活動報告

活動報告
岸田首相の姿勢ただす/新自由主義転換・性暴力根絶・平和を守る提案/田村副委員長が代表質問/参院本会議

 日本共産党の田村智子副委員長は10日、参院本会議で代表質問に立ち、新型コロナウイルス対策や「新しい資本主義」の問題、内政・外交の基本問題で岸田文雄首相の姿勢をただしました。新自由主義路線の転換や性暴力の根絶、平和を守る提案を示し、自公政治の転換を迫りました。岸田首相は聞かれた質問に正面から答えず、ごまかしの答弁に終始しました。

 コロナ対応について田村氏は、病床削減計画の撤回や不十分すぎる給付金の抜本拡充とともに、医療機関全体への財政支援を求めました。医療機関は赤字経営なのに、病床確保への補助金以外はまともな国の補助金がないと指摘。発熱外来の補助金も診療報酬の加算も終了しているとして、「外来診療の体制確保を含め、『第6波』に備える財政支援を直ちに行うべきだ」と迫りました。岸田首相は、不十分な支援策を繰り返すだけでした。

 田村氏は、岸田首相が総裁選で「小泉改革以降の新自由主義からの転換」を訴えたことを指摘。首相が掲げる「新しい資本主義」とは、格差と貧困を広げた労働法制などの「規制緩和路線を転換するということか」とただしましたが、岸田首相は聞かれたことに答えず、規制緩和路線に無反省な姿勢を示しました。

 田村氏は、岸田首相が進める、賃上げした企業への「減税」は効果をあげていないと述べ、大企業に内部留保を活用した賃上げを要請すべきだと要求。非正規雇用の割合の高さなど、構造的な問題への抜本的な対策の必要性を強調しました。さらに、賃上げを政策的に進めるため、労働者を直接雇うことを原則とするなど労働法制の改正を提案。最低賃金時給1500円の目標を明確にし、中小企業を直接支援して思い切った引き上げを求めました。

 岸田首相は「最低賃金は全国加重平均千円をめざす」と低い目標を示すだけでした。

 田村氏は「性暴力・性犯罪をなくすため、科学的で包括的な性教育を」と、被害の実態に見合った刑法の性犯罪規定の改正とともに包括的性教育の必要性を訴え。性交や避妊に関する科学的情報を教える重要性を指摘するユネスコの「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」に学び、「公教育における性教育の実践をしていくことが大切だ」とただしました。岸田首相は「学習指導要領に基づき指導している」などとして包括的な性教育の実施には背を向けました。

 田村氏は、補正予算に軍事費が過去最大の約7700億円計上され、岸田首相が「敵基地攻撃能力」保有の検討まで表明したことを批判。「軍事に軍事で対抗し、先制攻撃につながる敵基地攻撃能力を持とうとすることは、軍事的緊張と軍拡競争を強め、増税と社会保障の削減など命・暮らし、安全を脅かす道だ」として、「憲法を生かした平和外交への具体的で真剣な努力こそ求められる」と訴えました。

 

大企業優遇の「賃上げ税制」/格差解消に指一本触れず/田村氏が自公の税制大綱批判

 日本共産党の田村智子政策委員長は10日、国会内で記者会見し、自公両党が同日決定した2022年度与党税制改正大綱について問われ、「税制では格差をどう解消するかが一番問われるが、格差解消には指一本触れてない」と批判しました。

 田村氏は、大綱では岸田文雄首相が総裁選で掲げていた、年間所得1億円を超えると逆に税負担率が下がる「『1億円の壁』の打破」が完全に棚上げされる一方で、給与を引き上げた企業の法人税を減税する「賃上げ税制」の拡充が盛り込まれていると指摘。しかし、「そもそも巨額の内部留保を積み増している大企業に賃上げ減税が必要なのか。むしろ、ため込むより給料に回せと求めるのが政治の役割だ」と批判しました。

 田村氏は、「賃上げ税制」はすでに13年度から実施されているが、20年度の方が実質賃金は下がっていると指摘。「果たして効果があったのか。減税の恩恵ばかりが大企業へいったのではないか」と批判しました。

 田村氏は「大事なことは賃上げをする体力がない、赤字の中小企業をどう支援するかだ。今回の税制は一体何のためにやるのかが問われる」と重ねて批判しました。

 

命・安全最優先の政治に転換を/国民の願い実現迫る/田村副委員長の代表質問/その2

 日本共産党の田村智子副委員長は10日の参院本会議で、大企業優遇、軍事優先の政治を続ける岸田政権の根本姿勢をただし、国民の命、暮らし、安全を最優先にした政治への転換を求めました。

 

コロナ対策/医療機関へ支援不可欠

 田村氏は、新型コロナの変異株「オミクロン株」の市中感染などの事態を想定して外来診療、入院医療ともに体制強化が求められると指摘。それにもかかわらず政府は「コロナ病床の確保を要請しながら、病床削減する計画を進めている」と批判し、削減計画中止を迫りました。

 田村氏は、昨年、医療機関は圧倒的な赤字になったとして、「最悪の事態を想定した」体制をつくるには医療機関全体への財政支援が不可欠だと提起。安倍政権のもとで7年間にわたって診療報酬が引き下げられ、緊急事態への体制確保に大きな困難をもたらした反省にたち、「医療の基盤強化の支援策を、今こそ進めるべきだ」と強調しました。

 困窮者への給付金について田村氏は、住民税非課税世帯などへ給付金が生活保護世帯に支給される場合、給付金が収入に認定されれば生活保護費が減額されるとして「収入認定から除外されるか」と質問。岸田首相は「収入認定から除外する方向で検討している」と答弁しました。

 田村氏は、事務費だけで967億円という子育て世帯のクーポン支給は「非難の嵐だ」として、抜本的見直しを求めました。

 中小企業支援では、多くの事業者が融資の返済や税金の延納分などの支払いに直面しているとして、コロナ融資の返済減免、社会保険料や税金の特別減免などを講ずるべきだと迫りました。岸田首相は「融資の返済猶予は金融機関に配慮を要請している。税、社会保険料の納付猶予は、仕組みを設けた」などと述べ、返済猶予、特別減税を拒否しました。

 

「新しい資本主義」/規制緩和路線の転換を

 岸田首相が総裁選で「小泉改革以降の新自由主義的政策を転換する」と訴えたことについて、田村氏は、岸田首相の「新しい資本主義」を正面からただし、構造問題に踏み込んだ対策を提案しました。

 田村氏は、小泉純一郎政権(2001~06年)で進められた派遣労働の対象拡大など労働法制緩和が非正規雇用を増やしてきたと指摘。フルタイムで働いても年収200万円に満たないワーキングプアを生みだし、貧困と格差の拡大と経済の停滞をもたらしたとし、「この規制緩和路線を転換するのか」と迫りました。岸田首相は、正社員化を支援するというだけで、規制緩和路線に無反省な姿勢を示しました。

 田村氏は、岸田首相が賃上げ策として21年度補正予算案に盛り込んだ、給与を引き上げた企業の法人税を減税する「賃上げ減税」は13年度から実施され、減税額は2兆円を超えるのに12年と20年の平均賃金を比較すると実質賃金はマイナスだと述べ、「効果があったのか」と追及。減税額の44・2%は大企業向けで、トヨタ自動車1社で359億円と推計されるとし、「やるべきは内部留保を活用した賃上げを大企業に強く要請することだ」と強調しました。

 田村氏は、賃上げを抜本的に進めるため、直接雇用を原則とするなど法規制によって構造的に正規雇用の割合を増やしていくべきだと主張。最低賃金を全国一律時給1500円に引き上げるべきだと提案しました。

 田村氏は「中小企業への直接の支援が最大のカギ」だとし、中小企業の社会保険料事業主負担分の軽減を提案。「本気の賃上げのために真剣に検討してほしい」と訴えました。

 岸田首相は、「賃上げ減税」は賃上げに寄与してきたとし、最低賃金は全国加重平均千円を目指すと低い目標を示しました。

 

気候危機/石炭火発延命策やめよ

 田村氏は、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で46の国と地域が賛同した石炭火発「廃止宣言」に、日本はなぜ入らなかったのかと追及。岸田首相が気候変動対策の名で進めようとしているアンモニアと石炭との混合燃焼が、温室効果ガスを大量に排出する石炭火力発電の延命策にすぎないことを告発しました。

 田村氏は、アンモニア製造は高コストなうえ、アンモニア1㌧を製造するのに1・6㌧の二酸化炭素が排出され、石炭とアンモニアを8対2の比率で燃やした二酸化炭素排出削減効果が4%にすぎないという事実を示し、「合理性はない。2050年以降も石炭火発を稼働させるつもりか。一刻も早く石炭火力発電をやめなければならない」とただしました。

 岸田首相は「日本は日本の取り組みを進めている」と開き直りました。

 

性暴力根絶/包括的な性教育が必要

 「あなたの望まない性的な行為は、性暴力」―。田村氏は、女性に対する暴力撤廃の国際デー(11月25日)に合わせた内閣府ポスターの標語を引用し、「この啓発は系統的に大規模に行うことが大切だ」と強調。法制審議会(法相の諮問機関)で議論されている刑法の性犯罪規定について、同意要件の新設など被害の実態に見合った改正を求めました。

 同時に田村氏は「性暴力、性犯罪をなくし、互いの性を尊重する人間関係を築くために、科学的で包括的な性教育が必要だ」と強調。ユネスコが包括的な性教育を推進するためにガイダンスで「性交、避妊に科学的情報など重要な話題を無視し、省略することはスティグマ(偏見)や無知を引き起こし、助けを求める障壁をつくりだす」と指摘し、「日本では性交も避妊も学校で教えることがタブー視されたままだ」と批判しました。

 田村氏は、文部科学省の「生命の安全教育」について、「包括的な性教育とは異なる」と指摘。「子どもたちは公教育で、性や生殖についての科学的な知識や、性に関わる人権意識を形成する機会もないままに、インターネットなどで氾濫する暴力的でゆがんだ性の情報に触れている、これが日本の現状ではないか」と迫り、性暴力や予期せぬ妊娠を防ぐ上でも、ユネスコに学んだ公教育での性教育の実践を求めました。

 岸田首相は、ユネスコのガイダンスは承知していると述べながら、日本の学校では学習指導要領に基づき指導すると答え、包括的な性教育に背を向けました。


2021年12月11日(土) しんぶん赤旗

 

 

 

○田村智子君 私は、日本共産党を代表し、岸田総理大臣に質問いたします。

 まず、新型コロナ対策です。

 感染第六波、インフルエンザとの同時流行、オミクロン株の市中感染、こうした事態を想定して、外来診療、入院医療共に体制の強化が求められています。

 ところが、政府は、コロナ病床の確保を要請しながら、高度急性期と急性期の病床二十万床削減計画をいまだに進めている、これはコロナ対策と相矛盾する、中止すべきではないか、昨日の衆議院における我が党の質問に総理の答弁がありませんでした。改めてお聞きします。明確に御答弁ください。

 昨年、医療機関は、コロナ補助金があっても圧倒的に赤字経営となりました。最悪の事態を想定した体制をつくるには、医療機関全体への財政支援が不可欠です。

 ところが、病床確保の補助金以外、まともな国の補助金がありません。驚いたのは、発熱外来の補助金まで昨年度で終了し、診療報酬の加算も九月で終了してしまったことです。外来診療の体制確保を含め、第六波に備える財政支援を直ちに行うべきではありませんか。

 来年度に向けて、診療報酬引下げが議論されていることも重大です。安倍政権の下で七年間にわたって診療報酬は引き下げられ、医療機関の経営基盤は弱まり、緊急事態への体制確保に大きな困難をもたらしました。その反省に立ち、医療の基盤強化の支援策を今こそ進めるべきです。総理の答弁を求めます。

 総理は、通常に近い経済社会活動を取り戻すまで、断固たる決意で、新型コロナでお困りの方の生活を支え、事業の継続と雇用を守り抜きますと宣言されました。ならば、総選挙で総理自身が公約した、コロナでお困りの皆様への給付金支給をやろうではありませんか。今示されている給付金では、困っていても対象外となる人がたくさんいることを総理はお認めになりますか。

 また、住民税非課税など低所得世帯への給付金は、生活保護世帯にも支給されますか。その場合、収入認定から除外されるのでしょうか。

 事務費だけで九百六十七億円という子育て世帯へのクーポン支給は、ごうごうたる非難の嵐です。抜本的な見直しをすべきではありませんか。 

 以上、国民への給付金について明確な答弁を求めます。

 中小企業への支援についてお聞きします。

 菅政権は、財政審議会の議論に明らかなように、中小企業の新陳代謝、淘汰の立場で、緊急事態宣言のさなかに持続化給付金の申請打切りまでしました。岸田総理は、この淘汰という立場を撤回されますか。

 今年一月以降、最悪の感染拡大が続く下で、菅政権は、野党の提案に聞く耳を持たず、持続化給付金、家賃支援給付金の再支給を拒否し続けました。協力金や月次支援金で支援したと言いますが、コロナ関連の経営破綻は、九月以降、三か月連続で過去最多を更新しており、支援の不十分さは明らかです。この反省に立って、事業復活支援金は今年一月以降の売上げ減を対象とするなど、抜本的な拡充が必要と考えますが、いかがですか。

 今、多くの事業者が、これまでに受けた融資の返済、社会保険料や税金の延納分を含めた支払に直面しています。コロナ融資の返済減免、社会保険料や税金の特別減免などを直ちに講ずるべきではありませんか。

 また、消費税五%への減税は、個人消費を喚起し、中小企業の納税負担を軽くします。さらには、複数税率が解消され、中小事業者やフリーランスにとって重い負担となるインボイス制度も必要なくなります。これこそ、コロナ危機の下での暮らしと事業継続への支援策ではありませんか。答弁を求めます。

 新しい資本主義についてお聞きします。

 規制緩和、構造改革などの新自由主義的政策は、富める者と富まざる者、持てる者と持たざる者の分断を生んできました、格差が広がれば経済の好循環は実現せず、社会、政治も不安定化する、小泉改革以降の新自由主義的な政策を転換する、これらは総裁選で、岸田総理の言葉です。

 総理、小泉改革以降の新自由主義的な政策とはどういう政策でしょうか。

 小泉政権の構造改革、特に派遣労働の対象拡大など労働法制の規制緩和は、非正規雇用を増やし、フルタイムで働いても年収二百万円に満たないワーキングプアを生み出し、格差と貧困を拡大し、経済の停滞をもたらしました。新しい資本主義とは、この規制緩和路線を転換するということですか。はっきりとお答えください。

 新しい資本主義の下での分配、賃上げ政策についてお聞きします。

 給与を引き上げた企業への法人税減税が柱となっていますが、この賃上げ減税は既に二〇一三年度から実施され、減税額は二兆円を超えています。では、どれだけの賃上げになったのか。二〇一二年と二〇二〇年の平均賃金を比較すると、年収で名目僅か四・五万円の賃上げ、実質賃金はマイナス二十二・四万円です。賃上げ減税は効果があったのでしょうか。

 しかも、減税額の四四・二%は大企業向けであり、トヨタ自動車一社だけで三百五十九億円もの減税と推計されます。そもそも巨額の内部留保を積み増している大企業に賃上げ減税が必要でしょうか。やるべきは、内部留保を活用して賃上げをと大企業に強く要請することではありませんか。答弁を求めます。

 一九九〇年には世界でトップクラスだった日本の平均賃金は、その後、名目でもほとんど上がらず、実質賃金で下がっていった。欧米諸国はもとより、韓国にも抜かれ、異常なまでに賃金が上がらない国が日本です。

 非正規雇用の割合が国際比較で高い、大企業と中小企業の格差が大きい、ケア労働など女性が多い専門職の低賃金など、構造的な問題への抜本的な対策が必要だと考えますが、総理の認識を伺います。

 賃上げを政策的に進めるために、一つには労働法制の改正を求めます。

 労働者を直接雇うことを原則とする、派遣労働や短期の雇用契約は一時的、臨時的業務に限定するなど、法規制によって構造的に正規雇用の割合を増やしていくことが今こそ必要ではありませんか。

 二つに、最低賃金時給千五百円という目標を明確にして、中小企業を直接支援し、短期間に思い切った引上げ政策を持つことです。

 最低賃金は、十年掛けて全国平均で僅か百九十三円しか上がっていません。今年四月、バイデン米国大統領は、連邦政府と契約する業者について、最低賃金を時給十・九五ドルから十五ドルに一気に引き上げる決断をしました。日本でも全国一律時給千五百円へ思い切った引上げを行うべきではありませんか。

 中小企業への直接の支援が最大の鍵です。我が党は、中小企業の社会保険料事業主負担の軽減を提案しています。本気の賃上げのために真剣に検討いただきたい。総理の認識を伺います。

 また、医療、介護、保育などケア労働の賃金は、国家資格にふさわしく、専門性と経験を評価した抜本的な引上げを政府の責任で行うよう要求いたします。

 気候危機打開への戦略についてお聞きします。

 COP26では、石炭火力の廃止が焦点となりました。イギリス、ドイツ、フランス、EU、ポーランド、韓国、ベトナム、インドネシアなど四十六の国と地域が、石炭火力の新設中止、CO2排出削減措置をとらない石炭火力の段階的廃止を明記した石炭火力の廃止宣言に賛同しました。日本が賛同しなかったのはなぜか、まずお答えください。

 総理は、火力発電のゼロエミッション化として、アンモニアや水素への燃料転換を強調しましたが、これこそがCOP26で日本が化石賞を受賞した理由です。

 アンモニアは、一トンの製造に対し一・六トンのCO2を排出すると経産省の資料で示されています。そのため、石炭八割、アンモニア二割で火力発電を稼働した場合、CO2削減効果は僅か四%というのが気候ネットワークの試算です。しかも、アンモニア製造は高コストです。

 わざわざCO2を大量に排出し、高いコストを掛けて、火力発電のためにアンモニアを製造する合理性はありません。結局、これは石炭火力発電の延命の策ではありませんか。政府のエネルギー戦略では、二〇三〇年どころか二〇五〇年以降も石炭火力発電を稼働させるつもりなのでしょうか。総理の明確な答弁を求めます。

 破局的な気候変動を防ぐには、一刻も早く石炭火力発電をやめなければなりません。二〇五〇年までに再生可能エネルギー一〇〇%を目標とし、二〇三〇年までに本気の再エネ普及を行うことを強く求めます。

 十一月二十五日は女性に対する暴力撤廃の国際デー、日本でも女性に対する暴力をなくす運動が取り組まれました。

 「あなたの望まない性的な行為は、性暴力です。」、「傷つけた方が悪い。性暴力に言い訳は通らない。」、内閣府が作成したポスターです。言い訳の事例も、「二人きりで食事したよね」、「お互いお酒飲んでたし」、「そんな服装してるしさあ」など書かれており、内閣府がここまでの啓発活動をしたことを評価いたします。

 あなたの望まない性的な行為は性暴力、この啓発は系統的に大規模に行うことが大切だと考えますが、いかがでしょうか。

 勇気を持って性暴力被害を告発する幾多の運動の下で、今、刑法の性犯罪規定の議論が法制審議会で行われています。同意要件の新設など被害の実態に見合った改正を求めるものです。

 同時に、性暴力、性犯罪をなくすために、また、互いの性を尊重する人間関係を築くために、科学的で包括的な性教育が必要ではないでしょうか。

 ユネスコは、各国の研究成果を踏まえ、WHOなどと協力して、性行為のリスクだけでなく、相互の尊重と平等に基づく愛情や人間関係というポジティブな側面を含む包括的セクシュアリティ教育を推進するために、国際セクシュアリティ教育ガイダンスを発表しています。この中で、性交、避妊に関する科学的情報など重要な話題を無視し、省略することは、スティグマや無知を引き起こし、助けを求める障壁をつくり出すと指摘しています。

 日本では、性交も避妊も学校で教えることがタブー視されたままです。文部科学省は、性暴力の被害者にも加害者にも傍観者にもならないためとして、命の安全教育を今年度から実施しています。被害者は悪くないこと、自分の体を大事にすること、被害への対応など、実践的で大切な内容だと思いますが、これは包括的な性教育とは異なります。

 子供たちは、公教育で性や生殖についての科学的な知識や性に関わる人権意識を形成する機会もないままに、インターネット等で氾濫する暴力的でゆがんだ性の情報に触れている、これが日本の現状ではないでしょうか。性暴力はもちろん、予期せぬ妊娠を防ぐ上でも、ユネスコのガイダンスにも学びながら、公教育における性教育の実践をしていくことが大切だと考えますが、総理の見解をお聞きします。

 七月、原爆投下直後の黒い雨被害者救済について、広島高裁判決は、原告全員に原爆手帳の交付を認め、特定の疾病の発症がなくても放射能による健康被害が否定できなければ被爆者とする画期的な判断を示しました。政府は上告を断念し、菅総理は、同じような事情にあった人を早急に救済するという談話を出しました。

 ところが、今行われている被爆者手帳交付の新たな審査指針の検討で、国は特定の病気になったことを考慮するとの基本的考え方を示し、広島からは判決からの後退を批判する声が起こっています。

 広島出身の総理として、高裁判決の立場を堅持し、幅広く救済すべきではありませんか。

 森友、加計学園、桜を見る会などの政治の私物化、河井元大臣による広島での選挙買収、いずれも真相解明に蓋をし、辺野古新基地建設では、国が行政不服審査請求制度を濫用し、遺骨の眠る土砂まで使って埋立てを強行しようという、聞く耳持たない強権政治と我が党は断固として対決します。

 日本学術会議の任命拒否問題についてお聞きします。

 学術会議の専権行為である会員の推薦に官房副長官が介入した、これが事の始まりだったと内閣府の資料が示しています。憲法が保障する学問の自由への侵害そのものです。学術会議は、今年の総会で改めて任命を求めています。官邸の違法な介入を認め、六人を直ちに任命すべきではありませんか。

 十一月三十日、米軍の戦闘機F16が、エンジントラブルで緊急事態に陥り、燃料タンク二つを投げ捨て、青森空港に緊急着陸しました。燃料タンクの一つは民家から僅か二十メートルに落下、一歩間違えば大惨事となっていました。

 防衛省は翌日、F16の飛行中止を米軍に要求、しかしその翌日、政府の要請を無視し、事故原因の究明もなく飛行を再開されました。総理は米軍に抗議しましたか。いつまで米軍の勝手放題を放置するのですか。

 F16はこれまでも事故を繰り返しています。一九八五年に五十機が配備されて以降、燃料タンクの投棄二十回、模擬爆弾投棄は十二回、さらには十三機が墜落事故を起こしています。住民は日常的に大惨事の危険性にさらされているのです。国民の命と安全を守るために、F16の撤去を在日米軍に要請すべきではありませんか。

 米軍機による事故は、部品や装備品、コンテナの落下、墜落、不時着等、多発しています。しかし、日本は独自の事故調査を一切行うことができません。

 全国知事会は、二〇一八年に日米地位協定抜本見直しを求める提言を全会一致で採決し、航空法や環境法令を在日米軍に適用し、事件、事故時の自治体職員の迅速かつ円滑な立入りの保障などを求めています。

 総理、これは当然の要求です。国民の安全のために地位協定の抜本的な見直しへ動くときではないのか、答弁を求めます。

 自民党は、防衛費GDP比二%を念頭に増額を目指すと総選挙の公約に掲げ、補正予算は過去最大、七千七百億円の軍事費を計上、本年度の軍事費は六兆円を超えます。さらに岸田総理は、敵基地攻撃能力保有の検討まで表明しました。二〇一五年の安保法制強行以降、自衛隊の装備も訓練も、戦争する国づくりの道を急速に歩んでいます。

 尖閣諸島や南沙諸島に対する中国の軍事的脅威、軍事的威嚇、北朝鮮の核開発やミサイル発射は絶対に許されない、これは政府、与野党共に一致しています。

 しかし、軍事に軍事で対決し、先制攻撃にもつながる敵基地攻撃能力まで持とうとする、これは軍事的緊張と軍拡競争を強め、また、増税と社会保障予算の更なる削減を伴い、国民の命、暮らし、安全を脅かす道ではありませんか。

 憲法を生かした平和外交への具体的で真剣な努力こそ求められていることを述べ、質問を終わります。(拍手)

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 田村智子議員にお答えいたします。

 医療提供体制の確保についてお尋ねがありました。

 新型コロナ対応が続く中においても、地域の医療ニーズに合わせ、質の高い効率的な医療提供体制の確保を目指して地域医療構想を進める必要がありますが、あくまでも病床の削減や統廃合ありきではなく、地域の実情を十分に踏まえつつ、検討を進めてまいりたいと思います。

 また、先般お示しした新型コロナ対応の全体像を確実に実行するため、今回の経済対策においては、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金等により、病床の確保、患者の受入れといったそれぞれの段階に応じた支援を準備しております。

 令和四年度診療報酬改定については、予算編成過程でしっかりと検討をしてまいりたいと思います。

 コロナでお困りの皆様への給付金支給についてお尋ねがありました。

 新型コロナの影響が長期化する中、様々な困難に直面した方々が速やかに生活、暮らしの支援を受けられることが重要であり、そのための施策の一つとして、生活保護世帯を含む住民税非課税世帯に対して十万円を給付することとしています。その上で、本給付金は、生活保護制度における収入認定からも除外する方向で検討をしております。

 このほか、今回の経済対策においては様々な施策を講ずることとしております。新型コロナの影響を受けた方々に様々な施策を通じて広く重層的に支援を行っていきたいと考えます。

 そして、子育て世帯へのクーポンを基本とした給付については、新型コロナの影響が様々な人々に及ぶ中、子育てに係る商品やサービスを直接お届けすることで、より直接的に、そして効果的に子供たちを支援することが可能である取組であると考えております。

 また、中小企業への支援についてお尋ねがありました。

 これまで、新型コロナの影響により、厳しい状況に直面する中小企業等の事業継続を支援する観点から、新たな給付金や資金繰り支援等の施策を推進してまいりました。

 新型コロナの影響で売上げが減少した事業者に対して、十一月から来年三月までの五か月分を一括して支給する事業復活支援金により、支援をしてまいります。上限額は昨年の持続化給付金を超える額としていることに加え、新たに売上高の減少が三〇%以上の事業者も対象としております。

 なお、今年一月から十月までは、一時支援金や月次支援金などによる支援を行ってきたところであります。

 事業者の資金繰りについては、既存の融資の返済猶予などについて柔軟に対応するよう、官民の金融機関に対して配慮を要請しております。加えて、税、社会保険料の納付が困難な人々に対しては猶予の仕組みを設けているところであります。

 消費税率の引下げについてお尋ねがありました。

 消費税については、社会保障に係る費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合うという観点から、社会保障の財源として位置付けられており、当面、消費税について触れることは考えておりません。

 なお、インボイス制度は、複数税率の下で適正な課税を確保するために必要なものであり、周知広報あるいは事業者への支援、こうした円滑な制度移行に向けての取組を進め、万全の対応を行っていきたいと思います。

 新しい資本主義についてお尋ねがありました。

 一九八〇年代以降、世界の主流となった、市場や競争に任せれば全てうまくいくという自由主義的な考えは、世界経済の成長の原動力となった反面、格差や貧困の拡大など多くの弊害も生み出しました。

 コロナ禍の先に、こうした弊害を是正しながら更に力強く成長するため、成長も分配も実現する新しい資本主義を実現していきたいと考えております。

 このため、官と民が共に役割を果たし、成長戦略と分配戦略、実行してまいります。とりわけ、人への分配は、コストではなく、未来への投資であるとの考えに立って、賃上げの推進、同一労働同一賃金や下請対策の徹底、仕事と子育ての両立支援等を図るとともに、非正規雇用の方を含め、再就職や正社員化に向けた学び直しや職業訓練の支援を強力に進めてまいります。

 賃上げ税制についてお尋ねがありました。

 賃上げは、税制のみならず企業収益や雇用情勢等に影響を受けるものであり、自公政権の中で二%程度の賃上げを達成してきており、税制も寄与してきたものであると考えております。

 私自身、経済界の代表と向き合い、業績がコロナ前の水準に回復した企業については三%を超える賃上げを期待する旨、直接働きかけを行いました。また、民間企業の賃上げを支援するために様々な施策を講じ、環境整備に全力で取り組んでまいります。

 雇用や賃金に関する構造的な問題への対策についてお尋ねがありました。

 派遣労働者や有期雇用労働者については、同一労働同一賃金の導入など、制度が適切に運用され、これらの方々の待遇改善や雇用安定が図られるよう、指導監督等を徹底してまいります。

 最低賃金については、既に骨太の方針において、感染症拡大前に我が国で引き上げてきた実績を踏まえて、地域間格差にも配慮しながら、より早期に全国加重平均千円とすることを目指す、このように骨太の方針で明らかにしておりますが、この方針に基づいて引上げに取り組んでいきたいと思います。

 そして、社会保険料については、若者、子育て世帯を中心に保険料負担の増加を抑制し、所得の増加につなげていくことが重要な課題です。このため、社会保障制度を支える人を増やし、能力に応じてみんなが支え合う持続的な社会保障制度を構築し、現役世代の保険料の負担増の抑制を目指してまいります。

 また、公的価格の見直しを行い、介護、保育の現場で働く方や地域で新型コロナ医療対応などを行う医療機関で勤務する看護職の方々の給与、これを引き上げてまいります。

 そして、石炭火力発電の廃止宣言についてお尋ねがありました。

 日本は、日本の取組を進めております。石炭火力については、二〇三〇年に向けて非効率な石炭火力のフェードアウトを着実に進めてまいります。

 さらに、二〇五〇年に向けては、水素、アンモニアやCCUS等を活用して、それらのコストを引き下げつつ、脱炭素型の火力に置き換える取組を推進するなど、我が国としてもしっかり取り組んでまいります。

 また、再生可能エネルギーについては最大限の導入を進めており、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けた取組、強力に推進をしてまいります。

 そして、性暴力をなくすための教育についてお尋ねがありました。

 性犯罪、性暴力は重大な人権侵害であり、決して許すことはできないものです。政府では、毎年、女性に対する暴力をなくす運動という啓発活動を行っておりますが、引き続き強力に進めてまいります。

 御指摘の科学的で包括的な性教育としてユネスコのガイダンスがあるということ、これは承知をしておりますが、我が国の学校では、性に関しては、学習指導要領に基づき、保健体育科の授業を始め児童生徒の発達段階を踏まえつつ、教育活動全体を通じて指導しております。

 今後とも、児童生徒が性に関して正しく理解し、適切な行動を取れるよう、指導の充実にも努めてまいりたいと存じます。

 黒い雨訴訟を踏まえた対応についてお尋ねがありました。

 いわゆる黒い雨訴訟の原告と同じような事情にあった方の救済については、本年七月の総理談話と一審、二審の事実認定の結果を踏まえて対応していくこととしております。

 広島県、広島市などの意見を丁寧に聞きながら検討を進めたいと考えており、厚生労働省において、広島県や広島市、長崎県や長崎市を交えた協議、既に二回行われたと承知をしております。

 遅くとも令和四年度当初には可能な限り多くの方の救済を開始できるよう、スピード感を持って取り組んでまいります。

 そして、日本学術会議会員の任命についてお尋ねがありました。

 昨年十月の日本学術会議の会員の任命については、日本学術会議法に沿って任命権者である当時の内閣総理大臣が判断を行ったものであることから、一連の手続は終了したものと承知をしております。

 日本学術会議の在り方については、梶田会長とコミュニケーションを取りながら未来志向で検討を進めており、引き続き小林大臣の下で取り組んでもらいたいと考えております。

 そして、F16戦闘機の事故及び日米地位協定の改正についてお尋ねがありました。

 御指摘の事故については極めて遺憾なものであり、安全対策の説明もないまま飛行が再開されたこと、これは極めて遺憾であると考えております。その旨、防衛大臣から米国国防長官に伝えてあります。

 一方で、F16戦闘機は我が国の防衛及び地域の安定に資するものであり、撤去を求める考えはありません。当然、しかし、当然のことながら、安全管理の徹底はこれからもしっかりと求めてまいります。

 日米地位協定については、事案に応じた最も適切な取組を通じて一つ一つの問題に対応してきております。今後とも、目に見える取組を積み上げることによって、日米地位協定のあるべき姿、不断に追求していきたいと考えます。

 そして、防衛力、敵基地攻撃能力についてお尋ねがありました。

 平和安全法制は日米同盟をかつてないほど強固にし、抑止力を向上させました。戦争する国づくりとの指摘は当たらないと考えます。

 何よりも大切なことは、国民の命や暮らしを守るために必要なものは何なのか、これを、こうした現実的な議論をしっかりと突き詰めていくことです。防衛費についても、金額、結論がありきでなく、必要なものを計上してまいります。

 また、いわゆる敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず、現実的に検討してまいります。

 この検討は、憲法の範囲内で、専守防衛の考え方を維持しつつ行うものであり、専守、先制攻撃であるとか、軍事的緊張と軍拡競争を強めるとの御指摘、これは当たらないと考えます。

 我が国の平和と安全の維持は国民の命と暮らしの不可欠な前提であり、安全保障と社会保障は相対立するものではないと考えております。

 以上です。(拍手)


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