国会会議録

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入院制限方針 撤回を/ 参院内閣委 田村議員が要求

 日本共産党の田村智子議員は19日の参院内閣委員会で新型コロナ患者の入院を制限する方針の撤回と、在宅死を生まないための医療体制の構築を強く求めました。

 田村氏は3日に出された厚生労働省の事務連絡は、新型コロナ患者の入院を重症患者などに重点化することも可能とし、その際、自宅療養患者の症状悪化に備え空床を確保することを求めており、入院対象を絞ることで空床の確保を求めるものと読めると指摘しました。小鑓隆史厚生労働政務官は、患者急増地域で医療提供体制強化を求めるもので、入院を制限する趣旨ではないと述べました。

 田村氏は事務連絡が入院制限の方針との批判に対して5日の添付資料に「入院施設・療養施設の確保」という本文にない記述まで「加筆」されているとして、「こういう姑息(こそく)なやり方ではなく病棟確保に全力をあげる方針を明確にしたものを出し直すべきだ」と求めました。

 さらに療養施設に従事する看護師の賃金はワクチン接種業務と比べて低く、背景に国の事務連絡があると指摘。人材確保のためにも、賃金を引き上げるよう求めました。

 また、保健所のひっ迫によって医師が新型コロナ感染の発生届け出をしても保健所が患者に連絡するまで非常に時間がかかっていると批判。在宅死を出さないため地域医療機関と連携した健康観察・在宅医療の体制をつくるよう行政の積極的な働きかけを求めました。



2021年8月20日(金)しんぶん赤旗
 

【第204回国会 参議院 内閣委員会 閉会後第3号 令和3年8月19日】

○田村智子君 
 次に、厚労省が八月三日に発出した、医療の問題なんですけど、ちょっと医療の問題も是非二人の大臣にお聞きしていただきたいので、このまま残っていただきたいんです。
 厚労省が八月三日に発出した事務連絡、「現下の感染拡大を踏まえた患者療養の考え方について」と、これが入院制限の方針だとして大問題になりました。八月四日、五日の衆参厚労委員会での大臣の答弁を受けて事実上撤回だと報道されましたが、事務連絡は撤回されていません。本文も変更されていません。添付資料が上書きされただけなんですね。
 本文にはこうあるんです。「入院治療は、重症患者や、中等症以下の患者の中で特に重症化リスクの高い者に重点化することも可能であること。その際、宿泊・自宅療養の患者等の症状悪化に備え、空床を確保すること。」と。
 これ、私には、入院対象を絞れば空床が確保できる、入院対象を絞ることで空床確保を求めているというふうに読めます。違いますか。
○大臣政務官(こやり隆史君) 委員御指摘の事務連絡でございます。その考え方でございますけれども、改めて少し触れさせていただきます。
 現在、国際的にも、従来と比較にならない感染力を持つデルタ株の拡大があります。一方で、ワクチン接種の進展に伴いまして高齢者の感染が抑制される一方で、若年層を中心に急速に感染が拡大している。そうした状況の中で、東京を始めとして感染者が急増している地域において必要な患者が必要な医療を受けられるようにする体制、これを構築していくことが緊急的な、喫緊の課題でございます。そのため、緊急的な対応として、自治体の判断により患者療養について状況に応じた対応を可能とするように通知をしたものでございます。
 いずれにいたしましても、我々といたしましては、入院が必要な方には入院をしていただく、これにつきましては何ら変わるものではございません。入院を対象を絞るという御指摘は当たらないものと考えておりますし、何よりも医療提供体制の強化、これを全力を挙げてやることが我々の責務であるというふうに考えております。
○田村智子君 八月三日の事務連絡に添付された資料が私が配付した資料の一枚目なんです。いわゆるポンチ絵と言われるものですね。ここには、入院施設、療養施設の確保ということについては書かれていないんですよ。事務連絡のとおりに書かれているだけなんですよ。入院は重症患者や特に重症化リスクの高い者に重点化、自宅・宿泊療養者の急変に備え空床を確保と。入院対象を限定することで空床を確保するようにというふうに読めますよ、これは。で、五日の日にこの資料がアップデートされたんです。配付資料の三枚目です。この中で、まず入院施設、療養施設の確保と、事務連絡の本文にないことが書き込まれたんです。
 こういうこそくなやり方ではなくて、三日付けの事務連絡を撤回して、病床確保、療養施設の確保にあらゆる手だてを取る、このことを求める明確な方針、これ事務連絡出し直すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○大臣政務官(こやり隆史君) 先ほども申し上げましたけれども、今回お示しした考え方につきましては、必要な方が入院や施設入所をできる体制を確保するためのものでございます。委員御指摘のとおり、混乱が一部あったということは大変申し訳なく思っておりますけれども、こうした考え方については、知事会始め、医師会も含めて様々な関係者に丁寧に御説明をさせていただいているところでございます。
 その上で、各都道府県におきましては、病床確保計画に基づいて病床の確保等を進めていただいているところでございますし、東京を始めとする感染拡大地域の医療提供体制、これを確保するために、病床確保、入院待機ステーションの整備等について、個別の医療機関への要請、必要な看護職員等の確保支援等を都道府県等自治体と密接に連携しながら努力をしているところでございます。
○田村智子君 これは厚労省の政策として禍根を残しますよ。病床足りなかったら重点化、こんな事務連絡ですから。撤回すべきですよ。
 墨田区保健所は、今年春の大阪の医療崩壊と、それから抗体カクテル療法が承認されるというこの動きを見て、すぐに軽症者治療の病床を確保し、いち早く治療につなげています。地域の医療資源をどうやって生かすのか、早くから医師会との連携も強めて医療機能の分担を保健所が核になって構築しています。PCR検査も保健所で行えるようにし、民間検査機関も区内に誘致して体制をつくった。資源にニーズを合わせるのではなく、ニーズに資源を合わせる、これが保健所の役割だと保健所長さんは取材に答えておられるんですね。
 片や田村厚労大臣は、五日の厚労委員会で、医療資源には限界があるんですと開き直ったわけですよ。しかも、オリンピックに医師、看護師を派遣しながらなんですよ。発症している患者を自宅に置き去りにしない、特に入院できていない中等症患者に、酸素吸入だけでなくて療養施設、あるいは先ほど来ある臨時の医療施設を確保して医師、看護師の管理下に置く、医療を提供する、パラリンピックじゃなくてそっちに医師、看護師を置く、これが原則だということを私はしっかりと政府は方針として示すべきだ、指摘しておきます。
 病床の確保、宿泊療養施設の確保の最大のネックは医療従事者の確保です。ワクチンの接種という臨時的な増員も必要となっている。さらには、家庭で感染者が発生して医療従事者が濃厚接触者になって休まざるを得ないと、こういう事態も起きている。言わばまさに取り合いという状態なんですね。
 ここで指摘しておきたいのは、ワクチン接種と比べて、療養施設でコロナ対応をする看護師の処遇に大きく差があるということです。看護師派遣会社の求人を検索してみますと、宿泊療養施設では、例えば新宿区内、時給二千二百円で募集されています。埼玉県熊谷市では二千五百円。ワクチン接種の方を見てみると、同じ埼玉県内で三千円、四千円。こういう求人です。
 ワクチン接種事業の国の補助金は手厚い。一方、療養施設については、新型コロナウイルス重症患者を診療する医療従事者派遣体制の確保事業を参考にするようにという事務連絡が出されています。そして、その上限というのは時給二千七百六十円なんですよ。これ、コロナに対応する看護師の時給なんですよ。
 上限引き上げるための方策、これ講ずるべきだと思いますが、いかがですか。
○大臣政務官(こやり隆史君) 宿泊療養を行う患者に対する健康管理に必要な医師あるいは看護師の人材等の確保、これは大変重要な課題でございますし、国といたしましても、緊急包括支援交付金による補助の対象としているところでございます。
 委員も御指摘いただきました交付金のQアンドAにおきましては、医療従事者派遣体制の確保事業等の補助上限額を参照してくださいというふうに書いてあるということはもう委員御指摘のとおりでございますけれども、同時に、この単価というのは本当に地域によって様々でございます。そういう意味で、地域の実情に応じて適切な単価を設定することも可能でありますということを明記をさせていただいております。
 我々といたしましては、必要な人材が必要なところに行き届くように、この交付金始め国の支援制度、整備をしておりますので、都道府県等とも連携しながら必要な人材の確保に努めてまいりたいというふうに考えております。
○田村智子君 国の確保事業の方でちゃんと時給の手当てをしなかったらこれ確保できなくなっちゃうんですから、是非検討していただきたい。
 それから、抗体カクテル療法、レムデシビルなどの投与で重症化を防ぐ治療ができる。しかし、抗体カクテル療法は軽症のうちが有効で、軽症者をいかに治療につなげるかが病床逼迫の対策になるという指摘が医療関係者からも相次いでいます。
 ところが、有症状の患者が検査を受けてから保健所への発生届までに一日から二日掛かる。さらに、保健所の業務が逼迫している下、患者への連絡は発生届から更に日を要して一週間程度掛かったという事例も少なくないわけですね。その間、患者が医療の管理下にあるかどうかが問われている。在宅死を絶対に出さないという手だてが必要です。
 東京都医師会は会見で、発生届から保健所が介入するまで、届出をした医療機関が、発生届を出した医療機関が在宅で管理をするということを呼びかけています。私、これ是非検討していただきたい。
 それで、こういうことを進めていく上でも、感染爆発の下で、やはり保健所に患者の管理を担わせるということの矛盾、これも噴出しているんですよ。今まさに災害時なんです。診療報酬上の誘導だけでなくて、東京都医師会が言っているようなやり方をやっぱり直接的に行政が働きかけて、在宅でやっぱり医療が受けられるような体制つくっていくことが必要だというふうに思います。
 そのためにも、やっぱり医政サイドなど、自治体も、保健所だけでなく、公衆衛生だけでなく、医政サイドなどが、医療提供体制つくっている部局が積極的に取り組んでいくと、政府としてそういう呼びかけ必要だと思いますが、いかがでしょうか。
○大臣政務官(こやり隆史君) これはまさに委員御指摘のとおり、地域における医療体制を確立していくことは極めて重要でありますし、そのためには、行政機関が先頭に立って、各地域における医師会等の御意見をまとめながら体制をつくっていくということが重要でございます。
 委員御質問の中にもございました、都道府県庁あるいは保健所が医療機関等に働きかけて、協力を得た上で委託により健康観察あるいは往診等を行っている体制が、これは東京都だけではなくて、徐々に構築をされ始めているというふうに認識をしております。
 国といたしましても、こうした体制の構築に資するために、例えばこうした委託費として払われる診療費につきましては、包括交付金の支援の対象に含めるということを明示をして、資金的な支援をしているところでございます。
 引き続き、委員御指摘のとおり、自治体も、医師会だけではなくて、自治体も中心になりながら地域における医療体制を構築していくということは大事でございますし、厚労省といたしましても、都道府県を始め自治体と密接な協力の下、その体制構築に努めてまいりたいというふうに考えております。
○田村智子君 最後に、検査についてお聞きします。
 十二日、分科会が政府に提出した提言では、検査陽性者を確認した際には、医師や健康管理者は、保健所の判断がなくても更に濃厚接触の可能性のある者に検査を促すこととあり、西村大臣御自身も、広く検査をということを繰り返し言われています。ところが、同居家族でさえ、保健所から連絡がなく、自ら医療機関で検査を受けたら自費検査になったと、いまだにこんな事例を相次いで聞くわけです。
 濃厚接触者、それに準ずる接触者と思われる場合、医師の判断で保険医療機関で検査ができるはずです。だけど、保健所の判断がないから自費扱い、こういう対応が多い。その背景には、審査支払機関が医学的妥当性について厳しく査定して、返戻、差戻しをやっている。例えば、クラスターが発生した老健施設、院内感染を収束させるために感染の可能性がある者に対して複数回広く検査した。ところが、検査をした医療機関が保険請求すると、審査支払機関から全件差し戻されたんですよ。全部について医学的判断を書けと言われた。こんな事例が幾つも私のところに来ています。
 保険請求認められなければ、一件で一万数千円、全て医療機関が持ち出しになってしまう。これが何件も何件もとなれば経営が圧迫されるわけですね。保健所が判断していない場合、慎重な対応にならざるを得ないということが生じているんですよ。こんなことやっている場合じゃないんです。
 これ、査定しないと。もう濃厚接触あるいはその可能性があると判断したら検査していい、査定はされない、明言していただきたい。これだけ答弁いただいて、終わりたいと思います。
○大臣政務官(こやり隆史君) 検査でございます。感染症法上の位置付けはもう委員御指摘のとおりだと思いますけれども、特に感染拡大地域においては必要な検査を迅速に行える体制をつくるということが大事でありまして、柔軟な対応を要請しているところでございます。
 御指摘にもありました、同居者や同僚に陽性者が確認されたことから自分が濃厚接触者の可能性があるとの申出に対しまして、事前の取決めに基づいて医療機関が保健所に代わって検査を実施している自治体、これももう既にございます。こうしたことを六月の事務連絡では発出しておりますけれども、改めて今月の十三日に、保健所と行政検査の委託契約を締結する医療機関に対しまして、医師が陽性と診断した者の同居家族などの濃厚接触の可能性がある者に対してなるべく検査を実施するよう、改めて周知を図っているところでございます。
○田村智子君 終わります。


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