国会会議録

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AV出演強要/スカウト取り締まりを/田村智子氏
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(写真)質問する田村智子議員=8日、参院内閣委

 日本共産党の田村智子議員は8日の参院内閣委員会で、AV(アダルトビデオ)出演強要につながるスカウト行為について、都道府県の条例だけでなく、職業安定法違反としての取り締まり強化を求めました。

 職業安定法63条は、「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的」で職業紹介、労働者の募集や供給を行った者への懲役や罰金を規定。同条「有害な業務」にはAV出演や風俗店が含まれ、埼玉県や東京都ではスカウト行為をする組織等の摘発につながっています。田村氏は、2019年に同法による逮捕が6件にとどまっていると指摘し、警察のさらなる対応を求めました。

 小此木八郎国家公安委員長は「本人の意に反したAV出演、性風俗店での稼働につながりかねないスカウト行為は、女性の安全で安心な暮らしの基盤を揺るがす重大な問題」とし、「検挙事例を含め必要な情報を共有しつつ、厳正な取り締まりが行われるよう警察を指導する」と答弁しました。

 また田村氏は、4、5月は10~20代の若者が被害にあいやすい時期だとして、スカウト行為の被害者にも、加害者にもならないよう繁華街などでの広報活動も求めました。



2021年4月26日(月)しんぶん赤旗
 
【第204回国会 参議院 内閣委員会 第10号 令和3年4月8日】
 

○田村智子君 次に、コロナ禍との関係での警察行政についてお聞きをしたいんです。
 DVや児童虐待から逃れるために家を出てしまう、仕事を失って生活に行き詰まる、今こういう若い女性が増えているという指摘もあり、厳しい状況に置かれていると思います。
 コロナの前から、十代、二十代の女性たちに居場所を提供するという人や組織が性的搾取を目的としているということは支援団体から告発されてきました。二〇一六年には、我が党の池内さおり議員が衆議院内閣委員会で正面からこの問題を取り上げましたけれども、性的被害を防ぐ警察行政はコロナ禍でいよいよ重要性増していると思います。繁華街の路上で女性に声を掛けるスカウト行為、そこからAV出演への強要や性風俗店へのあっせん行為にもつながっています。
 警察庁として、コロナ禍でどのような問題意識を持ち、スカウト行為に対する取締りを行っているでしょうか。
○政府参考人(小田部耕治君) お答えいたします。
 新型コロナウイルス感染症の拡大により女性の雇用や所得にも影響が及ぶ中、女性の弱みに乗じて敢行される犯罪について危惧されるところでございます。
 御指摘のストーカー行為につきましては、あっ、失礼しました、スカウト行為につきましては、アダルトビデオの出演強要や性風俗店での稼働につながるものであり、警察としましては、迷惑防止条例、職業安定法、軽犯罪法等を適用して取締りを行っているところでございます。
 引き続き厳正な取締りを行ってまいりたいと考えております。
○田村智子君 福岡県警は昨年七月にスカウト行為の一斉取締りも行ったということなんですね。これ、県迷惑条例違反で逮捕がされているんですけど、コロナで仕事を失った女性に仕事を紹介しようと思ったという供述も報道されています。
 私の事務所で新聞報道をざっと調べたところ、昨年四月の緊急事態宣言後、スカウト行為の逮捕事例の中に、都道府県の迷惑条例違反だけでなく、職業安定法違反容疑という事案が幾つか見られました。
 資料の一枚目、昨年七月、埼玉県大宮署でスカウト会社の役員ら六人が職安法違反で逮捕されていますけれども、これはどのような案件か、簡潔にお願いします。
○政府参考人(小田部耕治君) お答えいたします。
 お尋ねの事件につきましては、被疑者らが、同じスカウトグループに所属する者がスカウトした女性を不特定の男優と性交等をする映像作品に出演するアダルトビデオ女優として雇用させる目的でアダルトビデオプロダクションの代表者に対し同女性をアダルトビデオ女優として紹介して、これを雇用させ、もって公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で職業紹介を行った事件であると承知しております。
○田村智子君 今年二月には、東京都世田谷区でもスカウト会社社長ら八人の男性が職安法違反で逮捕されています。
 職安法第六十三条は、公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行った者又はこれらに従事した者に対して、一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処すると定めています。
 この職安法違反でのスカウト行為の摘発について、直近の集計をお答えください。
○政府参考人(小田部耕治君) 都道府県警察からの報告によれば、令和元年中、アダルトビデオの出演や性風俗店での稼働に係るスカウト行為につきまして、公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で職業紹介を行ったとして職業安定法違反で検挙しているものは六件でございます。
○田村智子君 二〇一九年、六件ということなんですけど、私、もっと本気で取り締まればもっと被害を防ぐことはできるんではないだろうかと思えるんですよ。
 職安法にある公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務というのは個別の判断ということなんですけれども、判例を見てみても、アダルトビデオへの出演、デリヘルへの仕事のあっせんというのは対象になっているんですね。芸能プロダクションだと言って女性をスカウトし、アダルトビデオへの出演を強要するという事例は後を絶ちません。スカウトする側がAVへの出演であるということを知りながら、それを隠してスカウトすることは職安法違反として摘発することができるということなんですよね。これ大変重要だと思うんです。
 スカウト行為は都道府県迷惑防止条例での取締りというのもやられていますけれども、これも大切なんですけれども、これ規制の対象に地域によってばらつきがあるんですよ。職安法違反は全国での取締りが可能なんです。警察庁としても職安法違反での摘発事例を共有し、今後の取締りに生かしていくということが求められていると思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(小此木八郎君) 本人の意に反してアダルトビデオに出演をさせられたり性風俗店で稼働させられたりすることにつながりかねないスカウト行為については、女性の安全で安心な暮らしの基盤を揺るがす重大な問題であるとまず認識しています。
 警察においては、もう委員おっしゃったとおりですが、こうしたスカウト行為に対し、迷惑防止条例による取締りのほか、職業安定法等の法令を適用して取締りを推進しておりますけれども、今後とも、引き続き、各都道府県警察において検挙事例を含め必要な情報を共有しつつ、厳正な取締りが行われるよう警察を私としても指導してまいります。
○田村智子君 これ、本人が同意した契約書もあるんだと言われてしまって、本当に多くの女性たちが泣き寝入りのような状態にも置かれているんですよね。長時間その場に拘束するようなことをして、もう契約書書かざるを得ないような状況に追い込んでいって、契約書があるのにあなた何で断るんだというふうにどんどん追い詰められていくという事例があるんですよ。だけど、スカウトする側があらかじめAVへの出演をさせるという目的を持っていたら、これもう違反事例になるということなんですよね。だまして連れていった、違反事例として摘発ができるということなんですよ。
 ですから、これ是非知らせてほしいと思うんですね、そういうことを。これ、泣き寝入りになっているような女性に対しても、たとえ契約書があったとしても、だまされて連れていかれていたんだとすれば、それはもう職安法違反なんだと。そうすると、組織的に、そのスカウトやっているようなところを組織的に摘発することもできるというふうに思うんですよ。
 見てみましたら、資料の二枚目と三枚目、大阪府警本部のホームページでは、実態を偽って言葉巧みに勧誘し、アダルトビデオに出演させる者もいます、性風俗店やキャバクラ、アダルトビデオへの出演等で働くように勧誘する行為は違法であり、安易に応じたり連絡先を教えないようにしてくださいと、違法なスカウト行為への注意喚起をしています。この中で、職業安定法違反にもなるんだということも書かれているんですね。
 是非、このスカウト行為のこうした逮捕事例、広く知らせていく、で、被害を未然に防ぐ、これ必要だと思います。既に出演強要されてしまった被害者も、告発するという背中を押すということにもなっていくというふうに思います。特に十代や二十代の女性にそういう情報が届くようなやり方ということも検討しながら、お願いしたいと思うんですけど、いかがでしょうか。
○国務大臣(小此木八郎君) おっしゃったように、そのような行為の被害者にも加害者にもならないようにするための広報啓発活動の推進は極めて重要だと思います。
 警察では、例えば繁華街においてスカウト行為に対する警告の放送を流すこと、駅構内にスカウト行為に対する警告の横断幕を設置すること、スカウトには応じない旨を啓発するためのキャンペーン活動や大学での講演を行うこと等の活動を行っております。
 今後とも、工夫を凝らしながらも広報啓発活動に取り組むよう警察を指導してまいります。
○田村智子君 先ほど事例で挙げました福岡県の一斉検挙の中では、実はスカウトする側に十代の男性というのもいたんですよ。逮捕された側に十代の男性というのがいたんですね。
 私、やっぱり、職安法が懲役刑も含めて刑罰の対象にしているということを、これは女性だけでなく男性の側にも私は知らせていくこと必要だと思うんですね。そういう行為をしたらあなたは懲役刑に処される可能性だってあるんだよと、そうやって、若い男性たちもスカウト行為に関わっていかないような、二重の意味での防犯の、何というんですか、効果というのがあると思うんです。
 特に、コロナ禍の生活苦ということもある、そしてまた、新学期が始まって、東京とか繁華街のところに出てきて、そういう被害に遭いやすい状況が今あるだけに、是非急いでそうした周知広報なども行っていただきたい。このことを要求いたしまして、質問を終わります。


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