政策・マニフェスト

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【田村智子の実績】国立大学等の非正規研究者4500人の大量雇い止めを明らかにしました!

2022年5月18日(水) しんぶん赤旗

非正規研究者・国立大など4500人雇い止めの恐れ 田村智議員の追及で判明

 

 国立の大学・研究機関の非正規雇用の研究者のうち最大4500人が、無期転換逃れのために2022年度末までに雇い止めにされる恐れがあることが17日の参院内閣委員会でわかりました。日本共産党の田村智子議員の追及で判明したもの。田村氏は、大量の雇い止めをやめさせるよう迫りました。

 労働契約法は13年の改定で、非正規の有期雇用が通算5年を超えた場合、労働者が希望すれば期間の定めなく働ける無期雇用に転換できるとされ、大学や研究機関の非正規雇用の研究者は特例で10年を超えた場合とされました。このため、無期雇用への転換を申請できる前に雇い止めにする恐れが指摘されています。

 田村氏は、国立大学の非正規雇用の研究者のうち、労働契約法の特例で認められた有期雇用契約の通算10年に達する者の数を質問。文部科学省の柿田恭良総括審議官は「3099人」と答えました。

 田村氏は、国立の研究機関では1390人が同様に雇い止めの対象になっており、国立の大学・研究機関であわせて最大4500人の非正規雇用の研究者が雇い止めになりかねないと追及。小林鷹之・内閣府特命担当相は「研究者の雇用の安定を確保する労働契約法の趣旨にのっとった運用がなされることが重要だ」と答えました。田村氏は、各大学・研究機関に適切に指導を行うよう求めました。

 

 

【2022年5月17日 内閣委員会 議事録】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 三月八日の内閣委員会、二十五日の決算委員会に続きまして、日本の研究力について質問いたします。

 日本の論文数の傾向について、まずおさらいをしたいんですね。研究論文は複数の研究者が関わっており、十人が関わっていたら、それぞれの人を一とカウントするのが整数カウント、十人それぞれを〇・一などとカウントするのが分数カウントと呼ばれています。この分数カウントで研究論文数見たとき、二〇〇〇年をピークに論文数の増加率が減少に転じています。

 科学技術・学術政策研究所、NISTEPの分析資料をもう一度配付いたしました。
 国立大学、私立大学、公立大学、研究開発法人、企業など、組織別に論文数の変化が示されています。一九九八年平均から二〇〇三年平均では、企業以外は論文数を伸ばしています。二〇〇三年から二〇〇八年で特に劇的な減少に転じているのが国立大学で、私立大学は論文数増加の傾向を維持しています。

 三月八日、明確な答弁がなかったので、もう一度確認したいんです。二〇〇〇年以降、日本全体の論文数の減少傾向の一番の要因は国立大学での論文数の落ち込みである、私立大学は全体として論文数増加を続けて、論文数の減少に歯止めを掛けてきた、このこと、大臣もお認めいただけますか。

 

○国務大臣(小林鷹之君) お答え申し上げます。
 今、田村委員御指摘のとおり、文部科学省科学技術・学術政策研究所、いわゆるNISTEPが実施したこの科学研究のベンチマーク二〇二一の調査によりますと、今委員が御指摘いただいた分数カウント法により算定した論文数は、国立大学につきましては、一九九八年から二〇〇三年にかけて増加したものの、二〇〇三年以降は減少しております。また一方、私立大学の論文数は、一九九八年以降増加を続けているという認識を持たせていただいております。

 

○田村智子君 事実ですから、そのことを確認をしたということになります。
 NISTEPの研究を政策に生かすためには、これをどう分析するかが問われてくると思うんです。企業の研究論文数の減少傾向は、技術者を含むリストラ、人件費抑制政策の影響だと私は考えています。

 経済安保推進法の審議でも、半導体産業の凋落について指摘しました。量子技術も、世界で初めて量子コンピューターの実現可能性を示したNEC基礎研究所は、リーマン・ショック後、NECのリストラ方針の下で研究チームは縮小、解散、最終的に研究所そのものが廃止されました。

 では、国立大学はどうかと。資料の三ページ目ですけれども、二〇〇一年に常勤、これは、フルタイムの研究者は六万一千九人いた、それが二〇二一年、六万四千八百九十一人、これ微増です。ところが、このうち任期付き、言わば非正規雇用の研究者は一千六百六十六人から二万四千五百一人に大幅増加をしています。正規雇用は二万人近く減ったことになります。

 一方で、私立大学は、非正規雇用の研究者、やはり大幅に増えているのですが、ほぼ同じ規模で常勤職員、フルタイム職員全体が増えています。正規雇用の減少は二千五百人程度だということが分かるんです。

 国立大学で研究者の非正規雇用化が劇的に進んだ、このことが論文数の推移に影響を与えたのではないのかと考えますが、大臣いかがでしょう。

 

○国務大臣(小林鷹之君) お答え申し上げます。
 国立大学の研究者数などが論文数の増減にどのような影響を与えているかにつきましては、まだ詳細な分析はなされていないと承知しておりますが、論文数減少の背景として考えられることを申し上げますと、例えば、まず、競争的研究費の申請などの複雑な事務手続などによって研究者の研究時間の減少を招いていることが挙げられると思います。

 また、世界のトップレベルの研究大学が自己収入を含む様々な資金を獲得することによって事業規模を拡大している中で、海外の大学と我が国の研究大学との事業規模の差が拡大していることも挙げられると思います。その一方で、こうした世界と競争する研究大学だけではなくて、多様な大学の強みを引き出すための取組が十分でなかったこと、これを要因として挙げられると思います。

 そして、若手の研究者が腰を据えて研究できる環境では十分でないということとともに、博士号取得者の多様なキャリアパスが十分開けていないこと、こうしたことがこの背景としてあるのではないかと認識しているところであります。

 

○田村智子君 非正規雇用化がどういうふうに影響を与えているかはまだ分析できていないということなんですが、八日の質問、文科省にも同じことを質問いたしました。

 国立大学と私立大学で研究者の任期の有無が論文数に与える影響について更に分析したい旨の答弁がありましたが、二か月たって何か分析されたでしょうか。

 

○政府参考人(寺門成真君) お答えを申し上げます。
 三月八日、内閣委員会で先生に御指摘いただきまして、その後、おっしゃるように着手して分析中でございますけれども、本日先生も改めてお配りしていただいています三ページのデータにございますとおりでございますが、任期の有無別の研究者に係るデータというのが今時点で必ずしも十分にそろっていないところでございまして、例えばそれに基づいて重回帰分析による分析等を行うということが困難な状況でございまして、今、現時点ではお伝えできるような明確な調査結果を得るには至ってございませんが、大変に重要な点でございますので、引き続き多角的な観点から、複合的な要因が影響している論文数の停滞の原因等については分析を続けて深めてまいりたいと存じます。

 

○田村智子君 先ほど大臣が指摘された要因というのは、別に国立大学と私立大学で差があるわけじゃないと思うんですよ。競争的資金に係る事務手続、資金の獲得、むしろ国立大学の方が資金獲得のための取組、様々にやっている大学がありますよね。

 そうすると、私立大学は論文数維持している、減少傾向になっていない、だけど国立大学は劇的な減少なんですよ、何が違うのかと。明らかに非正規雇用化は国立大学なんですよ、明らかに。だから、こういう根本的な要因分析がやはり必要だと思いますよ。

 非正規雇用化されると何が起きるか。研究時間の減少が起きるのは、短期契約だから競争的資金を常に取りに行かなければ研究ができません。そして、正規雇用そのものの人数が減ってしまっているから、正規の雇用の教員、研究者も大学の事務負担が増えてしまうと。やはりここは分析必要なんですよ、二万の規模ですから。是非やっていただきたい。

 八日のときにも、大臣の答弁の中で、一方で、大学の現場が任期なし、無期雇用ですね、このポストの充実を促すことができるように支援の工夫を図っているという答弁ありました。また、特に優秀な若手研究者の安定的ポストの確保を図っていくことを促しているという答弁もありました。

 それでは、無期雇用の研究者が減少しているということはやはり問題があるという認識なのか、また無期雇用のポストを増やすことは必要であるという認識なのか、確認したいと思います。

 

○国務大臣(小林鷹之君) お答え申し上げます。
 若手の研究者の方が研究に専念できる環境をつくっていくことが重要だと考えておりますので、若手研究者が挑戦的な研究に取り組むことができる創発的研究支援事業などの施策を実施しております。また、これらのほかに、若手研究者の方への任期なしポストの充実も必要だと私は認識しております。

 したがって、内閣府といたしましても、これ令和二年にいわゆるCSTIで決定されたものでございますけれども、研究力の強化、また若手研究者支援総合パッケージというものがございまして、このパッケージを踏まえて、間接経費ですとか、また競争的研究資金の直接経費から研究者の人件費を支出することで捻出した運営費交付金、こうした多様な財源を戦略的かつ効果的に活用することによって、特に優秀な若手研究者の安定的なポストの確保を図っていくということを研究現場に促しているところでございます。

 引き続き、こうした取組を各大学が行うことを政府として後押ししていくことで、一定の流動性の確保を図りつつも、大学における優秀な研究者の安定的なポストの確保を図って、それをもって我が国の研究力の強化に取り組んでいきたいと考えております。
○田村智子君 高橋文科大臣政務官、科学技術・イノベーション計画にはキャリアパスの明確化やテニュアトラック制の積極的な活用が盛り込まれていること、また、国立大学運営費交付金で、今大臣の答弁のあった若手研究者割合の減少についての対策取ったということが説明をされました。

 このテニュアトラック制度、五年間の審査期間を経て安定したポストを得るという制度なんですけれども、これを活用すれば若手の無期雇用研究者は増えることになるんでしょうか。正規の研究者の増員という方策なしには不可能だというふうに考えますけれども、そのための具体的措置はどのようにとられているんでしょうか。

 

○大臣政務官(高橋はるみ君) お答えを申し上げます。
 我が国の研究力向上のためには、一定の人材の流動性を確保した上で、研究者の方々が安定的なポストの獲得も含めた将来への見通しを持ち、研究に専念できる環境を整備することが重要と考えるところであります。

 御指摘のテニュアトラック制度は、一定の期間、任期付きという競争的環境を経て、公正で透明性の高い審査を行い、任期のない安定的な職を得ることができるようにするものであり、まさに優秀な研究者が将来への見通しを持って研究に専念する環境づくりに資する制度であると、このように承知をいたしております。

 文科省といたしましては、若手研究者のキャリアパスの構築と研究に専念できる環境の確保に向けていろんなことをやらせていただいておりますが、国立大学におけるテニュアトラック制度や若手ポストの確保などの人事給与マネジメント改革状況や若手研究者比率を考慮した、先ほど御指摘がございました運営費交付金の配分、また、各国立大学における年代構成を踏まえた持続可能な中長期的な人事計画の策定の促進、さらには若手研究者のキャリア構築や研究環境確保、能力開発に向けた取組への支援といった支援策を進めているところでございます。

 今後とも、我が国の研究力の強化に向け、人材の流動性の確保と安定的な研究環境の確保の両立を図ってまいる所存でございます。
 以上でございます。

 

○田村智子君 これ、問題は安定的ポストが増えるのかなんですよ。正規研究者の増員が図られるのかどうか。それには、やはり基盤的経費の増額をしなければ、退職者に見合う採用という既存の人事の在り方は変わらないということになってしまうんですね。

 八日のやり取りの中では、地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ、これが若手の安定的ポストにつながるかのような答弁もあったんですけれども、実は、このパッケージに含まれるWPI、世界トップレベル研究拠点プログラムは二〇〇七年からスタートしていて、既に支援の打切りに伴う乱暴な雇い止めが起きています。WPIは、一か所当たり数億から十数億の支援を十年を基本に最長十五年まで行うもので、最初に五拠点選ばれました。そして、全て世界的研究拠点にふさわしい成果を上げたと評価をされましたけれど、結局五年間延長されたのは東大のカブリ数物連携宇宙研究機構だけで、ほかは国の支援が打ち切られて、新たにWPIアカデミーというプログラムで、交流に対する支援として一拠点当たり数千万円の支援だけとなったんです。これ、大幅な運営費の削減になってしまっているんですね、多くのところで。

 東北大学原子分子材料科学高等研究機構、AIMR、ここは年間十三億程度の予算で運営されていましたが、打切りとともに年間八億円に縮小されて、任期付きの研究員の半数が解雇されました。契約更新しながら十三年間勤めた准教授が地位確認の訴訟を起こしました。裁判所は、この准教授の高度の技術、能力を評価し、世界トップレベルの研究成果を達成するにふさわしい即戦力として雇用され、任期中も相応の成果を上げたと認定をしています。この方は、大学側のホームページで紹介するほどの大変優れた研究者、だけど雇用を打ち切られたんです。

 文部科学省は、この訴訟、承知していますか。また、WPIが終了した他の拠点でも同様の研究者の解雇があったのではないのかと思いますが、いかがでしょうか。

 

○政府参考人(坂本修一君) お答えいたします。
 東北大学に確認したところ、東北大学AIMRの元研究者に関して、御指摘のような事案に係る裁判が行われたと聞いております。

 世界トップレベル研究拠点プログラム、WPIにおいては、基礎研究における国際頭脳循環のハブとなる研究拠点の形成を目指し、十年間にわたり国際的な研究拠点の形成を支援することとしています。この拠点を採択するに当たっては、申請機関に対して、当該補助金による支援期間終了後の取組も含めた長期的な拠点構想を策定することを求めており、支援終了後も各機関が拠点活動の維持、継続を図ることとされています。

 各拠点によって支援終了後の状況は異なりますが、支援期間終了後を見据え、大型の外部資金を獲得して拠点活動を継続、展開している拠点もあります。

 例えば、東北大学AIMRを含めて、二〇一六年度に当該補助金による支援期間が終了した四つの拠点における研究者の合計人数は、支援の最終年度、十年目時点において計五百四十二名であったところ、翌年度、十一年目においては計四百五十名となっており、研究者数を八割以上維持して拠点活動を継続しております。これらの研究者の雇用については、各大学における雇用制度に基づき対応がなされていると承知しています。

 

○田村智子君 十二年以降も是非見ていただきたいと思いますが、一年たっただけで二割近くが切られているという意味ですよ、今のは、逆に言うと。

 こういう研究大学総合振興パッケージは期限を切ったプロジェクトの寄せ集めなんです。大学にとってプロジェクトというのは横出しなんですよ。既存の枠組みとは別の新しい研究開発、新たに人を雇っても、プロジェクト終了とともにその研究者の雇用をどうするのかということが常に問題になってくるんです。確かに外部資金獲得できる大学もあるでしょう。でも、そうならない研究もありますよ、なりにくいものが、すぐに産業化できないような研究ですよね。そうすると、大学がそこを維持しようと思うと、ほかの運営費を削ってそっちに持ってこなくちゃいけないと。今度はほかにしわ寄せが行くということになってしまうんです。

 やっぱりこの二万人規模で増えた非正規雇用の研究者を正規雇用にしていくというためには、こういうプロジェクト型の寄せ集めのようなことでは私は無理だと思う。大臣、いかがでしょうか。

 

○国務大臣(小林鷹之君) お答え申し上げます。
 任期なしポストを確保するなど、意欲と能力のある研究者が私は研究に専念できる環境を醸成していくということは、新規性の高い研究を含めて、優れた研究をじっくり腰を据えて取り組むために必要な方策だと私は考えています。

 この国立大学法人の人事につきましては、各法人の経営判断で決定されるものでございますので、また、その業務運営については所管省庁である文部科学省において適切に対応いただくものではございますが、意欲と能力のある研究者の方がそれにふさわしい処遇を得て研究に取り組めるようにするということが、我が国全体の研究力を強化していくに当たって私は極めて重要なことだと考えています。

 なので、内閣府といたしましても、先ほど申し上げたとおり、例えばその競争的研究費の直接経費からも人件費を支出することなどで捻出した運営費交付金など、こうしたいろんな財源を戦略的に活用することで任期なしのポストを確保をして、優秀な若手研究者の安定的なポストの確保を図っていくことを促す、こうしたことで政府として引き続き研究力の強化に取り組んでいきたいと考えているところであります。

 

○田村智子君 運営費交付金を戦略的に使えでは駄目なんですよ。増やさなかったら正規雇用は増えないんですよ。

 今、国立大学では、非正規雇用の研究者が大量に雇い止めされようとしているんです、正規雇用を増やすという抜本的な対策がないから。国立大学法人、大学共同機関利用法人の非常勤職員のうち、科学技術・イノベーション法により労働契約法の特例の適用を受けていて、来年三月三十一日で契約期間が十年となる者、そのうち雇用契約が通算雇用期間を十年以下に制限されている者は何人か、お答えください。

 

○政府参考人(柿田恭良君) お答えいたします。
 文部科学省におきまして、所管の国立大学法人及び大学共同利用機関法人に対しまして確認をいたしましたところ、本年二月時点で、有期雇用職員のうち、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律等による労働契約法の特例の対象者で、令和五年三月三十一日で通算の雇用期間が十年となる方の数は三千九十九人であり、そのうち各法人の労働契約で通算雇用期間を十年以内としている方の数は千六百七十二人となっております。

 

○田村智子君 十年超えれば無期転換の申込みをする権利が生じるんですね。その無期転換逃れのために雇い止めのおそれのある研究者が最大三千九十九人ということになります。東北大二百七十五、東大五百八十八、千葉大九十四、名古屋大二百六、大阪大百二十六、九州大八十七などですね。

 五年前の事務職員等に対する雇い止め、また先ほど紹介した東北大学の対応を考えますと、このままでは大量の雇い止めの危惧が拭えません。既に一千六百七十二人はもう三月で契約打ち切りますよというふうに言われているわけなんですよね。この国立大学法人等の非正規雇用の常勤研究者は約二・五万人ですから、その一割を超える方々が雇い止めのおそれがあるということになります。

 八日のこの委員会では、理研など国立研究機関について、一千三百九十名が同様に雇い止めの対象となり得るということを示しました。合わせますと最大四千五百人になります。まさに研究者の大量雇い止めが今年度起こるかどうかという瀬戸際を迎えています。この対象となる研究者は全て十年以上勤務している方々ですね。ですから、それだけの成果を上げているからこそ契約更新してきたという方だと思います。

 研究者一人一人のキャリアにふさわしい次のポストが都合良く募集されているとは限りません。研究の蓄積が白紙に戻ってしまったら、これは社会的な損失になります。技術支援の方も、短期間に引継ぎをやったとしても、十年以上の蓄積というのが全て継承できるわけではないと思うんですね。そうすると、大臣、これは日本の研究開発に深刻な打撃を長期にわたって与えかねない事態だと思いますが、いかがですか。

 

○国務大臣(小林鷹之君) 日本の研究力向上のためには、先ほど申し上げたとおり、その研究者が腰を据えて研究に打ち込む環境を整えることが重要であると考えておりまして、そうした観点からは、今委員が問題提起していただきましたこの研究者の雇用につきましては、その雇用の安定を確保する労働契約法の趣旨にのっとった運用がなされることが大変重要だと私は考えます。

 個別の法人の業務運営については、各法人を所管する省庁において適切に対応いただくものではございますが、意欲と能力のある研究者の方がそれにふさわしい処遇を得て研究に取り組めるということは我が国全体の研究力の強化にとって不可欠だと考えます。

 政府としては、その研究の魅力の向上とともに研究環境の改善を図って、結果として国際的に比較して我が国の研究力が更に向上するように取組を進めていきたいと考えます。

 

○田村智子君 大切な答弁でした。
 そういう問題意識があるので、私の事務所で文科省に調査要求をして各大学について細かく聞き取ってもらったんです。そうやって要求しないとこういう調査もやらないですよね、文科省。

 その回答を基にまとめた資料を皆さんにもお配りしているので、是非見ていただきたいんですね。この中で、たとえ十年の期間が来たとしても雇用継続の方針ありというふうに回答している大学が多いんですけれどもね、しかし、一部局の一人の職員について契約更新するのに全学レベルの合意が必要というケースが多くて、非常にハードルが高いんです。また、現場では、契約更新の必要性を現場から要求しても大学当局がはねのけているという事例が既に起きています。

 九州大学、技術支援者のAさん、上司は何度も大学に契約更新できないかと問い合わせたが、大学は無理だと拒否をしている。そして、Aさんに対して大学の方から、期待を持たせないためにも早めに通達するようにと指示があった、来年度いっぱいで雇用は打ち切ります、どうにかできないかいろいろ聞いてはみたけど、どうしようも手だてがないらしいという説明を受けたというふうに私の事務所で聞き取りをしています。文部科学省経由で九州大学にそういう指示をしているのかというふうに問い合わせましたら、文書も指示も出していないと言うんです。

 しかし、今年度の契約の際に、大学からの指示の文書を見ながら契約更新の作業が行われています。これ以上の契約更新はないということをAさんに伝えるために文書が読み上げられてもいるんです。そうすると、今年度の契約に当たって、年度末で確実に雇い止めをするための手順書あるいは指示書、その存在が疑われます。大臣の答弁のとおり、無期転換権によって雇用の安定を図るというのが労働契約法の趣旨です。これに真っ向から反します。

 九州大学がどのような指示を出しているのか、あるいは同じような大学で同じようなことがやられていないか調査をすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

 

○大臣政務官(高橋はるみ君) お答えを申し上げます。
 各大学の教職員の雇用形態は労働関係法令に従って各大学が経営方針等に基づき適切に定めて運用すべきものであると考えております。

 文部科学省におきましては、各大学の関係者が参加する会議等において、労働契約法の趣旨を踏まえて適切に対応いただくように繰り返しお願いを申し上げているところでございます。

 引き続き、厚生労働省と連携をしながら、各大学に対して改めて無期転換ルールの適切な運用について周知徹底を図ってまいりたいと考えるものであります。
 以上であります。

 

○田村智子君 周知徹底だけでは駄目なんですよ。それでは違法、脱法行為を許すことになってしまうんですよ。
 これ、労働契約法第十九条、雇い止め法理に照らせば、雇い止めしてはならない人たちがほとんどだと思われるんですよ。裁判したら勝利するという可能性が高い事例がほとんどだと思います。

 そして、こんなことやっていたら博士課程の学生の減少に歯止め掛からないですよ。だって、大学院に進学するまでに奨学金という名の借金一千万以上抱えると。ところが、十年雇い止め、これ当たり前になっていくと。これでどうして博士課程の学生を増やすことできますか。深刻な問題ですよ。

 今、東北大学では、労働組合が雇い止めの危険を指摘して大学と交渉しています。河北新報がこの問題、五月十二日に報道しています。

 三十代の理系の研究者、この方は数年前に公募によって採用されているんですけど、アメリカの有数の研究機関から移ったと。数か月後、部局の教授から、十年たつ前に外、つまり他の大学などに行ってもらうと採用して数か月後に言われているというんですね。一般的に、若手は大学や研究機関を移りながら実績を積み、経歴を高めていく、実力本位の競争が是とされる世界で、自身も国内トップクラスの大学院で博士号を取り、米国で技術を磨いたと、この方。この男性は、雇用期間が短ければ一流科学誌に載るような研究には手を出せない、次の職につながる程々の論文を目指すようになるというふうに明かしていると。既に結婚もして子育てもすると、そうすると、もっと長く働ける、そういう場が欲しいと。そうでなければいい研究生まれないということが、これだけ問題になっています。

 大臣からは重要な認識も示されました。それが各大学に対して適切に指導として行われることを強く求めて、質問を終わります。

 


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