東大は600人/正規雇用減り下がる研究力
国立大学や国立研究機関の非正規雇用の研究者が、最大4500人も雇い止めになる恐れがあります。17日の参院内閣委員会で、大量の雇い止めをおこさないように政府に求めた日本共産党副委員長の田村智子参院議員に聞きました。
「この問題は今国会でこれまで3回とりあげてきました。『朝日』が21日付の社説で取り上げるなど、世論の関心の高まりを感じます」
なぜ大量の雇い止めの危険があるのか。
2013年4月施行の改定労働契約法。非正規の有期雇用が通算5年を超えた場合、労働者が希望すれば期間の定めのない無期雇用に転換できるとされました。ただし研究者は特例で10年を超えた場合とされました。
早い人は23年3月末に通算10年を迎えます。無期雇用への転換を避けるため、その前に雇い止めにする恐れがあります。
「13年の改定労働契約法の審議では、私の質問に、田村憲久厚生労働相(当時)は同法は『雇用の安定を図るのが目的』と答弁しました。下村博文文部科学相(同)は大学に『一律に契約終了されることのないよう促していく』と答弁しました。そうした政府答弁に沿って、各大学・研究機関を指導すべきです」
23年3月末に雇用期間が10年に達する研究者は、国立大学で3099人、国立研究機関で1390人、あわせて4500人に上ります。大学ごとに見ると、東大588人、東北大275人、京大257人などとなっています。
社会の発展妨げ
「これは日本の科学研究の将来にかかわる重大問題です。研究者が任期を気にせずに研究に没頭できる環境がなければ、日本の研究力、ひいては社会の発展が妨げられてしまいます。任期のない正規雇用の研究者の増員が必要です」
田村さんは研究者の正規雇用が減少したことで、日本の研究力が低下してきたと指摘します。
研究力を測る主要な指標の一つである論文数を見ると、日本は2000年代半ばから低下しています。
「減少傾向の一番の要因は、国立大学の論文数の落ち込みです。私立大学は論文数を維持しています。この20年で国立大学の研究者は任期付きの非正規雇用がふえ、正規雇用が約6万人から4万人に激減しました(図②)。背景には国立大学の運営費交付金が大幅に削減されてきた事情があります。同じ期間の私立大の研究者の正規雇用は2千人減です。この違いが論文数に影響していると思います。私の指摘を文科省も無視できず『分析してみたい』と答えました」
政府無視できず
17日の参院内閣委員会。田村氏の質問に、小林鷹之内閣府特命担当相は「日本の研究力向上のためには、研究者が腰を据えて研究に打ち込む環境を整えることが重要。その観点から雇用の安定を確保する労働契約法の趣旨にのっとった運用がなされることが大変重要だ」と答弁しました。
「立場は違っても、日本の将来にかかわる共産党の提起を政府も無視できなくなってきています」
5年前、非正規雇用の事務職の雇い止めが問題になったとき、国会内外の取り組みで歯止めをかけました。
「5年前、私たち日本共産党の国会議員団は、各研究機関の所管省庁と交渉を重ねました。国立研究所である理化学研究所では、労働組合に結集した非正規事務職員が、全員無期転換をかちとりました。今回、理化学研究所では600人の研究者が雇い止めになる危険があります。同労組は研究者の雇い止め中止を求め、3万人の署名を集めています。力を合わせて雇い止めを何としても阻止したい」
2022年5月29日(日) しんぶん赤旗日曜版