日本共産党の田村智子議員は15日の参院内閣委員会で、新型コロナの影響で打撃を受けた中小事業者に支払われる一時支援金をめぐって発生している「不備ループ」の問題を取り上げ、政府に改善を求めました。
10回以上「メール」
「メールが何を説明しているのか全く分からない」「不備があるのか、ないのかも不明」―。田村氏は、一時支援金の審査・給付の委託事業者であるデロイトトーマツが申請に「不備」があるとして送りつけたメールを紹介。業者が、改行もなく意味のわからない文書を解読して資料を提出しても、再び「不備」を指摘するメールが送られてくる「不備ループ」に陥り、必要な支援金を受け取れないと悲鳴があがっている実態を告発しました。
▽10回以上「不備メール」が返ってきた▽大量の資料をデータ送信した10分後にまた「不備メール」が届いた▽コールセンターにかけて対応を聞いたら「不備を解消する方法を教えると不正の手口を教えることになる」と言われた―。
「人として扱って」
田村 1件の不正を防ぐため、99件をあきらめさせる「過剰審査」をしているのではないか。
中小企業庁の飯田健太事業環境部長 不正防止と両立させながら、どういう書類を提出すれば事業実態や緊急事態宣言の影響を確認できるのか引き続き検討する。
田村氏は、業者からは「働いてきたことの全てを否定されているようだ」「人として扱ってほしい」と悲痛な声があがっているとして、「頭から不正を疑うような、申請をあきらめさせるような対応を続けている」と批判。「中小企業庁として内容を確認し、不備解消への対応を続けている案件は審査を打ち切ることがないようにすべきだ」「一時支援金の支給は、月次支援金の申請につながる。『不備ループ』により申請に間に合わないということにならないよう対応を求める」と強調しました。
2021年7月16日(金)しんぶん赤旗
【第204回国会 参議院 内閣委員会 閉会後第1号 令和3年7月15日】
○田村智子君
一時支援金についてお聞きします。
今年一月から三月分、約五十七万件の申請に対して給付は約四十八万件です。給付に至っていない中には、不備があるというメールが来て、それに対応するとまた不備メールが送られてくる、出口の見えない不備ループに陥っていると、こういう方が少なくありません。
昨日、中小企業庁への要請で全商連の皆さんが事例を示されたんですけれども、審査と給付の委託事業者であるデロイトトーマツの対応、本当にひどくて驚きました。
資料のまず三枚目を見ていただきたいんですけれども、これ、最初の不備メールなんですよ。分かりますか、これ。改行もない。これ解読できますか。私、読んでも全く分かりませんでした。これ、さすがに笠井亮衆議院議員がおかしいというふうに中小企業庁に意見を言って、改行と書式は改善されたんですよ。だけど、改善されたけど、資料の二枚目見てくださいよ。意味不明ですよ。「ご提出いただいた保存書類について以下の通り不備がありますので、ご対応をお願いします。不備のある項目はありません。」。何ですか、これ。
それでも、申請者は生活が懸かっているから懸命に解読して資料を提出するんですよ。するとまた不備メールが来るんです。十回以上不備メールが返ってきた、大量の資料をデータ送信した十分後にまた不備メールが届いた、こういう方もいらっしゃる。
これは大阪市内の旅行代理店の方が送った資料のコピーです。経営実態も容易に分かって、コロナの影響も明らかです。これだけ大量の資料提出をして、まだ不備ループから抜け出せないんですよ。これ異常だと思うんですね。
これ適正な対応と言えるんでしょうか。いかがですか。
○政府参考人(飯田健太君) お答えいたします。
今委員御指摘ございましたけれども、改行のないこの不備通知でございますとか、あるいは二枚目にお示しいただいておりますメールでございますけれども、こちら事実でございまして、委員今御指摘ありましたように、改善しているところは改善してございます。
それから、二ページ目のこれにつきましても、数件こういった事例があったことは事実でございますので、お送りした方々にアプローチをして、謝罪とともに趣旨について改めて説明させていただいているところでございます。まず、その点についてはおわび申し上げたいと思います。
その上ででございますけれども、確かにコロナでお困りの中小企業の皆様が大勢いらっしゃる中で、中小企業庁としても、この一時支援金、できるだけ速やかにお届けすべく日々取り組んでおります。しかしながら、書面による事業実態の確認が十分にできない、こういった事情によりましていまだにお届けできない事業者の方々がいることも事実でございます。
これ、どうしてこういうことかということなんですけれども、一時支援金でございますけれども、これ、緊急事態宣言による影響により大幅に売上げが減少した事業者の事業継続を支援すると、このために支給するものでございます。こうした要件を確認させていただくために、申請者の方々には、緊急事態宣言の影響でございますとかその売上げの減少、それから、実際にその事業を営んでいることを確認するために、売上台帳ですとか本人確認などの書類を求めております。
御指摘の不備の指摘が行われている書類につきましては、事業実態を確認するためのものが多いと思われます。これらは、持続化給付金、前にやったやつですけれども、この支給に当たりまして、事業実態がないにもかかわらず、あたかも事業を行っているかのように偽装して確定申告を行うと、こういったことで不正受給が多く見られたことから求めているものでございまして、必要性については御理解いただきたいと思います。
この持続化給付金の実務で得られた知見も活用いたしまして、不備解消するための書類の類型もこれ随時増やしてきているところではございますけれども、今御指摘ありましたように、あるいは我々に別途寄せられている御意見も踏まえますと、それでもなおこれまでの知見では確認できないような事業実態もあるのではないかと思われるところでございます。
こうした方々と更にコミュニケーションを行いまして、事業実態を偽装して不正受給しようとする方々による悪用防止、これ前提になるわけでございますけれども、更にどのような書類があれば実際の事業実態を確認できるのか、引き続き私どもとしても検討してまいりたいと思っております。
○田村智子君 これまで支援受けてきた人たちがこの不備ループに入っちゃっているんですよ。足運んでもらったらすぐ分かるって言っていますよ。手数料取って行政書士さんに確認してもらっている方もいるんですよ。
で、これ、何が不備か分からないからコールセンターに掛けると、今度はつながらない。やっとつながると、青色申告は提出資料が大量になるので白色申告に変更してくれと。これできるわけないんですよ。こんな要求されたり、また、どうしたら給付してもらえるんですかと聞くと、不備を解消する方法を教えると不正の手口を教えることになると、こう言われた方もいます。
相談事例や我が党議員団が聞き取って調査したところ、こういう不備メールを送る対象は、現金取引の方、また特定の業種など、幾つかの共通項があるんです。そうすると、デロイトトーマツは、幾つかの要注意フラッグを立てて、申請者をプロファイリングして不備メールを送っているんじゃないのかと、このフラッグが立つと。だから、一件の不正を出さないために九十九件を諦めさせるような過剰審査をしているんじゃないかと指摘せざるを得ないんです。
二点確認します。現金取引だから給付できないという基準はありますか。不備ループから抜け出すために何を証明したらいいのか、基準を明確にすべきではないのか。この二点お願いします。
○政府参考人(飯田健太君) お答えいたします。
まず、現金取引であるので給付できないという基準はございません。
その上で、以下、現金取引の方々に追加で書類を求めている場合の考え方ですとか、あるいはどういう書類を求めているかについて御説明させていただきたいと思います。
一時支援金でございますけれども、繰り返しになりますが、緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業、あるいは外出自粛の影響を受けている事業者の事業継続を支援するということでございますので、審査に当たりましては、その影響の因果関係ですとか、あるいはその事業実態を確認するために、原則として顧客などの取引先の情報に関する書類提出、例えば請求書とそれにひも付く通帳記録、こういったものが一般的なんですけれども、これを基本的には求めております。
これで出していただいている方たくさんいらっしゃるんですが、今御指摘のような現金取引の方々はこうした取引先の情報についての書類が存在しない場合がございます。こういった方々につきましては、持続化給付金のときもございましたので、別の書類によって緊急事態宣言による影響の確認、あるいは実際に事業を実施しているということの確認を別途求めるということもやっております。
例えば、申請の際には、申請の際に保存書類を求めておりまして、例えば緊急事態宣言の影響を受けている取引先や顧客との反復継続した取引を示す帳簿書類及び通帳の保存、こういったものを求めているんですけれども、こういったものの中から、事業実施に必要となる物品、サービスの仕入れ、あるいは事業の売上げを確認できる書類、こういったものがないのか、何かその事業やるときに仕入れするときのその書類ですね。あるいは、そのお店の名前とかいった、その事業者の名前で契約している公共料金などの経費に関する書類、こういったものでもいいんですけれども、こういったものを御提出いただけないかということでお願いをしております。こういう保存書類につきましては、申請に当たって、審査に当たっては追加していただくということも御同意をいただいておるものでございます。
それでもなお、実際にはこの制度、地域や業種を問わずいろんな方々から御申請があるわけでございます。今申し上げたような様々な書類も御提出いただけない方もいらっしゃると思います。また、その各事業者の置かれている状況によって提出可能な申請書類あるいは保存書類なども異なるということも理解をしております。こういったことから、不正防止と両立させながら、どういった書類を提出いただければ事業実態や緊急事態宣言等の影響を確認できるのか、引き続き検討してまいりたいと思います。
また、御指摘ありましたけれども、コールセンターなどの対応でございますけれども、こうしたコールセンターの対応も含めて、問合せについては、申請者のお声を踏まえながら継続的に改善を図ってまいりたいと思っております。
○田村智子君 今言ったようなやつは、私さっき掲げたこれに全部入っているんですよ、請求書とか領収書とか。それでも不備ループなんですもの。
これ、女性一人で起業して、エステサロンを小さいながらも経営してきた、こういう方が、先ほど示した解読できないようなメールを送り付けられたらどういう思いになるかなんですよ。今、各地の民主商工会が相談に乗っているから何とか諦めずに事業実績や減収証明しようと手だてを尽くしている。それなのに、頭から不正を疑うような、申請諦めさせるような対応を続けている。だから、私が働いてきたことを全て否定されているようだと、人として扱ってほしいと、こういう訴えなんですね。
それで、これ要望しておきますが、今審査が滞っている申請については、是非中小企業庁として内容を確認し、不備解消への対応を続けている案件というのは審査の打切りがないように対応してほしい。それから、一時支援金の支給というのは四月以降の月次支援金の申請につながっていくんです。不備ループで一時支援金の対応が遅れると、四、五月の申請締切日、八月十五日に間に合わない可能性があるので、この点での対応を求めておきます。