ヘイトスピーチがどれほど凄まじい言葉の暴力であるか、10月30日の内閣委員会で質問して体感しました。
この日の内閣委員会の出席大臣は、山谷えり子氏。大臣就任直後から、ヘイトスピーチを首謀する「在特会」幹部との写真が海外メディアにも大きく報じられ、国会でもその関係が追及されている、この問題を質問しないでどうするか、という思いでした。
山谷大臣は、他党の議員からの質問で、ヘイトスピーチと「在特会」について、「憂慮にたえません」「全く遺憾なこと」「愛と寛容の融和的な社会をつくりたいと思っている私の信条とは、在特会の活動は全く相入れない」とは答弁しています。一方で、その幹部との写真については、いろんな人と写真をとっている、どういう人物かをいちいちチェックはできない、と開き直る答弁。これをふまえての質問、さあ、どうとりあげるか。
質問する声が震えてしまう、これがヘイトスピーチか
「在特会」がどのような言葉を在日コリアンに投げつけているのか、リアルに示すことが、山谷大臣の認識を質す前提。ヘイトスピーチに反対する人たちが、映像から確認した言葉が様々な文献に記録されています。これを私も質問のなかで読み上げ、議事録にも残すことにしました。
「殺せ」「焼き払え」「追い出せ」「呼吸するな」「生きているだけで公害だ」
これらは「ましな」言葉です。自分が口にするにはあまりにも残酷、卑劣、おぞましい言葉は、原稿に入れることもできませんでした。
公文書に記されたヘイトスピーチもあります。2009年12月から翌年3月にかけて行われた京都朝鮮第一初級学校の周辺での「在特会」による示威行動。京都地裁判決には、その言葉の数々が事実認定されています。
「学校が北朝鮮のスパイを養成している」「学校の児童の保護者は密入国者である」「約束というのはね、人間同士がするもんなんです。人間と朝鮮人では約束は成立しません」「保健所で処分しろ」「ゴミはゴミ箱に、朝鮮人は朝鮮半島にとっとと帰れー」「ぶち殺せ」
これも、自分が耐えられるギリギリのものを質問原稿に書き込みました。ところが読み上げている途中で、自分の口元が歪むのがわかりました。声が震える、嗚咽がもれそうになる、それを懸命にこらえました。あぁ、これが言葉の暴力なんだ。こんな言葉を大音量で浴びせられ続けたら、心はずたずたになる、こんな言葉を叫び続けたら自分の心が壊れてしまう――そう、思い知りました。
外国特派員協会での驚きの質疑応答を追及
質問の核心は、9月25日の外国特派員教会での山谷大臣の質疑応答にしぼりました。
拉致問題での講演のあと、当然予想できたことでしたが、記者からの質問は「在特会」の問題に集中したのです。
「在特会の価値観、在特会が訴えるような政策に反対されるか」と問われて、「一般論として、いろいろな組織についてコメントをすることは適切ではない」と回答。
さらに日本のメディアが、在特会がどのような団体であると認識しているかと書面で質問したところ、「在日韓国人・朝鮮人問題を広く一般に提起し彼等に付与されている「特別永住資格」の廃止を主張するなど、「在日特権」をなくすことを目的として活動している組織と承知しています」との回答があったと紹介されたのです。
こういう認識なのかと問われた大臣は「在特会のHPから引用したものをそのまま記しているんだろう」と回答。「在日特権」を認めるのかなど、会見場が騒然としたことが報道されています。
ヘイトスピーチや在特会について、国会での答弁が本心であるならば、外国特派員教会での質疑応答は「不適切であった」と認めるべきではないのか――こう迫っても、「事前に質問通告がなかったので、その時のことはよくわからない」と、のらりくらりと答弁をごまかす山谷大臣。
前日の質問通告で私は、9月25日の記者とのやりとりについて質問する、と明確にしていました。この記者会見はその後、国内外のメディアで大きくとりあげられてきました。そのなかで自分がどういう発言をして、何を批判されたのか、覚えていないとでも言うのか!
TBSラジオの番組のホームページで、このときの質疑応答の全文が文字になっています。ぜひご一読を。
http://www.tbsradio.jp/ss954/2014/09/post-301.html
虚偽情報を拡散し、在日コリアンへの憎しみをあおる団体
京都朝鮮第一初級学校での示威行動は、それを首謀した人物が断罪されただけでなく、「在特会」に使用者責任を認め賠償金支払いが命ぜられました。「在特会」とはどういう団体か。虚偽やねつ造した情報をインターネットで拡散し、在日コリアンへの憎悪をあおる団体ではないのか。
「在特会」への認識を重ねて質問しても、「違法行為があった」「違法行為は取り締まる」という答弁にとどまる大臣。この答弁の背後には、彼らの活動を知りながら記念写真にも応じていたのではと、疑念をもたざるをえません。
ヘイトスピーチをどうしたら止められるのか。言論の取り締まりではなく、人種差別の撤廃とし何ができるのか、どういう施策が必要か、超党派の議員の学習会や議論に、私も参加してきました。個人を名指しする誹謗中傷は名誉棄損罪などで取り締まることはできるが、民族への差別的言動は法律によって取り締まることはできない、この現実をどうとらえて、どういう規制を求めるのか、真剣な議論が必要です。
同時に、現に、言葉の暴力で在日コリアンのみなさんが傷つけられている、こんなことはやるべきではないと、国家公安委員長がはっきりと強くアピールすることはすぐにでもできることです。妄言で、人種差別をあおる団体を厳しく批判することもできるはず。
時間切れとなって質問は終わりましたが、「時間のびたってよかったのに」「続きの質問をぜひ」と他党の議員から声をかけられました。ヘイトスピーチを止める!その決意がますます強くなりました。