日本共産党の田村智子議員は3月31日の参院内閣委員会で、保育士の配置基準などについて、子どもの成長発達の権利が保障されるよう見直すことが必要だと強調しました。
田村氏は「保育では2000年以来、人員配置について規制緩和が繰り返されてきた。公定価格の改善と非正規雇用化を進めた規制緩和政策を見直すべきだ」と述べました。
田村氏は、配置基準は保育士の過重負担だけでなく、子どもの安全面からもとらえるべきだと指摘。東京都で散歩中の保育園児の「置き去り」が4年間で94件にのぼるとの報道にふれ、「現在、置き去りについて集約する仕組みがない」として、情報収集を求めました。野田聖子少子化担当相は「施設でどのような措置をとることが発生防止に効果的か、厚労省と検討する」と答弁しました。
また田村氏は「保育園を考える親の会」の調査で園庭保有率が15年比で1割減少したとして、「園庭減少による園外活動の増加が置き去り増加に影響している」と指摘。企業主導型保育も園庭の設置義務がないと述べ、「保育の質が置き去りにされる方向で規制緩和を進めてきた」と批判し、最低基準・保育士配置基準の見直しを求めました。
2022年4月3日(日) しんぶん赤旗
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
コロナ危機の下での事業者支援について、これは支援しても支給に届かないという問題を、これまで我が党は、私も含めまして何人もの議員が取り上げてまいりました。
三月一日の予算委員会では、岩渕議員が、事業復活支援金でも不備ループでいつまでも支給されないとか申請を諦めるという方が出かねないというふうに指摘をいたしまして、萩生田経産大臣は、月次支援金のときには、何が不備なのか分からない、クイズみたいなやり取りをしていた、これはある意味不親切な話なので、こういう書類が足りない、これを出してくださいということを明確に言っています、今はそういうやり方をしているという答弁だったんですね。また、事務局体制を強化したから大丈夫だとも答弁をしていましたが、まだ問題残っていると言わざるを得ないんです。
私の事務所に寄せられた相談の一つを紹介します。
マッサージの仕事をしているAさん、二月十二日、事業復活支援金を申請、三月八日に書類の不備を指摘するメールが来ました。指摘に対応して直しましたが再度の不備メール、業務委託申立書にお店の名前が記入されているが支払調書は個人名となっていると、この不一致点が指摘されたんです。Aさんは、どういう書類を送れば不備が解消できるのかコールセンターに相談をして、アドバイスのとおりに店名とオーナーの名前が書かれているパンフレットを写真に撮って送信をした、再申請をした。念のため、同じ日にコールセンターに確認の電話をしましたら、それでは駄目だ、再申請前に相談してもらえたら適切なアドバイスができたと言われてしまったんです。
Aさんは納得いかずに、後日コールセンターに経緯を説明して、これまでのやり取りの記録を上席の方と一緒に確認してもらったところ、不適切な対応だったと伝えられました。スーパーバイザーの方は事務局に経緯をメールで伝えたようなんですけれども、審査部門は不適切ではないと判断してAさんに何の回答もないという状態です。当該スーパーバイザーは、同じコールセンターで働いている者として適切な対応ではなかったと思うと明確に述べていて、その録音もあります。
これは、不適切な対応を認めてAさんにも誠実に回答するのが当然だというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(飯田健太君) お答え申し上げます。
個別案件について、ちょっと具体的に承知をしておりませんので、一般論でということで申し上げさせていただきますけれども、事業復活支援金でございますけれども、数百万以上の事業者に対して支援金を給付するという事業でございまして、今御指摘ありましたように、不備ループといったような御指摘もあったものですから、審査体制の充実、あるいはコールセンターの人員の拡充ということで行ってきたわけではございます。
こうした中で、審査の状況につきましても申請サイトから確認できるような状態にはなっておりまして、それから、審査の状況をお問合せをいただければ、必要に応じてその審査状況などは確認をして、審査が行われているかどうかについてお伝えをしているところでございます。
今のようなお話につきまして、基本的には不備ループの解消に向けて取り組んでくる中で、できるだけしっかり、一回でしっかり、どういった不備があるかについても御連絡をしているところでございますけど、一部には、申請者とオペレーターとのコミュニケーションがうまくいかない場合ですとか、あるいは申請者をお待たせするような場合もあろうかと思います。
こういった点についても、日々いろんな改善を重ねて、御指摘をいただいている中で得られた知見から随時運用を改善しながら説明体制、審査体制の向上を図って、迅速かつ正確に支援金をお届けできるように努めているところでございます。
○田村智子君 コールセンターで言われることがころころ変わる、言われたとおりの書類を送信しているのに不備だったり、これは放置ですよね、こういう事態が結局続いているんですよ。
このAさんも、申請月を変えて再申請できるかとコールセンターに問い合わせたら、できるという回答を得た、だけど不信があったので別の日にもう一度問い合わせたら、それを行えば不支給になる可能性が高いと言われてしまうと。これでは事業者は本当にどうしていいのか分からないですよね。とても適切とは言えない事態が今もあるということで、しっかり監督をいただきたいんです。そのための中小企業庁の体制も本当はもっと増やすべきだと私は思います。
それで、こういう国や自治体の事業だったら、こんなふうに適切ではないアドバイスに基づいて申請して、結果としてそのことが原因で不支給ということになってしまったら、行政不服審査という救済手続があります。しかし、持続化給付金から一貫してこれ民間への委託事業なので、行政不服審査の対象にもならないわけですよ。不支給になって納得いかなかったら訴訟しか手段はないんですよ。だけど、この事業復活支援金も、金額からすれば個人でも最大五十万円ですよね。そうすると、事務負担とか費用負担を考えれば、結局諦める、泣き寝入りする、これしかないという事態だと思うんです。
不服がある場合には第三者機関や中小企業庁が再度審査するというような仕組みが私は必要ではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(飯田健太君) お答え申し上げます。
審査についてころころ変わるという今御指摘ございましたですけれども、ちょっと個別具体的な事例を承知していないのであれですけれども、私どもといたしましては、申請者の御相談にきちんと正しい内容をお伝えして、適切にその対応をするための統一的で公平、適切な審査といった観点から、しっかりまず統一的な対応を行うためのマニュアルを整備しております。
それから、それに、マニュアルに基づきまして、電話オペレーターなども含めたその研修をしっかり実施をするということ。それから、一部判断が難しい、分かれるような案件につきましては、上司でありますとかあるいは本部などで適切に対応して、その結果を更に横展開をしていくという形で、またマニュアルも改正するという形で、できるだけ、できるだけというか、しっかり統一的で公平かつ適切な審査が行われるような体制をつくっているところでございます。
御指摘のとおり、一万人に上る審査体制の中でやっておりまして、そんな中で簡易迅速ということでございますので、中小企業庁の職員の充実についてもお話しいただきましたけれども、さすがにちょっとそこまでは至りません。
そういった中で、八割ぐらいの方は二週間以内に入金されているということでございますけれども、やはりその一部には不給付となる申請もございます。審査基準に基づいて給付要件を満たしているかどうかということをしっかり確認した上でのことでございまして、統一的なその審査基準に沿って審査をした結果であるということでございますので、こういった点について御理解いただきたいと思います。
○田村智子君 これ、不正は許されないんですけど、何でこれで不支給なのというのの救済措置がないんですよ、はっきり言えば。
山際大臣にもお尋ねしたいんです。
コロナ危機と物価高とで、中小事業者はまさに事業継続か廃業か倒産かと、こういう瀬戸際のような状況にあるというふうに思います。現状で政府の給付金制度というのは事業復活支援金だけですから、その制度、相談体制や審査体制が十分とは言えないわけで、是非経産大臣とも相談をして、現下の厳しい状況を踏まえた、スピード感を持った改善が図られるようお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(山際大志郎君) 先生のおっしゃるとおり、経産大臣とはしっかりコミュニケーションを取りながら、改善ができるところは改善してまいりたいと思います。
一方で、今の日本の経済の状況と、さらにこれから先の先行きということを考えたときに、どういう支援が引き続き必要かというようなことも今政府内でも議論をしております。
そういうことも含めて、今の議論を聞いていて、経済産業省の事業として、本当にこれ今まで迅速にやらなくてはいけないという社会の要請に従ってやってきたものなもんですから、それの改善点というのは当然あるんだろうと思いますので、しっかりと相談しながらやってまいりたいと思います。
○田村智子君 おっしゃられたとおり、この事業復活支援金だけではちょっといいのかという事態でもありますので、是非、支援策、新たなものも含めて考えていただきたいと思います。
それでは、山際大臣と中小企業庁の皆さんにはここまでですので、退席いただいて構いません。
○委員長(徳茂雅之君) 山際大臣、関係の政府参考人は御退席いただいて結構です。
○田村智子君 次に、保育分野における公定価格について質問いたします。
介護、保育、幼児教育分野で働く職員の処遇改善のため、内閣府の公定価格検討委員会で議論が行われています。先般、中間報告が示されました。
その中では、処遇改善の最終的な目標として、仕事の内容に比して適正な水準まで賃金が引き上がり、必要な人材が確保されていること、他産業との乖離や有効求人倍率などの労働市場における関連指標の状況を参照するほか、各産業における他の職種との比較や対象とする産業内での各職種間の均衡、仕事の内容、労働時間の長短、経験年数や勤続年数なども考慮すべきとされています。
二〇二〇年、この公定価格検討委員会に出された資料では、保育士の月収換算は三十・二万円、全産業平均は三十五・二万円と、この全産業平均は大きく落ち込んでいるんです。これ、コロナの影響を受けた数字なんですね。保育はそんなに下がっていないんですよ。
だから、処遇改善の努力は一定されてきたけれども、コロナの影響の下でもまだ五万円もの差があると。有効求人倍率も引き続き保育分野は高くて、必要な人材が確保されている状態ではないと思います。
野田大臣、これらを踏まえれば、月額九千円として二月から行われている改善にとどまらず、更に本格的な処遇改善進めるということになると思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(野田聖子君) 御指摘のとおり、保育士等の給与が他の職種に比べて低い状況にあり、またその人材確保に向けて処遇改善に取り組む必要があることから、これまで、平成二十五年度以降の累次の改善による月額四万四千円、四万四千円に加えて、平成二十九年度からは、技能、経験に応じた月額最大四万円の処遇改善を実施してきたところです。これらに加えて、今般の経済対策において、新しい資本主義を起動するための分配戦略として、保育などの現場で働く方々の給与の引上げを行います。
引上げに当たっては、それが継続的なものになるよう、補正予算によって本年二月に前倒しで実施した。その上で、本年十月以降については、公定価格の見直し等により措置することとしています。
今後の更なる処遇改善の方向性については、今お話がありましたように、公的価格評価検討委員会、これの中間整理を踏まえて、職種ごとに仕事の内容に比して適正な水準まで賃金が引き上がり、必要な人材が確保されるかといった観点から、関係大臣と連携して検討してまいります。
○田村智子君 資料もお配りいたしました。これ、財政制度審議会に提出された資料なんですけれども、保育士、介護職員の給与が全産業平均と比べて極めて低い水準だということがよく分かります。また、非正規雇用の割合が、保育士、介護職員で大変多いと。この資料で見ますと、保育士のうち四二・二%が非正規雇用ということになるんですね。
保育の分野では、二〇〇〇年以来人員配置について、短時間保育士を充ててよい、しかも有資格者でなくてよい、こういう規制緩和が繰り返されてきました。保育の仕事をパート化し、低賃金化した、それが規制緩和政策だと言わなければなりません。公定価格の改善とともにこの保育士の非正規雇用化を進めた規制緩和政策、ここも検証をして見直すことが必要だと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(野田聖子君) 御指摘の短時間勤務の保育士の取扱いは、待機児童が発生している市町村において、市町村がやむを得ないと認める場合に限って認められる特例的な措置として厚生労働省が定めたものと承知しています。
保育士の処遇改善や保育士不足の解消は極めて重要な課題と考えていまして、処遇改善については、これまで累次の改善によって、今、先ほど申し上げたように、月額最大八万四千円の処遇改善、これに加えて、経済対策、今般の経済対策において、保育などの現場で働く方々の給与の引上げは行っています。
また、厚生労働省において、保育士の業務負担の軽減、働きやすい環境整備を図るために、保育所における業務のICT化や保育士宿舎借り上げ支援事業などに取り組んでいると承知しています。
引き続き、厚生労働省と連携しまして、保育士の方々の処遇改善や保育士不足の解消に取り組んでまいります。
○田村智子君 今日はちょっとその規制緩和が与えている影響というのをもう少し見てみたいんです。
私は、この短時間、それから有資格でなくてもいいというのは、明らかに処遇を低くする方のインセンティブになっていると、委員も指摘せざるを得ないんですね。
もう一つ、民間の保育所は自治体からの委託費によって運営されていますが、この委託費の弾力運用という規制緩和も行われてきました。
委託費の一部をためておいて新規の施設の建設に回すこと、しかも、同じ法人グループであれば保育の委託費を介護施設の建設に充てるということも容認されています。また、本部経費という名目で吸い上げて本部の利益に入れてしまえば、株主配当に回すこともできてしまいます。株式会社が幾つもの保育所を経営している場合、園長でさえ単年度契約の非正規雇用、これも珍しくないんですよ。
委託費の弾力運用が認可保育所での人件費引下げにインセンティブを与えた、人件費引下げの圧力につながったというふうに思うんですけど、いかがでしょうか。
○政府参考人(藤原朋子君) お答え申し上げます。
私立保育所に対する委託費でございますけれども、運営主体の安定的、効率的な事業運営を図る観点から、一定の範囲内で当該保育所の運営費以外に充てることができるよう、弾力的な運用を認めているということは事実でございます。
具体的には、一定の要件の下ではありますけれども、保育所の建物整備や、土地の取得に要する費用の積立てですとか、法人本部への繰入れなどが認められる場合がありますけれども、委託費を法人本部の経費に充てるような場合には、法人本部の人件費支出ですとか事務費支出であって、かつ保育所の運営に関する経費に限定して認めるというふうにしております。このため、委託費を法人本部に繰り入れて株式配当に充てるということは認めておりません。
委託費の弾力的な運用につきましては、これを無制限に認めるという趣旨ではございません。給与規程に基づき人件費の運用が適正に行われているなど、一定の要件を課すとともに、必要な場合には都道府県が委託費の使途について確認するということとしております。
こうした仕組みを通じまして、委託費の適切な運用にしっかり努めてまいりたいと考えております。
○田村智子君 今、株の配当に回すことは認めていないとおっしゃったんですけど、本部上納金だというふうに上納されちゃったら、お金に色は付いていないわけですよね。株式会社が経営する保育所では、役員報酬として株式配当や利益処分を計上しているんですよ。株式配当を認めていないというのならば、抜け道を許さない規制を行うべきだと思います。すぐにやるべきは、委託費がどのように使われているのか明らかにすることだと私は思います。
東京都は、委託費に占める人件費比率の公表、これをもう事業所ごと、保育園の名前も明らかにして行っています。委託費は、計算上は八割は人件費というふうに見込まれているんです。ところが、その東京都が出したのを見ると二割台だと、人件費が。こういう保育所がいっぱい出てくるんですよ。それを私もこの委員会で問題にして、情報公開義務付けを求めたんですけれども、そのときの御回答では、内閣府は明確なお答えがありませんでした。
委託費の人件費割合、本来は最低基準を定めるなどの規制こそ必要ですけれども、少なくとも公費である委託費がどのように使われているのか、これは個別事業所ごとに人件費比率の公表、制度化することを検討してはいかがかと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(野田聖子君) 保育所の方々の、保育の現場で働く方々に適切に賃金が支払われることは重要であると、もちろん考えております。
令和元年の十二月の子ども・子育て会議、その取りまとめにおいても、処遇改善の改善努力の見える化を引き続き検討することとされておりまして、処遇改善の取組状況の公表に関する他の制度や自治体における先行事例も参考にしながら検討してまいります。
○田村智子君 委託費のうち一部をため込まなければならないというのは、施設の改修とか大規模改修などの補助金がとても十分ではないという問題もありますので、それは私も理解をします。
しかし、今、利益目的での株式会社の参入が現にあって、そういう保育所では保育士さんが余りの処遇の低さや保育の質の低さに一斉に退職してしまう、こういう事件にもなって、子供と保護者に多大な影響を与えてきた、こういう経緯があるわけです。せめて情報公開で、余りに質の低い保育は退場させていく、未然に防ぐと、こういうことをやるべきだと私は思います。
公定価格による配置基準では人手が足りなくて十分な保育ができない、ここについても質問進めたいんですね。実際には、だから公定価格の基準よりも多く人を配置している、だから公定価格の処遇が上がっても、一人一人の保育士さんで見たらそこまで上がっていかないという問題、これも私も何度か指摘をしてまいりました。
二〇一九年に幼稚園、保育所、認定こども園の経営実態調査行われていて、そこでは、施設ごとに公定価格で配置することを求めている職員数と実際の職員数について調べておられるんですね。やっとこういう調査が行われたということは評価をいたします。
その結果を見てみると、保育所では公定価格よりも平均で一・四五倍、認定こども園では平均一・五四倍なんですよ。やっぱり今の公定価格の配置基準は実態に見合わないということを示していると思いますが、いかがですか。
○国務大臣(野田聖子君) 委員御指摘のように、令和元年度経営実態調査によりますと、保育所や認定こども園等の現場においては公定価格上の配置基準を超える職員が実際に配置されているとは認識をしています。国としても、これらの実態をしっかり認識しつつ、保育士の配置の改善を図っていくことは重要な課題と考えています。
三歳児の配置改善に関しては平成二十七年度から取り組んでいます。一方で、いわゆる〇・三兆円超の質の向上事項に含まれる一歳児とか四歳児、五歳児の配置改善はまだ未実施でございまして、これらの実施について、各年度の予算編成において必要な財源の確保にしっかり努めてまいります。
○田村智子君 そうなんですよね、消費税増税のときにやりますと言った四歳児、五歳児の配置基準の改善さえも棚上げにされたままという本当におかしな事態になっているんですけど、何でこういうふうに実態に見合わないのかというと、やはり保育所は今十一時間開所が原則で、さらにその上の延長保育も求められる。保育時間を見ただけでも、保育士の八時間労働をどうやって保障するんだというところで、とてもそれぞれの施設が苦労されているわけですね。
また、公定価格では見てもらえない会議、あるいは清掃、行事の準備時間、保護者への対応とか、行政から求められる記録や文書というのも増えています。残業、持ち帰り残業が余儀なくされているという実態も見てみると、本当に公定価格では保育は成り立たないというのが現状だというふうに言わざるを得ないんですよ。抜本的な見直しをしなければなりません。
この人の配置の基準というのは、保育士に対する過重負担というだけでなく、子供の安全上からも問題を捉えるべきですね。朝日新聞に、「散歩中の保育園児「置き去り」四年間で九十四件 東京都が注意喚起」という記事が掲載をされました。東京都に報告されただけで二〇一七年から二〇年度の四年間で九十四件、これは迷子も含むと。報告件数は一七年度は計十四件だったのが二〇年度は計二十八件と、これ増加傾向。園児の年齢は三歳以下が七割超を占めると。幸いにも園児にけがはなかったということなんですけどね。
これ、現在置き去りについて集約する仕組みはないんですよね、この東京都の検査も報告もですね。足立区は二〇一九年からの三年間で八件の置き去りが発生していたんだけど都に報告していなかったということを三月四日になって公表していますので、東京都も全数把握でもないんですよ。
内閣府は、年一回、重大事故、死亡事故の全数報告をまとめて、その分析もしています。この置き去りというのも交通事故などにつながる可能性は非常に高い。重大事故と同じような扱いで情報収集必要だと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(野田聖子君) 散歩などの園外保育中の置き去り事案が多発しているという報道は私も承知しています。こうした事案というのは幼い子供が事故や事件に巻き込まれる可能性を生じる危険なものであり、発生防止のために必要な措置を各施設において確実に講じることが重要であります。
先日、厚生労働大臣より、各自治体において置き去り事案をどの程度把握しているかについて調査を行い、その結果等も踏まえて対応策を検討すると表明されていましたが、この自治体に対する調査や対応策の検討については、厚生労働省とともに私たち内閣府も共同で実施することとしています。
それぞれの施設においてどのような措置をとることが事案の発生防止に効果的か、効果的な措置が確実にとられるようにするためには何をすべきかといった点について厚生労働省としっかり検討してまいります。
○田村智子君 こういう置き去りというのはあってはならないんですけれども、背景にある事情は保育士だけの責任ではないと、朝日新聞にはこの専門家のコメントも報道されているんですね。
その一つが、園庭がなくていいという規制緩和が行われたことにもあるんじゃないのかと。保育園を考える親の会の調査では、全国百自治体、これ政令市、千葉、神奈川、埼玉の主要都市、また東京の二十三区と市ですね。そこでは、園庭の保有率、二〇一五年の八〇・三%から現在七〇・六%に減少しているという報告なんです。近隣に公園があれば園庭不要、こういう規制緩和が行われました。また、東京は、都独自の認証保育所の制度持っていますけれども、これも園庭なくていいんですね、ビルの一室で構わない。また、国の企業主導型保育所も同じですよね。園庭なくていいんですよ。
そうすると、今複数の保育所からもう公園を取り合うようにして遊び合っていて、子供たちが入り交じって遊んでいるから見失うということが起きやすい状況が現にあるんだと。こういう影響をやっぱり見るべきだと思いますけど、いかがでしょうか。
○政府参考人(川又竹男君) 保育所における安全管理につきましては、保育所保育指針に基づく解説におきまして、保育中常に全員の子供の動きを把握し、職員間の連携を密にして、子供たちの観察の空白時間が生じないようにするよう求めているところでありまして、こうした置き去りといった事態、事案はあってはならないことだと考えております。
厚労省としては、近年、この園外保育中の置き去りが多発していて、その背景に、園庭のない保育所が増加していることが一因でないかという報道があるということは承知をしております。まずは、こうした事案につきまして、各自治体においてどの程度把握しているのかサンプル調査を行っているところでありまして、その調査結果等を踏まえて必要な対応を検討してまいりたいと考えております。
○田村智子君 これまでの保育行政は、待機児童対策のためには保育の質が置き去りにされても仕方がないという方向でひたすら規制緩和を進めてきたと言わざるを得ないんです。定員超過、園庭必要ない、保育士が足りなければ有資格者でなくてよいなどですね。また、都市部での人口密集を放置して、タワーマンション建設も規制するどころか再開発に前のめりで、その地域の保育需要などお構いなしという政策も取られ続けているわけです。
こういう規制緩和一辺倒でいいのかと。保育でいえば、むしろ公定価格、この人の配置を強めて、こんなお庭がないという状態の下で散歩に連れていっているわけですから、保育事故が起きないような人の配置がしっかりできるような方向にすべきだと思いますし、もっと言うと、公定価格の配置基準の基になっている児童福祉法の最低基準、保育士配置基準、これを子供の成長発達の権利が保障されるように見直すことが私は求められているというふうに思います。
特に、三歳児は二十人に一人、四歳児以上は三十人に一人、四歳と五歳は同じクラスでよいと、これが今日かみ合う基準なのかということだと思いますよ。
こういう見直し、やはり子供の健やかで豊かな成長を保障するような基準へと見直しを行っていくべきだと思いますけど、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(野田聖子君) 保育、幼児教育の質の向上や子供の安全の観点から、保育士等の配置の改善を図っていくことは重要な課題と考えています。三歳児の配置改善については平成二十七年度から取り組んでおります。
一方で、いわゆる、先ほども申し上げましたけれども、〇・三兆円超の質の向上事項に含まれている一歳児や四歳児、五歳児の配置改善については未実施でありますので、これらの実施について、各年度の予算編成においてしっかり必要な財源の確保に努めてまいります。
○田村智子君 保育士で驚くのは、こういう人の配置のときに小数点以下の人数残しているようなお金の出し方しているんですよ。これ、学校じゃあり得ないですよ。小学校一年の三十五人学級は、三十五人を一人でも超えればクラスは二つになって、先生は二人になります。でも、保育士はそうならない。計算上、小数点以下四捨五入なので、四十五人以上にならないと保育士二人にならないんですよ。
こういうことも含めて見直しが必要だ、求めて、質問を終わります。