米軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)をはじめとする在日米海軍基地に寄港している原子力艦船の災害時の避難は、原発事故時の20倍の放射能が避難基準となっている―。
日本共産党の田村智子議員は12日の参院決算委員会で、同じ原子力災害への対応でありながら、国の二重基準が地方自治体の防災計画に矛盾を広げている実態を取り上げました。
原発事故では毎時5マイクロシーベルト(原子力災害対策指針)が避難基準とされながら、原子力艦船事故では毎時100マイクロシーベルト(原子力艦災害対策マニュアル)が基準となっています(表)。
いま原子力艦船事故にどう対応するのか―。田村氏の質問に対し、外務省の冨田浩司北米局長は「現行の原子力艦のマニュアルで対応する」と述べ、二重基準となることを追認。佐々木克樹内閣府官房審議官は「100マイクロシーベルトに達しない場合も情報の提供等を行う」などと自治体任せの姿勢を示しました。
田村氏は、横須賀市での防災訓練を例に、原発事故の想定では小学校児童などにできるだけ遠くへ逃げる訓練がなされる一方、原子力艦船事故の訓練では屋内退避を求めるだけで、保護者から「何の訓練か分からない」と戸惑いの声があがっていることを紹介。避難基準や範囲を原発事故「指針」と少なくとも統一すべきだと強調しました。
佐々木審議官は「原子力安全規制見直しの検討結果を踏まえ適切に対処していきたい」と述べました。
田村氏は、「マニュアル」改定が進まない背景に、「放射能はすべて艦内にとどまる」(米軍ファクトシート)と説明する米軍の「安全神話」があると指摘。東日本大震災の教訓を生かし、大津波による座礁の危険性や外部電源喪失など想定外の事態への対策を米側と協議すべきだと提案しました。
岸田文雄外相は大津波の場合でも「原子炉の安全は維持されると説明を受けている」などと米側任せの姿勢に終始しました。
【 議事録 】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
在日アメリカ軍に関する問題について質問いたします。
今年三月二十五日、日米合同委員会施設調整部会は、神奈川県横浜市内にある深谷通信所を今年六月末までに、同じく上瀬谷通信施設を来年六月末までに返還する、そのための手続を開始することを合意いたしました。
これらの施設の返還は二〇〇四年十月に既に合意をされており、横浜市はこれを受けて、二〇〇六年には返還跡地利用指針を、翌二〇〇七年には返還跡地利用計画をまとめていました。ところが、返還の手続が進まないままに十年近くが経過したことになります。しかも、米軍は返還合意の前からこの施設は使用していませんでした。土地も建物も長きにわたって遊休化をしていたことになります。日米地位協定では、使用されなくなった施設・区域は直ちに日本側に返還することになっており、この地位協定さえも踏みにじられていたことになります。
このように地位協定も返還合意もないがしろにするというやり方は本来あってはならないことだと思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(小野寺五典君) 委員御指摘がありました神奈川県横浜市に所在します深谷通信所及び上瀬谷通信施設につきましては、二〇〇四年、平成十六年十月の日米合同委員会におきまして、これらの施設・区域における現在の使用が終了し、その必要性がなくなった時点で返還に向けた手続が開始される旨、返還方針が合意されております。この返還方針を踏まえ、これまで早期返還の実現に向けて日米間で真摯に協議が重ねられてきた結果、これらの施設・区域の必要性がなくなったことについて日米間の認識が一致したことから、今年四月の日米合同委員会において返還時期に関する合意に至ったところです。
防衛省としましては、今後とも日米間での協議を継続しつつ、着実な返還の実現に向け努力をしてまいりたいと思います。
○田村智子君 真摯に協議とおっしゃいますけれども、全く使われていないまま、市民が使っていないところはもう荒れ地の状態でずっと置かれていたんですね。これは全く返還のやり方として、こういうやり方では日本側の権利というのが本当に侵されたままだなということは強く申し上げておきたいと思います。
この二つの施設は、通信施設そのものはフェンスで囲まれていますが、周囲の広大な敷地に囲いはありません。米軍も長きにわたって使用していないこともありまして、アメリカ軍と民間との協議によって既に市民は野球場とかゲートボール場、農場など土地を整備をして利用してきました。そうでなければ広大な荒れ地になったままという状態でした。
深谷の通信所を見ますと、大小十か所以上の野球場がありまして、少年野球チームの練習や試合に活用されております。基地に隣接する幼稚園は畑としても活用していて、多くの園児たちが自然と触れ合う大切な場所ともなっています。
今年六月の返還に伴ってこうした利用が突然できなくなるのではないかと、こういう不安が今広がっています。既に農地として個人が利用してきたところというのはもう利用ができなくなっているんですね。突然に返還の合意が、手続に進んだのが突然行われて、突然使えなくなるということが起きているんです。
こうした返還を理由に、野球場とか幼稚園の畑などを更地にして返しなさいということを強制することのないようにしていただきたいと思っています。是非、横浜市の跡地利用計画も見ながら、市民の要望に応える土地の活用ができるよう、政府としても丁寧に使途の協議や、あるいは住民、利用者への説明、話合いを行っていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(小野寺五典君) 深谷通信所及び上瀬谷通信施設における農耕等については、日米地位協定第三条に基づく在日米軍の管理下での農耕等が認められているものと承知をしております。
したがって、返還後は在日米軍の施設・区域でなくなることに伴い、農耕等の土地の使用の根拠が失われることとなります。このため、返還後の土地の適正な管理及び速やかな跡地利用に資するとの観点から、耕作者等に当該施設の返還までに農耕等の終了及び原状回復を実施していただくよう求めていくことになります。
しかしながら、深谷通信所については、本年六月末目途の返還まで二か月という短い期間であることから、事情や、やむを得ないと認められる場合には、個別の事情に応じて一定の猶予期間を設けて丁寧に対応していきたいというふうに思っております。
○田村智子君 是非、利用が既にされている、公共的に利用されているところは本当に丁寧にやっていただきたいというふうに思うんです。
上瀬谷の敷地というのは二百四十二万平米以上、深谷も七十七万平米以上と大変広大な土地になります。上瀬谷はしかも民有地が四五%あるということで、今後、土地活用を検討する上で大変複雑な課題が出てくることが考えられます。深谷通信施設の土地は全て国有地ですけれども、これを横浜市が取得する場合は、公共施設で利用するという場合でも、例えば緑地とか公園で利用する場合であっても、三分の一の土地については時価で買ってくれというような規定が防衛省の取決めの中であるわけですね。しかし、広大な土地であるということ、また首都圏の土地であるということで、大変土地の値段が高いということも考えられるわけです。これを取得するに当たっても様々な困難が考えられます。
沖縄県の米軍基地返還の場合を見てみますと、歴史的な経緯も踏まえて、民有地については跡地利用のめどが付くまでは所有者に対して土地代を支払うということを特別措置法で定めています。また、横須賀、佐世保、呉、舞鶴については、旧軍港転換法、軍転法ですね、これで定めによって、地方公共団体に対しては無償で提供するということがやはり法律で決まっています。
今回の返還について横浜市は、是非、市が公共利用する場合には土地を無償で譲渡してほしいという要望を政府に出されていると思います。横浜市や市民は長年にわたって広大な土地を軍によって接収されてきたわけで、是非、沖縄県や旧軍港への特別措置の法律を踏まえた対応を今回の場合にも検討いただきたいと思いますが、財務副大臣にお願いいたします。
○副大臣(愛知治郎君) お答えを申し上げます。
在日米軍に提供中の深谷通信所及び上瀬谷通信施設に係る国有地について、在日米軍から返還後、これは先ほど防衛大臣から御答弁していただきましたが、防衛省において原状回復等を行うこととなります。その後なんですが、深谷通信所については平成二十七年度中、上瀬谷通信施設については平成二十八年度中に防衛省から財務省に引き継がれる予定であります。
今後については、そういうことなので、財務省としてお答えをさせていただきます。
これらの財産の利用計画については、現在横浜市において検討中であると承知をしております。財務省としては、横浜市が策定した利用計画に沿って、利用用途に応じた処分条件に基づき、適切に対応してまいりたいと考えております。
この処分条件なんですが、そもそもなんですけれども、財政法第九条において、国の財産は、法律に基づく場合を除くほか、適正な対価なくしてこれを譲渡若しくは貸し付けてはならないとされておるところでございます。国有財産の譲与については、この法律に基づく場合として、国有財産法第二十八条等に規定をしております。ちなみに、参考として、これによりますと、火葬場、ごみ処理施設、し尿処理施設、市町村道などの公共施設について無償譲渡できるとされておるところでございます。
御指摘いただきました例えば公園については、一般の国有財産については三分の一が無償貸与できる、三分の二については時価で売り払うこととしておりますが、このような返還財産については三分の二が無償貸与で、三分の一が時価売払いということで、特別の扱いをしているところ、最大限配慮をしているところではございますが、いずれにせよ、様々な要件が定められておりますので、横浜市にしっかりと検討をしていただいて、申請を受けた後、対応していくということになると思います。
○田村智子君 単なる国有地ではないんですね。やはり米軍基地として様々な不利益を地元の皆さんは受けてきたわけで、是非、横浜市の要望をよく聞いて、土地の活用が進むように御協議いただきたいということを重ねてお願いをしておきます。
次に、昨年十二月十六日に発生をいたしました米軍ヘリ墜落事故についてお聞きいたします。
この事故は、神奈川県三浦市三崎の埋立地に在日米軍厚木基地所属のMH60ヘリコプターが墜落をしたというものです。資料の一でその事故を報道する神奈川新聞の報道記事を付けました。事故現場は市役所まで一キロ圏内で、三浦市民ホールまで六百メートル、三崎小学校まで八百メートルという場所です。市民が犠牲になりかねない重大事故だったというふうに考えますが、本件事故について日本政府としてはどのように認識し、どういう対応をしているか、簡潔にお答えください。
○政府参考人(山内正和君) お答え申し上げます。
平成二十五年十二月十六日に神奈川県三浦市に米海軍第五空母航空団所属のMH60ヘリが不時着、横転した事故につきましては、周辺住民の方々に多大な御不安を与えたものとして、極めて遺憾というふうに考えておるところでございます。
防衛省におきましては、事故発生後直ちに防衛大臣の指示で、私、地方協力局長から在日米軍司令官に対し、また南関東防衛局長から在日米海軍司令官に対し、原因究明、再発防止などについて強く申し入れたところでございます。
現在、米側におきまして事故原因を調査していると承知しており、防衛省といたしましては、米側に対し早期の情報提供を働きかけるとともに、航空機の飛行に際しましては周辺住民の方々への安全に最大限配慮を求めるとともに、安全管理の徹底等を引き続き求めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
○田村智子君 この事故が、不時着し横倒しになったと。これ、報道の方も、そういうふうに政府の側が言うので不時着というふうになっているんですけれども、私はそのことに強い違和感を持っています。
目撃者からの通報を受けて三崎警察署が現場に駆け付け、十五時三十二分に第一報を出しています。資料二でお配りをいたしました。ここには米軍ヘリコプター墜落事故の発生についてと書かれているんです。その後、十六時二十分に不時着と手書きで訂正をされています。警察庁に説明を求めたところ、慎重を期すための訂正だということでしたけれども、事故機は大破しています。目撃者や現場に駆け付けた警察官は墜落というふうに認識をしたのだと思います。神奈川新聞十二月十七日付けでは目撃者の証言も書かれていますが、ヘリは低空を飛行、地上約十メートルの高さで円を描くように二回転して落下、電柱に接触し、メーンローターや尾翼が大破し、壊れた部品が道路に飛び出したとあります。
防衛大臣、これが不時着事故ということなんでしょうか。
○国務大臣(小野寺五典君) 不時着事故だと思います。
○田村智子君 その感覚が私はおかしいと思うんですね。不時着というのは、コントロールができて、ふだんちゃんと着地しなきゃいけないところではないところに何らかの現象があってコントロールしながら着陸したと、それが不時着だと思うんですよ。
米海軍は航空機事故を三段階で評価していますが、今回の事故は最も重大なクラスAと発表しています。これは損害額が二百万ドル、日本円にすると約二億円以上の場合、死者が発生した場合、あるいは機体が永久的に使用不能になった場合に相当するものをクラスAと呼ぶわけです。この事故機の破損が相当に大きかったということを米海軍は認めているわけです。
事故後、パイロットは救急隊員にテールローターが停止したと説明したとの報道があります。アメリカ軍からも、テールローターが海上で脱落したという説明があったのではないでしょうか、確認します。
○政府参考人(山内正和君) お答えを申し上げます。
本件事故機のテールローターが紛失していたことにつきましては、本年三月七日、在日米海軍司令部から南関東防衛局に対し、本件事故の調査の一環として紛失しているテールローターの回収が必要であるため、米海軍は三月十九日から二十八日までの間、三浦半島南部の海域の捜索回収活動を行う旨の説明を受けた際に承知したところでございます。
○田村智子君 テールローターというのは、ヘリコプターの尾翼部分の重要な部品です。進路をコントロールするために不可欠のもので、テールローターがなければ機体はメーンローター、上にあるプロペラですね、この回転と逆方向にぐるぐると回ってしまう、うなずいていらっしゃいますが、これ操縦不能、そういう状態だと言えるわけです。
このテールローターが機能しないだけでなくて脱落をした。もう一度大臣にお聞きします、これが不時着ですか。
○国務大臣(小野寺五典君) この機体は不時着をして、そして横転をしたというふうに私ども報告を受けております。米側のプレスリリースにおいてもエマージェンシーランディングという表現で公表されておりますので、この当事者であります米海軍の発表では不時着という表現ということでありますので、私どもとしてこの表現を使用しているということであります。
いずれにしても、米側として今テールローターの脱落等の事故原因があったかどうかについても調査をしておりますので、この調査結果がまとまり次第、こちらとしても速やかに情報提供をもらうように働きかけてまいりたいと思います。
○田村智子君 重大事故だという認識が本当に欠如していると思うんですよ、不時着だとアメリカ側にそう言われたからそう説明するというのは。
沖縄県の基地被害というのは県民の限界を超えるものだと思いますが、神奈川県も同様です。米軍機墜落事故、部品落下、爆音、米軍人による犯罪など、在日米軍による県民の犠牲というのは何度も繰り返されてきたわけです。
墜落事故でいえば、一九六四年九月、大和市の鉄工所にクルーセーダー戦闘機が激突をして五人が死亡、三人が負傷と。この事件から今年はちょうど五十年となります。一九七七年九月には横浜市にファントム偵察機が墜落をし、幼い子供二人が全身やけどで死亡、母親も苦しい治療に耐えながら四年後に死亡し、慰霊碑には市民の皆さんが今も花を手向けておられます。
今回の事故も、一歩間違えれば同じような事故になったということなんです。テールローターの故障、脱落、この原因が解明され、徹底した対策が取られるまでは、少なくとも同型機の飛行の停止ということを求めるべきではないでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、本件事故の発生、これは誠に遺憾なことだと認識をしております。
事故の発生を受けて、米側はこの事故機以外の同型機について安全点検を行うとともに、隊員に対する教育といった安全対策を徹底したものと承知をしております。政府としましては、米軍の訓練、これは日米安全保障条約の目的達成のために極めて重要であると考えており、この発生を受けて取られた対応、米側における安全対策等を総合的に勘案すれば、同型機の飛行停止を求めることまでは考えてはおりません。
しかしながら、米軍が公共の安全に妥当な配慮を払って活動すべきこと、これは言うまでもないと思っておりますし、この調査結果の提供につきましては米側に明確に申入れを行っております。是非、しっかりと情報提供を受け、地元の皆様には丁寧に説明をしていきたいと考えております。
○田村智子君 これ、同型のヘリコプターは、昨年八月、沖縄の米軍基地内で墜落、炎上しています。そのときも、事故の原因究明もないままに同型機の飛行は再開をされました。今回ももう飛んでいるんですよね。今回は、機体に重大な問題が生じたということは間違いないんです、テールローターの脱落ですから。これ、飛行停止を求めるべきですよ。真剣に検討していただきたい。
このテールローターの故障、脱落の原因追及には損傷した機体の検証が必要です。ところが、米海軍がテールローターの捜索を開始したのは事故から三か月以上がたった三月十九日のことだと先ほど説明がありました。これ、自衛隊への協力要請もあったと聞きますが、この捜索の結果、テールローターは見付かったんでしょうか。
○政府参考人(山内正和君) お答えを申し上げます。
本年三月七日、在日米海軍司令部から南関東防衛局に対しまして、本件事故の調査の一環として、紛失しているテールローターの回収が必要であるため、先ほど申しましたとおり、海域の捜索回収活動を行う旨の説明があり、私ども南関東防衛局からは関係自治体に対し情報提供を行ったところでございます。
その後、さらに三月十九日、在日米海軍司令部から南関東防衛局に対し、テールローターの捜索回収活動の時期を三月二十一日から二十六日までに変更する旨の通知があったところでございます。この通知につきましても、南関東防衛局から関係自治体に対しまして情報提供を行ったところでございます。
他方、米海軍は、同海域におきまして広範囲の捜索を行ったものの、事故機のテールローターの発見には至っておらないというふうに聞いておるところでございます。また、今後の再捜索等の予定についても未定であるとの説明を受けておるところでございます。
○田村智子君 五日間捜したけれども見付からなかったと。海に落下したものを三か月も経過して捜索するなんというのは、まともに事故原因の究明をするつもりがあるのかと疑問を抱かざるを得ないわけです。テールローターって、MH60の場合、相当大きいんですよ、プロペラだから。ないなんということすぐに分かるんですよ。それを、捜索が三か月たって行われる。防衛大臣、米軍に、なぜテールローターの捜索がこれほど遅れたのか、説明はありましたか、なかったならば説明求めるべきではないですか。大臣。
○政府参考人(山内正和君) お答え申し上げます。
今般の事故機のテールローターの捜索回収活動は、米軍において行われております調査の一環として実施されたものであるとの説明を受けたところでございますが、私ども防衛省におきまして、当該調査に至るプロセスの逐一について米側から説明を受けているわけではなく、また、事故原因等の調査については現在米側において適切に行われているものと承知しております。
いずれにしても、私ども防衛省といたしましては、周辺住民の方々の御不安を払拭すべく、米側に対しまして引き続き徹底した原因の究明と再発防止策を強く働きかけてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
○田村智子君 米軍に抗議すべきですよ。
これ、在日米軍による過去五年間の事故を防衛省にまとめてもらいました。資料の三を見てください。二〇〇九年度から順に、五件、十八件、十一件、十二件、昨年二〇一三年度は二十一件と急増しているわけです。これは、米軍から防衛省が報告を受けたものだけをまとめてあります。このほか、米海軍安全センターのクラスAの航空機事故報告書によれば、今年三月二十日、厚木基地所属の早期警戒機E2Cが厚木基地の西方約百六十キロの上空で右翼エンジン発火、機体に穴が空く損傷を受けたというふうにあります。三浦市への墜落事故から僅か三か月間です。
こうした事故が起きるたびに日本政府は再発防止を要請したと言いますけれども、これ、外務大臣にお聞きしますけど、まさに再発の繰り返しというのが現状ではないですか。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、米軍による事件、事故はあってはなりません。外務省から米側に対しましては、事故等が発生した場合、原因究明、再発防止、申し入れてきているのみならず、平素から折に触れ、米軍活動に際しては安全の確保と地元住民への配慮を図るよう求めてきております。
引き続き、米側に対し地元の方々の懸念、これを十分伝えながら、安全面に最大限の配慮を払うとともに、地元住民に与える影響を最小限にとどめるよう努めていかなければならないと考えております。日米合同委員会等、様々な場を通じて引き続きしっかり申入れをしていきたいと考えています。
○田村智子君 もう、いつ市民の命が犠牲になってもおかしくないという事態なんですよ。再発防止ということを真剣に求めるならば、事故原因の解明と再発防止の徹底した対策を、アメリカ側からの報告を受けるだけではなくて、日本側が検証すべきだと思うんです。
三浦市でのヘリ墜落事故は、二〇〇五年に作られたガイドライン、日本国内における合衆国軍隊の使用する施設・区域外での合衆国軍用航空機事故に関するガイドライン、正式名称です、これが初めて適用になった事故でもあります。このガイドラインは、二〇〇四年八月の沖縄国際大学米軍ヘリ墜落事件の翌年、日米間で取り決められました。沖縄国際大学への墜落事故では、事故直後に米軍が現場への立入禁止措置をとり、日本の警察、行政、大学関係者が事故現場に近づくことも許されず、大きな怒りが広がりました。事故機汚染が疑われる土壌も事故機も全て米軍に持ち去られて、沖縄県警は乗員だった海兵隊軍曹四人を氏名不詳で書類送検せざるを得なかったんです。
ガイドラインでは日本による警察業務がこれからは行われるということが明記をされていますが、それでは、三浦市でのこの事故について、日本の警察がこれまでよりも踏み込んだ捜査ができるということになるんでしょうか。
○政府参考人(冨田浩司君) お答えをいたします。
御指摘のガイドラインでございますけれども、このガイドラインは、日本国内において米軍の施設・区域外で米軍機による事故が発生した場合の事故現場における統制の改善を念頭に置いて作成されたものでございます。したがいまして、同ガイドラインにおきましては事故の検証についての規定はございません。
他方で、事故現場の統制は日米両当局で共同で行うという基本原則がございますので、その下で明確な役割分担が定められているわけでございます。これによって、米軍機による事故が発生した場合に適用される様々な方針や手続、これらが迅速かつ効果的に実施されることが期待されるものでございます。今般の事故の現場においても、日米が協力してガイドラインに沿い、適切な対応が取られたものというふうに認識をしております。
○田村智子君 ガイドラインが無意味だとは言いませんが、住民や通行人が事故現場に近づかないよう日本の警察が規制を行うというルールを決めたにすぎないわけですね。
今回の事故では、事故発生の翌十七日には米軍の合意を得て神奈川県警と米軍による合同の現場検証が行われました。この点は沖縄の事故よりも大きな前進です。しかし、これは僅か九十分間で終了したという報道もあります。東京新聞では、県警は機体の差押えを米軍に求める方針というふうに報道されましたが、実際には十九日の午前中に米軍によって事故機は解体をされて厚木基地に持ち去られてしまいました。
地位協定では、強制捜査はアメリカ側の同意なしには執行できません。これでは日本側による事故の検証は不十分にならざるを得ません。昨年度の事故発生が二十一件というこの頻度を見ても、これまでと同じ対応では国民の安全を守れる保証はないと思います。日本による原因の解明、再発防止策の検証、これが行われるように検討が必要だと思いますが、大臣、いかがですか、外務大臣。
○国務大臣(岸田文雄君) 先ほども申し上げましたが、米軍による事件、事故はあってはならないと考えていますし、政府として、地元の方々の懸念を十分に踏まえて、日頃から米側に対し万全の安全対策と地元住民への配慮を図るよう求めてきております。
一方、この米軍機の事故についてですが、一般に米軍の財産はその性質上高度な軍事性や機密性を有する場合があることや、その捜索、検証が徹底的かつ綿密に行われるためには、当該財産を所有し、それを熟知した米軍が取り扱うことが適当であるという背景から、日米間では原則として米側がこれを取り扱う、こういったこととされております。しかしながら、その際、徹底した原因究明と迅速な情報提供、公表、こういったものがなされること、これは当然のことであります。先般の三浦市における事故においても、その事故原因や調査報告等の情報提供を既に米側に明確に申し入れており、今後、調査結果についてしっかりと情報提供を受け、地元の皆様に丁寧に説明をしていきたいと考えております。
こうした我が国の考え方そして姿勢につきましては、日米合同委員会等を通じてしっかりと働きかけをしていきたいと考えております。
○田村智子君 今までと同じことをやっていたら再発防止にならないんですよ。米軍の機密と日本国民の命、どちらが大切かということです。
私が求めているだけじゃないんです。神奈川県と県内九市で構成する基地関係県市連絡協議会は、相次ぐ米軍機の事故について、外務省、防衛省に対して具体的な要望を繰り返し行っています。抜粋しますが、施設・区域外で発生した米軍機事故の現場管理について、日米双方の役割分担を定めるだけでなく、現場検証についても、日米が共同で行えるよう速やかに取り決めること、米軍の航空機、艦船の事故や周辺住民に影響を及ぼしかねない基地内の事故等については、日米合同調査委員会を設置し、調査内容等を公表すること、再発防止の安全対策が講じられるまで同型機の飛行を中止することと。
やはり、こういう要望にまともに応えるということがなければ、もう再発防止にならないと思うんですよ。これまでと違った対策をアメリカと検討する、このことは必要だと思いますが、どうですか、もう一度。
○国務大臣(岸田文雄君) 御指摘の神奈川県基地関係県市連絡協議会からの要請につきましては、私自身報告を受け、重く受け止めております。
こうした地元の方々の思いはしっかり受け止めなければならないと存じますが、その思いをしっかり受けて、先ほど米軍機事故についての基本的な対応の考え方は御説明させていただきましたが、こうした基本的な方針はあるものの、最大限の配慮を払う、あるいは地元住民に対する影響を最小限にとどめる、こういった観点から、日米合同委員会等の場においてはしっかりと働きかけ続けていきたいと考えております。
○田村智子君 原因究明までの飛行中止、それから日米合同による事故原因の究明、これは絶対必要だということを重ねて要望しておきたいと思います。
次に、原子力艦の原子力災害対策についてお聞きをいたします。
東日本大震災と東京電力福島第一原発の事故によって、原子力災害対策指針が大きく見直されました。防災対策を重点的に充実すべき地域として、原子力施設、これは原発のみですけれども、原発から五キロ圏、五から三十キロ圏、三十キロ以遠に区分をして、それぞれについて事前対策、緊急事態の応急対策というのが示されました。原発立地県や自治体では、この指針を踏まえて原子力災害への対応が検討されています。
ところが、原子力軍艦の原子力災害への事前対策、応急避難などの対策を示した原子力艦の原子力災害対策マニュアル、これ以下マニュアルと略しますが、これについては二〇〇九年に改訂が行われたままになっています。このマニュアルは政府の防災基本計画の具体化であり、今年一月に策定をされた防災基本計画では、原子力艦の災害対応は原発事故への対応を参考にすることというふうにされているわけです。ということは、災害時に避難が必要な範囲など、抜本的な見直しが行われることは当然だと考えます。
三・一一以降、いまだに改訂をされていないこのマニュアルはいつ改訂をするんでしょうか。検討状況どうなっていますか。
○政府参考人(佐々木克樹君) 原子力艦の原子力災害対策マニュアルの見直しにつきましては、現在、政府内で行っております東京電力福島第一原子力発電所における事故を踏まえました原子力安全規制の見直しの検討が引き続き行われているところでありまして、その結果等を踏まえまして、関係省庁におきまして適切に対処してまいりたいと考えております。
まだこの検討が継続中である中、政府内での議論や調整にはなお一定の時間が必要であるということで、現時点で具体的な見直しの時期等を示すことは難しいことを御了解いただきたいと思っております。
○田村智子君 これ、三・一一から既に三年がもう経過してしまっているんですね。余りにも無責任だと思います。
米海軍の原子力空母ジョージ・ワシントンが係留する横須賀市では、市長が原子力艦の原子力災害について避難基準を明らかにするよう外務省に重ねての要望をしています。外務省はどのように回答されているんでしょうか。
○政府参考人(冨田浩司君) お答えをいたします。
横須賀市との関係でございますけれども、本年一月に横須賀に前方展開をしております空母ジョージ・ワシントンがロナルド・レーガンに交代をするということを米側から通報がございました。そのことの御報告を兼ねまして、岸外務副大臣が横須賀市長を往訪いたしました。その際に、先生御指摘の原子力艦の原子力災害対策についても御説明したところでございます。
御説明の内容でございますけれども、先ほどの内閣府からの御答弁とも重なるところでございますけれども、原子力艦の原子力災害対策の見直しについては、現在行っている東京電力福島第一原子力発電所における事故を踏まえた原子力安全規制の見直しの検討結果等を踏まえ、関係府省において適切に対処していく考えであること、また原子力艦の原子力災害対策の見直しに関する政府内での議論や調整にはなお一定の時間が必要であるが、この間の万が一の事態が発生した場合には、政府として現行の原子力艦の原子力災害対策マニュアルに従って対応すること等について御説明をしたところでございます。
○田村智子君 マニュアルで対応しなさいというふうに言っているわけですけれども、原発の事故に対応する原子力災害対策指針と原子力艦の事故に対応するマニュアルとでは避難の基準は大きく異なります。
資料でお配りをいたしました、資料四です。
原発については、毎時五マイクロシーベルト、これ通常の百倍ですね、これを検知したときに五キロ圏内の住民は避難、三十キロ圏内は避難に備えるとされています。一方、原子力艦についてのマニュアルでは、毎時百マイクロシーベルト検知で一キロ圏内の住民は避難、一から三キロ圏内は屋内退避とされているんです。
現行のマニュアルで対応するということは、百マイクロシーベルトを検知するまでは何もしなくていいということなんでしょうか。
○政府参考人(佐々木克樹君) 原子力災害対策マニュアルにおきまして、まず敷地境界付近の放射線量率が一地点で十分間以上一時間当たり五マイクロシーベルト以上を検出するか、あるいは二点以上で一時間当たり五マイクロシーベルト以上を検出した場合には原子力規制委員会から、また外国政府から通報があった場合には外務省から、直ちに内閣官房、内閣府等に通報がなされることとなっております。
これを受けまして、緊急時モニタリングの実施、関係省庁や現地における事故対策連絡会議の開催、国の職員及び専門家の緊急派遣、外国政府への情報提供の要請等を行うなど、関係省庁による警戒態勢を構築することとしております。さらに、百マイクロシーベルトに達しない場合においても、関係地方公共団体が応急対応範囲内の住民に対する屋内退避又は避難のための立ち退きの勧告又は指示に備えた体制整備等を行う場合には、情報の提供等、必要な支援を行うこととしているところでございます。
○田村智子君 これね、百マイクロシーベルトなんて基準をいまだに示していることは異常なんですよ。これはあり得ないですよ、福島の事故を得てから。
横須賀基地の周辺自治体では、市民の安全を守るためにこれまでの防災計画の見直しを始めています。横須賀市に隣接する三浦市では、地域防災計画に原子力艦対策を初めて盛り込みました。
これ資料五でお配りをしていますけれども、毎日新聞が、原子力空母から三十キロ圏内の三都県二十市区町にアンケート調査を行い、その結果を報道しています。それによりますと、横須賀基地の対岸の千葉県富津、木更津、南房総の三市が今年度、地域防災計画に原子力艦事故の想定を追加、千葉県と君津市も福島第一原発事故前から加えている、また神奈川県の川崎、逗子、大和、海老名、千葉県の木更津、君津の六市が国のマニュアル、避難基準は見直す必要があると回答、神奈川県平塚市も原発と原子力艦で避難範囲に矛盾があるなら見直すべきだと回答しています。
既に三十キロ圏内の少なくない自治体が原子力艦事故についての対策を検討しています。少なくとも、まずこの避難基準、避難をする準備をする範囲、この範囲を原子力災害対策指針と、つまり原発事故への対応と一致させるというのは当然のことだと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(佐々木克樹君) 地方公共団体におきましては地域の実態も踏まえつつ地域防災計画を策定しておりまして、原子力艦の原子力災害対策につきましても地域の考え方等に基づきまして検討されている自治体があるということは承知いたしております。
原子力規制委員会におきましては、福島第一原子力発電所における事故を踏まえました安全規制の見直しを継続中でありますので、実用発電用原子炉以外の原子力災害対策重点区域の範囲など、そういったものについても引き続き検討が行われているというものと承知をいたしております。
原子力艦の原子力防災対策につきましては、こうした検討結果等を踏まえまして、内閣府、外務省、原子力規制庁、その他関係省庁において適切に対処してまいりたいと考えております。
○田村智子君 これね、いろいろお話聞いていますと、説明に来ていただいたときには、商業用原子炉と原子力艦はいろんな意味で違うからとかと言われるんですね。だけれども、この避難基準で、放射線量五マイクロシーベルトで避難するか、百マイクロシーベルトで避難するか。これ、原発から出される放射性物質と原子力艦から出される放射性物質が違うとでも言うのかという基準になっちゃうんですよ。こういうのを見直すのは当たり前ですし、国の防災基本計画は、原発の事故のときの対応、その指針を参考にして対応しなさいと、マニュアルを作るんだというふうに言っているわけですから、これは避難の基準を統一させるなんというのは当然のことだというふうに私は思います。
自治体にとっては、この防災計画を作ることがマニュアルが示されないがために困難になっているというだけでなくて、実際に避難訓練をどうやったらいいのかという問題になっちゃうんです。横須賀市では毎年、原子力防災訓練を行われていますが、昨年の訓練要綱を見ると、現行マニュアルに基づいて、三キロ圏内にある小学校や訓練地域での屋内退避、通行中の市民を避難所に誘導し、問診票やサーベイメーターを使用した汚染検査訓練というのが行われているんです。子供たちにしてみると、外にいる子供たちが中に入れと、中に入って屋内退避。何の訓練しているのか分からないという声がこれは保護者からも出てくるわけですよ。
一方、この間、原発事故を想定した避難訓練はどうか。五キロ圏内の小学校の児童などができるだけ遠くに避難するという訓練をやっているわけです。そして、あの放射性物質が飛散してきたときに自分がどうしたらいいかということをまさに身をもって体験する避難訓練が原発立地の自治体では行われているわけです。
こういう違いを一体どう考えたらいいのか、内閣府、御説明ください。
○政府参考人(佐々木克樹君) 繰り返しになりますが、原子力艦の原子力災害対策マニュアルの見直しにつきましては、現在政府内で行っております福島原発における事故を踏まえた原子力安全規制の見直しの検討結果等を踏まえまして、関係府省において適切に対処してまいりたいと考えております。
○田村智子君 これね、適切に対処と言っているので、それじゃお聞きしますけれども、原子力艦の中にある核廃棄物、これが拡散したらどうなるか、こういう検証を行っているかどうかなんですよ。原発は、一年ごとに核燃料を交換するので、核廃棄物というのも、死の灰ですね、これはその核燃料を交換するときに運び出すことになります。原子力艦については、原子炉二基が積まれていますけれども、燃料交換は二十五年間行わないので、その間、死の灰もずっとたまり続けるわけです。万が一これが放出されたときには、大変な被害が起こることが予想されるわけです。
今年四月、お母さんたちが横須賀基地の前で二千個の風船を飛ばして、原子力艦から放射性物質が漏れた場合にどこまで飛散するかという検証を行いました。風船は六十キロ離れた千葉県勝浦市まで飛んでいたことが確認をされました。こういう放射性物質の拡散の予測、これ原発については三・一一以降行われました。原子力艦についてはこういう検証は行っているんでしょうか。
○政府参考人(佐々木克樹君) 原子力規制委員会は、原子力艦の原子力災害対策マニュアルに基づきまして、原子力艦の原子力災害に関する通報等を受けた場合は大気中放射性物質拡散予測計算を行うこととなっております。
なお、発災時の備えとして具体的な事故を想定した計算は行っておりません。
○田村智子君 三・一一以降、何らの検証も行っていないということなんですよ。
アメリカ政府は、米国政府は、原子力軍艦の安全性を説明するとして二〇〇六年にファクトシートを日本政府に示しています。その中で、仮に原子炉に問題が生じても燃料からの放射能は全て艦内にとどまる、艦船から放射能が漏出するという極めて想定し難い事態が発生したとしても、米軍基地の外の地域ではいかなる防護措置もとる必要はないと、こう主張しているんです。
何でマニュアルの改訂が行われないのか、あるいはそういう放射性物質の拡散の検証さえも行われていないのかと考えたときに、これは外務大臣にお聞きしたいんですけれども、こういうアメリカの、原子力艦は安全だと、放射性物質は漏れない、基地の外には漏れないんだと、こういう姿勢に遠慮していて事故想定も行わない、マニュアルの見直しがそれによって進まないということなんではないでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 原子力艦の原子力災害対策の見直しにつきましては、先ほど答弁させていただきましたように、今現在、関係府省において対処をしております。
商業原発に関する原子力安全規制の見直しの検討がいまだ継続中である中、一定の時間が必要とされているということでありますが、米原子力艦の安全性については、秘密保全に関する米国国内の制約がある中ではありますが、可能な限り透明性を確保するように様々な場面で求めてきております。是非、我が国の原子力艦の原子力災害対策の見直しについても作業をしっかり進めていかなければならないと思っていますし、米国の原子力艦の安全性についても、可能な限り透明性を確保するという形で努めているところでありますので、米側に遠慮しているという御指摘は当たらないと考えています。
○田村智子君 ならば、このファクトシートに対して意見を言うべきだと思うんですね。私、このファクトシートは安全神話そのものだというふうに思います。
原子力軍艦の事故はこれまでも繰り返されてきました。二〇〇六年から二〇〇八年にかけては、原子力潜水艦ヒューストンは日本の米軍基地周辺に放射能汚染水を垂れ流していたことが分かっています。一九九九年には、原子力空母ステニスが座礁し給水口から砂を取り込んだために、原子炉の冷却水循環ポンプが故障をして二基の原子炉が緊急停止するという事故も起きています。二〇〇八年には、乗組員のたばこの不始末による火災でジョージ・ワシントンの電気ケーブル八十か所が損傷すると、こういう事故も起きています。しかも、三・一一以降はこれまでの想定を超える大地震、大津波が起こり得るという認識の下、新たな災害対応が求められているわけです。
私は、マニュアルの見直しを行うためにも、三・一一の地震、津波で横須賀基地がどういう状態であったのかを把握することが必要だというふうに考えまして、二〇一一年十二月の質問主意書でこのことをただしました。原子力空母ジョージ・ワシントンの乗組員が、三・一一当日、水位は六フィート、百八十三センチメートル下がっていたというふうに証言をしています。だから相当に揺れたという証言があるんです。原子力艦が停泊する十二号バースの水位低下、これ把握すべきではないかというふうに質問主意書でただしたことに対して政府は、水位低下の程度については承知していないという答弁のみだったんです。
その後、水位低下の状況など、横須賀基地が三・一一当時にどういう状況であったのかということは調査を行ったんでしょうか。
○政府参考人(冨田浩司君) お答えをいたします。
米側との間では、東日本大震災の影響も踏まえた様々な情報交換を行ってきております。その中で米側からは、東日本大震災の発生時、空母ジョージ・ワシントンは横須賀港に停泊していたわけでございますけれども、地震により船体に被害が発生することや停泊に影響を受けることはなかったという説明を受けているところでございます。
○田村智子君 だから、説明を受けただけで、何にも検証をしていないんですよ。水位がどれだけ下がったか、着底までに何メートルだったか、どれぐらいの引き波が来たときに危険になるかなんというのを調べるのは、私はイロハのイだと思いますよ。そんなこともやらないでどうやってマニュアルの見直しをやるつもりなのか、本当に怒りを禁じ得ません。
大津波の引き波による着底だけではありません。先ほど紹介したように、それによって座礁する危険性、給水口が砂を取り込んで原子炉が緊急停止したということが現に起きているわけですよ。
それから、これは海だけではありません。大地震による揺れで、冷却のための外部電源ケーブル、これ停泊中のジョージ・ワシントンは外部電源で原子炉を冷やしているわけですよ。これがもしケーブルが切れたらどうなるのか、このことを考えなければなりません。また、陸地側が大きな地震によって電源が長期にわたって喪失してしまった、そのときに一体原子力艦の冷却はどうなるのか、電源喪失にならないのか。こういう通常の原子力軍艦の運航では起こり得ないような事態への対策ということを考えなければならない、それが三・一一の教訓だったと思うんですよ。防衛大臣、うなずいておられますね。
だからこそ、アメリカ軍と、大地震や大津波の被害想定について、そのときにどういう対策をすることが必要なのかということをこれ直ちに協議することが必要だと思うんですけど、大臣、いかがですか。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、大津波の引き波の影響につきましては、基本的には、米側から、引き波により船体が海底に接触する事態が発生した場合でも、原子炉は船の中で最も安全である船の中心に置かれているため、原子炉の安全は維持されると、こうした説明を受けております。
そして、電源の喪失についても御指摘がありましたが、電源につきましては、東日本大震災後、改めて米側から、米海軍の原子炉は福島第一原子力発電所の原子炉と異なり、米海軍の原子力軍艦の安全性に関するファクトシートにおいて、合衆国原子力軍艦は、電力に依存することなく、原子炉の物理的構造と水自身の特性のみによって炉心を冷却できる能力を有している、こうした説明を受けています。
しかし、いずれにしましても、政府としましては、引き続き米側に対しまして原子力軍艦の安全性について万全の対策を取るよう働きかけていかなければいけないと思っていますし、その中でこの横須賀海軍施設の津波対策等についても必要な情報交換を行っていきたいと考えます。また、関係地方公共団体に対しては適切な情報提供、努めてまいりたいと存じます。
○田村智子君 そういうのを安全神話というと思うんですね。ファクトシートに遠慮していないと言いましたけど、遠慮しているじゃないですか。
横須賀基地のある三浦半島は二つの活断層が確認をされていて、地震の周期からはいつ大きな地震が起きてもおかしくないという状態なんです。こういうときに避難の基準も見直さない、こういう姿勢を私は断じて認めるわけにはいきませんし、そもそも地震、津波が集中するこの日本を原子力軍艦の母港とすべきではないということを申し上げて、質問を終わります。