岸田文雄首相が早くも総選挙公約を投げ捨てました。

　総選挙で「新型コロナウイルスでお困りの皆様へ給付金をお届けする」と公約していた岸田首相。しかし閣議決定（１９日）した経済対策に盛り込んだ１０万円の給付金の条件は「住民税非課税世帯」。コロナで大打撃を受けた非正規の人でも、年収が１００万円（単身世帯）を超えていれば、課税世帯で対象外。事業者への給付金も昨年の持続化給付金の半分の水準です。

　日本共産党の田村智子政策委員長は記者会見（１９日）で厳しく批判しました。「総理大臣が公約を投げ出すことは許しがたい。コロナで困っている国民の皆さんに給付金が行き渡るように、他の野党とも力を合わせたい」

コロナ対策あまりに不十分／岸田政権「経済対策」ここが問題／その２

マイナンバーカード／不安無視し「押し付け」

　マイナンバーカードの普及促進のため、同カードを活用してサービスや商品を購入できる「マイナポイント」（１人当たり最大２万円相当）を付与します。

　具体的には▽マイナンバーカードを新規に取得すると５千円相当のポイント▽健康保険証とひも付けすると７５００円相当のポイント▽預貯金口座とひも付けすると７５００円相当のポイント―を付与します。

　政府が国民一人ひとりに生涯変わらない番号をつけるマイナンバー。多くの分野の個人情報をひも付けして利用できるようにするなど、プライバシー権を侵害する危険があります。希望者には、顔写真やＩＣチップの入った「マイナンバーカード」が交付されています。

　志位委員長は「支援金が欲しければ、個人情報を出せというやり方だ」と批判。「マイナンバーカードが普及しないのは、個人情報がリスクにさらされることへの不安があるからだ。無理やり給付金とセットで押し付けるやり方はとるべきではない」と強調しました。

介護、保育職の給与／引き上げわずか３％

　介護職員や保育士の平均給与は全産業平均より「月１０万円低い」のが実態です。しかし、経済対策では、保育士等・幼稚園教諭、介護・障害福祉職員の収入を来年２月から３％程度（月９千円）引き上げるだけです。現場の実態から見ると一桁少ない金額です。

　看護師は、賃上げの対象を当面、「地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員」に限定。来年２月から１％程度（月４千円）引き上げ、その後、段階的に３％程度に引き上げていくとしています。

　医療現場からは「コロナ対応の看護師だけ月４千円というのは現場に分断と混乱を持ち込むだけだ」と批判の声が上がっています。

医療体制の強化／人員不足に対策なし

　医療体制では、「今後、感染力が２倍になった場合にも対応可能な医療提供体制の強化を図る」としました。今夏と比べて３割増（約１万人増）の約３・７万人が入院できる体制を１１月中に構築するなどとした「次の感染拡大に向けた安心確保のための取り組みの全体像」（１２日決定）を受けたものです。

　日本医療労働組合連合会の森田進書記長は、病床を増やしたとしても「人員不足を解消しない限りは機能しないことは、第５波で明らか」と指摘。「人員増については全く具体策が述べられていない」と批判します。

　政府は公立・公的病院の病床削減計画を推進し、日本の医師・看護師数の水準も国際的に低いままです。森田書記長は「（このことに何の反省もなく）現実離れの『備え』を示したところで、医療関係者は正面から受け止めることはできない」とのべています。

軍事費に７千億円／これが「経済対策」か

　コロナに乗じて７千億円を超える軍事費を補正予算案に盛り込むと報じられています。

　経済対策では、「国家の安全保障の確保を含む国民の安全・安心」として、「ミサイル防衛能力」など「防衛力強化を加速する」としています。

　日本共産党の田村智子政策委員長は記者会見（１９日）で、これがどうして経済対策なのかと指摘しました。

　安倍政権以降、補正予算で大規模な自衛隊装備に予算をつけることが常とう手段になっており、補正予算の趣旨から逸脱しています。

　田村氏は「ミサイルや魚雷、機雷などの装備を前倒しで買う安倍政権のやり方を岸田政権はそのまま受け継いでいる」と批判しました。

　自民党は総選挙公約で「ＧＤＰ比目標（２％以上）も念頭に、防衛関係費の増額を目指します」としました。これを前提に大軍拡を進めようとするものです。

　田村氏は「経済対策の中身からも、岸田政権が安倍政権から『戦争する国づくり』を継承した危険な内閣だとはっきり示された」と強調。「国会論戦、国民的な運動で大軍拡、『戦争する国づくり』の策動に立ち向かう」と決意をのべました。

2021年11月28日(日) しんぶん赤旗