○政府参考人(大塚幸寛君) お答えをいたします。
ただいま委員からも御紹介のございました今般の任命、十月一日に行ったものでございますが、八月三十一日に出されました学術会議からの推薦書、これに基づきまして行ったものでございます。
この会員の任命につきましては、憲法、そして日本学術会議法の規定に基づきまして、任命権者たる内閣総理大臣がその責任をしっかり果たしていくという一貫した考え方に立った上で、日本学術会議に、その個々の会員の専門分野の枠にとらわれない広い視点に立って、今委員からも御紹介のございました総合的、俯瞰的観点から活動を進めていただくために、任命権者である内閣総理大臣がこの法律に基づいて任命を行ったものでございます。
その総合的、俯瞰的という話でございますが、これ自体は、元々は平成十五年の総合科学技術会議の意見具申によっておるものでございまして、そこには、日本科学技術会議は、新しい学術研究の動向に柔軟に対応し、また、科学の観点から今日の社会的課題の解決に向けて提言したり社会とのコミュニケーション活動を行うことが期待されていることに応えるため、総合的、俯瞰的な観点から活動することが求められているとなっておりまして、こうしたまさしく提言を踏まえ、総合的、俯瞰的観点からの活動を進めていただくために、任命権者である総理がこの法律に基づいて任命を行ったものと承知をしております。
○田村智子君 日本学術会議法には、会員の推薦の基準は、優れた研究又は業績がある科学者としています。ところが、加藤官房長官は、専門領域での業績のみにとらわれない総合的、俯瞰的活動という観点から判断したと記者会見で述べておられる。そうすると、法に定めのない基準がなきゃおかしいんですね。
これ、総理の選考基準を明確に示してください。活動について述べたその文書じゃないんですよ。総理の選考基準を明確に示してください。
○政府参考人(大塚幸寛君) 繰り返しで恐縮でございますが、まさしく総合的、俯瞰的な観点から活動を進めていただくために、任命権者である総理がこの法律に基づいて任命を行ったものと承知をしております。その具体的内容につきましては、これは人事に関することですので、お答えは差し控えさせていただきます。
○田村智子君 これね、基準があるなんて言ったら学問の自由に関わるから言えないでしょう。あったら大変なことになりますよね。
平成三十年十一月十三日、内閣府日本学術会事務局作成とされる文書が今回の任命拒否の根拠となった考え方を整理したものだとして示されています。資料でも抜粋してお配りしました。
推薦どおりに任命すべき義務があるとまでは言えないと考えられるというのが結論なんですけど、その下にただし書の扱いで、内閣総理大臣による会員の任命は、推薦を前提とするものであることから形式的任命と言われることがあるがと記述されているんですね。
ということは、形式的任命であるということを否定するということなんでしょうか。
○政府参考人(福井仁史君) 日本学術会議の事務局長でございます。
元々この文書、学術会議事務局の方で推薦の在り方について検討する過程で作成した文書でございますので、文意については私の方からお答えするのがよろしいかと思います。
この形式的任命と言われることもあるがという表現でございますが、これは、その下の文章、注にもございますように、他の名簿によるとしている法律上の用例やお申出に基づく法律上の要件との比較において用いているものと考えておりまして、特に形式的任命を否定するいわゆる逆接の接続詞ではなくて、単純接続と言われる接続詞だというふうに考えております。 以上でございます。
○田村智子君 官房長、お答えください。 形式的任命という、この解釈を維持しているのか否定しているのか、端的に。
○政府参考人(大塚幸寛君) 形式的云々は、たどれば一九八三年の、昭和五十八年の答弁にあるかと思いますが、このときの答弁も、それから、今、福井の方から触れましたこの三十年の文書も、いずれも憲法の第十五条を前提としたものでございます。ここは変わってございません。
したがいまして、その任命権者たる内閣総理大臣が推薦のとおりに任命しなければならないというわけではないという考え方も一貫して存在しております。一九八三年の答弁におきましても、形式的な発令行為との発言がなされているものの、この必ず推薦のとおりに任命しなければならないというところまでは言及をしておらないところでございます。
○田村智子君 形式的任命を否定しているんですか。
○政府参考人(大塚幸寛君) 一九八三年の答弁も踏まえてございます。
○田村智子君 そうしたら、否定できないということなんですよね。否定できないんですよ。後でやりますけれどもね。
昨日の質問通告のときにも聞いたら、形式的任命は否定していないと、だけど裁量があるんだという説明をされたんです、法制局が。私、それは矛盾するんじゃないのというふうに聞きましたら、法制局から、その考え方を示す文書があると、答弁があると言われましたので、その文書を昨日夜送っていただきました。資料ではちょっと間に合わなかったんですけど、一九六九年七月二十四日、衆議院文教委員会での高辻法制局長官の答弁なんですね。
これは、その会議録の六ページのところが一番まとまっているんですけれども、この中で憲法十五条一項というのが出てくるんですよ。ただし、これは国立大学の学長任命の解釈についての答弁であって、日本学術会議の任命についてのものではありません。しかし、これが考え方を、この答弁に基づいているんだろうと私も分かりましたので、ちょっと紹介をいたします。 その中では、大学の自治と国民主権との調整的見地において考えてみますと、単に、申出がありました者が、何らかの理由で気に食わないというようなことではなくて、そういうことで任命しないのは無論違法であると思いますが、そうではなくて、申出があった者を任命することが、明らかに法の定める大学の目的に照らして不適当と認められる、任命権の終局的帰属者である国民、ひいては国会に対して責任を果たすゆえんではないと認められる場合には、文部大臣が申出のあった者を任命しないことも理論上の問題としてできないわけではないと。ここで憲法十五条一項が示されているんですよ。
この考え方に立ったということであるなら、法律は違うけれども、任命されなかった六名は明らかに日本学術会議法の目的に照らして不適当であると総理大臣が判断した、憲法十五条一項に基づいて、これしか総理の裁量の余地はないことになりますが、官房長官、それでよろしいですか。
○政府参考人(大塚幸寛君) お答えを申し上げます。
ただいま委員が御紹介されましたその議事録の詳細の部分を今この段階できちっと承知をしておりませんが、少なくとも、私どもとしては、この任命権というものが、たどっていけば憲法第十五条を前提としており、その公務員の選定、罷免権、これが国民固有の権利であるという考え方に立ちまして、個別法において、日学の場合はこの日学法に、七条に推薦に基づいて任命をするという規定があり、それは任命権者たる総理大臣が推薦のとおり任命しなければならないというわけではないということだというふうに、これは法制局とも確認しておりまして、これは任命制を導入したときからあくまでも私どもとしては一貫しているというのがお答えでございます。
○田村智子君 また憲法十五条一項を持ち出されました。
憲法十五条一項、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」。だから、形式的任命とこの憲法十五条との関係どうするかというので法制局の長官の答弁を今紹介したんですけれども、明らかに、明らかに不適当であると国民が、国民が納得しなければ、こんな判断付かないことになるんですよ。
それじゃ、皆さん、六人が任命されなかったことについて、明らかにこの六人が任命されたら日本学術会議法に違反すると思いますか。日本学術会議法の目的に照らして日本学術会議がまともな活動ができなくなると、そう説明できる方がこの国会議員の中におられるでしょうか。法制局長官は、憲法十五条一項に基づいて罷免しないという、あっ、任命しないという判断、これは国民、国会に対する責任、そういうことを総理もおっしゃっている。だけど、国民の中から、罷免されないのは当然だ、明らかだ、それは不適当だ、その理由を示せる人は私は誰もいないと思うんですよね。国会議員の方で示せる方はいますか。
憲法十五条一項を持ち出すのはやめた方がいい。やめるべきです。不適当であるという理由を示すべきです。官房長、いかがですか。
○政府参考人(大塚幸寛君) 元々、任命権も日本学術会議法に明定をされているものでございますし、それをたどっていけば、憲法十五条のいわゆる公務員の選定、罷免権にたどり着くというふうな認識でおります。そうした下で具体的な法律が定められ、今回の総理の任命権の明定に至っていると思っておりますので、こういった御説明をする際に憲法から引用して御説明を申し上げることは決して誤りではないと思っておりますし、こうした説明につきましても、法制局とも十分御相談の上、この場でこういう説明を繰り返しさせていただいているところでございます。
○田村智子君 まず明らかに不適当であるという理由を示すべきですよ。いかがですか。
○政府参考人(大塚幸寛君) 繰り返しでございますが、任命はどうしてもその人事と絡むところでございますので、人事のところの詳細につきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと存じます。
○田村智子君 憲法十五条一項、国民主権に関わる問題です。明らかな理由をこの委員会に文書で示すことを要求します。
○委員長(水落敏栄君) 後刻理事会で協議します。
○田村智子君 形式的任命ということについて見ていきたいと思います。
これは、一九八三年、日本学術会議法の会員について、学者による選挙制度を廃止し、推薦に基づく内閣総理大臣の任命とするという、この日本学術会議法改定法案の審議で政府自身が繰り返した言葉です。
参議院の会議録、資料でも付けました。これを見ますと、最初に形式的任命という言葉を使ったのは、後に公明党・国民会議の会派に属された高木健太郎議員です。
一九八三年五月十日、参議院文教委員会会議録七ページ、会員は総理大臣の任命制によるということでございますが、学術会議から推薦してきた会員はこれを形式的任命である、そういう言葉は使えないにしても、最大限尊重して任命するということでなくてはいけないと。続けて、滝川事件、これは戦前、京都帝国大学の滝川教授の著作が発行禁止処分となり、文部大臣が学長に滝川教授の辞職、休職を要求し、教授会が断固として反対したにもかかわらず、文部大臣の監督権を根拠に休職処分とされた事件です。この滝川事件を引いて、そのような過ちを繰り返さないようにと、こういう求める質問でした。
これに対して内閣総理大臣官房総務審議官は、選挙の場合には、立候補制度であるから任命を必要としないが、学協会推薦制の場合には任命行為が必要となる、したがって、形式的任命権にとどめておかなくてはならないとする学術会議がまとめた分析をわざわざ読み上げて、全く形式的任命であると考えていると答弁。
さらに、二百十名出てくれば、これはそのまま総理大臣が任命する。二百十名出るとかなんとかであれば問題外ですが、二百十名を超えるという意味ですね、そういう仕組みにはなっておりません。そういう意味で、私どもは形式的任命というふうに考えており、法令上もしたがってこれは形式的ですよという、規定していると。形式的という言葉を繰り返すんです。
高木議員はこの答弁を当時の担当大臣である総理府総務長官に確認していますが、では、丹羽長官どう答えたのか、官房長、お答えください。
○政府参考人(大塚幸寛君) お答えを申し上げます。
委員がお配りになられましたこの七の三の議事録の二段目、高木健太郎委員の御質問に対する国務大臣丹羽兵助、当時の大臣のお答え、この部分を指しているものと理解をいたしますが、読み上げます。せっかく高木先生からの御注意であり、要請でございますし、当然のことでございますから、この場で責任のある大臣として、長官として、今事務当局から答えましたように、守らしていただくことをはっきり申し上げておきたいと思います。以上でございます。
○田村智子君 形式的任命を確認する質疑はこれ以後何度も繰り返されます。なぜか。当時、政府・自民党から、日本学術会議は偏向している、政府の方針に反する内容を国民にアピールしたことは遺憾であるなどの攻撃があり、学術会議の体質改善と称して会員の公選制を廃止し、推薦に基づく任命制が提案されたという経緯があるからなんです。
任命制を取ることで滝川事件のように人事を通じた監督が行われ、日本学術会議の独立性、学問の自由が脅かされるのではないか、この危惧から何度も質問があり、そのたびに政府はそういう心配はないと、形式的任命という答弁を繰り返したんです。
八三年五月十二日、参議院文教委員会会議録十五ページ、社会党粕谷照美議員、学術会議の独立性というものが侵されやしないだろうか、こういう心配を持つものですから、何度も何度も念押しをしている。内閣官房参事官の答弁、内閣総理大臣が形式的な発令行為を行うというふうにこの条文を私どもは解釈をしておる、この点につきましては、内閣法制局におきます法律案の審査のときにおきまして十分その点は詰めたところであります。
同じく十一月二十四日、これ会議録二十三ページ、我が党の吉川春子議員への丹羽総理府長官の答弁。推薦していただいた者は拒否はしない、形だけの任命をしていく。同じ趣旨の答弁はまさに何度も何度も繰り返されています。
官房長、形式的任命だから推薦された者は拒否しない、これが政府の答弁です。今回の任命拒否は八三年政府答弁を覆す行為ではありませんか。
○政府参考人(大塚幸寛君) 繰り返しで恐縮ですが、今御紹介いただきました昭和五十八年当時の答弁も、それから、今回、二年前でございましょうか、平成三十年の文書も、繰り返しですが、いずれも憲法の第十五条を前提としていること、これは当時の、改正当時からも前提となっていたことでございます。 形式的な発令行為との発言がなされていることは十分承知してございますが、必ず推薦のとおりに任命しなければならないということまでは言及もされていないところでございます。
○田村智子君 違います。八三年の会議録は、推薦に基づき総理大臣が任命する、それは形式的任命、形式的発令行為であり、推薦された全員を任命する、拒否はしない。一貫した政府答弁です。国会会議録というのは、国会と国民に示された条文解釈そのものです。
法制局に聞きます。逆に、推薦された者を任命拒否することはあり得るという日本学術会議法についての法解釈を示す文書はあるんですか。
○政府参考人(木村陽一君) お答えいたします。
私どもとしては、平成三十年に、今回作成の説明資料でございますけれども、それについて当局に意見を求められました際に、御指摘のその国会議事録のほか、昭和五十八年の日学法改正時の法律案審議録の中に総理府作成の想定問答集がございます。それにつきましては確認をいたしております。
そういう意味でいいますと、今委員が御指摘になられましたような義務的任命であるのかどうかという点について明瞭に記載したものというのは私が知る限り見当たりません。
ただし、先ほども御言及ございましたような高辻長官以来の答弁の積み重ねの上に立ちまして、当然そういう解釈の上に立脚して、今回、あるいは昭和五十八年の法改正以来、一貫した考え方として成り立っているものというふうに理解をしております。
○田村智子君 では、その政府答弁書を本委員会に出してください。
○委員長(水落敏栄君) 後刻理事会で協議します。
○田村智子君 これ、ないんですよね。任命を拒否していいっていう、そういう解釈したものはないんですよ。高辻法制局長官の答弁だけなんですよ、今のお言葉だと。高辻法制局長官の答弁というのは、極めて限定的で明らかに不適当。全く違いますよ、今回のと。
形式的任命は学問の自由の保障そのものに関わると中曽根総理大臣が明確に答弁もしています。
五月十二日、会議録三十四ページ、前島英三郎議員、自民党で郵政大臣を務めた八代英太議員の本名ですね。今まで選挙によって選ばれてまいりました。これはやっぱり大変重要な特質でありまして、この原則が守らなければ本会議の存在理由もまたあり得ないというふうな気がするんですけれども、今後この学術会議は、例えば他の諮問機関のような形に変わっていくのでしょうかと質問したことに、では中曽根総理はどう答弁しているのか、官房長、お答えください。
○政府参考人(大塚幸寛君) お答えを申し上げます。
今御紹介のございました五十八年の文教委員会での前島委員の質問に対し、当時の中曽根総理大臣でございますが、「政府が行うのは形式的任命にすぎません。したがって、実態は各学会なり学術集団が推薦権を握っているようなもので、政府の行為は形式的行為であるとお考えくだされば、学問の自由独立というものはあくまで保障されるものと考えております。」と答弁をされておられます。
○田村智子君 政府の行為、総理の任命は形式的行為、形式的任命である、だから学問の自由独立は保障される。逆の言い方をすれば、形式的でなく、裁量権をもって任命の適否を判断すれば、学問の自由が保障されなくなるという答弁ですよ。
憲法二十三条に学問の自由が規定されている、だからこれまでは形式的任命、推薦のとおりに任命が行われてきたということではないんですか、官房長。
○政府参考人(大塚幸寛君) お答え申し上げます。
憲法二十三条に定められた学問の自由、これは広く全ての国民に保障されたものであって、特に大学における学問研究及びその成果の発表、教授が自由に行われることを保障したものであるというふうに認識をしてございます。
他方で、これもその憲法第十五条第一項の規定に基づく公務員の選定、罷免権、これが国民固有の権利であるという考え方からすれば、任命権者たる総理大臣が推薦のとおりに任命しなければならないというわけではございません。
独立性云々ということもございますが、あくまでも職務の独立性というものは保障されており、この任命云々による規定とは別物であるということも御紹介をさせていただきたいと思います。
○田村智子君 十五条一項を持ち出せば持ち出すほど、日本学術会議と六人の方を侮辱することになりますよ。やめた方がいいですよ。
この会議録の三十二ページ、粕谷議員ですね、の質問にも中曽根総理は学問の自由について触れているんですけれども、いずれも質問者は学問の自由ということを口にしていないんです。総理自らが学問の自由があるから学術会議には独立性がある、だから形式的任命だと結び付けて明確に答弁をしているんです。
先ほどの内閣府日本学術会議事務局作成とされる文書を見てください。
先ほど指摘したただし書には、憲法二十三条に規定された学問の自由を保障するために大学の自治が認められているところでの文部大臣による大学の学長の任命と同視することはできないとあるんですね。国立大学の学長も政府による任命、政府に裁量権はなく、大学が選出した学長を形式的に任命する、それは学問の自由を保障するためということなんです。
中曽根答弁は、日本学術会議も同じだということを言っているんですよ。総理に任命の裁量権はない、形式的任命であり任命拒否はしない、それが学問の自由独立の保障である。これ以外の解釈がどうしてできるのかと思いますけど、法制局、何か答弁できますか。
○政府参考人(木村陽一君) 御質問につきましては、一義的にはやはり主務省庁から御答弁いただくことが適当だと思いますけれども、あえて申し上げますと、当然、その法の適用は憲法に適合すべきことは当然であります。それは二十三条のみならず十五条についても言えることだろうと思っております。 そもそも、日本学術会議の会員の任命は、日本学術会議法七条二項に基づき適正に行われるべきものであることは当然でありまして、このことが学問の自由を制約することにはならないというふうに考えております。
○田村智子君 十五条一項のそれを持ち出してきた高辻法制局長官の答弁って、是非皆さん読んでみてほしいんですよ。これ、理論上はあるけれども、まずあり得ないという答弁なんですね。
これ大学紛争が起こっているときで、学長の任命めぐってかなりの大激論になるんですよ。それでも法制局長官は、かなりもう形式的なんだと、明らかに不適当で、どうしてこんな人が学長になるんだというような人が挙がってこない限りは任命するという、そういう答弁で一貫しているんですよね。だから十五条一項はもう持ち出さないでと言っているんですよ。国民はみんな、任命すべきだという意見の方が、今そういう運動どんどん起こっているじゃないですか。この全く不適当な人物を任命しない裁量権がある、そういう議論じゃないんです。
先ほど指摘したように、一九五〇年代から六〇年代、日本学術会議は、原子力潜水艦の寄港に反対したり、原子爆弾の実験に反対をし、核兵器廃絶を求めるアピールをするなど、政府の見解と異なる活動をして、その日本学術会議への攻撃が現実にあったんです。だから、任命はあくまで形式的であり、推薦のままに任命すると。つまりは、推薦されたのに任命拒否するような裁量は政府にはない、これが繰り返し繰り返し確認されたということなんですよ。 今、この日本学術会議については、形式的任命とは異なる対応を始めたのは二〇一六年からだと報じられています。二〇一六年、欠員補充の際に学術会議が示した候補者案に難色を示し、その結果、補充自体が見送られる。一七年、百五人を超える推薦名簿を提示するように求め、調整を行った。一八年、会員補充に難色を示し、補充が行われなかった。二〇年、総会議決を経て推薦された百五人のうち六人を初めて任命しなかった。これは、安倍政権が立憲主義を踏みにじる安保法制を強行し、これに多くの科学者が憲法違反だとの見解を示して以降のことです。
また、二〇一七年には、先ほども質問でありました、日本学術会議は軍事研究に対する声明を発出しています。これは、予算の出どころが防衛省というのがおかしいということを言っているだけで、学問の自由に関わることを言ったわけじゃないんです。予算の出どころを問題にしたんです。学術会議をめぐる歴史的な経緯を見ても、こうした学者や学術会議の動きと今回の六人の任命拒否を切り離して考えることはできません。学問の自由が脅かされている。それは、科学者だけでなく、国民全体の言論の自由をも脅かす道につながるんですよ。政府の方針に賛成の意見も批判的意見も科学的知見から自由に行われる、それが学問の自由であり、言論、表現の自由であり、民主主義の根幹なんです。大変重大な問題です。官房長官及び総理の出席による国会質疑を求めて、質問を終わります。