活動報告

活動報告
日本共産党議員の国会質問/警察庁への捜査権付与/国民監視の恐れ追及/田村智氏

 田村智子議員は3月29日の参院内閣委員会で、警察庁に設置されるサイバー特別捜査隊について、捜査対象となる重大サイバー事案の対象は極めてあいまいで、国民監視、プライバシー侵害など人権侵害の恐れが拭えないと追及しました。

 戦後の警察は、戦前、内務省警保局を頂点とする警察が国家権力と一体化し、政府批判などを徹底的に弾圧し思想信条・学問の自由を抑圧したことに対する反省から出発しています。そのため都道府県警が犯罪捜査を行い、警察庁には捜査権を付与せず、都道府県警への指揮監督を原則としてきました。法案は、サイバー犯罪の増加とサイバー犯罪捜査の国際協力円滑化などを理由に、警察庁の地方機関である関東管区警察局に捜査権を有するサイバー特別捜査隊の創設を行うものです。

 田村氏は、サイバー特別捜査隊が扱える重大サイバー事案は、重大な支障が生じる「おそれ」まで含まれるなど広範な事案が対象になるとして、サイバー特別捜査隊の捜査権は限定的という政府の説明は事実と違うと批判。都道府県警との合同捜査でもサイバー特別捜査隊に属する警察官が捜査を指揮すると指摘し、警察の在り方を大きく変えるものだと追及しました。


2022年4月8日(金) しんぶん赤旗

 

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。

 法案審議の前に、二之湯国家公安委員長に自民党京都府連への献金についてお聞きせざるを得ません。

 京都の自民党では、国政選挙の年に候補者が京都府連に寄附を行い、その寄附額と全く同額が選挙のときに地方議員に資金提供をされてきた。議員一人当たり五十万円だと。二〇一四年当時の京都府連事務局長が作成した後任者への引継ぎ文書には、この世界、どうしてお金お金なのか分かりませんが、選挙の都度、応援、支援してくれる府議会議員、京都市会議員には活動費として交付するシステムとなっている。活動費は議員一人につき五十万円です。候補者が京都府連に寄附し、それを原資として府連が各議員に交付するものです。候補者がダイレクトに議員に交付すれば公職選挙法上は買収ということになりますので、京都府連から交付することとし、言わばマネーロンダリングするのですと記されていたと。これは週刊誌報道だけではなく、独自に文書を入手したとして、三月二日、MBSニュースも詳しく報道をしています。私もインターネットでこれ全部見ました。

 二之湯大臣は、二月二十八日の予算委員会で我が党井上議員の質問に、メモ的に申したものだと答弁をし、何らかの文書があることをお認めになりました。では、報道されているこの引継ぎ文書、確認をされましたか。

○国務大臣(二之湯智君) 文芸春秋に載ったような文書とか、その後のことも、私は全くその存在は知りません。ただし、そのマネーロンダリングと言った人は知っておりますけれども、その文書全体は、その存在は全く知りません。私は知りません。

○田村智子君 知らないという答弁は分かっているんですよ。ただ、それも、京都府連を大臣自身が会長を務めておられたとき、二〇一七年、平成でいうと二十九年、この引継ぎ文書を作成した元事務局長は京都府連に対して解雇の無効という訴訟を起こしていて、この公判の中で引継ぎ文書の存在を被告、原告共に認めるという証言がなされているので、その当時、まさに裁判のさなかに京都府連の会長を務めていた二之湯大臣がお知りになっていないということ自体がにわかには信じ難いんです。

 ただ、ここでは水掛け論になるので、これはおいておきます。知らなかったで済まされるのかということなんですよ。調べて説明を尽くすことが必要ではないですかとお聞きしているんです。

○国務大臣(二之湯智君) 私、何遍も言っているんですけれども、確かに私、その当時、京都府連会長でございました。しかし、その一連の問題、職員の解雇の問題、その後の、その後の裁判の問題は、別の人がこれは自分がやるということで、会長である私は一切この裁判の問題については関係をしておりません。したがって、双方のやり取りは全く知りません。

○田村智子君 だから、知らなかったというのは、じゃ、おいておきましょうと。これだけ問題になって、今もいろんな報道がされているんですよ。お調べになって、ちゃんと説明する必要があるんじゃないですかと聞いているんです。

○国務大臣(二之湯智君) 京都府連への寄附の問題については、私は、合法であると、それは全く政治資金規正法、そして公職選挙法上問題ないという立場でございますから、これ以上、私自身がその問題についてああだこうだと調べる必要はないと、このように確信をしております。

○田村智子君 参議院広島選挙区の河井事件では、候補者から直接地方議員にお金が渡されて、公職選挙法違反、買収と断じられています。二之湯大臣自身も、二〇一六年、自分の選挙の前に二回に分けて地方議員一人五十万円分の寄附をしていて、実際に地方議員に五十万円ずつ渡されたんです。これは、一般的な政治活動ではなくて、選挙のため、自身の当選のための資金提供だというふうに言われても仕方がないと思うんですよ。しかも、京都府連の事務局長が、マネーロンダリングだという認識を持って、そういうシステムがあると認める文書を残しているわけですよ。これを問題ないと国家公安委員長が言い続けてしまったら、候補者がトンネル団体を使えば幾らでも選挙のときにお金ばらまけるということになっちゃうんですよ。

 だから、この文書を御自身も確認をされる、少なくとも、私、それ必要だと思いますよ。どういう認識で五十万円ずつが配られるシステムになっていたのか、改めて確認することは必要だと思います。いかがでしょうか。

○国務大臣(二之湯智君) 度々私は委員会で申し上げていますけど、そういう、政党に寄附をし、そして政党から京都府会議員、京都市会議員に政治資金を交付した、活動費を交付した、それは政治活動に使ってください、その間、何も政治活動できないのかと、こうなりますと、その直前まで政治活動は許されているわけでございます。

 委員もせんだって恐らく京都にお入りになったと。京都市内はもうポスターだらけなんですね。何の選挙があるのかなと。知事選挙、参議院選挙、また、府会議員、市会議員は日常的にポスター貼っているし、全国区の人がポスター貼っている。こういうポスターを貼るというようなこととか、あるいは政策の政党のチラシを配るとか、あるいは党員を獲得するとか、それぞれ皆さん方、府、市、地方議員は政党活動、党勢活動をしているわけでございます。そういう趣旨で府連から交付しているわけでございまして、個々の議員に票をまとめる、取りまとめるためにお金を渡しているのと、広島とは全くその趣旨が違うなり目的が違うと、私はそのように思っております。

○田村智子君 問題は問題として認めるべきだと思いますよ、私は。何の問題もないなんて開き直りをしてしまったら、今言ったみたいに、どっかの団体使えば幾らでも、選挙直前にも選挙中にも、これは単に政治活動だといって候補者がお金配れるというシステムをつくっちゃうことにもなりかねないんですから。

 ちょっと私も法案の審議をしたいので、今日はここまでにしますけれどもね。本当に、国家公安委員長ですから、日本の警察の行政に関わる責任者ですから、そういう認識でいいのかということは強くちょっと指摘をしておきたいと思います。

 では、警察法についてお聞きします。
 サイバー犯罪への対策が必要だということに異論は全くありません。同時に、デジタルネットワークでの犯罪捜査が必要だといって個人の情報が広く監視、収集され、データ蓄積されるようなことはあってはならないと思います。デジタル社会における個人情報保護、個人情報の自己コントロール権、昨年この委員会でも大変時間を取って質問してきましたけれども、日本の実態も政府の認識も、EUなどからはもう周回遅れ、二周、三周遅れだというふうに言わざるを得ないと思うんです。

 そういう中で、今回の法案では、重大サイバー犯罪への対策だとして国家機関である警察庁に直接の捜査権を付与するということで、これは戦後の警察制度の骨格を大きく変更することになります。

 警察庁に捜査権がないのはなぜか。これは日本の民主主義の根幹に関わる問題ですので、歴史的経緯をよく見る必要があります。
 一九四七年十一月、参議院治安及び地方制度・司法連合委員会で当時の片山総理大臣は、余りに国家政治というものと警察機構というものとが一緒になりまして、それが官僚的政治となり、それが独裁政治の傾きに堕した、こういう弊害が日本を誤つに至ったという認識を示して、まず、国家警察だけでなく自治警察という二本立ての制度をつくりました。

 さらに、一九五四年、五年間の検証の上に、二本立ての弊害をなくすためとして、個々の犯罪捜査の指揮のごときは、中央の警察庁はこれを都道府県警察の職務に一切を委ねるべきと当時の犬養法務大臣が答弁をして、今日の警察の制度が確立をしたわけです。

 一九九六年にオウム真理教の事件を契機として広域組織犯罪等への対処を警察法に加えたときも、警察庁に新たに付与された権限は、都道府県警警察官の権限の調整など捜査態勢の指示にとどまりました。

 戦前の国家警察は、政治警察そのものとなって、時の権力者への批判とみなされた言論を徹底的に弾圧し、思想信条の自由を奪い、市民を監視し、沈黙させた、これを痛苦の教訓として警察制度が抜本的に改変をされたということです。

 それではお聞きします。
 国家機関である警察庁に捜査権を持たせるに当たり、この誤りを繰り返さないための制度的保障、それは新たにどのように講じられているんでしょうか。

○国務大臣(二之湯智君) 現在の警察法では、個人の自由と権利を保護して、そして公共の安全と秩序を維持するために、民主的理念を基調とする警察の管理と運営を保障しておるわけでございます。かつ、能率的にその任務を遂行するに足りる警察の組織を定めることを目的といたしております。その上で、警察行政の運営の独善化を防ぎ、その政治的中立性を確保することを目的として、国民の良識を代表する者が警察の管理を行うため、国家公安委員制度が設けられておるわけでございます。

 今回の改正によりまして、重大サイバー事案に限りサイバー特別捜査隊が直接に捜査を行うことになります。このことに関しまして国家警察の復活だという心配をされている向きもございますけれども、その捜査活動については、国家公安委員会の管理を受けることにより民主的な管理と運営が私は確保されるものと考えております。

 その上で、今回新設される苦情申出制度に基づき、サイバー特別捜査隊の捜査活動に関する苦情の申出があった場合、警察庁では、事実関係を国家公安委員会に報告し、その指導を受け、是正を図ることといたしております。

 このように、国家公安委員会の管理の下でサイバー特別捜査隊による適正な捜査が確保されるよう、警察庁を指導していきたいと考えております。

○田村智子君 新たに講じられたのは苦情の申出という程度だということなんですよね。あとは信じてくれと。

 今の御答弁でも、重大サイバー事案に限定しているというふうにおっしゃるんですけれども、じゃ、重大サイバー事案とは何なのかと、これ、法案、非常に分かりにくいんですよ。まず、三つのカテゴリーのいずれかに該当するものだということで、お持ちの方は見ていただきたいんですけど、新旧対照表の二ページ目の辺りですよね、第五条四項六号にハというのを新たに規定していくんですけれども。

 この三つのカテゴリー、一つは、次に掲げる事務又は事業の実施に重大な支障が生じ、又は生じるおそれのある事案。じゃ、その次に掲げる事案とは何かというのがその下に規定されます。①、国又は地方公共団体の重要な情報の管理又は重要な情報システムの運用に関する事務。そして二つ目、国民生活及び経済活動の基盤であって、その機能が停止し、又は低下した場合に国民生活又は経済活動に多大な影響を及ぼすおそれが生じるものに関する事業。三つのカテゴリーの二つ目、高度な技術的手法が用いられる事案その他のその対処に高度な技術を要する事案。三つのカテゴリーの三つ目、国外に所在する者であってサイバー事案を生じさせる不正な活動を行うものが関与する事案。

 これ読んで限定されているなと思う方がどこまでおられるでしょうか。おそれも含めて対象であると、高度な技術が必要ならば対象である、国外での不正な活動が関与していれば対象である。本当でしたら、法案審議なんで、その一つ一つがどういうことなのかってやってもいいぐらいなんですよ、高度な技術って何ですかって。その時間ちょっとないのでね。

 これは相当広範囲な事案が警察庁に置かれるサイバー特別捜査隊の捜査対象になるということになるんじゃないでしょうか。

○政府参考人(小島裕史君) お答えいたします。
 重大サイバー事案の類型のうち、国又は地方公共団体の重要な情報の管理又は重要な情報システムの運用に関する事務、国民生活及び経済活動の基盤であって、その機能が停止し、又は低下した場合に国民生活又は経済活動に支障が生ずるものに関する事業につきましては、事務又は事業の実施に重大な支障が生じ、又は生ずるおそれのある事案を重大サイバー事案としております。

 これらの事務又は事業が停止するなどした場合には、その被害が重大なものになり得ることから、こうした被害の防止を図るため、事務又は事業の実施に重大な支障が生ずるおそれがある場合についても重大サイバー事案とすることとしたものであります。

 どの程度のおそれがあれば重大事案に該当するかにつきましては、事案により様々であり、網羅的に示すのは困難でありますが、客観的な事情に照らして判断することとなるために、サイバー特別捜査隊が捜査を行う重大サイバー事案の範囲が無制限に拡大することはないものと考えております。

○田村智子君 だから、今の答弁を聞いても、かなり広いぞということしか分からないわけですよ。何がおそれかは起きてみなければ分からないということになっていきますのでね。

 それで、その重大サイバー事案に関わるその捜査というのは、これ第五条四項に十六号を新設をしているんですね。たった一言なんですよ、捜査をやりますよって、ここ一か所だけ捜査という言葉が出てくるだけなんですね。サイバー特別捜査隊についての規定とかというのは法案上何もないんです。いろいろ報道されていたり説明聞いていますと、その捜査隊というのは二百人程度で発足だという報道があります。

 では、来年度、国家公安委員会に新たに設置された定員百七十一人、その内訳でサイバー空間の脅威への対処能力の強化としては七十九人なんですけれども、このうちサイバー特別捜査隊の定員としては何人が充てられることになるんでしょうか。また、これとは別に技官というのも人員を置くことになるのかどうか、お答えください。

○政府参考人(小島裕史君) お答えいたします。
 サイバー特別捜査隊の隊員につきましては、警察庁の職員でサイバー分野の知識や経験にたけた者のほか、サイバー事案の捜査に関する豊富な経験を有する都道府県警察の警察官からの登用を予定しております。

○田村智子君 今、人数を答えましたっけ、ごめんなさい。
 私聞いているのは、七十二人がサイバー特別捜査隊に置かれる予定で、そのほかに一名隊長が置かれて、技官は百人程度ですね、かき集めてくるというふうに聞いているんですけど、違いますか。

○政府参考人(小島裕史君) お答えいたします。
 サイバー特別捜査隊につきましては、隊長のほか、定員では七十二人の増員を要求したものというものでございます。また、このほか、全国の管区警察局等で勤務する解析担当職員が遠隔操作により業務を行うことができるよう、技術的な基盤の整備について措置をしているというものでございます。

 サイバー特別捜査隊におきましては、こうした解析担当職員を含めて、総勢約二百名程度で重大サイバー事案等への対処に当たることを考えてございます。

○田村智子君 かなりの人数ですよね。二百人ぐらいの捜査メンバーを持つ、常に持つということになりますね。これ、どこから持ってくるのかなというふうに考えると、サイバー特別捜査隊は捜査権を有して強制処分も可能としている。担う任務の性格上、経験のある捜査官を充てる必要がありますよね。そうすると、警察庁の人員だけで担うことは難しいので、これは都道府県警のこれサイバー捜査の経験者から連れてくるということになるしかないと思うんですけど、どうですか。

○政府参考人(小島裕史君) お答えいたします。
 サイバー特別捜査隊の隊員につきましては、サイバー分野の知識や経験にたけているということが必要でございますので、そのサイバー事案の捜査に関する豊富な経験を有する都道府県警察の警察官からの登用を予定しているところであります。

○田村智子君 現在、全国十四の都道府県に二百八十人、サイバー攻撃特別捜査隊、こういうのを置かれていて、そこの隊長というのは警部又は警視を充てることになっているという説明を受けています。一方、サイバー特別捜査隊の隊長というのは警視正を充てる予定だと。そうすると、これ当然のことなんですけれども、これ、その都道府県で実際に当たってきた方よりもこの隊長の方が格上というようなシステムがつくられる、こういうことになるというふうに認識しますが、いかがですか。

○政府参考人(小島裕史君) お答えいたします。
 警察庁と都道府県警察が重大サイバー事案の合同捜査を行う場合がございます。この場合には、警察庁又は関係する都道府県警察の警察官の中から、その指揮を行う警察官について警察庁長官が定めることとされております。

 こうした合同捜査の指揮を行う警察官につきましては、個別具体的な事案に応じて判断されるものであり、一概にお答えすることは困難でありますが、事案の性質等を踏まえ、適切に指揮官を定めることとしておりまして、サイバー特別捜査隊の警察官が捜査の指揮を行うとは限らないということでもございます。

○田村智子君 今、ちょっと質問の足りないところを補ってもらって、済みません。
 そうなんです。六十一条の三の三項で、共同で捜査を行うと、そのときにどっちが指揮を執るかということは法案上はないんですよね。法案上はないんですよ、共同でやるときに都道府県なのか、それとも警察庁なのかと。だけど、今言ったみたいに、隊長は警視正なんですよ。これ、警察のシステム考えたときに、その国に置かれたサイバー捜査隊の隊長の指揮権になるでしょうって、それは誰もが思いますよね、警察のこの階級システムから考えれば。

 もう一つお聞きしたいのは、この重大サイバー事案というのを、じゃ、誰が判断をして捜査が開始されていくのかということなんです。サイバー特別捜査隊が、この自分たちが扱っているような事案の中から新たにこれは重大なサイバー事案になるようなものが見付かったぞといって独自の判断で捜査を進めることができるのか。あるいは、都道府県が抱えているサイバー犯罪の問題で、これはどっちなんだろうかと、重大なんだろうか、それともうちが持っていていいんだろうかというようなときに、一体どういうシステムでこれは重大サイバー事案だよという判断がなされるんでしょうか。

○政府参考人(小島裕史君) お答えいたします。
 重大サイバー事案の該当性に関しまして、基本的には、サイバー特別捜査隊や都道府県警察から報告を受けた事案につきましてサイバー警察局において検討した上で判断をすることとなります。

 重大サイバー事案に該当いたしますとサイバー警察局が判断をしたものにつきまして、サイバー特別捜査隊において捜査を行うか又は都道府県警察が捜査を行うかといった捜査態勢につきましてもサイバー警察局において判断をすることとなります。

○田村智子君 そう、この法案では、新たにサイバー局というのを警察庁に置くことになるんですね、第二十五条。これ、元々にある情報通信局と全くその所掌事務の中身が変わるんですよね。サイバー事案に関する警察に関することというふうになるので、非常に広いんですよ。

 つまり、何が重大事案になるかについては、あらかじめたくさんのサイバー事案、重大サイバー事案じゃないです、サイバー事案、これもまたおそれも含めてあります。犯罪そのものだけではありません。サイバー事案について、サイバー事案とは何かというのも第五条に規定があるんですけど、おそれも含まれているんですよ。

 そうすると、非常に広い情報が常に都道府県から警察庁のこのサイバー局にずうっと集約され続けていく。そうでなければ、どれが重大サイバー事案であるのかという判断は付かなくなると思いますけど、いかがでしょうか。

○政府参考人(小島裕史君) お答えいたします。
 重大サイバー事案の該当性に関しまして、基本的には、サイバー特別捜査隊や都道府県警察から報告を受けた事案についてサイバー警察局において検討した上で判断をすることとなります。

 先ほど申し上げたように、重大サイバー事案に該当するとサイバー警察局が判断したものにつきまして、サイバー特別捜査隊において捜査を行うか都道府県警察が捜査を行うかといった捜査態勢についてもサイバー警察局において判断することとなるものでございます。

○田村智子君 ちょっとかみ合っていないんですけど。
 だから、判断するに当たっては、たくさんのサイバー事案がちゃんと報告をされていなければ判断が付きませんよねと聞いているんですよね。それを、それが各地で起きている犯罪だけではないんですよ、おそれも含めているんです、もうサイバー事案というのは。

 そうすると、その犯罪になりそうなこと、いろんなネット上の様々なこと、これらが常に常に警察局の、警察庁のサイバー局に情報収集されていなければ、重大サイバー事案だという判断付きませんよねと聞いているんですよ。

○政府参考人(小島裕史君) お答えいたします。
 重大サイバー事案につきまして、これらの重大サイバー事案に関する事務又は事業が停止するなどした場合には、その被害が重大なものになり得ることから、こうした被害の防止を図るため、事案又は事業の実施に重大な支障が生ずるおそれがある場合につきましても重大サイバー事案とすることとしたものであります。

○田村智子君 ちょっとね、大臣、今分かりましたでしょう、私が聞いたこと。サイバー事案というのは非常に広いんですよ、この法律では。おそれを含んでいるんですよ。この中から重大サイバー事案を取り出してくるんですよ、どれが捜査に当たるのかと。そうしたら情報収集常に常にやるということで、そういうことですよね。

○国務大臣(二之湯智君) 今委員が、多くのそのサイバー事案の中からどれを重大サイバー事案として認定するのかと、そのいろいろな情報が各都道府県上がっていないと分からないじゃないかと、こういうことであります。

 ただ、公安委員長といたしましては、そういう、まあ私は事案についてああだこうだと言う権限はありませんし、警察の中立性、公正性を図るため、もう警察庁、これは、にお任せするということでございますので。

○田村智子君 そうですね、これ、やっぱり極めて限定的なものではなくなってきますよね。警察庁自体が捜査で動くというためには、大量の情報を警察庁自身が、集中し、掌握し、そしてそれを検討し、判断して、これを重大サイバー事案と定めて捜査を行っていく。そして、今やり取りしたとおり、その捜査というのは都道府県との合同捜査もあると。それはそうなるでしょう、各地で起きている犯罪だとすると。だけど、その指揮権もかなり警察庁が握ると、まさに国家が主導権を握った捜査を行うことになるということが見えてこざるを得ないわけですよ。本当に警察組織の抜本的な在り方変えるような改変を今やろうとされているということになります。

 その必要性について、各国との共同捜査ということが強調されているのでちょっとお聞きをしておきたいんですけれども、これ、サイバー攻撃に対する国際的な共同作戦としては、昨年公表されたのがマルウエア、エモテットに対するユーロポールを中心とする各国の法執行機関の共同作戦、これ日本名に訳すとテントウムシ作戦というんですね。他人のコンピューターのそのメール、誰かに成り済まして、そのメール使って送り付けるというやつですね。今大問題になっているエモテットですよね。オランダの当局がこのエモテットインフラに対してハッキングで侵入して調査を行って、インフラの全体像を把握した。その上で、各国共同でエモテットボット、これは秘密裏にマルウエアを感染させたコンピューター群、このコントロールを行っていたサーバーを差し押さえてエモネットのボットネットを無効化させたと。ウクライナ警察はこの強制捜査の映像も公開をしています。

 日本では、ハッキングして得た情報による捜査というのは違法とされて、これ裁判とかでやったら違法で、無罪になったりしているわけですよ、違法捜査というのは。共同作戦を進めるのであれば、こうやって各国では既に行われているハッキングで得た情報を基にする捜査、ここに日本が加わっていくのかどうか、この整理が必要になってくると思います。いかがでしょうか。

○政府参考人(小島裕史君) お答えいたします。
 国境を越えて敢行される重大サイバー事案につきましては、一つの国単独で捜査を行っていくことは困難であり、外国捜査機関の協力を得ることは不可欠であります。こうした国際的な連携におけるサイバー特別捜査隊の捜査につきましても、現在の都道府県警察による捜査と同様に、刑事訴訟法を始めとする関係法令に基づき適正に行われる必要がございます。

○田村智子君 問題点がたくさんあるということが分かった質疑だったと思います。
 以上で終わります。

○委員長(徳茂雅之君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。

○田村智子君 日本共産党を代表して、警察法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。

 本案は、戦後初めて国の機関である警察庁に捜査権限を付与し、警察庁直轄のサイバー特別捜査隊を設置するものです。サイバー特別捜査隊が対象とする重大サイバー事案の定義には具体的な線引きがなく、恣意的に警察庁が権限行使する可能性があります。衆議院でも質疑があったように、サイバー特別捜査隊が経済安全保障の分野に関わるようになることは明白です。

 経済安全保障の名の下で不正輸出を捏造し、三人を逮捕した大川原化工機事件のように、警察による人権侵害が現に起きています。その原因として、大量兵器不拡散のためとして国際輸出管理レジームを国内法制化した外為法が規制対象の定義を曖昧にしていたことが指摘されています。捜査権の適用範囲が曖昧なままで、国民への監視、プライバシー、思想信条の自由の侵害への懸念が本法案についても拭えません。

 警察庁に捜査権を付与する理由として、国際的なサイバー犯罪の共同作戦に対応する対応も理由の一つとして挙げられていますが、海外ではハッキングなど国内法で許されない捜査手法による情報収集が行われ、それを基に捜査が行われています。警察庁は中長期的な検討と逃げていますが、現にハッキングによる捜査が国際的に進行している下で、これを曖昧にして進むことは許されません。

 日本の警察は、都道府県警警察が捜査を行い、警察庁は指導監督のみとしています。これは、戦前の警察が政府の意向により国民の人権や自由を侵害してきた歴史を踏まえたものです。警察力が国家の政治問題と絡んで一部のために利用せられるという弊害を根本的に除去することが戦後の警察改革の出発点でした。

 本改正は、この歴史の教訓を踏まえることなく警察庁の組織原則を変えることであり、認めることはできません。

 以上、反対討論を終わります。


 |