日本共産党の田村智子議員は27日の参院内閣委員会で、個人情報の保護より利活用を優先するデジタル関連法案を批判し、個人の特徴をデータの自動処理で推定するプロファイリングなどによる権利侵害の規制の具体化こそ必要だと求めました。
田村氏は、妊娠などの要配慮個人情報を推測・特定するために企業が勝手に個人情報を分析する行為について、昨年改定した個人情報保護法が禁止する不適正利用に当たると明言すべきだと迫りました。
個人情報保護委員会の福浦裕介事務局長は「目的などを総合的に考慮して個別に判断する必要があるが、仮に当該行為が個人の権利利益を違法に侵害するものである場合には不適正利用に該当しうる」などと繰り返すだけでした。
田村氏は、違法とも不適正とも明言できずに規制ができるのかと批判。来年4月に施行する同改定法のガイドラインに、不適正利用の事例として学生の内定辞退率を勝手に算出したリクナビ事件すら例示すると明言できない政府側に、人工知能(AI)によるプロファイリングを用いた採用活動にも規制が必要だと迫りました。平井卓也デジタル改革担当相は「ガイドラインがみなさんの疑問に関して参考になるものとなるよう期待したい」と述べました。
田村氏は、欧州連合(EU)が21日に公表したAIに対する新たな包括規制案では、企業の採用活動などでの使用の規制も含まれていると指摘。「安全性と信頼性なきデジタル社会はありえない」と強調しました。
2021年4月29日(木)しんぶん赤旗
【第204回国会 参議院 内閣委員会 第15号 令和3年4月27日】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
おとといから四都府県では緊急事態宣言が発令をされて、休業要請を含む厳しい要請が出されています。まん延防止等重点措置がまん延防止にならなかったわけですから、これは特措法を審議した本委員会に政府は説明をする責任があると私は思います。オリンピックやワクチンについてもこの委員会に関わる業務です。私は、法案審議を一旦止めてでも、あるいは三十日にも本委員会開いてでも新型コロナ対策の審議をすべきだと理事会で求めてまいりましたが、そこがなかなか調わないので、この場でも改めて喫緊に審議を行うよう求めまして、以下、法案について質問いたします。
二十日の質問で、国や自治体などの行政機関が保有する個人情報、これ匿名化、非識別化され、第三者に提供され、利活用されていくという問題について詳しく取り上げました。何も私はこうした利活用を全て否定するという立場ではありません。もちろん、統計など匿名化された情報が活用されて、それが様々な政策立案に生かされていく、これはとても大切なことだと思います。
ただ、問題提起をしたいのは、匿名加工した個人情報のビッグデータ、これが特定個人のプロファイリングに利活用されていく。ビッグデータからAIがアルゴリズムを導き出し、個人の興味、関心、嗜好、行動、体の状態などをプロファイリングし、ワンスオンリーの商品やサービスを提供すると。それが規制もなく行われていけば、個人の人格への侵害、人間の行動がデータに左右される、自由な行動や選択肢がむしろ狭められるという危険性が現にあるということなんです。
今日で三回目の質問になるんですけれども、女性に対して妊娠しているかというプロファイリングは、特定個人に対する要配慮個人情報をプロファイリングによって得ようとする行為であり、個人情報の不適切利用として禁止されるべきではないかと。
これ三回目の質問なんですけど、大臣、明確にお答えいただけないですかね。いかがでしょう。
○国務大臣(平井卓也君) 委員の問題意識はよく分かっていますよ。いわゆるプロファイリングについては、個人の権利利益を侵害する場合には、これは問題になると承知しています。
個人情報の不適切な利用による個人の利益、権利利益の侵害を防止する観点から、令和二年改正個人情報保護法においては、民間事業者に対して不正、不適正利用の禁止に関する規律を導入するなど、プロファイリングの懸念に対応するための改正を行ったということでございます。具体的には、その違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがあるその方法により個人情報の利用を行った場合は不適切利用となるということでございまして、この不適切利用の内容に関しては、三条委員会である個人情報保護委員会から正確に答えさせたいと思います。
○田村智子君 じゃ、個人情報保護委員会にお聞きしますけれども、まず二点、じゃ、確認します。
念のために確認なんですけど、要配慮個人情報の取得はなぜ本人同意を必要としているのか。その観点から見れば、妊娠という、これは私は要配慮個人情報だと思います。これを取得する目的のプロファイリングというのは不適切な利用だと、禁止の対象ではないかと思いますが、いかがでしょう。
○政府参考人(福浦裕介君) 二点御質問ございました。
要配慮個人情報の取得、本人同意が必要、なぜかということでございます。
個人情報保護法は、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により被害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報を要配慮個人情報と定義をしまして、その取得について原則として本人同意を求めてございます。
このように、要配慮個人情報の取得について原則として本人同意が必要とされていますのは、本人の意図しないところで当該本人に関する要配慮個人情報が取得をされ、それに基づいて本人が差別的な取扱いを受けることを防止するためでございます。
次に、不適正利用との関係でございました。
来年四月一日施行予定の令和二年改正個人情報保護法におきまして、民間事業者に対しまして、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法による個人情報の利用を不適正利用として禁止をしてございます。ここで言います違法又は不当な行為は、個人情報保護法その他の法令に違反する行為に加えまして、直ちに違法とは言えないものの、個人情報その他の法令の制度趣旨や公序良俗に反している等、社会通念上適正とは認められない行為を含むものでございます。
事業者の行為が不適正利用に該当するか否かは、取り扱う個人情報の性質、行為の目的、必要性、行為態様、事業者の認識等を総合的に考慮して個別具体的に判断をする必要がございます。要配慮個人情報を把握する目的での個人情報の分析行為につきましても、その目的、必要性、行為態様、事業者の認識等を総合的に考慮して個別に判断する必要がございますが、仮に当該行為が個人の権利利益を違法に侵害するものである場合には不適正利用に該当し得ると考えてございます。
○田村智子君 禅問答みたいなんですよね、それでは。だって、要配慮個人情報は本人の同意なく取得したら駄目なんですよ。違法なんですよ。
じゃ、その要配慮個人情報を得ようとする目的のプロファイリングはどうかと聞くと、そのプロファイリングをやった目的が何なのか、それは要配慮個人情報を得ようとする目的なんですよ。ところが、それについても違法とか不適切というふうに言えないんですよね。そのプロファイリングによって何をしようとしているのかを個別に見なくてはならない。これで果たして規制ができるのかということなんですよ。
本会議で私この問題取り上げて、総理に聞いて、で、今と同じなんですよ。昨年の改正で、不適切利用の禁止を導入するなど、新たな事態、プロファイリングへの懸念にも応えているんだと、昨年の改正で。でも、今の御答弁では全く懸念に応えていないと言わざるを得ないんですよ。
アメリカのターゲット社が購買履歴のプロファイリングによって女性の妊娠を特定してビジネスに活用した、これが社会問題になったのは二〇一二年です。今では、こういうプロファイリング、購買履歴からなんというプロファイリングは古典的プロファイリングでしょう。AIの技術はもっと日進月歩ですから、個人情報のプロファイリングはもっと広範に、多岐にわたって現に活用されています。
二〇一九年に日本で起きたリクナビ事件。これは、リクルートキャリア社が、リクナビに登録をして就職活動をする学生、その学生がどの企業サイトを閲覧したかという情報をクッキーによって収集をした。で、AIのプロファイリングに掛けて内定辞退率を計算して企業に売ったという、そういう事案なんですよね。これは学生個人のスコアとして提供していた。
私は、まさにその二〇二〇年の今の個人情報保護法改定の審議でこのリクナビ事件を取り上げて、では、新設される十六条の二、今の不適切な利用の禁止です、個人情報取扱事業者は、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法により個人情報を利用してはならない、これに該当するのではないですかというふうに質問をしたわけです。個人情報保護委員会は、該当する場合があり得るという答弁でした。もちろん、法案がまだできていないので、その法の条文で裁くというか指導するということはできないんだけれども、この法律が施行されれば当然リクナビ事件は十六条の二に当たりますよねという質問をしたわけです。でも、まだ施行されていない、今施行に向けてガイドライン改定の議論が行われています。
それでは、そのガイドラインには、リクナビ事件のようなプロファイリングは不適正利用に当たるということが書かれることになるんでしょうか、例示されるのでしょうか。
○政府参考人(福浦裕介君) お答え申し上げます。
いわゆるプロファイリングにつきまして確立された定義はないものの、一般的には本人に関する趣味や嗜好などに関する推計を行う手法であると承知をいたしております。プロファイリングについては、その目的、態様により、個人の権利利益を侵害する場合には問題となり得るものと承知をいたしておりまして、それらについては厳格に対応していくということが重要でございます。
その上で、事業者がプロファイリングのために個人情報を取り扱う場合にも、利用目的の特定、利用目的の通知、公表、安全管理措置、第三者提供に関する同意といった個人情報保護法の規律に服することとなります。加えて、昨年の個人情報保護法の改正におきましては、プロファイリングの懸念に対応すべく、利用停止、消去等の要件の緩和、不適正利用の禁止、第三者提供記録の開示、提供先における個人データとなることが想定される情報の本人同意といった新たな規律を、一定対応の、一定の対応を行ったところでございます。
当委員会としましても、個人の権利利益が侵害されることのないように、プロファイリングの場合を含め適切に対応してまいりたいと考えてございます。
○田村智子君 改正された条文がどう運用されるかというのがガイドラインなので、そこにリクナビ事件がちゃんと例示されるかどうかということなんですが、お答えいただけない。
私は、個人情報保護委員会でのこのガイドラインの議論の資料を見ました。この制度の導入、この法改定の言わば契機ともなったとされるのが破産者マップ事件、これを基にしたものは例示として書かれているんですよ、資料に。
あの破産者マップ事件というのは、破産者というのは全部名前も住所も公表されるんですね、官報に公表される。それをグーグルマップに全部落として、これをネット上で公表したり、あるいは、何というんですか、売ると、電磁的記録によって売ると。これは駄目だと、こういうことをやったら駄目だという例示があるんですよ。ところが、リクナビ事件をうかがわせるような例示はないし、プロファイリングに関する記載そのものが見当たらないんですよ。
このリクナビ事件というのは、個人情報保護委員会が初めて勧告に踏み切った事案です。厚労省が職安法違反だと是正指導を行った事件です。なぜ例示として示さないのか。プロファイリングによる人権侵害を規制するという議論、これやられていないんじゃないんですか。いかがでしょうか。
○政府参考人(福浦裕介君) 御指摘の改正法に関連しましたガイドラインにつきましては、現在、利用停止、消去等の要件緩和や不適正利用の禁止等に関しまして、委員会において要件の考え方や事例を含めた論点の議論を行っているところでございます。
現時点におきまして、プロファイリングという行為のみに着目するのではなく、その結果個人の権利利益が侵害されているかどうかが重要であると考えてございます。
いずれにしましても、個人の権利利益の侵害を防止するという観点から、ガイドラインについて引き続き検討してまいりたいと考えてございます。
○田村智子君 初めて勧告を行った事例がガイドラインに出ないなんというのは、それ、総理の答弁とも違ってきますよね。大臣の答弁とも違ってきちゃいますよね。
二〇二〇年の改定、私のプロファイリングに対する質問に対して、二〇二〇年の改定がその懸念に応えるんだと答弁されている。ところが、その議論がない。
企業の採用活動にAIによるプロファイリングを活用する事例はどんどん増えているんですよ。リクルート、マイナビなどの人材サービス企業を始め、様々な企業がエントリーシートの選別など採用活動のためのAIを開発して、リクルートは自社でもどんどん活用している。他の企業にも売り込んでいる。AIによる面接を行う企業もあるんです。
AIによる審査モデルは、主に過去のデータをAIに学習をさせてモデルを構築するものです。過去のデータにはジェンダーバイアスなど何らかの偏りが含まれている可能性があり、不当に不利益を受ける事例は否定できない。これは、経済産業省のAIのこと議論しているところのガイドラインにも出てくるんですよ。不利益、不当に不利益を受ける事例は否定できない、厚労省の中でもそういう議論がされているんですよ。
そもそも、採用や人事は個人の将来に関わる重要な問題です。それをAI審査に委ねてしまうのは、私は問題だと思います。AIなどプロファイリングを用いた採用活動について個人の権利利益を守るためには、これは何らかの規制、例えば自動審査駄目とか、せめてそれぐらいの規制、こういうことをやることが必要だと思いますけど、いかがでしょうか。
○政府参考人(福浦裕介君) 御答弁申し上げます。
議員御指摘の採用活動における利用も含めまして、プロファイリングにつきましては、その利用方法について様々な議論があることは承知をいたしております。
プロファイリングにつきましては、個人情報の利用形態の一つとしましてその利用には期待が寄せられる一方で、その目的、態様によって個人の権利利益を侵害する場合には問題となり得ると承知をいたしております。
個人情報の不適正な利用による個人の権利利益の侵害を防止する観点から、令和二年改正個人情報保護法におきまして、民間事業者に対して不適正利用の禁止や提供先において個人データとなることが想定される情報の本人同意に関する規律を導入するなど、プロファイリングの懸念に対応する改正を行ったところでございます。
当委員会としましても、プロファイリングによって個人の権利利益が侵害されることのないよう、新たな規律を含めまして適切に法執行を行ってまいりたいと考えてございます。
○田村智子君 何を聞いても同じ答弁がなされているようにちょっと聞こえてくるんですけれども、個人情報保護委員会が設置される以前には、各省庁が所管する業務との関係で個人情報の取扱いについて民間事業者を監督していました。
二〇〇二年二月当時、厚生労働省のガイドライン、労働者の個人情報保護に関する行動指針、ガイドラインですね、ここでは、使用者は、原則として、個人情報のコンピューター等による自動処理又はビデオ等によるモニタリングの結果のみに基づいて労働者に対する評価又は雇用上の決定を行ってはならない。行ってはならない、コンピューター等による自動処理で人事上の評価等々を行ってはならない、それだけでやってはならない、ここまで書いているんですよ。
不適正の例示として、私はそれぐらいのことは個人情報保護委員会がガイドラインに書くべきだと思うんですが、これをお聞きしてもまた同じ答弁になってしまうと思いますので、ちょっともう次の質問に入りたいと思うんですけどね。
それで、このガイドラインではもう一点、二〇〇〇年の改正で、これもまだ施行されていないんですけれど、第三十条五項、本人の権利又は正当な利益が害されるおそれがある場合には当該保有個人データの利用停止等又は第三者への提供の停止を請求することができる、こういう条文も新設をされました。
今、私が紹介した十六条の二とか三十条の五項とかというのは、皆さんに配られた実は資料の中に出てこないんですよ。施行前だから、施行前だから私たちが今法案を審議する資料にはこの条文出てこなくて、本当にね、施行前に次の改正やるとこういうことになるんだと思って、本当大変ですよ。あっち見たりこっち見たり、今の法案がどれなんだ、今の法律がどれなんだということになっちゃうんでね。
ちょっともう戻りますけど、この利用の停止、また第三者提供の停止、これ個人の権利として新たに書き込んだと。これがどう運用されるかということも非常に重要になってくるわけですよ。今のプロファイリングとの関係でも、やっぱり私は不利益、不当な扱いを受けてしまうと、だから提供しないでくれという権利になるかどうかが問われるわけですよね。
それで、ガイドライン改定の議論を見てみますと、請求を行うには、法目的に照らして保護に値する正当な利益が存在し、それが侵害されるおそれがあることとしていて、考えられる事例として次のように示しているんです。ダイレクトメールの送付を受けた本人が送付の停止を求める意思表示をしたにもかかわらず、個人情報取扱事業者がダイレクトメールを繰り返し送付している。また別の事例として、個人情報取扱事業者が法第二十三条第一項に違反して、つまり本人同意を得ないで第三者提供を行っており、本人を識別する保有個人データについても本人の同意なく提供されるおそれがある。そして三つ目の事例、個人情報取扱事業者が退職した社員の情報を現在も自社の社員であるようにホームページ等に掲載し、これによって本人に不利益が生じている。
がっくりくるような例示なんですよ。あのね、これらは違法であり不適切事例だと誰でも容易に判断できるものですよね。本人の同意なく取得していたとか、誰が考えたっておかしいよねっていう事例なんですよ。もっと、デジタル技術ってもっとすごいことになっているわけですから、AIの活用を念頭に置いて規制の検討が必要になってくると思うんですよ。追い付いていないんですよ、これじゃ。
リクナビ事件もそれからフェイスブック・ケンブリッジ・アナリティカ事件も、どちらも個人情報保護委員会が事業者を指導した事件なんです。これらを踏まえて、事業者に対して、違法、不適切、個人の権利利益を侵害するプロファイリングの例示、これこそが必要だというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。ちょっと違う答弁をしていただきたいと思うんですけど、いかがでしょうか。
○政府参考人(福浦裕介君) 御指摘の改正法に関連しましたガイドラインに関しまして、現在その要件の考え方や事例を含めた論点につきまして、現在委員会において議論を行っているところでございます。
不適正利用に関しましては、違法又は不当な行為、助長又は誘発のおそれの考え方や事例等について議論を行ってございます。また、利用停止等につきましては、拡大された利用停止請求の要件でございます本人の権利又は正当な利益が害されるおそれがある場合などの考え方について議論を行っているところでございます。また、ガイドラインにおきましては、本人が合理的に予測等できないような個人データの処理が行われる場合、どのような取扱いが行われているかを本人が予測できる程度に利用目的を特定をするということも求めて検討をいたしております。
これらの措置を通じまして、事業者が、本人の権利利益との関係で説明責任を果たしつつ、本人の予測可能な範囲で適正な利用を行うように、委員会としましてもしっかり対応してまいりたいと考えてございます。
○田村智子君 このフェイスブック・ケンブリッジ・アナリティカ事件というのは本当に深刻な事件で、フェイスブックのいいねボタンがあるウエブサイトをそのフェイスブックのユーザーが閲覧をする、そのユーザーにはあらかじめ不正とも思われるようなアプリケーションが読み込ませているというのがあるんですけどね。そうすると、そのユーザーとそのお友達のやっぱりウエブ閲覧記録が吸い上げられていって、そこからその人の関心事とか不安に思っているということをプロファイリングする、で、その情報が売られたわけですよ。
そうすると、その特定個人に対してターゲット広告を行って、イギリスのEU離脱に対する投票、それからアメリカの大統領選挙、これで特定の方向に誘導する、誘導するっていう、このターゲット広告によって人間の潜在意識に働きかけて、人間の行動をコントロールする意図を持った個人情報の取扱いだったわけですよ、明らかに。
現実には、ターゲット広告を含むプロファイリングが私たちの思考や行動に影響を与えるところまで来ているんです。だから、利用停止を含む個人情報の自己コントロール権が焦点なんですよ。
ところが、これまでの答弁見ていれば、その自己情報のコントロール権というのは最高裁でも認められていませんとかね、明確な概念として確立していないとか、先ほどの答弁では、プロファイリングも確立した考え方がないという答弁まであった。そうすると、プロファイリングによるプライバシー権の侵害は、現に起きていたとしても、起きているんだけれども、このことを日本で訴えたとしても、利用停止が認められる可能性、これは極めて小さいということになってしまうんじゃないですか。
いかがでしょう、個人情報保護委員会。
○政府参考人(福浦裕介君) お答え申し上げます。
繰り返しになりますけれども、いわゆるプロファイリングにつきましては、その目的、態様によって個人の権利利益を侵害する場合に問題となり得るものと承知をいたしておりまして、それらについては厳格に対応していくことが重要だというふうに考えてございます。
御指摘のガイドライン等につきましても現在議論を、論点の議論を行っているところでございます。現時点において、プロファイリングという行為のみに着目するのではなく、その結果個人の権利利益が侵害されるかどうかが重要だというふうに、繰り返しですが、考えてございます。
いずれにしましても、個人の権利利益の侵害を防止するという観点から、引き続き十分かつ分かりやすい周知徹底に努めてまいりたいと考えてございます。
○田村智子君 平井大臣、今のやり取り聞いていて、いかがですか。私は、やっぱり個人情報保護法の中に守るべき個人の権利利益とは何なのかが明確ではない、データ主体の権利性が曖昧である、プロファイリングについての規定がない、これは本当に問題だと思うんですよ。この遅れを、この対応の遅れをどうするのかなんですよ。
大臣、いかがですか。
○国務大臣(平井卓也君) プロファイリングを通じた個人情報の不正利用については新たに禁止されることになった、また、ターゲティング広告に関連して、本人関与のない個人情報の収集を防止するために新たな規制を導入したということです。
先ほど先生と個情委のやり取りを聞いていて、結局、今作っているガイドラインというものが、やはり一般的な皆さんが持っているいろいろな疑問に関してやっぱり参考になるようなものになるように私も期待したいと、そのように思っております。
○田村智子君 これ、本当はガイドラインだけじゃ駄目、足りないんですよ。法規制をどうするかという検討が、本当はこのデジタル社会と言うのならば最優先で私は議論されるべきだと思います。
四月二十二日、日経の一面トップで、EUがAI包括的規制案、これを発表したということが大きく報じられました。
二十一日に公表したということなんですけれども、これ、AI活用におけるリスクを四段階に分類をしてリスクに応じた規制を行っていくというんですね。一番厳しいのが禁止、政府が個人の信頼性などを格付するスコアリング、これ中国などがやっていることですけど、これは禁止だと。そして、高リスクのものに、運輸、医療などとともに、企業の採用活動での利用、これはルール化をして適合性を事前に審査をする、AIを使う場合には事前審査を行うと。
こういう規制案は、昨年、EUがAI白書を発表して、既にAI規制の考え方、方向性を示しているんです。そこにどういうこと書かれているか。これ、ジェトロの資料から詳しいことがよく分かるんですけど、欧州は安全に利用、応用できるAIシステムの世界的リーダーとなるべきというふうに宣言しているんです。そして、AIシステムは人間の自立と決定を支援するものでなければならない、AIシステムは人間の監督を可能としなければならない、こういう立場なんですよ。
これ、私が何度もEUを取り上げるのは、EUはこれによってAIを使わせないようにしようということじゃないんですよ。こうやって安全性と信頼性を世界中にもアピールして、私たちの国ではこんなふうに、AIの活用は民主的な社会をつくるためのものなんだと目的も明確にしていますよと。個人の権利が守られる法規制がありますよ、監督する体制もありますよ、破った企業は厳しい罰金が科せられますよ、これで信頼を得ることでAI技術をより発展させ、より国民の中にも行き渡らせて、まさに先進、AI先進になっていこうということなんですよ。
これこそ目指すべき方向だと思うんですよね。私も何もやめろと言っているんじゃないんですよ。安全性と信頼性なきデジタル社会はあり得ないと言っているんです。
いかがですか、大臣。
○国務大臣(平井卓也君) 私も、二年前、科学技術担当大臣のときにAI戦略に関わっておりました。やっぱりこの、人、人間を中心としたAI戦略という考え方は我々共通でございまして、当時もEUとAI戦略のそのモラリティーみたいなことに関して議論をしましたが、日本のAI戦略はそういう意味ではその考え方をリードしてきたというふうに考えております。
また、個人情報保護委員会との絡みについては、是非、政府委員と、政府参考人から答弁していただきたいと思います。
○田村智子君 世界をリードしてきたというのはちょっと驚きの発言なんですけど、また次回質問したいと思います。
ありがとうございました。