日本共産党の田村智子議員は17日の参院内閣委員会で、「Go To トラベル」事業の一時停止をめぐる政府の新型コロナウイルス感染症対応を批判し、「Go Toはいったん取りやめ、飲食業、観光業などの事業者を直接支援する制度に抜本的転換を」と迫りました。
田村氏は、政府が同事業の全国的一時停止の期間を28日~来年1月11日までとしていることについて、「行動変容の効果は10日から2週間後にあらわれる。年末年始の事を考えれば一刻の猶予なく人の移動を減らすことが求められる」と追及しました。
西村康稔経済再生担当相は、「人の接触機会を減らさないと感染を抑えられない地域が出てきている」と認める一方で、「分科会からの提言を踏まえ、28日から停止とした」としか答えませんでした。
田村氏は、同事業が専門家・医療関係者から感染拡大につながるとの指摘が相次いでいると紹介。「政府は一貫して『感染拡大につながっていない』という立場を取ってきたが、全国で一時停止するのは(同事業が)感染拡大に影響を与えたと認めるということか」とただしました。西村担当相は、同事業によって「全国一律に感染が増えたわけではない」などと強弁しました。
田村氏は「『第3波』のもとで、医療を守る、事業と雇用を守る、ここに力を尽くせ」と強く迫り、そのために、「7兆円の予備費を直ちに動かす政治決断をすべきだ」と訴えました。
2020年12月18日(金)
【第203回国会 参議院 内閣委員会 閉会後第1号 令和2年12月17日】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
今月十一日、我が党は、新型コロナ第三波から医療、暮らし、雇用を守る緊急要請を菅総理宛てに行いました。この日は分科会がステージ三相当地域でのGoTo中止を提言した日でもあり、西村大臣には大変多忙な中、対応いただいたことには感謝いたしますが、この分科会の提言や年末年始の医療体制を指摘して直ちにGoToを止める決断をと強く求めたことに対して、週明けの感染状況を見てという大臣の言葉には、正直言ってもうどうしたらいいんだと頭を抱えるような思いでした。
その後、知事からの申請、申出で東京全域と名古屋市が対象外となり、一昨日やっと全国的に一時停止を決めましたけれども、その期間は年末二十八日から一月十一日までなんですね。
行動変容の効果は十日から二週間後に表れるという。年末年始のことを考えれば、一刻の猶予なく接触の機会を減らす、人の移動を減らす、これが求められているんじゃないでしょうか、大臣。
○国務大臣(西村康稔君) まさに御指摘のように、人の接触機会を減らさないと感染拡大を抑えられない、そういう地域が出てきているわけでありまして、分科会からも、このステージ三相当の対策が必要となる地域についてGoToトラベルの一時停止ということで、私ども、今お話ありましたように、札幌、大阪に続いて東京、名古屋というふうに一時停止などの措置を講じてきたところであります。
その上で、分科会からは、年末年始を静かに過ごす、こういった提言をいただいたものですから、それも踏まえ、年末年始は企業の多くも休みになりますので、この機会を捉えて接触機会を削減するということで、二十八日から全国一斉の停止ということを行ったわけであります。
感染状況を見ながらと申し上げたのは、それぞれの知事と病床の状況や感染の状況を確認し、また知事の側でも市町村や事業者との調整もありますので、そういったことを頭に置きながらその時点では申し上げたわけですけれども、知事も、苦渋の選択もされた知事もおられます。やはり観光事業の皆さんのことを考えながら、苦渋の選択、私どもも苦渋の選択でありますけれども、こういった対応を取らせていただいています。
その上で、営業時間の短縮も、これも飲食店の皆さんには大変厳しい状況になりますけれども、このこともそれぞれの知事からお願いをして、一月十一日まで延長したところもございます。
その意味で、この間、強い措置をとることによって人との接触機会を削減し、何としても減少傾向転じていくように全力を挙げていきたいというふうに考えております。
○田村智子君 静かな年末年始のためには今なんですよ、今。
GoToトラベルには、専門家、医療関係者から、感染拡大につながるという指摘が相次いでいます。GoTo利用者は非利用者に比べ新型コロナ感染症を疑わせる症状の報告が二倍であったという東京大学の研究も注目されました。しかし、政府は一貫して感染拡大にはつながっていないという立場を取ってこられた。
ただ、今回、全国で一時停止をするということは、直接的であれ間接的であれGoToトラベルは感染拡大に影響を与える、このことを認めるということですか。
○国務大臣(西村康稔君) 分科会の専門家からも、感染が拡大しているステージ三相当の地域に、対策が必要となる地域については一時停止ということを提言をいただいております。全国一律に停止ということを言われているわけではございません。
ただ、年末年始を静かに過ごすという御提言もありますし、私ども、それぞれの地域、ステージ三相当の対策が必要となっている地域、何としても、これから年末にかけて、そして年末年始で、含めてですね、この期間で感染拡大を防いでいく、感染を減少傾向にさせていく、そのために年末年始の全国一律の停止をしたわけであります。
感染が出ていない県からすると、その県内で使うようなGoToトラベルも停止されてしまうわけですので、ある意味でそこまでやるのかという声もあるかと思いますが、知事、知事会も全体として感謝申し上げるということでありますし、中川医師会長やそれから尾身分科会会長からも評価する旨言われているところであります。
私ども、何としても、この一月の十一日までの間、年末にかけて、そしてこの機会を捉まえて減少傾向にさせていくということであります。
○田村智子君 これ、感染拡大させていないなんてエビデンスが逆にないと思うんですよね、私は。
元々、GoToキャンペーンは感染収束してからの事業だったはずなんですよ。感染の波が続く下で固執をすれば、人の動きが活発になる、人との接触の機会が増える、それは感染拡大の要因となる。こんな感染症対策の基本中の基本を認めないとしたら、これは科学の軽視どころじゃない、科学の否定ですよ。しかも、感染が拡大してからGoToトラベルの限定的な中止、これでは事業者の混乱も広がるんですよ。
先ほどから指摘されています。本当にいつまでこんなことを繰り返すのかということが問われているんじゃないでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君) 私ども、専門家にも問題提起をさせていただいております。なぜ北陸地方でこれだけ観光客がGoToを使って多くの方が訪れているのに石川県や福井県や富山県で感染が増えないのか、このことを専門家の皆さんにも分析をお願いしております。GoToトラベルによって全国一律に感染が増えたわけではないわけであります。
もちろん、最近は感染が全体的に広がってきておりますから、これは様々な分析がされております。寒さによることも言われておりますし、それから、当然、感染を拡大している地域との往来によって広がることは、当然このレベルになってくるとそれは可能性は高まるわけでありますので、このステージ三の地域、拡大が広がった地域を何としても抑えるということが大事でありますし、その地域との往来を、リスクが取れない場合はリスクが高いということも認識してもらって、それは慎重にやってもらうということであります。
専門家の皆さんの提言や御意見をしっかりと受け止めて私ども対応してきているということであります。
○田村智子君 それでは混乱は収まらないですよ。
全国一律をやめろと、私たち何度も提案してきました。GoTo一旦取りやめて、飲食、観光などの事業者を直接支援する制度へと抜本的に変えると。それから、第三波の下で医療を守る、事業と雇用を守る、そのために七兆円の予備費を直ちに動かすと、こういうことをずっと求めているんですよ。何でその政治決断ができないのか。
波が繰り返されて、事業者が混乱に陥ると。感染の波がまたどんどん広がっていくと。異常ですよ、こんなこと繰り返していたら。しかも、予備費はGoToトラベルの積み増し、これはやるんですよ。
この第三波の感染急増のさなか、驚いたのは十二月八日に閣議決定された総合経済対策、ポストコロナのオンパレード、第三波の危機感はかけらもない。持続化給付金、家賃支援給付金は一月十五日申請締切りで終了、雇用調整助成金のコロナ特例は二月末で段階的縮減。
どうして第三波のさなかに事業と雇用を支える柱となってきた政策の打切りや縮小を決めてしまうんですか、大臣。
○国務大臣(西村康稔君) 厳しい状況にある事業者の皆さんや、そういう状況にある国民の皆さんの雇用、生活、事業、これをしっかりと支えていくということも大きな柱となっております。
御指摘の持続化給付金、それから家賃支援給付金、これについては、緊急事態宣言の四月、五月に、言わば多くの事業者に人為的に経済を止めていただいて、極めて厳しい状況になる中で講じてきたものであります。
持続化給付金は算定上一年分の計算をして支給をしておりますし、家賃支援金も六か月分を想定して幅広い業種への支援というふうに講じてきているところであります。事務的には一月末までの書類提出を認めるなど、柔軟な対応を行ってきているところでありますけれども、あわせて、飲食店の皆さんには、大変厳しい今回の休業、時間短縮の要請もありますので、月額換算で百二十万円までの協力金、これを国から交付金でしっかりと支援していく、こういったこと。
それから、当然、無利子無担保の融資もそうですし、中小企業の皆さんには最大一億円の支援も今回用意をしているところであります。さらには、雇調金の特例措置の延長、それから出向元、出向先のこうした企業の双方への助成金の創設、またトライアル雇用の創設など、雇用を守る、こうした施策も盛り込んでいるところであります。
あわせて、予備費でも、一人親世帯、厳しい世帯にある皆様方への支援、これも年内に行うべく、この予備費を活用して対応したいというふうに考えているところであります。
○田村智子君 民間保険会社の調査では、中小企業で最も利用された支援策は圧倒的に持続化給付金で、約六割に達すると。東京商工リサーチの調査でも、約半数の中小企業が持続化給付金を利用していると。
融資も必要ですよ。だけど、この冬の第三波のさなかに国の支援策の打切りを発表するなんて、私、あり得ないんですよ。今の説明だって今年の支援の分なんですよ、持続化給付金って。年末の資金繰り、来年事業が続けられるかどうか、これが中小事業者の叫びじゃないですか。そのときに何で打切りという方針を示すのかなんですよ。これ再考いただきたい。持続化給付金、家賃支援金の継続と二度目の支給、雇用調整助成金の特例措置の継続、もう一度考えていただきたい。強く求めておきます。
その上で、飲食業への時短要請に対する協力金の支給、これは急がれていますのでお聞きします。
補正予算で地方創生臨時交付金を一・五兆円積み増すとしていますけれども、これは時短営業などへの協力金としての活用を見込んでいるのでしょうか。
○政府参考人(長谷川周夫君) 十二月八日に閣議決定されました国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策におきましては、地方創生臨時交付金を一・五兆円拡充することとし、これを盛り込んだ第三次補正予算案が十二月十五日に閣議決定されたところでございます。
この一・五兆円のうち二千億円を営業時間短縮要請等に係る協力金等の支援のための即時対応分とすることを予定しております。制度の詳細につきましては、今後、関係省庁と調整を進めてまいります。
○田村智子君 昨日レクで確認をいたしましたら、この一・五兆円のうち協力金として使えるのは二千億円だというんですね。これ少な過ぎますよ、少な過ぎる。今、営業時間の短縮要請は全国に広がっています。協力金に使えるように今からその枠を広げないと、この年末年始ですからね、時短要求でずっとお金動かさなきゃいけないのは。自治体が協力金出せるように今からこの枠広げるということを是非表明していただきたい。
そしてまた、協力金の支給額見てみますと、東京都では百万円、北海道は札幌市すすきの地区に限定していて三十万円など、自治体間で大きな格差があります。財政力の弱い自治体はそもそも協力金が出せないというところもある。
地域の経済を潰さない、そのためには、国の単価、最大一日当たり二万円、年末年始のみ最大四万円としているんですけれども、これ少なくとも倍の水準に大きく引き上げる。そして、地方負担分二割というふうにしているんですけれども、これも見直して、財政力関係なくどの自治体もちゃんとお金出せるように国が十割負担する。こういうこと必要となると思いますが、どうですか。
○国務大臣(西村康稔君) この地方創生臨時交付金を活用したそれぞれの地域が協力金を支給をすること、是非この仕組みを活用して多くの事業者の皆さんが時間短縮に応じていただけるように私どもも取り組んでいるところであります。
それぞれの地域によって当然家賃とか人件費とかも違いますので、金額は変わってまいります。私ども、年末年始はやはり書き入れ時、本来なら多くのお客さんが来られる時期でありますので、その意味を込めまして月額換算最大百二十万円ということで、これ全国の平均の家賃が数十万円、まあいろんな調査がありますので、ざっくり言って月額数十万円程度ですので、かなりの部分をカバーできると。また、人件費については、雇用調整助成金もパート、アルバイトの方も含めて出せますので、中小企業の皆さんには一〇〇%出せますので、そういったことから勘案してこの金額を私ども設定をしたところであります。
そして、既に今年、もう既にある一次、二次補正での交付金で五百億円を確保しておりまして、そして今回新たに三次補正でプラス二千億円ということであります。私どもこれで対応できるものと思っておりますが、もちろん予備費もありますので、臨機応変に対応していきたいというふうに考えております。
○田村智子君 こういう額じゃ全然やっていけないって、東京だって百万で本当にできるのかって事態ですから、これ、今からちゃんとお金準備しているから協力金どの自治体も出してねというぐらいの、こっちの旗を振るべきなんですよ。強く求めておきます。
医療機関への支援については、十二月一日、緊急包括支援交付金が使いにくいということを具体に指摘をして、医療従事者への直接の支援となる減収補填、これ強く求めました。本当に一日も早く決断してください。
その上で、医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業について聞きます。
厚生労働省の例示は極めて限定的なので、日本医師会が厚労省と協議をして、診療体制維持に資する経費が幅広く支援対象となることが明確になったと十一月二十五日に会見で述べています。厚労省に確認したところ、この日医の発表内容と厚労省の考えにそごはないということでした。自治体によっては厚労省が出した文書が全てという対応があると聞きます。そごがないというのなら、文書で全自治体に周知すべきではないですか。
○政府参考人(間隆一郎君) ただいま委員から御指摘のありました医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業につきましては、従前から勤務している者や通常の医療を行う者に係る人件費は対象外でございますけれども、補助金の目的に合致する限り、院内等での感染拡大を防ぎながら地域で求められる医療を提供するための診療体制確保等に要する費用については幅広く対象とするということはこれまでもパンフレット等でお知らせしてきたところでございます。
その上で、ただいま委員の御指摘のありました日本医師会の文書につきましては、個別の事例ごとに、目的に合致している場合には補助対象となり得る経費の具体例を示されたものと承知しておりまして、私どもの認識と異なることはございません。今後、こうしたものについて、文書の発出についても検討したいと思います。
○田村智子君 これ、医療機関からの申請、原則一回なんですね。既に狭い範囲で申請した医療機関の再度の申請、これ、東京保険医協会などが要望をしています。厚労省は、自治体からの問合せがあれば変更申請を柔軟に認めても構わないと答えているということですけれども、それでは不十分です。変更申請を柔軟に認めても差し支えない、このことも含めて、医療機関が困らないよう自治体への周知に努めていただきたいと思います。
以上で新型コロナの質問を終わりますので、西村大臣と厚労省の方、御退席いただいて構いません。
○委員長(森屋宏君) 御退席いただいて結構です。
○田村智子君 それでは、学術会議の問題についてお聞きします。
十一月十七日の内閣委員会で、官邸による日本学術会議への人事介入は二〇一六年夏、二〇一八年夏の補欠人事から始まったのではないかと質問し、補欠推薦が見送られた経緯が分かる文書の提出を求めたところ、先週、学術会議選考委員会の審議概要メモが提出されました。資料でも配付をしています。
平成二十八年、二〇一六年七月十四日、第二十三期の第九回選考委員会、定年となる三人の後任について推薦順位を付けて各二名を決定しています。その上で、なお、本委員会後、事務局において、任命権者が内閣総理大臣であり、総理に推薦する関係で、官邸に経緯説明に行く予定ですとあります。
八月二十四日、第十回選考委員会では、事務局から、この説明の結果、官房副長官からの回答が報告されています。どのような内容か、また、この官房副長官とは杉田氏のことなのか、お答えください。
○政府参考人(福井仁史君) 日本学術会議事務局長でございます。お答えをさせていただきます。
御質問の平成二十八年八月二十四日、第十回選考委員会の審議参考メモ、これを読みますと、当時の選考委員会の委員長、これは当時の会長の大西隆会長御自身でございますが、この委員長から、事務局長から受けた報告ということを説明しております。これを読みますと、事務局長から行いました任命権者側への説明というのは、平成二十八年十月までに三人の会員の欠員が生じることから、補欠一人に対して候補者二人の名簿に推薦順位を付して任命権者側に御説明をしたということでございます。
これに対しまして、説明の後ということでございますが、任命権者側の方から、三人の補欠人事のうち二人については推薦順位を入れ替えるよう、一人については意見なしとの回答があったと、この報告を受けたと委員長から御説明しているところでございます。
なお、御指摘の官房副長官につきましては、この文書にははっきり書かれておりません。その後、大西当時の委員長から、改めて私も官邸に行って官房副長官と話をしてきたという記述もあるんでございますが、委員に提出いたしましたほかの文書を見ますと、この時期、大西会長が杉田官房副長官とお会いしていること、これは明らかになっているところでございます。
以上でございます。
○田村智子君 まあ事実上、杉田官房副長官とお認めになったということですね。
杉田官房副長官が二人について推薦名簿を変更しろと回答した。この事態を報告するに当たり、当時の大西会長は官邸への事前説明の経緯についても報告しています。
前々回、補欠一名に対し候補者一名という名簿を官房副長官に説明したところ、複数名の候補者の提示を求められたとあります。この前々回というのは何年何月の補欠人事のことですか。
○政府参考人(福井仁史君) この審議参考メモにおける前々回と申しておりますのは、恐らく、平成二十七年に生じました会員一人の欠員に関しまして、平成二十七年の十月総会の承認を得て推薦されまして、二十七年十一月に任命された補欠人事のことであろうと認識しております。
○田村智子君 平成二十七年、つまり二〇一五年、安倍政権の下で、任命すべき人数よりも多い名簿での事前説明を官房副長官が要求するようになったということです。
八月二十四日の審議概要に戻ります。
大西会長は、改めて私も官邸に行って官房副長官と話をしてきたが、理由については明言しないとのことであった。次回以降について、官邸側は推薦順位を付けない名簿の提示を期待しているなど報告しています。これに対し、委員からは、日学の独立性とは人事の独立性でもある、あるいは、理由を明言しないことが理解できない、また、重要な問題が起こったと認識しているなど厳しい意見が相次ぎ、補欠人事は三人とも見送りになりました。この審議の中では、女性枠を尊重して選考したが、その者が蹴られたということは、今後は女性枠には協力できないという判断でよいかという質問に、女性枠を強調した人物と今回順位を変えてきた人物は違う、今後は任命権者の裁量権をどのように満足させるかが課題だと思っていると大西会長は答えています。任命権者の裁量権という前代未聞の事態に学術会議が直面したことが分かります。
次に、平成三十年、二〇一八年八月二十二日、第二十四期の選考委員会第三回議事要旨。今度は、選考委員会が補欠推薦名簿を確認する前に事務局による事前説明が行われたことが分かります。
選考委員会への推薦理由の説明の後で、事務局はどのような報告を行っていますか。
○政府参考人(福井仁史君) これも選考委員会の議事要旨を見ますと、事務局からは、平成三十年十月までの間に生じました三人の会員の欠員に関する補欠人事について、会員の任命は内閣総理大臣発令であるため、今後の手続が円滑に進むよう、任命権者側に対して候補者の現状について説明を行ったと報告しております。その後、任命権者側からは、三人の補欠人事のうち一人について推薦順位を入れ替えるべきとの発言があったということ、その理由については特段の説明は受けていないとの報告をしていると承知しております。
○田村智子君 選考委員会が名簿を決定する前に事務局が官邸に説明した。しかも、一名について原案の推薦順位の入替え要求があった。委員からは、困惑している、遺憾だなど意見が相次ぎ、議論は次回に持ち越され、九月十二日、第四回選考委員会では当時の山極会長が、こういったことが世間に知られると大きな騒ぎになりかねないとして、この一名については補欠補充を見送ることとなった。この選考委員会で山極会長は、学術会議として、事前説明の必要性の有無、在り方を含め、日本学術会議の考え方を改めて整理するとともに、会長としても学術会議の考え方を丁寧に説明し、理解を求める努力を続けたいと思っているとも表明されています。官房副長官と学術会議に強い緊張関係が生じたことが分かります。
ここで別の資料を見てみたいんです。学術会議事務局と法制局との協議の経緯を示す資料、これも先週提出されました。ここに私、置いています。
協議のスタートは、二〇一八年九月五日、補欠人事をめぐる官邸との緊張が強まっているさなかです。二回目と思われる九月二十日には内閣法制局の見解を求めることとした経緯についてという文書が出てきます。ここには、二〇一八年補欠人事について、各部と任命権者との間で意見の隔たりが生じたため、この会員の補欠候補者については直近の十月総会での承認が見送られることとなったとの説明があり、その上で、法制局の見解を伺いたいとして、①補欠会員の候補者一人について内閣総理大臣が任命しないことが許容されるか否か、②推薦順位が下位の者を任命することが許容されるか否かとあります。
つまり、法制局との協議は、補欠人事で杉田官房副長官が理由も付さずに順位の入替えを要求した、これがきっかけだったのではありませんか。
○政府参考人(福井仁史君) 当時の状況でございますけれども、二〇一七年、その前年の平成二十九年の半数改選後、平成三十年十月の総会までの間に、定年により先ほど申し上げました三人の欠員が生じることとなりました。その後任となる会員を選考、任命することが必要となりましたが、先ほどございましたけれども、このうち一人については、平成三十年十月総会への承認提案を行わなかったことがあったと承知しております。
御指摘の法制局との協議は、以上のような経緯、それから任命権者側から定数以上の推薦を求められる可能性があったことなどから、その後の推薦作業のため、日本学術会議事務局として、従来からの推薦と任命の関係の法的整理を確認するために行ったものであると承知しております。
○田村智子君 これはもう私が指摘したようにしか読めないんですよ。官房副長官による人事介入が繰り返され、任命拒否が許容されるか否か、法制局に見解を求めた。つまりは、任命拒否ができるという一貫した法解釈などなかった、だから法制局との協議が必要だったんじゃないんですか。
○政府参考人(福井仁史君) 日本学術会議会員の任命につきましては、憲法第十五条第一項において、公務員の選定は国民固有の権利であると規定されていること、これからしますと、任命権者たる内閣総理大臣が国民に対し責任を負えるものである必要があり、したがって、学術会議による会員候補者の推薦を十分尊重しつつも、任命権者たる内閣総理大臣が必ず推薦のとおり任命しなければならないわけではない。このことは、昭和五十八年の選挙制が廃止され任命制となったときからの内閣法制局の了解を得ました政府としての一貫した考え方であると承知しております。
平成三十年の文書は、こうした考え方を整理して内閣法制局に確認したものと認識しております。
○田村智子君 お答えになっていないですよ、それじゃ。その平成三十年十一月十三日の文書の最初の法制局との協議で、任命拒否が許容されるか否かと聞いているんですもの、一貫した考えであるはずがないじゃないですか。
この九月五日の協議のときには、昭和五十八年の答弁との関係という文書も出てきます。そこには、原則としては、答弁で述べられているとおり、日本学術会議が選考し、推薦した候補者がそのまま内閣総理大臣により会員に任命されるという運用がなされることを想定しており、制度が施行されて以来、そのように運用してきたところであるとも書いてあるんです。
法の運用とは、法の解釈に基づく行為ですよ。その法の運用を変える、法解釈を変える、その重大な協議が学術会議会長も知らないところで、事務局と法制局が何度も行ったんです。提出された資料では、九月五日、二十日、二十七、十月四日、九日、十日、十一日、十六日、十九日、二十二日、二十四日、二十五日、三十日、三十一日には一日で四回、十一月二日、六日、十三日、何度も何度も修文して、今回の六人、任命拒否の法的根拠とされる平成三十年十一月十三日の文書に練り上げられていったと、このことが分かるわけです。この資料には抜けもあるんじゃないかという疑問があります。
この場でただしたいのは、もう時間なんですけど、九月二十日以降の文書では全て黒塗りの部分も含まれているんですよ。法の解釈、運用に関する文書で何で黒塗りが必要なのか。これ、昨日、ちょっともう回答を求めました。そうしたら、任命権者の考え方につき、誤解を招き得る記述などで黒塗りにしているという回答だったんですね。とんでもないですよ。任命権者の違法な人事介入を問題としているときに、こんな法解釈に関わる文書での黒塗りなんて許されないですよ。
本委員会に改めて要求いたします。
この今回提出された法制局との合い議の資料ですけれども、黒塗り部分を外してもう一度提出いただくこと、そしてまた、人事介入の張本人である杉田官房副長官の参考人招致を改めて要求いたします。
○委員長(森屋宏君) 後刻理事会において協議をいたします。
○田村智子君 終わります。