日本共産党の田村智子議員は17日の参院東日本大震災復興特別委員会で、宮城県石巻市で甚大な津波被害を受けながら復興推進地域の指定をはずれている「白地地区」の問題をただしました。
同市の復興計画では、海岸堤防、二線堤など多重防御の背後に住宅再建できる可住地を確保し、復興推進地域を指定して被災市街地復興土地区画整理事業を行うとしています。しかし市は、震災前に区画整理をしていた一部地区は国の指導により同事業の対象とできないと説明。可住地でありながら復興推進地域から除外され、「白地地区」となっています。
田村氏が事実確認したのに対し、国土交通省の小関正彦都市局長は「過去に土地整理事業を行った土地で再度事業を行ってはならないということはない。自治体にそのような指導を行ったことはない」と述べました。
田村氏は「白地地区の中には『危険区域』と同様の被害を受けた地域も含まれている」「被害の大きかった地域では戻りたいと考える人は半数以下で見捨てられたという思いも広がっている」と指摘。「復興を住民の自己責任とせず、白地地区の住民の生活再建が進むように事業要件緩和や新規事業創設など、自治体の背中を押していくことも必要だ」と求めました。
【 議事録 】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
宮城県石巻市で、甚大な津波被害を受けながら復興推進地域の指定から外れているいわゆる白地地区についてお聞きいたします。
石巻市が、北上川河口と石巻湾に面した平地部に人口十一万人、五万世帯が密集していたため、市街地の住宅地で約七割が浸水、全壊、大規模半壊、一部損壊となった住宅も七割に上る、これは皆さんもう周知のことだと思います。私も被災直後の四月終わりに訪ねましたが、地盤沈下の影響もあって、道路や住宅の冠水はもうあちこちで起きていました。
市は、七・二メートルの海岸防潮堤、これに沿って約五メートルの二線堤、更に河川堤防という多重防御を行うこと、また、海岸防潮堤と二線堤に挟まれた地域を危険区域に指定し内陸部への集団移転を進めること、二線堤の内陸側は住宅再建のできる可住地を確保することを基本的な計画としています。その上で、この可住地、住むことが可能という意味ですね、に広大な住宅地を復興させるために、可住地の中に復興推進地域を指定し、被災市街地復興土地区画整理事業を行うとしています。
問題は、可住地とされたけれども復興推進地域に指定されていない地域、白地地区が、事実上住民の自力再建に任されているということです。この白地地区の世帯数は、市の算定で約七千世帯にも上ります。石巻市は住民に対して、震災前に区画整理を行った地域は被災市街地復興土地区画整理事業の対象にはできない、そのため復興推進地域から除外した、これは国の指導があったからだという説明をしたと聞いています。
これ確認をいたしますが、国交省に確認します。そういう指導や助言というのを石巻市に対して行ったのか、また、一部区画整理事業を行った区域は再び区画整理事業の対象とすることはできないのかどうか、お答えください。
○政府参考人(小関正彦君) 土地区画整理事業の制度上、過去に事業を実施した地区において再度事業を実施することができないということはなく、地方公共団体に対してもそのような説明を行ったことはございません。
土地区画整理事業を過去に実施した地区では一定のインフラが整備されておりますが、災害でインフラが大きく破壊された場合や、整備された当時のインフラの状況が現在の社会経済情勢に合致しなくなっている場合などにおいて、地元の合意形成などを踏まえて再度事業実施することはあり得ると考えております。
○田村智子君 この白地地区の中には、ほぼ全戸が流失し犠牲者も相当数に上るなど危険区域と同様の被害を受けた地域も含まれていて、ここに住んで大丈夫なのかという不安の声も起きています。
ところが、石巻市は、白地地区の住民に津波シミュレーションを示して多重防御の効果を説明したのは今年一月になってからのことなんです。危険区域の設定、二線堤の計画の確定、これを行ってから実に二年にわたって、事業対象地域とならない住民には説明も行われてこなかったということになります。今は、住民の要望もあって、昨年度の後半から東部地区復興まちづくり計画策定支援事業、これが始まっていますが、この事業、最初に集まったその冒頭で、これは住民が話し合うということを支援する事業だから市に意見を言うところではないという説明が行われて、住民の不満がかえって噴出したということです。
このままでは、白地地区となっている皆さんの行政への不信感というのは本当に増大しかねません。何より、住民の皆さんはとても困っておられます。まずは市による住民への丁寧な説明と話合いの場が持たれる、これが非常に大切だと思いますが、大臣のお考えをお聞きいたします。
○国務大臣(竹下亘君) 石巻だけではなくて、どこで復興復旧をする際にも、住民の皆さん方と、そして地元市町村と、できればそれに県、復興庁も意見を述べさせていただいて復興計画を作るのは大事だと、こう思っております。
○田村智子君 とても大事だと。是非そうなるように復興庁としても手を差し伸べていただきたいんですけれども。
この白地地区の中でも被害の大きかった渡波の長浜海岸沿い、松原町、長浜町などでは、元の土地に戻りたいと考えている人は半数以下で、時間がたつにつれて、この地域は見捨てられた、何の事業の対象でもないですから、こういう思いが広がっているといいます。
こういう困難な状況の下で、民間の団体である石巻住まいと復興を考える会連絡協議会、これは住まい連というふうに略していますが、この皆さんが、この地域に現在もお住まいの約二十世帯から意見を聞き取って、懇談会も企画して、地域の再生にとって何が必要か、行政は何を行うべきかなど、市への提案ということもまとめています。
しかし、当の住まい連の皆さんも、これは二十世帯ですから、多数の住民の意向を把握しているものではないと、今仮設住宅とかみなし仮設に分散している住民からの意見集約が必要だけれども、これは民間の努力では無理だと、行政が本格的に支援しなければつかめないと、こういうふうに話しておられるわけです。
先ほど、町づくりの計画策定支援事業、これについても、市は全世帯に開催案内は送っているんだよと、住民に対して働きかけをやっているよということを言われているんですけれども、やっぱり、ばらばらになっている住民が案内受けたから一堂に会するということはこれまた困難なことなわけで、やはり行政の側の市が意向の聞き取りをすることも含めて、また、新しい事業はできないという前提ではなくて、何が必要か、何ができるかを行政も一緒に考えると、こういう対応が求められていると思いますが、これも大臣のお考えをお聞かせください。
○国務大臣(竹下亘君) 丁寧な対応は必要でありますし、この石巻の東部地区におきましては、事業の実施段階におきまして効果等計画内容を含めた詳細な住民説明会等を実施してきておると、市民の意見を聞く機会を設けていると。全体会合は一回でございますが、複数の町内会が集まったブロック単位での意見交換会、これ十五回開催をいたしております。そういった点から、丁寧に対応していると私は伺っております。
○田村智子君 その意見交換会というのが、先ほど言った町づくりの支援事業で、住民の皆さん、どうぞお話し合いくださいと、市が何か事業をやるわけじゃなく、お話し合いくださいという、そういう場になっているから、話合いをしても住民の皆さんの不満というのが、これが増長しているわけなんです。これを何とか、ボタンの掛け違いになっているようなことを、これ何とかしなくちゃいけないというのが現実の問題としてあるわけです。
これ、市が頑張るということもあるんですけど、石巻市の説明、議会での答弁なども聞いてみますと、やはりいまだに、一度区画整理をした地域を事業対象とすることは難しいという説明を繰り返しているんですよ。それはなぜか。やっぱり、一度区画整理をすると、公有地というのはその地点で広がって、それ以上広げることが困難で、そうすると、市の持ち出し分、財政負担というのが重くなってしまうということもあるわけです。
また、国の事業に適切なものがないということも、私が言っているんじゃないんです、石巻市がそういうことを住民の皆さんに説明をしていて、住民の皆さんは、かさ上げができないのかとか、やはり移転が必要じゃないかという思い持っているんだけど、かみ合わない、こういう事態になっているんですね。
こういう白地地区というふうになっている皆さんが自己責任で復興をというふうになってしまうことは、私はこれはいかがなものかというふうに思っています。是非、国も何ができるのかということを考えていただきたい、住民の皆さんの生活再建が進むような努力をしていただきたいというふうに思うんです。
例えば、今ある事業の要件の緩和を行うとか、あるいは新たな事業創設も必要だったら考えるよとか、こういう意向を石巻市にも示して、対応もするよということも示して、石巻市の背中を押してほしいというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
○副大臣(長島忠美君) 宮城県を担当させていただいております副大臣でございますが、私の方から少しお答えをさせていただきます。
委員御指摘のように、住民の合意を形成するということは非常に市町村にとって大きなことだと思うんですね。やはり、思いを共有する、それは、災害を共有して、そして復旧から復興への思いを共有していただく、そしてそれは市町村にとっても大きな課題であり、住民にとってもやっぱり合意形成というのは大きな課題だと思います。
復興庁としても、そのことをきちんと見届けられるような支援の体制や、ふだん意見のやり取りは県や市とできているつもりであります。ただし、委員御指摘のように、いろんな制度が、今何が変えてほしいのか、何が変えられるのかということが、それは住民の中からも合意形成の段階では多分市にも復興庁にも具体的な案としてお届けをいただいていないというところもやっぱりあるんだろうと思うんですね。
だからそこは、白地地区、自立再建をする地域だからといって、我々はその地域がやはり復興を遂げていただくことが目的の一つでありますので、是非、市民の皆さんと市の皆さんと、委員は一方的にというふうな住民からの声をお聞きで我々に御指摘をいただいているわけですけれども、行政としても、市民は平等にやっぱり合意形成をしていただきたいという思いの中で合意形成をして、やはり一線堤、二線堤、そして河川堤防についてきちんと安全を説明した上で皆さんから生活を選択をしていただいて、再建を遂げていただきたいという思いはやはり届いているんだろうと思いますし、復興庁としてもそのことは受け止めさせていただいているつもりでございます。
○田村智子君 だから、自立再建先にありきではない対応がやられなければ、住民の皆さん等の不信というのはこれは取り除かれないと思うんです。
これ、ちょっともうここではこれ以上の議論にならないと思いますので、ちょっと次の、ほかの質問もしたいこともありますので、今後、石巻市と一緒に私も引き続き復興庁に働きかけていきたいというふうに思います。
ちょっと質問の順番変えまして、帰宅困難地域にされたところの町の住民登録の問題、先にお聞きします。
双葉町、浪江町、大熊町は、その大部分が帰宅困難区域あるいは居住制限区域に指定され、居住が禁止されています。こうした地域には、新たに住民登録を行うということができなくて、これが問題となっているケースが起きています。
ある、この町に住んでいた学校の先生が、三・一一後に転勤となって町から転出せざるを得なかったと。しかし、将来の復興を願って退職時には町に戻るつもりだったが、転入はできないと言われてしまったと。こういう事例について、総務省はどういう見解をお持ちですか。
○政府参考人(時澤忠君) お答え申し上げます。
住所につきましては、各人の生活の本拠をいうとされておりまして、住所の認定は、客観的居住の事実を基礎といたしまして、これに居住者の主観的居住意思を総合して市町村長は決定するということとされております。
今回の東日本大震災によりましてやむを得ず避難先で生活を送るしかない状況にありまして、かつ主観的な居住の意思が避難元の市町村にあると認められる方につきましては、当該避難元市町村から転出した場合を除きまして、避難元の市町村に住所があるというふうにいたしております。
これは、東日本大震災が未曽有の災害でありまして、またこれに伴う原発事故により長期間にわたり居住が制限され続けている地域があるなど、災害の特殊性に鑑み、特例的に取り扱っているものでございます。このような特例的な取扱いにつきましては限定的に運用されるべきものでありまして、避難者の住所認定につきましてはこうしたことを十分踏まえるべきものと考えているところでございます。
○田村智子君 これ、町のほとんどが長期に、しかもいつ住めるのか分からないというほどの長期に居住困難、これは現行法の制度が前提としていない事態だというふうに思うわけです。就職などを機に町を出たけれども、避難先の親御さんを心配で同居決めたと、やっぱりこの町の復興のために役立ちたいと、だけど住民票一緒にできないと。こうなると、例えば、結果として、高い国保税や国保料を負担するというような不利益も生じかねないわけです、同一世帯にできないから。
そうすると、これ大臣にお聞きしたいんですが、やはり、元々現在の帰還困難地域などに住んでおられた方が戻るということを可能にするような、そういう検討、これも必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(竹下亘君) 難しい問題なんです、これ。いろんな意見あるんです。暫定的に二か所で住民票を登録してもらうことは可能かという意見もあるんです。だけど、選挙のときには投票券二枚出さなきゃいかぬなと。あるいは、じゃ、住民税どこで納める、どっちで納めてもらうんだといういろんな派生する問題があって、一発で解決をするものというのはない。
そこで、先ほどお話しいただきましたように、各人の生活の本拠、そして主観的居住意思を総合して市町村長が決定をするということになっておりまして、我々としましても、様々な状況に置かれている方、それから、戻りたいと、どうしても戻りたいという思いを持っていらっしゃる方、あるいは戻らないということを考えていらっしゃる方、判断に迷っていらっしゃる方、まさに三者三様でございますので、被災者が一人一人が希望を持って生活の再建を果たしていただくためにはどうすればいいかと。簡単に、一回外へ出したのを戻すというのはやっぱり相当難しいと私は思っております。
○田村智子君 難しい課題なんですが検討も必要ということで、これは是非検討課題に入れていただきたいということを要望しておきたいと思います。
最後に、子供たちの甲状腺の検査の問題について取り上げます。
昨年も、福島の甲状腺検査について本委員会で取り上げました。当時の浮島政務官は、福島県が事故当時十八歳以下の子供を対象に県民健康管理調査で甲状腺のエコー検査を行ったことについて、こういうふうに答弁されているんです。その結果には国としても大きな関心を持っている、今後、長期にわたって甲状腺検査を行う必要がある、引き続き必要な技術的、財政的な支援を全力で行うという答弁をされています。
この甲状腺のエコー検査は、国が七百八十二億円を拠出した福島県健康管理基金による事業として無料で実施されています。一方で、県境を越えると、放射線量が同程度の地域であっても検査は自費で受けるしかありません。子ども・被災者支援法は、少なくとも子供である間に一定の基準以上の放射線量が計測される地域に居住したことがある者に対する健康診断について必要な措置をとるよう国に義務付けています。にもかかわらず、福島県内と同程度の放射線量の地域であるのに子供の健康調査を国が行わない、この理由は何ですか。
○政府参考人(北島智子君) 今般の原発事故に係る住民の健康管理は、医学の専門家の御意見を聞きつつ進めることが重要であると認識しております。
福島県におきましては、今御指摘いただきましたとおり、子供たちの甲状腺の状態を把握し、子供たちの健康を長期に見守るとともに、本人や保護者が安心を得られるよう甲状腺検査を実施しているものと聞いており、環境省としても、福島県におけるこの甲状腺検査を着実に実施していくことが重要と考えております。
近隣県では、これまでにそれぞれ有識者会議を開催するなどして、特別な健康調査等は必要ないとの見解が取りまとめられております。また、国際機関の報告書におきましても、福島県外においてはがんなどの健康影響の増加が認められる見込みはないと評価をされております。
こうした近隣県での健康管理の在り方も含めまして、現在、専門家会議で科学的見地から議論をいただいているところであり、この専門家会議の意見を踏まえて必要な対策を講じてまいりたいと考えております。
○田村智子君 これ、議論を待っていたら、どんどん保護者や子供で不安を抱えている方というのはその気持ち収まりようがないわけですよ。やはり、保護者や子供の不安がある以上、その不安は県境を越えても応えるような健康観察を行うべきだというふうに思います。
例えば、宮城県の南部の地域、これ、福島県北部地域と放射線量は同程度で、被災直後の風の流れからもやはり非常に不安が大きいわけですよ。何の対応もないことへの批判の声も大きいわけです。宮城県民主医療機関連合会がこうした保護者の不安に応えて、今年の一月、白石市で甲状腺エコーなど健康調査を実施しました。費用は実費で一人一万円、しかもたった一日の健康調査。それでも六十二名が受診をしています。福島県民健康調査で甲状腺の異常が発見されており、福島県と同程度の放射線量の地域で保護者の方々が自分の子供はどうかと、エコー検査してほしいと、こうやって思うのは私は当然だと思うんですね。
その一人一万円の実費を今後も払わせるような検査でいいのか、これ、大臣のお考えもお聞きしたいと思います。
○副大臣(小里泰弘君) お答え申し上げます。
今政府参考人の方からも説明がありましたので、そこはなるべく割愛させていただきたいと思います。
福島県外でも、委員御指摘のとおり、放射線による健康不安を持たれているということは認識をしておりますし、また検査を希望されている方々がおられるということも承知をしておるところでございます。今、専門家会議、また福島近隣県において開催した有識者会議ですね、これは宮城県も含むわけでありますが、等々の会議の結果におきましては、今のところその必要はないという状況になっております。
なお、福島県外におきましても、平成二十四年度から、放射線に関する正しい知識を伝えていくために、住民の方との接点が多い保健師や教師への研修を行う等のリスクコミュニケーション事業を実施をしております。
環境省としましては、今後もこうした取組を進めながら不安の解消に努めてまいりたいと存じます。
○田村智子君 時間ですので、終わります。