活動報告

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米中と対等関係こそ/経済安保法案めぐり参考人/参院委で田村氏

 参院内閣委員会は21日、経済安全保障法案に関する参考人質疑を行いました。

 坂本雅子参考人(名古屋経済大学名誉教授)は法案について、日本の軍事面での安全保障政策の新たな段階であり、米国の軍事・経済両面での対中国を軸に据えた世界戦略の展開と一体に浮上したと指摘しました。

 軍事・経済の両面でAI(人工知能)、半導体など新情報技術が必須となり、中国は同分野で著しく成長しています。坂本氏は、米国が経済的・軍事的覇権のために中国企業の排除を進め、日本政府と企業にも同様の行動を求めたとして、法案は「米国の動きに呼応・連動している」と指摘。しかし中国は日本の最大輸出国で「中国排除は企業に過大な負担を強いる」として、「日本の進路は米中双方と対等の経済関係を維持し、自主性と中立・平和を守るべきだ」と訴えました。

 日本共産党の田村智子議員は、米国の経済安保政策と軌を一にしていると指摘し、企業活動や自由な研究活動の萎縮の恐れがあるとして法案の規定・規制の不明確さを追及。坂本氏は密接な経済関係にある中国を明確に排除すれば「国民感情、企業感情で受け入れられない」と述べ、白石隆参考人(熊本県立大理事長)は「米国と軌を一にするというのは、その通りだ」と語りました。

 原一郎参考人(経団連常務理事)は、田村氏がビジネスの懸念を具体的にただしたことに対し、「民間開発の技術が軍事に転用され得るとなると企業が意図しない形で軍事に使われる。デュアルユース(軍事転用)が全てだと言われるとビジネスは成り立たない。(政府は)機微技術が何か示してほしい」と述べました。


2022年4月22日(金) しんぶん赤旗

 

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 本日は本当にありがとうございました。

 今回の法案は、アメリカの経済安全保障戦略と軌を一にして、明らかに中国を念頭に置いているものなんですね。それはもう、法案審議のときの与野党の質問の中にもう既にそのことは表れています。

 ただ、法案はもとより、政府答弁でもこういう具体のことが答弁がされていないんですね。そのために、何がリスクで、何から何を守ることが求められているのかということが非常に漠然としたままの審議にならざるを得ない状況に今なっています。

 今日も参考人の皆さんからの御意見を聞いて、資料も見て、この法案の狙いとか、なるほどこうなっているのかということが分かるって、本来、私は政府が、中国の問題にしたって、今、科学技術の発展がこういう状況で、何が危惧されているのかということは答弁があってしかるべきではないかというふうにも思うわけです。

 法案自体が政省令に委ねている部分が多いということも原因なんですけれども、これですと、企業活動ややはり自由な研究活動に対しての支障とか萎縮ということが、やはりとても心配されるわけです。

 それで、お聞きしたいのは、白石参考人と坂本参考人にお聞きしたいんですけれども、なぜその予見可能性を高めるためにも規制に関する問題意識とか狙いとかが明確に語られないのかと、政府の側から。なぜこういう曖昧な漠としたものとしての法案となり、漠とした答弁となっているのか、そのことについてどうお考えなのか、それぞれにお聞きしたいと思います。

○参考人(白石隆君) まず、先生の質問にお答えする前に、米国と軌を一にしているということがございました。私は、それはそのとおりだろうと思います。それはなぜかと申しますと、日本国家の安全と日本国民の自由、安全、豊かさを守るためには、これが外交安全保障、経済政策として最善だと。一〇〇%オーケーだとは言いませんけれども、ほかの選択肢に、あるいは戦略に比べるとはるかにいいというふうに私は考えております。

 実際、戦後の、第二次大戦以降の秩序という、いわゆる自由世界というのは太平洋と大西洋の二つの大きな同盟に支えられておりまして、中国とロシアはそれを壊そうとしていると。ですから、それに対抗するというのは我が国にとって当然なことではないでしょうかというのは、これは私の基本的な考え方でございます。

 じゃ、その上で予見可能性をどのくらい上げようかと。これ、私先ほど申しましたように、現在、今、日本も世界中も力を入れておりますのは先端新興技術でございます。これは、どう、最終的にどう使われるのか、誰が使うのか分かりません。分からないところで予見可能性を高めるからはっきりさせよというのは、これは無理な話じゃないかというのが私の基本的な考え方でございます。

 もちろん、その中でだんだんといろんな、この法律を実際に施行していく中でいろんな問題が出てくれば、それはそのときにまた変えればいいんであって、私自身は歩きながら考えたんでいいんではないだろうかなというふうに考えております。

○参考人(坂本雅子君) なぜこの法案が漠然として曖昧で分かりにくいのかという問題ですけれども、余りリアルに出し過ぎると、経済界ややっぱりいろんな国民生活、国民の中から疑問が出てくるし、それに賛成、もろ手挙げて賛成しようという人は意外に少ないんではないかと思います。

 メディアは中国のいろんなことを言って、中国の民主主義や中国の物づくりやいろんなことを厳しい批判で見るし、これからこんなことを軍事的にするんだろうと言っていますが、意外に、国民、広い感情の中に、中国のことなら何でも駄目だ、中国は怖い国だ、中国は技術を盗む国だということはそれほど浸透していないし、ましてや、経済人で中国と実際にビジネスをしている方たちに、だからこの企業、中国のこの企業と取引しちゃいけないよとか、この企業と共同技術開発しちゃいけないよという命令をされると、余計、非常に違和感があるのではないかと思います。つまり、国民の実態とか企業の実態と今のところ合ってない。

 アメリカは、同じようにそんなことでも、意外に政府の権力が強いので命令できるわけですね、使うなというふうにね。それは日本ではできないんですよね。ここの企業の製品使うなとか、インフラの導入する際にはどんなにそっちが安くたって使うなと。じゃ、理由は何ですか、機密情報が盗まれるからだということになるわけですよね。

 それは、私はレノボのパソコン使っていますけれども、それじゃ、そういう製品全部排除するのかということになると、それは国民感情として、企業感情として受け入れられない。だから、何か最初は曖昧に曖昧に曖昧にして、ずうっとずるずるずるといっていつの間にか手を縛られているというふうな方向に持っていきたいんじゃないかというふうに思います。

○田村智子君 ありがとうございます。
 確かに、説明の中にもありましたけど、アメリカは、リストも作って、この企業、この製品というのは排除というのを政府調達などでもやっていると。それで、日本も既に政府調達ということについては、国家安全保障局が情報を上げてもらってチェックをして、これについては懸念があるという情報を伝えているんだということは衆議院でも議論がされています。そして、その件数は急増しているということも衆議院の審議の中で明らかになっているんですね。

 先日、それで、どういうふうに伝えているのかということを国家安全保障局、内閣府に来てもらって説明を受けたんですけれども、懸念があるということしか伝えていないと。その懸念の中身が何かということについて省庁に詳しく伝えるというようなこともしているのかどうか、よく分からない状況だったんですね。

 そこで、原参考人にお聞きしたいんですけれども、デッドラインを示してほしいとか政府が持つ情報の提供ということを求められました。当然だと思います。そうでなければ不安や懸念があるんだということも先ほどお答えになっておりまして、私たちやっぱりその不安や懸念というのが具体にどういうものであるかということをしっかり踏まえて審議をしていかなければならないと思うんですね。余り個別具体の事例というのはお答えはやりにくいかもしれませんけれども、どのような不安や懸念があるのかということについて御説明いただければと思います。

○参考人(原一郎君) ありがとうございます。
 具体例を挙げるのはなかなか難しいと思いますけれども、一つはやはり、経済と安全保障が今までは別だと考えられていたのが、経済界におきましても非常に全然別物と考えられなくなってきたというところの一つの要因は、やはり技術の進歩だと思うんですね。

 とりわけ、白石先生のお話にもございましたけれども、スピンオフの時代からスピンオンの時代に入ってきておりまして、民生用として民間が開発した技術が軍事用にも転用され得るという世界になってまいりますと、企業が意図せざる形で、それがまさにエンドユースで軍事に使われる可能性が高まってきているわけで、じゃ、何を、どういう技術がそれに当たるのかというところは、デュアルユースの技術は全てだと言われてしまうと、これはもう商売、ビジネス成り立たないわけでございまして、まさに安全保障上重要な技術、まさに機微技術ですね、これが何なのかということを示していただくことは非常に重要だということは、先ほど私がレッドラインと言ったことの一つでございます。

 この点は、私の理解でいけば、アメリカも非常に苦労しているというふうに考えております。今、新興技術ですとかファウンデーショナル技術、基盤技術といったものを輸出管理の対象にするんだということになっておりますけれども、リストとしてこれがそうでございますというものはいまだに明確な形では出てきておらずに、各国と調整したものが徐々にそういったリストに入ってきているということから見ても、日本でも難しいことだと思いますけれども、アメリカでもそう簡単なことではないなというふうに認識しております。

 したがって、個別の事例で個々にできるだけレッドラインをはっきりさせていただくことが企業の不安感、対応の方向性などを決めるに当たって非常に有益だと思っております。

○田村智子君 だからこその政府が持つ情報の提供ということを求められたんだというふうに思うんですけどね。私、それは大企業等はちょっと機微な情報に接近するようなところまでの情報提供のやり取りってあり得るかもしれないんですけれども、中小企業が非常にこれは心配だなというふうに思うところなんですね。

 次の質問なんですけど、これは坂本参考人になんですけれども、非常に詳細にアメリカがどういう戦略を持ってきたのかということとの兼ね合いで具体にお話をいただいて、とても理解を進めるのに重要だったというふうに思います。

 そうすると、やはりその米国の経済安全保障戦略と軌を一にしていくというふうになって、かつ、今度の法案というのはその途中経過の四項目と。そうすると、今後、更にどのような政策が取られるようになるのかということも議論が必要になってくると思うんです。

 アメリカの動向が重要というふうになりますと、アメリカが重視している政策でまだ日本で具体化が進んでいないというようなものが、どのようなものがあるのかということについて御説明をいただきたいと思います。(発言する者あり)

○委員長(徳茂雅之君) 挙手の上、答弁願います。

○参考人(坂本雅子君) やっぱり輸出ですね。アメリカの場合は、中国のこの企業、この個人に、これ、こういうもの輸出しちゃいけない、もう、という輸出禁止が非常に広がって、エンティティーリストにも一年間で二百何十ぐらい増えたとかいうことですけれども、それは、日本で多分それは導入できないんじゃないかなという気がしますし、そんなこと、私にはまだその辺は分かりません。

○田村智子君 じゃ、同じ質問、白石参考人、いかがでしょうか。アメリカがやっていて、日本でも今後必要となってくるであろうと思われるものはありますでしょうか。

○参考人(白石隆君) 私は、確かに、アメリカ政府の経済安全保障政策と日本の経済安全保障政策、ついでに言いますと、欧州の経済安全保障政策というのはほぼ軌を一にしているというふうに見ておりますが、それはあくまで日本の場合には日本政府が決めることでございまして、別にアメリカ政府が決めたから日本政府は追随しているというふうには考えておりません。実際にアメリカ政府がやっていて日本政府がやっていないことは幾らでもございます。

 その辺りは、これから先のやはり国際情勢を見ながら日本政府として決めていくべきことであって、今直ちに、こういうことはやるべき、日本政府としては政策のアジェンダに出てくるだろうというのはなかなか、特に科学技術それから産業政策の分野では難しいというのが私の正直なところでございます。

○田村智子君 時間が参りましたので、ここで終わりたいと思います。ありがとうございました。


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