国会会議録

国会会議録
学術会議任命拒否/法趣旨わい曲/参院内閣委質疑詳報

 17日の参院内閣委員会で、菅義偉首相が日本学術会議の会員の任命を拒否した問題をめぐり、任命拒否の理由と根拠について追及した日本共産党の田村智子議員。任命拒否は、日本学術会議法の本来の趣旨をわい曲したもので、法治主義を破壊する問題だと主張しました。

田村氏 首相に一任していない

学術会議事務局長 (任命されない時の対応)内規にない

写真

(写真)質問する田村智子副委員長(右端)=17日、参院内閣委

 田村氏は、政府がこの間、任命拒否が許される場合について「個々の法律ごとの制度に則して、それぞれの解釈に委ねられる」(13日、衆院内閣委員会)と答弁していることを示し、日本学術会議法に定める会議の独立性にてらして、任命拒否が可能な場合を質問しました。

「形式的任命」

 近藤正春法制局長官 任命権者たる内閣総理大臣が国民に対する責任において具体的に判断すべき人事に関する事柄だ。事柄の性質上、明確に答えることは困難だ。

 田村 それでは首相に一任するようなものだ。

 田村氏は、1969年に高辻正己法制局長官(当時)が国立大学学長の任命拒否について「明らかに法の定める大学の目的に照らして不適当と認められる」場合と答弁し、九州大学の学長任命をめぐる裁判(九大・井上事件)では「申出が明らかに違法無効と客観的に認められる場合」と判示もされていることを指摘。その考えが示された後、83年に中曽根康弘首相(当時)が日本学術会議法の審議で「形式的任命」と答弁していると述べ、これらは「首相一任ではない」と主張しました。

 田村氏は改めて、任命がどういう場合に「国民に責任が負えない場合」となるか答弁を求めました。

 加藤勝信官房長官 会議の設置目的、および職務などに照らし、任命権者において個別に判断するべき事項だ。人事に関する事柄で、示すことは難しい。

 田村 とんでもない。どういう場合に国民に責任を負えないか、何一つ言えない。

 加藤氏の答弁は、首相に全権を委任する驚くべき答弁です。

一貫した考え方

 田村氏は「(学術会議に)推薦された方々を必ず任命しなければならないわけではない」という解釈が83年の学術会議法改定以後の一貫した考え方だというのであれば、任命されなかった場合の対応について、日本学術会議法、会則、内規ではどう定めているかを質問しました。

 福井仁史日本学術会議事務局長 これまで任命されなかった例がないので、学術会議の内規にはとくにない。

 田村 “一貫した考え方”なのに、対応策もない。首相の任命は形式的であり、推薦されたものは拒否をしない。これが一貫した法解釈だからだ。

 田村氏は、6人を任命することがどうして国民に責任を負えないことになるのか、明らかな理由を国民と国会に示すべきだと主張しました。

 田村氏は、中曽根元首相は明確に「学問の自由」の保障、学術会議の独立性の保障の観点から「形式的任命」と答弁していると指摘。同答弁について、加藤氏が「40年前だから、趣旨を把握するのは難しい」と述べたことを批判しました。

 田村 政権によってコロコロと法の解釈が変わる。過去の国会の答弁を軽んずる。無視をする。都合の悪いものは趣旨がわからないという。民主主義にかかわる問題です。学術会議だけの問題ではない。

 田村氏は、任命拒否は法治主義の破壊だと主張し、任命拒否の撤回を求めました。


2020年11月18日(水)しんぶん赤旗

【2020年11月17日 参院内閣委員会議事録】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。新型コロナ感染症の新規感染者数、重症者数の推移、資料一でもお示ししましたけれども、どちらも高止まりをしたままに第三波が始まっていると私には見えます。分科会の尾身会長は、感染拡大を抑えるのは今が最後のチャンス、これ以上の感染拡大となるとどうしようもなくなるとまで述べられました。ところが、政府からの発信にその緊迫感が伝わってきません。第三波に備えるということを正面に据えた戦略的な政策をはっきりと打ち出すべきではありませんか。

○国務大臣(西村康稔君) お答え申し上げます。私も連日、尾身会長を始め専門家の皆さんとも議論をさせていただいております。情報を共有しながら、まさに七月、八月を上回るような大きな流行となってきておりますので、危機感を強めているところであります。連日、感染拡大が見られます、例えば北海道の鈴木知事あるいは大阪の吉村知事、こういった方々、東京の小池知事あるいは愛知県の大村知事、こういった方々とお会いしたり電話で連絡を取り合いながら、それぞれの地域の感染拡大防止策を連携して取り組んでいるところでございます。特に、昨日は政府対策本部を開催いたしまして、このクラスター対策としてしっかりと取り組んでいくということ、そして、様々な地域で取り組んでいる休業要請あるいは時間短縮などをやる場合の政府としての地方創生臨時交付金を活用しての支援策などもまとめたところでございます。何としてもこの感染を抑えていく、この拡大を抑えていく、そのために都道府県知事とも連携して全力で取り組んでいきたいというふうに考えております。

○田村智子君 これまでの延長線に思えるんですよ。緊急事態宣言という状況にしないために今が最後のチャンスだというふうに言われているわけですよね。そういうときに、西村大臣は十三日の会見で、GoToキャンペーンについて、北海道に行くことを推奨するのかと問われて、活用して旅行するかどうかは国民の判断だとお答えになった。私は、政府の判断が求められていると思いますよ。感染急拡大している、医療の逼迫が進んでいる、少なくとも全国一律というやり方はもう改めるべきではありませんか。

○国務大臣(西村康稔君) このGoToキャンペーンについては、分科会の先生方から、まさにステージ三、ステージ四、こういった目安の数値を示していただいておりまして、ステージ三に当たってくるようであればそうした政策の見直しを求められているところであります。そして、この判断は都道府県知事が、最も事情を通じた、地域の感染状況を通じた知事が総合的に判断をすると。単に数字を機械的に当てはめてするのではなく、知事の判断を尊重するということであります。そうしたことも踏まえて、連日、こうしたそれぞれの感染拡大している知事、特に北海道の鈴木知事とは何度もやり取りをしてきているところであります。知事の御判断、昨日も発言がありましたけれども、感染リスクが避けられない場合はこうした外出など控えていただくようにというようなお話もございました。まずは感染防止策を徹底しながら、そしてGoToキャンペーンを継続するという意思を御表示、示されているところでございます。いずれにしても、今の状況、御指摘のように、感染が拡大してきている状況でありますので、日々こうした数字を見ながら適切に判断をしていきたいというふうに考えております。

○田村智子君 ちょっと答弁を聞けば聞くほどに私は危機感が募ってしまうんですけれども、観光業や飲食業に対する支援策がGoToキャンペーン一辺倒という状況が私おかしいと思うんですよ。トラベルでいえば、小規模事業者が利用できないとか、また観光バスは団体客の予約が入らないから経営は相変わらず苦しいとか、何よりも感染がこれ以上に拡大すればGoToの下でも自粛が広がって、飲食業も観光業も大打撃を受けることになるんですよ。
 地域ごとの取組へと見直す、持続化給付金の複数回の支給、観光業などへの規模の大きい給付制度など、緊急に第三波に備えてやるべきなんじゃないんですか。
 
○国務大臣(西村康稔君) 御指摘のように、大変厳しい状況にある中小の飲食店の皆さん、あるいは観光、旅行の皆さん、こうした方々に対しては、もう既に持続化給付金も活用されている方も多いと思いますし、また今は家賃支援、最大六百万円の家賃支援もございます。それから、継続して休業、従業員の方を休業させなきゃいけないような場合は最大三十三万円まで、解雇しない場合は中小企業の皆さんには十分の十、十割国が助成をするという雇用調整助成金もございます。こういった制度を活用していただきながら何とか踏ん張ってきておられると思います。
 そうした中で、GoToキャンペーンもうまく活用されながら何とか頑張っておられる、そうした皆さんを引き続きしっかりと支援をしていきたいと考えております。予備費もございます。また、今、こうした事情を踏まえて経済対策の取りまとめを行っているところであります。ちゅうちょすることなく、臨機応変にしっかりと支援をしていきたいというふうに考えております。
 
○田村智子君 事態は春よりも深刻だと思うんですよ。重症者の数、見てくださいよ。高止まりのままで増え続けているんですからね。  
 それで、ちょっとこの延長線では駄目だというこの私の訴えが届かないのかなと非常にもどかしさを感じるんですけれども、PCR検査のことについてもお聞きします。
 戦略的なPCR検査、いよいよ求められていて、ホットスポットになり得る場所への大規模・地域集中型検査、医療・介護施設などへの社会的検査、自治体任せじゃなくて、政府が戦略を持って、予算の裏付けもやって、本気で取り組んでほしいんですよ。陽性者の保護、行動追跡のため、保健所の抜本的な人員強化、これも改めて求めます。
 お聞きをしたいのは、青森で百八十人を超える集団感染起きました。これは、症状のある従業員が保健所に相談をしたが検査が受けられなかった、この最初の段階で検査をしていればこれほどの感染拡大にはならなかったとして、県が事案の検証をしているんです。症状があってもすぐに検査が受けられないという事例は都市部でも聞こえてきているんです。これ、検査可能数を拡大したのに、なぜ春と同じ状況が起きているのかです。
 資料の二、日経新聞が新型コロナウイルス感染症の診療・検査医療機関の指定状況とその公表について調査を行い、十一月十二日、報道しています。  これ、ここで検査が受けられるという、そういう医療機関なんですけど、非公表が三十三都道府県なんですよ。どこでそれをやっているかが分からない。原則公開は埼玉県と高知県だけです。高知県の担当者は、患者が直接医療機関にアクセスできることの重要性を地元医師会に丁寧に説明し、理解いただいたとコメントをしています。
 どこで検査受診できるか分からない、これは早期発見、集団感染防止の目詰まりの要因となり得ます。青森の事例などを見ても大変懸念されると思いますが、いかがでしょうか。
 
○政府参考人(佐原康之君) お答えいたします。
 この冬の季節性インフルエンザの流行に備えまして、検査体制、医療提供体制をしっかりと確保し、発熱等の症状がある方が確実に受診していただけるような体制を構築していくことは重要だと考えております。
 このため、従来の仕組みを改めまして、かかりつけ医等の身近な医療機関に直接電話相談し、地域の診療・検査医療機関を受診する仕組みを導入しており、各都道府県においては、十一月十日時点で約二万四千の医療機関を診療・検査医療機関として指定しているところであります。  
 この診療・検査医療機関を公表するかどうかにつきましては、地域の医師会等で協議、合意の上、各自治体で判断することとしておりますけれども、非公表とした場合であっても、医療機関名や対応時間等をかかりつけ医等の身近な医療機関や受診相談センターの間で随時共有しておくことで、発熱患者の皆さんが、こういったかかりつけ医や受診相談センターは相談を受けた際に適切な医療機関を速やかに案内できる体制を取ることとしているところでございます。
 このため、発熱等の症状が生じた場合には、かかりつけ医等の身近な医療機関や受診相談センターに電話で相談いただければ、適切な医療機関の案内を受けて受診いただけるものと認識しております。
 
○田村智子君 これ、検査できるところに直接電話してというんだったら分かるんですけど、ワンクッション置くと遅れるというのが春の経験なんですよね。ただ、発熱患者が殺到したり風評被害で受診控えを招いたりすることの懸念が医療機関に根強いと、だから公表してほしくないと、これは今の経営実態から見れば当然とも言えるんですよ。だから医療機関の減収補填が必要なんです。いつまでゼロ回答なのかということなんですよ。  これは、感染者が急増している下で、検査・医療体制整備の障害にもなっていると思いますが、いかがですか。

○大臣政務官(こやり隆史君) お答え申し上げます。

 先ほど答弁いたしましたように、検査・医療提供体制に関しましては、これまでの仕組みを改めまして、発熱患者等に対して診療や検査を行う医療機関約二万四千を指定したところでございます。  また、新型コロナウイルス感染症への対応や、御指摘の患者数の減少による収入の減少などに対応するために、こうした発熱患者等を対象とした外来体制を取る医療機関への支援を含めまして、補正予算、予備費を合わせてこれまで三兆円の措置を行うとともに、これまで類例のない最大減収十二か月分を上限とする無利子無担保等の危機対応融資も実施してきたところでございます。  
 まずは、これらの支援を医療現場の皆様に速やかにお届けすることが大事だというふうに思っております。その上で、感染状況や地域医療の実態等を踏まえまして、類型ごとの経営状況も把握しながら、国民の皆様に必要な地域医療が確保できるように、必要な取組、支援を行ってまいりたいというふうに考えております。
 
○田村智子君 それでは遅いんです。加藤官房長官、もう政治決断ですよ、これは。他の業種との関係で減収補填できないと、そんな説明もあるんだけど、そんなこと言っている場合じゃないでしょう。医療機関の減収補填に踏み出さなかったら、検査の支障にもなる、治療の支障にもなる、明らかじゃないですか。決断してください。

○国務大臣(加藤勝信君) まず、体制整備については、今回、秋冬にかけて季節性インフルエンザの流行、これを見据えてこれまでの仕組みを改めて、電話で身近な医療機関に直接相談し、発熱患者などに対して診療や検査を行う地域の医療機関を受診する仕組みの整備について都道府県とともに取り組んできたところであります。  今公表云々という話が別途ありますけれども、その結果、全国で二万四千を超える医療機関を発熱患者などに対して診療や検査を行う医療機関として指定がなされ、体制が整備されつつあるところだと思います。その上で、医療機関においては、新型コロナウイルス感染症への対応や患者数の減少による収入の減少などに対応するため、こうした発熱患者等を対象とした外来体制を取る医療機関への支援も含め、補正予算と予備費と合わせてこれまで三兆円の措置を既に行っているところでもあります。また、先ほど厚労省から話がありましたが、最大減収十二か月分を上限とする無利子無担保等の危機対応融資も実施をしているところでありますので、まず、こうした支援、中には都道府県からまだそうした支援が届いていないという地域もありますので、速やかに届けるよう我々も努力をしていきたいと思いますし、その上において、今後の感染状況や地域医療の実態を踏まえて、また類型ごとの医療機関等の経営状況も把握しながら、本当に国民の皆さんに必要な地域医療が引き続き確保できるよう、必要な取組支援は検討していかなければならないと考えています。

○田村智子君 これまでの減収補填に対するものはないんですよ。是非踏み出してほしい、このことを求めまして、新型コロナについての質問は以上ですので、西村大臣、こやり政務官、ありがとうございました。
 
○田村智子君 日本学術会議についてお聞きします。  
 十一月五日の参議院予算委員会で、菅総理は任命に至らなかった理由を初めて答弁しました。以前は、学術会議が正式の推薦名簿が提出される前に、様々な意見交換の中で内閣府の事務局などと学術会議の会長との間で一定の調整が行われていたと承知しています、一方、今回の任命に当たっては、そうした推薦前の調整が働かず、結果として学術会議から推薦された者の中に任命に至らなかった者が生じたという答弁です。  
 この答弁に対して大西元会長は、二〇一六年春の補欠人事から推薦決定前に選考途中で多めの人数の名簿で説明してほしいと官邸側から求められ、以後、同様の事前説明をしてきたことを説明されています。一方、山極前会長は、今回の半数改選で選考途中の多めの人数での名簿は提出しなかったとお答えになっています。
 官房長官に三点確認します。  推薦前の調整というのは、一つに、二〇一六年から始まったのか。二つに、任命すべき人数よりも多い名簿を官邸に提出させ、説明させることなのか。そして三つ目、今回は百五人よりも多い名簿が事前に提示されなかった、だから任命に至らなかった者が生じたということですか。

○国務大臣(加藤勝信君) 今三点のお話がありました。まず、二〇一六年から始まったものなのかという御質問でありますけれども、これ、総理も答弁をさせていただいておりますけれども、これまで日本学術会議から推薦名簿が提出される前に様々な意見交換が日本学術会議の会長との間で行われ、そのような意見交換を通じて任命に当たっての考え方がすり合わせられたことについて一定の調整と申し上げ、その上で、今回の改選に当たってもこれまでと同様に推薦名簿が提出される前に意見交換が日本学術会議との間で行われたものというふうに答弁をさせていただいているということでありますから、今回の半数改選以前においてもそうした意見交換がなされていたということであります。また、一定の調整については、これについては、これまで日本学術会議から推薦名簿が提出する前に様々な意見交換が日本学術会議の会長との間で行われ、そのような意見交換を通じて任命に当たっての考え方がすり合わせられてきたこと、このことを一定の調整ということを申し上げているわけであります。また、今回の半数改選についてでありますけれども、多く提示されなかったからかということでありますが、これはあくまでも、推薦、任命に当たって、日本学術会議の規定に基づき、日本学術会議に専門分野の枠にとらわれない広い視野に立って総合的、俯瞰的観点からの活動を進めていただけるようにという観点から、任命者である内閣総理大臣が判断をしたということであります。

○田村智子君 大西元会長は、自分が会長になられた直後の改選では求めはなかったとおっしゃっているんですね。二〇一六年からだと明言をされておられます。  
 山極氏は、会長として事前説明はしていないと言われている。学術会議事務局は百五人の名簿を事前に杉田官房長官に見せていると思う、官邸側から何か言われたとの話が伝わってきたが、直接は言われていないとも話しておられますが、事務局に確認いたします。
 
○政府参考人(福井仁史君) まず、大西会長でございますけれども、前回、半数改選時、平成二十九年、これ、大西会長がまさに会長としていろんな機会を通じて意見交換をしたと承知しております。それ以前にも、具体的な時期や内容については申し上げる状況ではございませんけれども、大西会長から様々な機会を通じた意見交換があったのではないかと承知しております。
 山極会長のときでございますが、今回の改選に当たりましても、日本学術会議から推薦名簿を、いわゆる推薦名簿を提出する前に、事務局を介して学術会議の会長とそれから任命権者、この間で意見交換が行われたものでございますが、その中で任命の考え方のすり合わせまでは至らなかったものと承知しております。
 
○田村智子君 いろんな発言聞いていると、違いは、百五人を超える名簿を会長が持っていって説明したかしなかったかと、これが大西元会長と山極前会長のこの違いなんですよ。これしか見受けられないんですよ。  
 しかも、大西元会長は、補欠人事では順位を付けて、半数改選では推薦予定者と有力者を区別して、いずれも多めの人数の名簿を提示したと明らかにしています。そして、二〇一六年夏の補充人事では、官邸から順位を変更するよう求められたが、選考委員会の議論の結果、推薦そのものが見送られた。山極前会長も、二〇一八年夏の補欠人事で、事前に示した名簿に官邸から難色が示された、理由を聞こうとしても杉田官房副長官に来る必要はないと拒否された、その結果、推薦が見送られたと話をされておられます。  
 つまりは、官邸の意向を推薦に反映させようとしたということですね、官房長官。
 
○政府参考人(福井仁史君) まず、済みません、事実関係でございますが、平成二十八年、それから平成三十年、こちらの方に、補欠推薦をするに当たって、どちらも補欠推薦をせずに欠員があったことは事実でございます。(発言する者あり)
 
○国務大臣(加藤勝信君) いや、答えるというか、会長、日本学術会議の会長がどう考えられたかということについて、ちょっと政府として答弁する立場にはないというふうに思います。
 
○田村智子君 それでは、事務局に要求いたします。  二〇一六年のこの夏、二〇一八年の夏、なぜ推薦が見送られたのか。これは選考委員会の記録に保存されているはずですよ。選考を行ってきて、だけど推薦がされなかったんですから。この記録の提出求めます。
 
○政府参考人(福井仁史君) 当時、様々な事情があったようでございますが、その内容を含めまして、詳細につきましては、人事に関することでありますので、お答えを差し控えさせていただきます。
 
○田村智子君 個別の名前は消して構いません。経緯のプロセスです。官邸が推薦名簿に対して介入を行ったかどうかという重大な問題です。  経緯を文書で本委員会に提出すること及び大西隆元会長、山極壽一前会長に参考人として出席いただくことを要求いたします。
 
○委員長(森屋宏君) ただいまの件につきましては、後刻理事会において協議いたします。
 
○田村智子君 官房長官は、日本学術会議の会員は推薦された方々を必ず任命しなければならないわけではない、これが法制局の了解を得た政府の一貫した考え方だと繰り返し答弁されています。  法制局の了解を得たのはいつで、一貫したというのはいつからのことですか。
 
○国務大臣(加藤勝信君) まず、一貫したというのは、昭和五十八年に選挙制が廃止され任命制になったときから一貫した考え方であるということであります。この考え方について日本学術会議事務局が整理した文書、これは平成三十年十一月十五日に内閣法制局の了解を得たものと承知をしておりますが、これは従来の一貫した解釈を確認したものであると承知しております。
 
○田村智子君 十三日、衆議院内閣委員会で、維新の会、足立議員が今の答弁を擁護する立場で法制局長官に質問しています。まるで想定問答集のようなやり取りなんですけれども、国立大学の学長任命についての、一九六九年、高辻法制局長官答弁が日本学術会議についても当てはまるとすればどういう理由かという質問に、近藤長官は次のように答弁されました。資料の三に速記録を付けました。
 個別の法律において、ある行政機関における公務員の人事について、当該行政機関の職務の独立性等に鑑みて、何らかの申出や推薦に基づいて任命するものと規定している場合でも、国民主権の原理との調整の見地から、任命権者が国民に対して責任を負えない場合には任命を拒否することができるというものでございます。このような基本的な考え方は、申出や推薦に基づいて公務員を任命する制度について、私どもとしては共通して当てはまるものと考えております。もちろん、それぞれどういう場合に申出や推薦を拒否することが許容されるかは、まさしく個々の法律ごとの制度に即して、それぞれ解釈に委ねられるものだと考えておりますと。  私はこの答弁は到底受け入れられないのですが、まずは長官の答弁に沿って確認いたします。  
 では、日本学術会議法に定める学術会議の独立性に鑑みて、どういう場合に任命を拒否することが許容されるのですか。
 
○政府特別補佐人(近藤正春君) お答えいたします。  
 委員が今御指摘いただきました私の答弁で最後に申し述べましたとおり、個々の法律ごとにという、解釈ということですが、基本的にはそれはそれぞれを所管される省庁において責任を持って解釈をされていくということだと思っております。
 日本学術会議については、平成三十年に御相談を得たということもあって、大きな枠組みとしましては、あくまでも、日本学術会議法の会員の任命の場合には、あくまで、日本学術会議法上認められている職務の独立性と、公務員の終局的任命権は国民にあるという憲法上の国民主権の原理との調整的見地から判断されるものであり、そうした判断を前提に、任命権者たる内閣総理大臣において国民に対して責任を負えない場合には任命を拒否することができるものと考えております。
 もっとも、具体的にどのような場合に推薦のとおり任命しないことが許容されるかについては、まさしく任命権者たる内閣総理大臣が国民に対する責任において具体的に判断すべき人事に関する事柄であって、事柄の性質上、当局から明確にお答えすることは困難でございます。
 
○田村智子君 それじゃ、内閣総理大臣に一任しているようなものじゃないですか。
 これ、例えば高辻答弁、これ私は是としていませんよ。それでも、国立大学の学長について任命しないのは、当時の高辻法制局長官は、明らかに法の定める大学の目的に照らして不適当と認められる、あるいは気に食わないというようなことで拒否ができるというものではないなど答弁をしています。
 更に言えば、九州大学の学長任命をめぐる一九七三年東京地裁判決、これ確定判決ですけれども、ここでは、申出が明らかに違法無効と客観的に認められる場合、例えば、申出が明白に法定に、法に定めた法定の手続に違背しているとき、あるいは申出のあった者が公務員としての欠格条項に当たるようなときなどは、形式的瑕疵を補正させるために差し戻したり、申出を拒否して申出のあった者を学長等に任用しないことができると言わなければならないが、しからざる限り、その申出に応ずべき義務を負うという判断もなされています。  
 こうした高辻答弁や九大の判例、この後に日本学術会議法の審議で中曽根総理は形式的任命という答弁をした。これらを踏まえて法制局は了としたんでしょう。だったら、これらを踏まえて、日本学術会議において総理の任命拒否が許容されるのはどのような場合なのか。総理大臣一任ではないですよ。どういう場合なのか、どういう場合が国民に対して責任を負えないという場合なのか、ちゃんと説明してください。あなた、重大な答弁したんだから。
 
○政府特別補佐人(近藤正春君) お答えいたします。
 高辻長官の答弁で、今御指摘のような、大学についての発言ですけど、あったことは承知しておりますけど、個々の法律については、先ほど申しましたように、各省庁において責任を持って判断をしていくというのが、これが原則でございます。
 平成三十年の御相談を受けた紙にもその点が書いてあって、七条二項についてどういう考え方かということを内閣府の方でおまとめになっておられます。  それで、やはり、その七条、日本学術会議法七条二項に基づいて、まずはその会員の任命について国民に対して責任を負えるものでなければならないことからすれば、内閣総理大臣に、日本学術会議法十七条による推薦のとおりに任命する義務があるとまでは言えないと考えられる。またさらに、その注の中に、大学の自治についての任命についてと同視することはできないという考え方も示されております。
 あわせて、やはり学術会議法の規定、あるいは過去の制定経緯等、職務の独立性に鑑みて日本学術会議からの推薦を十分に尊重する必要があると考えられると、こういう七条二項に対する内閣府の解釈の考え方が書いてございまして、その整理については私ども正しいということで了とさせていただきまして、まさしくそれを実行上適用していくという作業があとは内閣府の方で行われるというふうに理解しております。
 
○田村智子君 つまり、どういう場合において国民に対して責任が負えないかという判断は法制局としてはもう放棄したと、だけど了としたと。  
 じゃ、どなたかお答えくださいよ、どういう場合が国民に対して責任が負えないという場合なのか。日本学術会議法の定める独立性に鑑みてどういう場合なのか、御説明ください。(発言する者あり)
 
○国務大臣(加藤勝信君) いや、ですから、先ほど法制局長官があったように、どのような場合に推薦のとおりに任命しないことが許されるかについては、日本学術会議法に規定する会議の設置目的及び職務などに照らし、任命権者において個別に判断すべき事項であるというふうに考えているところであります。
 なお、個別に判断すべき事項については、これは人事に関する事柄上、具体的に示すことは難しいということも法制局長官からもお話があったところであります。
 
○委員長(森屋宏君) 速記を止めてください。    〔速記中止〕
○委員長(森屋宏君) じゃ、速記を起こしてください。
 
○田村智子君 それ、とんでもない答弁ですよ。とんでもないですよ。どういう場合が国民に対して責任を負えないのか、何一つ言えないじゃないですか。  じゃ、学術会議事務局にも聞きますよ。それが一貫した考え方で任命拒否があり得るというのが八三年の法改正のときからの考え方というのならば、任命されなかった場合の対応について、日本学術会議法、その会則、内規ではどのように定めているんですか。
 
○政府参考人(福井仁史君) これまで任命されなかった例がございませんので、学術会議の内規には特にその定めがございませんけれども、今後必要に応じて修正していくところかと思っております。
 
○田村智子君 一貫した考え方なんでしょう。なのにないんですよ、対応策も。どういう場合がそうであるかということも答えられない。当たり前ですね。総理の任命は形式的任命であり、推薦された者は拒否はしない、これがこれまでの一貫した法解釈だからですよ。
 憲法十五条一項は、公務員の選定と罷免を国民固有の権利としている。だから、国民の代表である公務員、議員が選挙によって直接国民から選ばれる。そして、他の公務員については、この国民の代表である議会が選定、罷免、勤務条件などを個別の法律に定め、法にのっとって制度がつくられている。  
 日本学術会議法で言えば、選定に関わる事項は、会員の推薦として法と制度にこれは厳密に定められています。総理は推薦に基づき任命する、これだけ。その法解釈は形式的任命、推薦された者は拒否はしない、これが国民の代表たる国会に明示されたものなんですよ。総理の任命の拒否が許容されるなどという解釈が入り込む余地は、日本学術会議法にも、法にのっとった制度にも、国会会議録にも、審議の際の想定問答集にもどこにもない。あると言うなら、この場で示してください。
 
○政府参考人(福井仁史君) 済みません、学術会議法が推薦と任命を別に定めておりますので、推薦と任命の間には、推薦どおりに任命しなければならないという義務はないという形での任命権者の権限があるというふうに認識しております。
 
○田村智子君 あなたの認識を聞いたんじゃないんです。そういうものがどこにあるのかと聞いているんですよ、文書や制度や法の中に。  
 法制局長官、答えられますか。
 
○政府特別補佐人(近藤正春君) お答えいたします。  
 元々、高辻長官答弁の基となった昭和三十七年に、当時の文科省、文部省ですね、文部省……(発言する者あり)それと解釈が関連してまいりますのでお答えをしております。そのときに、基づいて任命するという文言からだけでは明確な中身ははっきりしない、当時の法制局、それはあくまでも、任命するときは申出した人の中からだけ任命すればいいというふうにも読めると。
 ただ、それだけではやはり基づいて任命するという規定の意味は不十分であろうと、やはりそこに尊重して、ある程度そういったものを尊重しながら任命していくという、やはりそういう意味がないと問題ではないかと。あくまで条文だけでは一義的に解釈が出てこないので、あくまでも解釈問題として当時議論がされ、それで、その憲法十五条なり憲法二十三条から導かれる大学の自治というものを総合的に合わせながら解釈を行いました。  
 したがって、日本学術会議法の規定も、それだけであるとすると、任命するなら申出した人の中からやれということしか書いていなくて、解釈上で、あくまでも尊重義務であるとか、そういったものを補って平成三十年にも解釈を確定したわけでございます、確認をしたわけでございますので、そういう意味では、条文上明らかに、およそ全てそのとおり任命しなきゃいけないというふうに書いてあるわけではないということだと思います。
 
○田村智子君 めちゃくちゃな答弁ですね。  
 憲法十五条一項は国民主権の条文です。総理大臣に公務員の任命について全権委任などしていません。憲法十五条一項に基づいてやるべきは、六人を任命することがどうして国民に責任を負えないことになるのか、その明らかな理由を国民とこの国民の代表たる国会に示すことです。改めて求めておきます。  もう一つ、十三日の衆議院内閣委員会、足立議員は、八三年の中曽根答弁についても、いわゆる形式的任命論が踏み込み過ぎているような印象を受けるがどう理解すればよいのかと質問をして、官房長官は、約四十年前だから趣旨を把握するのは難しいと言った上で、新しい制度によって会員としてふさわしい者が推薦されるということになるとの期待がその背景にあったのではないかと答弁をされました。
 中曽根総理への質疑は会議録で僅か二ページです。お読みになったんですか。
 従来の選挙制度が推薦に変わりましたが、しかし、法律に書かれてありますように、独立性を重んじていくという政府の態度はいささかも変わるものではございません。学問の自由ということは憲法でも保障しておるところでございまして、特に日本学術会議にはそういう独立性を保障しておる条文もあるわけでございまして、そういう点については今後政府も特に留意してまいるつもりでございます。  
 また、こうも言っています。
 これは、学会やらあるいは学術集団から推薦に基づいて行われるので、政府が行うのは形式的任命にすぎません。したがって、実態は各学会なり学術集団が推薦権を握っているようなもので、政府の行為は形式的行為であるとお考えくだされば、学問の自由独立というものはあくまで保障されるものと考えております。
 明らかに、学問の自由の保障、日本学術会議の独立性の保障から形式的任命と答弁をしている。これが約四十年前だから趣旨が分からないんですか、官房長官は。
 
○国務大臣(加藤勝信君) これは、これまでも法制局長官も言っておられますけれども、日本学術会議の会員の任命について、日本学術会議からの推薦のとおり任命すべき義務があるとまでは言えないという点については、昭和五十八年に選挙制が廃止され任命制になったときからの一貫した考え方でありまして、その上に立った上での答弁だというふうに位置付けているわけでありまして、したがって、そうした背景というのは、当時の背景というのは十分、今となってはつまびらかではありませんが、ただ、当時の状況に照らして申し上げるとすればということで、るる説明を申し上げたところであります。
 
○田村智子君 四十年前にここまではっきり答弁していることの趣旨が分からないと言うと。法治国家ですか。憲法は七十四年前ですよ。商法とか刑法とか、民法は最近改正になりましたけど、明治からの立法ですよ。それを私たち受け継いでいるんですよ。四十年前の答弁の趣旨が分からない。
 それから、今、一貫したと言いますけど、違いますよ。二〇一六年と二〇一八年の補欠人事で、官邸が推薦名簿に意見を反映させようとした。しかし、学術会議はこれを受け入れず、推薦見送りとなった。そうなれば、次の半数改選がどうなるかって問われてきますよね。そして、二〇一八年、突如として、推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えないという文書が学術会議事務局によって作成され、なぜか法制局がこのずさんな文書をそのまま了承する。
 だって、およそ、八三年の形式的任命についての議論とか、今の中曽根答弁の学問の自由とか独立とか、このことについておよそまともな検討なんかされていないですよ、この文書は。それで、二〇二〇年、とうとう任命拒否ということが行われてしまった。  
 法制局や内閣府の官僚の皆さんに私、改めて言いたいですよ。皆さんがやるべきことはこんなことじゃなかったんですよ。人事介入が始まったときに、これは法律上駄目だと、かつてやったことがないと言って止めることですよ。それを止めもしない。法制局まで迎合するんですか。何が一貫した考え方ですか。八三年の審議を何も顧みないような、それで了とする、こんなことになってしまったら、日本の国の法の安定性ってどうなるんですか。これが法治国家と言える事態なんですか。人治主義ですよ。政権によってころころと法の解釈が変わる、過去の国会の会議録を軽んずる、無視をする、都合の悪いものは見ないことにする、趣旨が分からないと言う。だから私たち取り上げているんですよ。  
 これ、民主主義に関わる問題なんです。学術会議だけの問題じゃないんです。こんなふうに法律が軽んじられ、法解釈をゆがめて、ゆがめておいて一貫した考え方だと、そこまで開き直る。これ、あっちゃ駄目です。いま一度、本当に真面目に、法制局、これでいいのか、内閣府学術会議事務局、これでいいのか、考えていただきたい。そして、要求したことを是非実現していただきたいと思います。引き続き質問いたします。
 終わります。

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