議員(自民党)は「情報通信技術の活用に伴って他の子ども政策やそのための予算の充実が後退することはあってはならない」と答弁しました。

 田村氏は、そもそも子どもに関わるデータの活用を子どもの議論や合意もなく進めていること自体問題だと強調しました。


2022年6月4日(土) しんぶん赤旗

 

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 五月二十四日の質問の続きで、生活保護世帯の大学進学についてお聞きします。

 子供の貧困対策を求める運動の下で、高等教育の修学支援制度は前進をしてきています。しかし、一つには、支援を受けてもなお学費無償にはならない、そして二つ目に、成績要件が課されていると。これは、経済的に困難な家庭における支援であっても大きな問題になってくるんですね。文科省の修学支援制度の説明資料を見てみましても、進学前の明確な進路意識と強い学びの意欲がある学生に限定し、進学後も厳しい要件を課し、これに満たない場合には支援を打ち切ると、この原則が明記をされています。

 学費や生活費を自ら稼がなければならない学生は、時給が割高の深夜から早朝に働く場合も多いです。特に私立大学に進学した場合には、支援を受けてもなお年間百五十万円程度が必要となって、アルバイトでくたくたになって学業に支障が出てしまうというのは決して少なくないんですね。アルバイトを減らせば収入も減って、学生生活は破綻する。成績基準を下回ると、今度は修学支援が打ち切られる。こういう精神的なプレッシャーも大きく、心身の過労から療養せざるを得ないというケースもあります。

 現行制度は経済的に支援が必要な学生に対してもある意味過酷な支援策、これでは不十分だと考えますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(里見朋香君) お答えいたします。
 高等教育の修学支援新制度は、家庭の経済状況にかかわらず、子供たちの誰もが自らの意欲と努力によって社会で自立し、活躍できるということを目的としているものでございます。

 本制度の支援対象となりますと、例えば住民税非課税世帯でありますと、私立、自宅外生の場合でございますと、給付型奨学金と授業料等減免を合わせまして年間で約百六十一万円の支援ができるという制度になっているところでございます。

○田村智子君 答えになっていないんですよね。それで十分かと、不十分ではないのかと。

 二十四日に、横須賀市で、両親の虐待から逃れた学生に対して生活保護相当額の独自の給付制度を横須賀市がスタートさせたということを紹介しました。これは、不十分だから市が独自にやっているということですよね。この学生さん、公的支援なしには学生生活を続けることは不可能だったわけですから。

 こども基本法の提案者にお聞きいたします。
 十八歳という年齢で区切らず、切れ目なく、差別されることなく支援をということは、生活保護を受給するには大学の休学か退学かということを迫られた横須賀市のような事態が生じないよう政府に努力を求めるということになるんでしょうか。

○衆議院議員(工藤彰三君) 田村議員にお答え申し上げます。
 本法案は、本法案の言う「こども施策」には教育分野も含まれ、基本理念の三条二号では、教育基本法の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく得られることについて定めており、この趣旨は高等教育についても当てはまると考えております。

 生活保護受給世帯の教育費負担軽減策に関しては、生活保護上、稼働年齢に達した者にはその能力を活用してもらうことを原則としつつも、子供の貧困対策に関する大綱で、大学等への進学に際しての負担軽減策がまとめられると承知しております。

 子供の貧困対策に関する大綱の内容は本法案九条三項においてこども大綱の記載事項に含まれることとなっており、教育費負担軽減のための取組が、教育の機会均等を基本理念に掲げるこども基本法に基づいて策定されるこども大綱の下で、これまで以上に強力に推進されると考えております。

○田村智子君 これまで以上に強力にというのが、やっぱり制度を変えるということにつながっていかなければならないと思うんです。

 ロンドンで生まれ育ったダニエル・タメット氏の著作、「ぼくには数字が風景に見える」という本を読んだときに大変衝撃を受けました。中身全部に衝撃受けたんですけれども、サバン症候群のダニエル氏は、両親が公的扶助を受けていても、大学、大学院に進学し留学するということは、これ制度として当たり前のこととして書かれているんですよ。そのサバン症候群であることの困難はいろいろ書かれているんですけど、制度上、両親は公的扶助、日本でいう生活保護を受けていても、大学院まで進学することは普通のこととして書かれているんですね。

 日本では、二〇〇〇年代に入っても生活保護受給世帯での高校進学も保障されず、義務教育が終了するとともに子供を稼働能力とみなしていました。二〇〇五年にやっと高校就学費が基準額、生活保護の基準額の項目に入りました。それから十数年が経過しても、いまだ、高校卒業後は進学を希望しても、国は子供を稼働能力とみなすのかが問われるわけです。稼働能力とみなすのかと。

 家庭の経済状況がどうであれ、全ての子供に高等教育を含めて機会を保障する、そのための施策が必要だと思います。制度を変えていかなきゃならないと思います。大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(野田聖子君) お答えいたします。
 貧困状態にある子供や虐待を受けた子供を含め、全ての子供たちが家庭の状況にかかわらず心身共に健やかに育成され、夢や希望を持つことのできる社会、これを構築していくことは重要と考えております。

 生活保護を受給しながら大学等に進学することについて、厚生労働省からは一般世帯とのバランスなどを考慮するため慎重な検討を要するものと聞いておりますが、文部科学省の高等教育の修学支援新制度は、災害や傷病などやむを得ない事由があると学校が判断した場合は特例措置として支援を受けられる可能性があるものと伺っておりますので、このような施策を用いながら、大学に通うために必要な支援が抜け落ちてしまうことがないよう、関係省庁と連携して取組を行ってまいります。

○田村智子君 子供ど真ん中と言うにふさわしい制度をですね、制度を変えることを重ねて要求しておきたいと思います。

 次に、デジタル庁が進める子供に関する情報、データ連携についてお聞きします。
 これ、副大臣プロジェクトチームというのもつくられて、短期集中型で会合も行われています。こどもに関する各種データの連携による支援実証事業も始まっています。こども家庭庁はデジタル庁とともに子供データ連携を進めることが政府の基本方針に明記もされています。

 厚生労働省では、児童相談所における一時保護の判断に当たり、AIを活用した緊急性の判断に資するツールの開発が進められていて、広島県では同様の実証実験、これ、今年度、政府の実証実験として採択をされています。

 厚生労働省や広島県が行っているのは、いわゆるプロファイリングです。こども家庭庁が進める子供データ連携というのは、自治体等が保有するデータを連携だけでなくプロファイリングを行うということも含まれているのでしょうか。

○国務大臣(野田聖子君) 昨年末に閣議決定した基本方針において、待ちの支援から、必要な子供や家庭に支援が確実に届くよう、プッシュ型支援、アウトリーチ型支援に転換すること、子供に関する教育、福祉等のデータ連携を進め、支援に活用することを掲げています。

 支援が必要な子供や家族ほど、SOSを発すること自体が困難であったり、相談支援の情報を知らないなどの課題があります。施設型、来訪型の支援に来ることを待っていては、支援が必要な子供や家族にアプローチすることは難しいと考えています。そのため、地方自治体において、関係部局に分散管理されていることが多い子供に関する教育、福祉等のデータを連携させて、支援が必要な子供を発見し、プッシュ型の支援、アウトリーチ型の支援につなげていく取組を進めていくことにしています。

 なお、国が子供の情報を一元的に管理するデータベースの構築することは一切考えていません。

 子供データ連携の具体的な在り方については、現在、デジタル庁の下で関係省庁が連携して調査研究や実証事業を進めていると承知しております。こども家庭庁においては、その成果も踏まえつつ、デジタル庁などと連携して取組を進めてまいります。

○田村智子君 ちょっと今お答えなかったんですね。データを蓄積して、そしてそれをAIによって予測分析していくのかと。はい、どうぞ。

○国務大臣(野田聖子君) 失礼いたしました。
 子供データ連携は、地方自治体において教育や福祉等の情報を共有して、本来支援が必要な子供や家庭を発見するためのものです。その具体的な在り方については、今年度にデジタル庁が行う調査研究や実証事業において検討を進めてまいりますが、子供データ連携は人の手によって個別に精査を行う前の補助的なものであり、一定のデータのみで支援すべき子供や家庭が特定、予測されることは想定し難いものと考えています。

○田村智子君 補助的であれプロファイリングをするという御答弁でした。
 こども基本法は、第十三条で、医療、保健、福祉、教育、療育等に関する業務を行う関係機関相互の有機的な連携の確保を国、都道府県に求め、第十四条で、連携の強化のために情報共有、そのための情報通信技術の活用その他の措置を講ずることとしています。国は義務規定で、自治体には努力義務です。

 情報通信技術の活用その他の措置には、政府、自治体、民間団体が保有する特定の個人のデータを連携して、その連携したデータを分析するプロファイリングが含まれるのでしょうか。

○衆議院議員(鈴木英敬君) お答え申し上げます。
 本法案では、関係機関等の間の連携の確保に資するため、十四条一項では、国に対し情報通信技術の活用その他の措置を講ずる義務を課しており、十四条二項では、地方公共団体に対し同様の努力義務を課しています。

 委員御指摘のいわゆるプロファイリングが何を指すのか必ずしも定かではないものの、本法案における情報通信技術の活用は、関係機関等が行う子供に関する支援に資する情報の共有を促進するために行われることが定められており、その目的は個々の子供のために必要な支援が確実に届くようにすることであります。

 さらに、それらを行うに当たりましては、十四条一項及び二項において個人情報の適正な取扱いを確保することも併せて定められているところであります。

○田村智子君 具体に進んでいることをお聞きします。
 厚生労働省の児童虐待におけるAIの活用等についてという資料を見ますと、虐待の通告の対象となった児童についてリスクアセスメント項目を入力して情報蓄積し、AIを活用して個々の児童に対する解析、予測をして一時保護の確率などを判定するシステムだという説明がされています。二〇二四年度から全国での活用というスケジュール案が示されています。

 厚生労働省は、このAIによる予測分析というのは参考指標だというふうに強調するんですけれども、これAI分析を結論とすれば、AIの数値がこうだったからというふうにできるんだけれども、もし児童相談所がAI分析とは異なる判断をした場合、より責任が重く児童相談所には問われることになって、これなかなか異なる判断をするというのはハードルが高いのではないかというふうに思います。

 果たして、本当に参考にとどめることができるのか。結果として、ソーシャルワークが形式的、機械的になっていくのではないかと危惧しますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(川又竹男君) 厚労省におきましては、児童相談所における一時保護の判断に資するためのAIツールについて、今年度から設計、開発を行い、令和六年度に全国での運用を開始することを目指しております。

 現在検討しているその内容といたしましては、AIが過去の類似事例に照らして一時保護の必要性や再発の可能性を表示する機能などを考えておりまして、あくまでも職員が行う一時保護の判断のサポートが目的であります。職員に代わって判断するものではなく、緊急を要する一時保護の判断の一助として参考にとどまるものというふうに位置付けております。

 児童相談所が実施する一時保護の場面で、子供や親、関係者から丁寧に話を伺い、アセスメントを実施する児童福祉司などによりますソーシャルワークは、これは引き続き重要でありまして、厚労省としては、このAIツールの運用に際しましても、このツールの意義、活用方法等について丁寧に説明をし、適切に活用いただけるように取り組んでまいりたいと考えております。

○田村智子君 実証実験が採択された広島県の事業を見てみますと、非常に広い個人データを基にリスク評価を行う内容になっています。

 妊婦健診の状況、両親の喫煙の有無、障害福祉サービスの利用状況、生活保護、就学援助などの経済支援、児童扶養手当、一人親医療などのデータを集約して分析をして、AIモデルを開発する、そして、そのAIの予測によって、児童虐待リスクスコア、これを活用していこうというものなんですね。で、虐待リスクが大きいと判断されれば、子供の一時保護などを行うということになろうと思います。

 つまり、様々な支援策を利用すると、それが虐待リスクの判定のデータとして使われるということになるんですね。そうすると、虐待を疑われるのではないかと保護者が恐れて、支援機関を頼らないとか、経済支援を利用せず苦しいことを隠すということになってはいかないかと。また、ソーシャルワーカーは監視する側の人、支援を受けるのは監視される人という関係性がつくられてはいかないかということも懸念されます。こうしたことが払拭できるような制度設計になっているんでしょうか。

○政府参考人(相川哲也君) お答えいたします。
 子供データ連携を理由として、支援を必要とする子供や家庭が支援を避けるようなことはあってはならないと考えます。教育や福祉等のデータは国民の究極のプライバシーであることから、個人情報保護法令との整合性はもとより、国民の意識に沿った検討が必要と考えております。

 今年度にデジタル庁が実施しております調査研究や実証事業において、個人情報の取扱いについても重要な論点の一つとして検討が進められており、どのようなデータ連携ならば国民の理解が得られるのかなどについて、デジタル庁や関係省庁と連携して検討を進めてまいりたいと考えております。

○田村智子君 イギリスでは、二〇〇〇年に九歳の女の子がおばとおばのボーイフレンドによって殺害をされたビクトリア・クリンビー事件を契機に、二〇〇四年児童法が制定され、全国規模のデータベースが整備されました。

 しかし、すぐに批判の声が上がりました。一つは、ソーシャルワーカーの役割を監視にシフトさせ、当事者との信頼関係を結び付けることを困難にさせるという批判。例えば、依存症や精神疾患のある母親は、受診歴がデータとなってソーシャルワーカーに知られると分かっていて、果たして精神科を受診するかと、虐待の可能性がある親とみなされることを恐れて受診せず、結果として援助が届かない、逆に介入を難しくするかもしれないという批判。もう一つの批判は、そもそもビクトリアが死んだのは、情報の不足ではなく、アセスメントとマネジメントの不備で、必要なのは情報の海ではなく、どの情報が重要であるかを判断する専門職としての力量だという指摘でした。データベースの導入は、デスクワークと管理業務を増やし、かえって専門職と職場の力量を弱めるということも指摘をされました。

 イギリスでは、これらの批判を受けてデータベースの手直しは進められましたが、指摘された問題を払拭することにはなりませんでした。

 その後、二〇〇七年、ベビーP、ピーター事件というのが発生します。やはり、十七か月の男の子の虐待死の事件です。

 それを契機としたロンドン大学社会科学部のムンロー教授による調査、勧告を経て、全国規模のデータベースは廃止されました。ムンロー氏は、ソーシャルワーカーは、一つのフォーマットがコンピューターに登録されていて、それを情報で埋めていくことにかなりの時間を割き、一番重要な子供に会う時間が奪われていった、ソーシャルワークが手続の多い官僚的な業務となり、子供と家族にとって何が大切かが見えなくなってしまったなどと指摘をしています。

 大臣、先行事例とも言えるイギリスの経験をどう受け止めるかなんですね。日本で最も足りないのは、やはりケースワークの時間と人ではないのかと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(野田聖子君) 委員御指摘のイギリスの事件については、詳細は存じ上げませんが、幼児の男の子が虐待死した痛ましい事件であります。これを契機としてソーシャルワーカーの改善に取り組まれたものと承知したところです。

 昨年十一月に総理に提言されたこども政策の推進に係る有識者会議報告書、ここにおいて、子供や家庭の支援に関わる人材の確保、育成、ケアについて指摘されております。

 こども家庭庁において、児童虐待、児童虐待相談等の増加に見合った児童相談所や市町村の更なる体制強化等に取り組んでまいります。

 児童福祉司等の体制強化については、児童虐待防止対策体制総合強化プラン、新プランに基づいて人員増に努めてきたところで、目標年度である令和四年度を一年前倒しして、令和三年度におおむね達成をいたしたところです。

 さらに、現在審議中の児童福祉法改正案において、子供家庭福祉の認定資格を導入することと承知しています。児童福祉司の方々にも積極的に取得いただいてスキルアップを図ることにより、児童相談所における専門性の向上にもしっかりと取り組んでまいります。

○田村智子君 このイギリスでは、ですから、データベースというのをやめて何をやったかというと、専門性を向上させるための研修とか、これをどうやったらケースワークに集中できるかという改革をやっているんですよ。過去に起きた個別のケースについてのケースワーク、これを重ねていくことで専門性も高めていくというようなことも取組は進められているんですよね。そういう情報の使い方はあると思いますよ、私は。果たして、AIの予測で危険なリスクを、リスク評価をするということがどういうことになっていくのかなんですよ。

 広島県の実証実験では、個人情報の連携を行う上で、個人情報保護条例の特例によって、本人同意を必要とせずに情報活用がされています。ここにも、私は、行政との関係性のゆがみ、これを生じさせかねないというふうに思います。加えて、こうした情報分析が実際には子供の予算や支援体制を節約する方向に使われるのではないかという、こういう懸念も拭えないわけです。

 先ほど紹介した副大臣プロジェクトチーム、ここの中で主な検討事項というのがまとめられているんですけど、行政の各部局や学校、児童相談所、医療機関等の関係機関の妊娠期から二十歳頃までの成長、発達にわたる情報を必要に応じて連携させ、真に支援が必要な子供、家庭の発見やニーズに応じた支援を行う取組につなげるための情報、データの連携はどうあるべきかというふうに検討されたことが書かれているんですね。

 これね、ちょっと読んで、私、自分が胎児のときの母親の情報から二十歳までの個人の情報が連携されるということは、これはちょっと議論が相当に必要なんじゃないかということも感じたんですけど、ただ、この質問で注目をしたいのは、この中で、そういう情報連携をすることで、真に支援が必要な子供、家庭の発見というふうに出てくるわけですよ。何でこういう情報連携やるかと。

 この真に支援が必要なというのは、これまで狭い支援をやるときに使われてきた常套句なんですよ。今日、冒頭でやった高等教育の支援というのも、真に必要ななんですよ。だから、様々な課題を残した極めて狭い支援策になってしまった。

 例えば、子供の貧困といったとき、母子世帯の貧困率は高いです。だから、そこへの支援は必要です。しかし、絶対数で見てみれば、圧倒的に二人親世帯での子供の貧困、これが絶対数は圧倒的に多いんですよ。こういうことが見逃されていかないかと。

 真の必要性を強調することで、結局、予算や人の体制充実という全ての子供への権利保障、こういう施策が逆に狭められてしまうんじゃないかというふうに危惧するんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(野田聖子君) お答えいたします。
 支援が必要な子供や家族ほどSOSを発すること自体が困難であったり、相談支援の情報を知らないといった課題があります。施設型、来訪型に来ることを待っていては、本来支援が必要な子供や家族にアプローチすることは難しいと認識しています。

 子供データ連携は、本来支援が必要であるけれども、SOSを発することができていないなどの状況にある子供や家庭に対し必要な支援が確実に届くようにするために、教育や福祉等のデータを連携させて、そうした子供や家庭を発見するためのものであります。もちろん、子供データ連携のみで子供や家庭に支援を届けることはできません。子供データ連携により発見した子供や家庭に対し、地域の様々な関係機関、団体が連携して、個別のケースを共有しながら支援につなぐことが必要であり、そのために必要な予算や体制を確保することは重要であると考えています。

 今後、こども家庭庁の下で子供政策を我が国社会の真ん中に据えて、子供をめぐる様々な課題を一元的に中長期的な視点で進める中で、地方自治体における子供データ連携により支援の必要な子供や家庭を発見し、ニーズに応じたプッシュ型の支援につなげる取組については、国民各層の理解を得ながら幅広く検討を進めて、安定財源の確保を図りつつ充実してまいります。

○田村智子君 提案者にもお聞きしたいんですね、こども基本法。
 情報通信技術の活用は、これまで指摘したように、支援を必要とする者を、そういう私のデータを取られていくということを危惧することから、逆に支援から遠ざけるという危惧が生まれないか、また、予算の充実や支援の充実の足を引っ張るということにならないか、いかがでしょうか。

○衆議院議員(鈴木英敬君) お答え申し上げます。
 かねてより子供の貧困対策などにおいても、支援の必要な家庭が必要な支援制度を知らない、手続が分からない、支援制度を利用したがらないという状況が見られたところであります。提案者としましては、情報通信技術の活用により、むしろこうした事態を打開することを期待しております。すなわち、情報通信技術の活用により、関係機関間の連携を確保し、本来支援を必要とする子供や家庭に対し、必要な支援がプッシュ型、アウトリーチ型で適切に届くような運用を想定しております。

 また、御指摘ありました予算や施策の充実の関係ですが、まず、情報通信技術の活用は、関係機関が支援に資する情報の共有を促進するためのものであり、単に効率化や人員の合理化のためのものではないことは明らかにしておきたいと思います。

 その上で、本法案十六条において、子供施策の実施に必要な財政上の措置について定めるとともに、その前提として子供施策の幅広い展開その他の子供施策の一層の充実を図ることをうたっているところでありまして、情報通信技術を活用する施策を講ずることに伴って、他の子供施策やそのための予算の充実が後退するようなことはあってはならないと考えております。

 私、三重県知事時代に、初めて、全国で初めてAIを活用した一時保護をやりました。そのときの職員の声は、職員の負担軽減につながったというものでありました。その他のケースにも手が回るようになった、つまり、先ほど委員が御指摘あったケースワークのための時間と人を生み出したということでありますので、足を引っ張ることは一切ないと思います。

○田村智子君 現在の足りな過ぎる人の下で、確かに一定の役割はあるかもしれない。だけど、人を増やすことこそがケースワークの充実だというふうにも思います。

 私は、このデータ連携と利活用というのは、子供の権利という視点からもちゃんと議論が必要だと思うんですよ。

 デジタル庁、文科省、内閣府、総務省によって教育データ利活用ロードマップが策定されました。発表直後から教育データの一元化に反対しますなどのハッシュタグが登場するなど批判の声が広がって、デジタル庁はQアンドAを出して、国が一元的に管理するんじゃないですよというふうに一生懸命火消しもやったという事態になったんですね。

 子供に関わる情報がいろいろな機関によって連携され、蓄積もされ、プロファイリングまで可能とすると、こういう仕組みをつくることに国民的な合意があるとは私にはとても思えないんです。

 そもそも、子供に関わるデータの活用について、子供の中の議論や合意もなく進めるつもりなのかと。私の個人情報を子供がどうやって、それをこう使っていいよという合意を取るのかと、本人同意どうするのかと、こんな議論も全くないですよね。そのままに連携、利活用というのがとてもとても進められていくように思うんですね。

 デジタル庁QアンドAには、教育データを利活用して、児童生徒個々人のふるい分けを行ったり、信条や価値観等のうち本人が外部に表出することを望まない内面の部分を可視化することがないようにするというふうにありますけれども、現在の個人情報保護法は、形式的な同意さえあれば人の内面に関わる分析は可能です。事後的に同意の取消しもできません。

 どうやってこのQアンドAのAに言ったようなことを担保できるんでしょうか。そういう法改正やるということなんでしょうか。

○政府参考人(村上敬亮君) お答え申し上げます。
 本ロードマップは、学習者主体の教育への転換や教職員が子供たちと向き合える環境を整えるための論点を関係省庁と整理したものでございまして、その論点のうちの一つが、御指摘のございました、信条や価値観等のうち本人が外部に表出することを望まない内面の部分を可視化することがないようにということで、個人が望まないような内面の可視化について、その外部への表出について配慮することを求めてございます。

 内面の部分の可視化そのものの作業ではございませんが、当然これを外部に表出するというところにつきましては、御指摘のあったとおり、これは当然、個人情報保護法令に基づき、しっかりとその情報の利用については保護されるということになるものでございます。

 それを具体的にどういう形でやっていくかというところも御質問あったかと思いますが、まさにその辺りも含めて、しっかりと実証を積み重ねながら、何よりも本ロードマップは個人情報の適切な取扱いの確保を厳しく求めているところでございますので、これにしっかりと適応した形になるように、引き続き関係各省とよく検討してまいりたいと、このように考えてございます。

○田村智子君 子供の権利として子供の個人情報をどう守るのか、その議論なき利活用というのはあり得ないということを申し上げまして、質問を終わります。


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