日本共産党の田村智子政策委員長は30日、NHK「日曜討論」に出席し、オミクロン株感染急拡大への対応や感染対策と社会経済活動との両立などをめぐり、各党政策責任者と討論しました。田村氏は発熱外来への補助金を直ちに元に戻すことや、社会機能維持のためにも検査を拡大することを主張しました。
田村氏は、昨年秋に感染が収まっていた時期に冬の感染拡大に備えて検査能力を大規模に拡充することを何度も要望し、自治体関係者からも高齢者へのワクチン3回目接種を急ぐべきだという声が上がっていたにもかかわらず、岸田政権の対応が後手後手に回っていることを批判。「真摯な反省が求められている」と語りました。
その上で、いま発熱外来がパンク状態にあり、重症者が来てもすぐに検査・治療できるようにしなければならないにもかかわらず、発熱外来への補助金が昨年末に打ち切られ、診療報酬の大幅引き下げが行われていることを指摘。「なぜこういうことをやるのか。発熱外来を増やすしかないのだから、補助金も診療報酬も直ちに元に戻すべきだと強く要求したい」と訴えました。
田村氏は、社会的機能を維持させるためにも検査の当面の重点化と拡充が重要だと述べ、医療機関でのPCR検査の結果が数日かかる実態の解決、エッセンシャルワーカーへの検査が切迫して問われていると強調しました。
さらに、ワクチン3回目接種の遅れの問題で、2回目接種後8カ月以上の間隔をあけるという政府の原則が基本的にいまだ見直されていないことを批判。厚労省も「8カ月」に何の科学的根拠もないことと明確に認めていると述べ、「8カ月」原則を見直すとともに、大変な負担がかかっている自治体への支援を強化するよう求めました。
NHK日曜討論/田村政策委員長の発言
急拡大するオミクロン株感染にどう対応し、感染防止対策と経済政策をどう両立させるか。日本共産党の田村智子政策委員長は30日のNHK「日曜討論」で、各党政策責任者と意見を交わしました。
オミクロン株への対応
政府のコロナ対応について田村氏は、感染者数が下降傾向にあった昨年秋ごろの時点で、大規模な検査やワクチン接種などの必要な体制を整えておくべきだったと指摘し、「対応が後手後手に回り続けていることに真摯(しんし)な反省が求められている」と厳しく批判しました。
田村氏は、オミクロン株感染の急拡大に伴い発熱外来のひっ迫が深刻になる中で、政府が発熱外来への補助金や診療報酬の加算を昨年で打ち切ったことを指摘。「補助金も診療報酬も直ちに元に戻すべきだ」と主張しました。同時に、発熱外来の数を増やすことを強く求めました。
立憲民主党の小川淳也政調会長は、政府の水際対策の失敗が感染拡大をもたらしたとして、「通常医療や救急搬送にも影響が出ている危機的な状況だ。厳しくたださなければならない」と批判しました。
社会経済活動との両立
コロナ禍で社会経済活動を維持していくための対応について、田村氏は、濃厚接触者の待機期間短縮というだけでなく、検査体制の拡充が必要不可欠だと指摘。「保育所、事業所、学校などを通じて抗原検査キットを配布し、自宅ですぐに検査ができるようにすることを昨年から求めてきた。また(医療従事者など)自宅待機から復帰する時にもすぐにPCR検査が受けられる体制を確立することが必要だ」と強調しました。
自民党の高市早苗政調会長は「検査キットの配布は医療機関などには重点的に行っている」などと弁明。これに対し田村氏は「首都圏の診療所でも検査の結果が出るまでに数日から1週間かかるような状況だ」と実態を示し、「医療機関やエッセンシャルワーカーへの検査の重点化に本気で取り組むべきだ」と訴えました。
日本維新の会の音喜多駿政調会長は、新型コロナの感染症法上の位置付けを現在の「2類相当」から季節性インフルエンザ並みの「5類(相当)」へ引き下げるべきだと主張しました。田村氏は「変異の速さや感染力を見ても季節性インフルエンザと一緒にするのは明らかに間違いだ」と批判しました。
ワクチンの3回目接種
3回目のワクチン接種について、田村氏は、政府が2回目からの接種間隔を原則「8カ月」としたことが接種の遅れの原因だと発言。厚労省が「8カ月原則」に科学的根拠がないことを明確に示しているなかで、政府が高齢者などの「特例」を除き、いまも基本的には原則8カ月を見直していないと批判し、「原則の見直しはもちろん、負担が増えている自治体への支援も求められる」と強調しました。
立民・小川氏は、先行接種を希望する自治体の要求を原則8カ月の方針が阻んできたと指摘。「政府はワクチン接種のスケジュールと目標を示すべきだ」と強調しました。国民民主党の大塚耕平政調会長は、「医療関係者の接種も遅れている。高齢者への接種も楽観しない方がいい」と述べました。
自民・高市氏は「スタートが遅かったのは率直に認めなければならない」と述べました。
賃上げ実現どうすれば
コロナ禍で傷んだ経済を立て直すための「賃上げ政策」についても議論になりました。自民・高市氏は、アベノミクスによる成長戦略が賃上げを実現してきたと主張。「賃上げ税制は効果があまりないとの指摘もあるが、大企業にとっては一定の効果がある」などと発言しました。
田村氏は「アベノミクスの9年間で、『賃上げ減税』として法人税減税額は2兆円を超えている。しかし、実際には賃上げにはならず、実質賃金でみればマイナスになっている」「大企業に効果というが、内部留保をため込まずに賃金に回すべきだ」と主張しました。その上で、「賃上げをするためには、大企業と中小企業、地方と都市、男性と女性などの格差を是正するための政策を持つべきだ」と強調し、最低賃金1500円への引き上げ、そのために中小企業の社会保険料の負担軽減など直接支援を提起しました。
れいわ新選組の大石晃子政策審議会長は、岸田政権が目玉とする介護・保育の賃上げはたった月額9000円だと批判し、「積極財政で介護・保育を充実させて国民生活の底上げをすることこそ必要だ」と述べました。
維新・音喜多氏は、賃上げのためには労働市場の流動化など規制緩和による経済成長が必要だと強調。これに対し、れいわ・大石氏は「維新の主張する労働市場の流動化は、労働者をクビにしやすくする解雇規制緩和だ」と批判しました。
今後必要な経済政策は
最後に、今後必要な経済政策を問われ、田村氏は、労働法制の規制緩和や社会保障の削減、消費税増税の一方で大企業・富裕層を優遇してきた税制の在り方が、日本の経済を弱くしたとして、「その反省に立って、安定した働き方、安定した収入を生活の土台とした政策の大転換を求めていきたい」と述べました。
2022年1月31日(月) しんぶん赤旗