国会会議録

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雇い止め・生活困窮 田村副委員長の質問 参院決算委

 日本共産党の田村智子副委員長は15日の参院決算委員会で、新型コロナウイルスの影響で広がる解雇・雇い止めや生活困窮への政府の対応を正面からただしました。

田村氏「雇調金・支援金周知を」
首相「活用して雇用守ってほしい」


(写真)質問する田村智子副委員長(右)=15日、参院決算委

 田村氏は、「新型コロナウイルスの影響で解雇・雇い止めが増え続けており、どうやって雇用を守るのかが切迫して問われている」と指摘。「4月の休業者652万人が失業者に転じてしまうのか、契約社員・派遣社員が大勢切られてしまうのかの瀬戸際にある。首相が経済界に雇用を守るよう強力に要請するべきだ」と迫りました。

 安倍晋三首相は「雇用を守ることが政治の最大の責任だ。雇用調整助成金(雇調金)等を活用して雇用を守ってほしいとお願いし、労働者が申請できる新たな制度(休業支援金)もつくった。多くの人に利用してもらいたい」と答えました。

 政府は第2次補正予算で、雇調金の月額上限を33万円に引き上げ、事業主から休業手当の支払いを受けられない中小企業の労働者に賃金の8割(月最大33万円)を給付する休業支援金を新設しました。

 田村氏は、月ごとに勤務時間や日数が決まるシフト制のアルバイトも支援金の対象になるか確認。厚生労働省の小林洋司職業安定局長は「対象になる」と述べました。

 田村氏は、3カ月などの短期契約を繰り返して働く派遣労働者についても、雇調金や支援金の対象から漏れることがあってはならないと強調。6月末に契約更新を迎える派遣労働者が多く、「契約が更新されず、次の派遣先がない場合、派遣会社は雇用契約がないからと休業手当も払わず、収入が絶たれる恐れが強い」として、「国会を延長し、雇調金や支援金の活用状況や派遣・契約社員の雇用実態をつかみ、議論するべきだ」と迫りました。

 加藤勝信厚労相は、5月末に派遣の業界団体に対し、派遣先企業への契約継続の働きかけや、派遣元が雇用を継続し雇調金等を活用することなどを要請したと説明。「労働局で雇調金を使うよう働きかけた結果、(雇用を)継続する考えを示したところもある。そうした方向が広がるよう努力したい」と応じました。

 田村氏は「派遣会社への通知だけでなく、労働者に対しても『辞めさせられない道がある』『休業手当を受け取る権利がある』と知らせてほしい」と強く求めました。

 

田村氏「生活保護は権利と呼びかけを」
首相「文化的な生活送る権利ある。ためらわず申請を」

 「“生活保護はあなたの権利です”と、この場で呼びかけてほしい」―。コロナ禍で生活困窮に陥った人が、生活保護申請を諦めることがないよう迫った田村氏に、与党席からも拍手が起きました。安倍首相は「文化的な生活を送る権利がある。ためらわずに申請していただきたい」と答弁しました。

 「所持金40円」「住むところもない」―。貧困問題にとりくむ団体の支援活動に、SOSが相次いでいます。

 「リーマン・ショック等の経験を踏まえても住居の確保は非常に大事。しっかりと応援していく」と述べた加藤厚労相に対し、田村氏は、住まいを失った人に劣悪な無料低額宿泊所への入居を強制するなど自治体での不適切な対応が多発していると指摘。まず公営住宅など安全な住居の確保が必要だと求めました。

 さらに、生活保護を申請させない“水際作戦”も相次いでいると指摘。収入が激減した漁業者が「漁船を売れば20万円になる。生活保護は無理」と言われた事例や「自宅を売れば生活できる」と追い返された事例を示し、「住まいや働くすべを失わせるのが保護行政なのか。コロナの影響から少しでも早く立ち直るために、自立のための能力をそぐような対応は改めるべきだ」と迫りました。

 加藤厚労相は、自立を助ける観点から、家屋や通勤用自動車など「適切に活用できる資産は保有を認めている」として、柔軟な対応を徹底すると述べました。

 田村氏は、保護申請者を厄介者扱いする対応の根っこには、行政が「生活保護は権利」の認識を養わないどころか、一部政党が侮蔑や敵意をあおってきたことがあると指摘。ドイツでは「誰一人として、最低生活以下に陥ることがあってはならない」と、新型コロナ対応で120万人の生活保護利用を見込んでいると述べ、「生活保護は権利だと呼びかけてほしい」と求めました。

 安倍首相は「生活保護に攻撃的な言質をろうしているのは、自民党ではない」などと答弁。田村氏は、民主党政権時代に生活保護受給者を増やした際、攻撃したのが自民党だったと指摘しました。

 田村氏は、長野県ではパンフレットで「生活が立ち行かなくなることは、誰にでも起こりうること」「憲法第25条の生存権の理念に基づく最後のセーフティネットが生活保護」などと分かりやすく市民に伝えていると紹介。「生活保護はあなたの権利、ためらわず申請してほしいと政府が国民に広報を」と重ねて求めました。安倍首相は「文化的な生活を送る権利がある」「さまざまな手段を活用して働きかけを行う」と述べました。

2020年6月16日(火)しんぶん赤旗より

【2020年6月15日参院決算委員会速記録より】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 新型コロナの影響での解雇、雇い止めが増え続けていて、どうやって雇用を守るのかが切迫して問われています。
 その中で、六月四日、竹中平蔵氏がツイッターで次のように発言をしたんです。日本の失業率は二・六%と低い、しかし失業者百七十八万人に対し休業者が六百五十二万人、潜在失業率は一一%になる、政府が雇用調整助成金を出し雇用をつなぎ止めるからだ、不況が短期間でかつ産業構造が変わらないならそれもいい、しかしそうではないだろう、こうした点が国会などで一切議論されないのは問題だと、こう言っているんですね。
 資料を御覧ください。(資料提示)
 四月の休業者、六百五十二万人。これ、パネルで五百九十七万人となっていますが、これを季節調整すると六百五十二万人になるんですね。竹中氏は、これは隠れた失業者であって、政府が助成金で雇用をつなぎ止めるのはいかがなものかという発信なんですよ。
 竹中氏は政府の様々な諮問会議のメンバーで安倍政権の政策に強く関与しているだけに、総理に伺います。
 休業者が、まさにこの休業者がですよ、失業者にシフトしてしまうのかと、また契約社員、派遣社員が大規模に切られてしまうのか、今その瀬戸際なんです。特に大企業の動向が問われています。内部留保はもちろん、雇用調整助成金も活用して雇用を守る、これは当然のことで、総理が経済界に雇用を守ってほしいと強力に要請すべきなんじゃないでしょうか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 政府としては、安倍政権としては、雇用を守っていく、これが政治における、まさに経済における政治の最大の責任であろうと、こう思っております。
 ですから、雇調金等を活用していただきながら雇用を守っていただきたいということをお願いをしているところでございますし、さらには、労働者の方が申請できる新たな制度もつくり、そういう制度も多くの方々に利用していただきたいと、雇用は守り抜いていく上においてその先の経済回復に備えていきたいと、こう考えております。
○田村智子君 大体、竹中氏は持続化給付金の委託にも深く関わるパソナの会長ですよ。不透明な委託や給付の遅れについて説明すべきなのに、その自覚もない。給付金も届かない中で従業員を守ってきた中小企業への思いもない。こういう人物をいつまで政府の政策検討につなぎ止めるのかと、むしろこのことが問われるべきだと私は思います。
 先週成立しました第二次補正予算では、雇用調整助成金が更に改善されて、中小企業が従業員に支払う休業手当は一人月三十三万円まで国が助成できることになりました。また、会社やお店が休業手当を払えないという場合でも、労働者がハローワークなどに申請をすれば給料の八割を休業支援金として受け取れるという新たな制度も始まります。
 これらは、仕事がなかなか元に戻らない下でも従業員に一時的にあるいは部分的に休んでもらうことで雇用をつないでほしい、そのために国がかつてない支援をすると、こういう趣旨だというふうに思いますが、総理、いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 中小企業・小規模事業者はもとより大企業においてもこういう状況でありますから売上げがどんと落ちていく、売上げがゼロに、近くになっているところもたくさんあるわけでありますが、そういうところにおいても、この雇用を維持をしていく上において我々も相当積極的に今までにない対策を取っているところでございます。
○田村智子君 実際に労働組合の皆さんのその相談活動、報告見てみますと、観光地のお店などで、もう辞めてもらうというふうに言われた正社員やパートの方が労働組合に相談すると、そして、休業手当への助成金があるから是非これを活用してほしいんだとお店の方に申入れをすると、結果、解雇や雇い止めが止まったと、取り消されたと、中には給料満額の休業手当が払われることになったと、こういうところもあるわけですよ。是非、雇主にも労働者にも制度をよく知らせていく、そして活用してもらう、これが大切だと思います。
 特に、非正規雇用の場合、支援制度がなかなか使われないという懸念があるので、幾つか具体に確認をしていきたいと思います。
 まず、シフト制のアルバイトです。月ごとに働く日や時間、シフトを決めるわけですね。そうすると、この週は忙しいからとか、この週は暇だからということがこれ起こり得るんですよ。新型コロナとは関係なく、これまでもあるんですよ、そういう働き方が。今回、新型コロナの影響でシフトに入れてもらえず給料が激減したと、それでもシフトが減っただけなんだよという扱いになって、ただただお金がもらえませんでした、こういうことになりかねないんです。
 私はこういう場合でも休業手当支払の義務はあると思いますけれども、お店の側がこれを払わないということであれば、新しい制度、休業支援金を申請できると思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(小林洋司君) お答えいたします。
 まず、労働基準法に基づく休業手当の支払についてでございますが、一般論といたしまして、労働基準法の労働者であれば、正規雇用労働者に限らず、今お話のございましたアルバイトあるいは派遣労働者など非正規雇用労働者の方々も含めて、使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合には労働基準法上の休業手当の支払が必要となるものでございます。
 その上で、シフト制のアルバイト等についてのお尋ねがございました。一般論といたしまして、例えば勤務するシフトが週五日の方がおられて、五日のうち二日が事業主の命により休業となり当該二日について休業中の賃金が受けられないような場合、その場合にはその部分は新たな支援金の支給対象となるものでございます。
○田村智子君 新たな制度の対象になるんですね。是非これ申請呼びかけていかなきゃいけないと思います。これはパートの人が時間を減らされた場合も同じだと思います。
 次に、登録型派遣についてなんです。
 五月六日の朝日新聞には、二十年間ツアーガイドをしていた男性の記事がありました。派遣会社に登録をしていて、派遣会社を通じてどのツアーでガイドをするのかということを決めるという働き方なんですね。新型コロナの影響で予定していたツアーが全てキャンセルになって、収入がゼロになったという記事なんですよ。こういう場合、予定していたツアーは休業手当の対象となりますか。
○政府参考人(坂口卓君) お答え申し上げます。
 まず、お尋ねの登録型派遣と申しますのは、一般に、派遣労働を希望する方があらかじめ派遣会社に登録しておいて、労働者派遣をするに際して派遣会社がその登録されている方と期間の定めのある労働契約を締結して、有期雇用派遣労働者として労働者派遣を行うものでございます。そういったことから、派遣先を確保できないために派遣元が派遣労働者との労働契約を解約しようとする場合には、労働契約法第十七条に基づいて、有期労働契約の期間途中での解雇というものはやむを得ない事由がある場合でなければできないとされております。
 また、お尋ねの登録型派遣労働者に対します労働基準法に基づく休業手当の支払に関してでございますが、一般論といたしましては、派遣元が当該派遣労働者との労働契約を解約せず休業させる場合には、使用者である派遣元の責めに帰すべき事由による休業の場合には労働基準法の休業手当の支払が必要になるということでございます。
 ただ、この場合に、使用者の責めに帰すべき不可抗力による休業と言えるためには、その原因が事業の外部により発生した事故であることであるとか、あるいは事業主の方が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故、特に派遣元の場合は、新たな派遣先の開拓や確保のための努力が十分尽くされているかどうかといったようなことなどを個別にしっかりと確認することが必要でございます。
 労働基準監督署におきましては、このような考え方の下に、労基法の違反が認められた場合は休業手当の支払についてしっかり指導してまいりたいと考えます。
○田村智子君 今、説明なかなか難しかったと思うんですね。これを派遣労働者に分かるように説明していかなきゃいけないと思うんですよ、私は。
 本来、派遣会社とやっぱり契約が、もうツアーをやるということになったら契約発生しているんですよ、労働契約が。これは、私、休業手当払われるべきだと思いますし、記事によれば、この男性はツアーの出発日に空港に向かう途中でキャンセルの電話を受けた、これさえも何も払われていないんですよ、一円も。やっぱり派遣会社に、休業手当の支払義務、こういうのがどういうとき発生するのかということをちゃんと指導しなければならないというふうに思います。
 登録型派遣というのは、今もお聞きいただいたように非常に複雑で、働いている側が自らの権利を理解するということがとても難しいんですよ。派遣先が決まると、派遣会社があって、派遣先があって、労働者がいると。派遣先が決まるとこっちの派遣会社との労働契約なんですよ、派遣会社との労働契約。大抵、契約というのは今三か月とかが多いんですね、登録型の方。だけど、三か月で契約をして、それを継続的に契約更新をして長く働くという方が多くいらっしゃる。
 じゃ、こういう働き方をしている場合に、その派遣期間中に仕事がないから休んでほしいと派遣先から言われてしまった、この場合、派遣会社に休業手当の支払の義務というのは生じますか。
○政府参考人(坂口卓君) お答え申し上げます。
 先ほども御答弁申し上げましたとおり、一般論としまして、使用者であります派遣元事業者に、責めに帰すべき事由による休業に該当する場合には派遣元の事業主は労働基準法上の休業手当を支払う義務があるということでございます。そして、どういった場合にそういったことが該当するかということにつきましては、先ほど申しましたような要素をいずれも満たす必要があるということで、使用者の責めに帰すべき事由に該当するか否かというのは一概にお答えすることは困難でございます。
 ただ、なお、派遣労働者の雇用の維持につきましては、先月二十六日に厚労大臣の方から派遣事業者団体に対しまして、就業機会の確保ができない場合であっても雇用調整助成金の活用により雇用の維持を図ること等を強く求めて、都道府県労働局からも個別の派遣労働者に対して同様に雇用の維持に向けた対応を求めているということでございまして、私どもも雇用を守るという立場に立って必要な対策をしっかり取っていきたいと思います。
○田村智子君 新型コロナだから、何というか、自分の会社の責めがないということにならないんですよ。そうならないように雇用調整助成金も使い勝手を良くしてきたんだから、ここから派遣労働者が漏れるようなことがあってはならないと思うんですね。
 問題は、契約が更新されずに次の派遣先がない場合なんですよ。派遣会社は雇用契約がないからといって休業手当が払われず、収入が断たれてしまうというおそれが高いです。この六月末にもそういう方がたくさん生じかねません。
 ただ、午前中に厚労大臣の答弁があったんですね。こういう場合も派遣会社が雇用を継続するという契約ちゃんと結べば休業手当や新しい支援金で収入をつなぐことができるという答弁があったので、これは是非やってほしいんですよ。そうしなければ、リーマン・ショックのときと同じことがリーマン・ショックのとき以上の規模で起きかねないということです。派遣会社がちゃんと雇用をつなぐのかどうか、雇用調整助成金や新しい支援金制度がちゃんと使われるのかどうか、ここからが問われるんですよ。冒頭、大手派遣会社の会長の発言を紹介しましたけれども、とっても心配なんです、雇用つないじゃ駄目だというような発言ですから。
 是非これ、国会延長して、今月末で契約切れになる登録型派遣の方、契約社員の方、その雇用をどう守っていくのか、これ実態もつかんで議論すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) 派遣労働者の雇用の維持、先ほど局長からも答弁させていただきましたけれども、ちょうどこの六月末、これ三か月三か月なんですが、六月末で契約が更改されるかどうか、大変我々も注視をしているところでありますし、また懸念をされる声もいろいろ聞いているところであります。
 それを踏まえて、五月の二十六日に派遣事業者団体に対して、まず今の派遣契約を続けるように派遣先によく働きかけてほしい、そして、それが難しくても他の先を見付けてほしい、それができない場合にあっても、今度は派遣元事業者が引き続き雇用を継続して雇用調整助成金の活用等によって休業手当の支給を図ってほしい、こういうことを申し上げさせていただきました。あわせて、都道府県労働局からも個別の派遣会社に対して同様の働きかけをさせていただいております。
 さらに、先般、派遣事業者団体のトップともお話を聞いて、現状、そしてそれを踏まえて強く改めて対応を求めたところでございますので、そうしたことをしっかりとPRすることによって派遣の皆さん方が引き続き安心して雇用が維持できていける、こういう環境をつくっていきたいと思っておりますし、最初に委員からお話がありました、いろいろ労働組合が働きかけをすることによって対応が変わる、これ実は私ども労働局もいろいろ情報を得たときに、雇用調整助成金使ってくださいと、使えばこれだけメリットありますよということでそれぞれのところに働きかけをした結果において、中には、それであれば休業手当、助成金を活用して休業手当を支給し、継続するという考えをお示しいただいているところもございますので、さらにそうした方向が広がっていくように努力をしていきたいというふうに思います。
○田村智子君 これ、会社に通知するだけじゃ駄目だと思うんですよ。ちゃんと労働者の側に、派遣で働く皆さんに、あなたは辞めさせられない、そういう道があるんだよと、休業手当を受け取れる権利、これちゃんと行使できるんだよということを是非とも知らせていただきたいと思いますし、国会でやっぱりそれがちゃんとやられているか是非議論をしたいと思います。
 次に、生活困窮への支援についてお聞きします。
 貧困問題に取り組む三十数団体が、新型コロナ災害緊急アクションという相談支援活動を行っています。先週十二日にその報告集会がありまして、私も参加いたしました。メールなどで寄せられたSOSは、所持金が四十円だとか、住むところもないとか、もう命に関わる深刻なものが急増しているというんですね。
 厚生労働省も、支援団体の要望を受けて、家賃を代理で支払う住居確保給付金、この対象を広げたり、生活保護も決定までの手続を一部簡素化するなどしてこられました。これらは、新型コロナの影響で住まいを失うことがないように、また、ほかの施策で対応できない場合には速やかに生活保護を行うようにと求めるものだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) まず、これまでのリーマン・ショック等の経験を踏まえても、やはり住居を確保しておくというのは非常に、住むところを確保するというのは非常に大事でありまして、それが確保されないと様々な制度も活用できない、したがって、それをしっかり応援をしていこうということであります。
 それから、生活保護のお話がありました。まさにこれは最後のセーフティーネットと言われているところでありますので、もちろんいろんな対応をしていく。しかし、どうしてもそういった対応では十分にできないという場合には、こうした生活保護もしっかり活用していただく。そういった方向で、また、今の現下の新型コロナウイルス感染症拡大する中での経済・雇用情勢を踏まえて、生活保護を申請受けた場合の対応についても弾力的に、ちょっと具体的な話は申し上げませんが、弾力的な対応をということを、これはそれぞれの市町村が対応いただいておりますから、そちらに向けて通知も出させていただいております。
 なお、十分じゃないという御指摘もいただいておりますので、重ねてそうした対応を取っていただくように我々の方からも依頼をしているところであります。
○田村智子君 ところが、支援団体からは自治体の不適切な対応が山ほど報告されています。住まいを失った人に対して、劣悪な無料低額宿泊所に入ることを半ば強制する、中には貧困ビジネスで問題になった施設への入所を求めた自治体まであります。相部屋で、あるいはベニヤで仕切っただけで、プライバシーも守られず、緊急とはいえ安心できる生活環境からは程遠く、逃げ出してしまう人まで出ています。新型コロナでは、突然の減収で思いもしない貧困に陥った方も多いんです。
 今後の生活をどうするのか考えて動き出すためにも、まずは安心できる住居、例えば公営住宅や民間のアパートをあらかじめ確保して、まずはそこに入居してもらうというようなことが必要だというふうに支援団体の方々は訴えておられます。これ、質問しませんので、要望だけですけど、是非検討していただきたいと思うんです。
 質問したいのは、生活保護そのものの申請をさせない水際作戦、いまだ多くの自治体で見られます。
 千葉県のある自治体では、漁業をやっている方が、魚が売れなくなって収入が激減をした。生活保護の相談を、行きますと、漁船を売ったら幾らになるのと聞かれて、二十万ぐらいかなと、もう古いからと答えたら、それは資産になるから生活保護は無理だと言って追い返されているんですよ。あるいは、多くの自治体で、マンション、ローンで持っているという方に対して、それは資産価値一千万程度じゃないのと、売れば生活できるでしょうと言ってやっぱり追い返されると。
 これ、漁船売れというのは、なりわいを手放せということですよね。収入がなくて食べるにも困っている方に、自宅売却の商談をしろと求めるのかと。こんなふうに、住まいや働くすべを失わせるのが保護行政なのかということなんです。これらは、生活保護法、その実施要綱、また厚労省の通知にも反する対応だと私は思います。
 厚労大臣に一般論としてお聞きします。新型コロナの影響から少しでも早く立ち直るためには、自立のための能力をそぐような対応、これは厳に改めるべきだと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 現在、資産について、これは無条件で保有を認めるわけではありませんけれども、今委員お話のあった自立、今の状況が改善されれば自立していけると、こうした状況をしっかり確保していくことが大事でありますから、自立の助長等の観点から適切に活用できる資産は保有を認めております。例えば、居住用家屋については、処分価値が利用価値に比べて著しく大きなものでなければ保有を認めている。また、四月七日付けの事務連絡でありますけれども、現下の状況において一時的な収入減少によって保護が必要になる方について、今般の事態の終息後スムーズに就労を再開できるよう、例えば通勤用自動車やあるいは自営用の資産についてもその取扱いを柔軟に行うよう改めて通知をさせていただいているところであります。
 先ほどからの議員の御議論のように、この取扱い、必ずしも徹底されていない事例があるという御指摘もございますので、五月八日、二十六日にも改めて事務連絡を発出させていただいて、その徹底を図らせていただいているところであります。
○田村智子君 そうなんです。何度も通知出しているんです。だけど、残念ながら、生活保護を申請しようとする人を厄介者扱いする対応、蔑む対応が多くの自治体でいまだに見られる。尊厳を傷つけられて、二度と福祉事務所には行きたくない、所持金が底をついてもかたくなに生活保護を拒否する人が少なくない、というか多い。
 何でこんなことになっているのかという私はその根っこを問いたいんですよ。誰もがセーフティーネットを必要とする状況になり得る、生活保護は国民の権利だという認識を、国も自治体も、これ培ってこなかったんじゃないのか。それどころか、バッシングとも言える生活保護への敵意、侮蔑を一部の政党や一部の政治家があおってきた。それが、今、新型コロナの影響で生活困窮に陥っても保護申請をためらわせる重たい足かせになっていると思えてならないんですよ。これでは救える命が救えなくなる、こんなことが起きかねないんです。
 今、政府も私たち政治家も本気になって、生活保護への偏見、誤解、これを払拭することが求められていると思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) 私どもも、こうした新型コロナ感染症が拡大していく中で、雇用を守り、事業を守り、そしてその基本は暮らしを守ることだというふうに認識をしているところであります。
 そういった意味で、先ほど申し上げた最後のセーフティーネットである生活保護というもの、そしてその申請は、全ての国民にこれは認められた権利であるということであります。生活保護が必要な方には確実かつ速やかに保護を実施していくことが重要でありますことから、各自治体に対しては、生活に困窮した方の相談支援窓口である自立相談支援機関と福祉事務所との連携等々を図ることによって生活保護制度を現下の状況において適切に運用する上で、今申し上げた点、特に留意する必要なことをお願いをしているところであります。
 また、私どもまとめたリーフレットも作成させていただいて、生活保護についての制度を説明するとともに、御相談はお住まいの自治体の福祉事務所まで御連絡ください、こうした呼びかけも行っているところでございます。
 先ほど申し上げておりますように、こうした様々な制度、そしてなかんずく最後のセーフティーネットである生活保護、これについてその活用がしっかり、必要な方がその活用が図られるよう、我々引き続き広報、周知に努めていきたいというふうに思います。
○田村智子君 何というか、制度の説明はあるんですけど、その根っこの心がなかなか伝わってくるように思えなくて、なんですよね。
 法政大学の布川日佐史教授が、ドイツの生活保護について、この状況の下で一生懸命紹介をしてくださっているんです。ドイツでは、新型コロナの対応として百二十万人分、一・一兆円を見込んでいるんですね。労働社会大臣が、誰一人として最低生活以下に陥ることがあってはならないという姿勢を明らかに打ち出したんです。そして、大臣自身がオンライン動画で、収入が最低生活費に足りないフリーランサー、パート労働者、学生などに利用を呼びかけていて、初めて利用する方の目線で、こういう制度ですよ、こういう申請をすればいいんですよという説明もしている。そして、最後には、あなたの権利ですというふうに結んでいるというんですよ。
 総理、私、こういう呼びかけが必要だと思うんです。テレビ入っていますから、総理、是非、生活保護はあなたの権利です、この場で呼びかけていただきたいんですけど、どうでしょうか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 先ほど田村委員がおっしゃった、一部の政党が生活保護に対して攻撃的な言辞を弄しているという趣旨のお話をされたんですが、もちろんそれは自民党ではないということは確認しておきたいと思いますが、先ほど厚労大臣が答弁させていただいたように、最後の、厳しいときの最後のセーフティーネットとして速やかな保護が行われるように、本人からの申請を待つばかりではなくて、住民に対する制度の周知や民生委員等と連携して生活に困窮している者の発見等に努めるよう福祉事務所の取組を促すなど、生活保護が必要な方が適切に支援を受けられるように努めたい。
 これは、誰にでも様々な出来事があって生活保護を必要とする事態というのは訪れる可能性というのはあるわけでありますから、そういうときには是非積極的に活用していただきたいと思いますし、また、この生活保護だけではなくて、最大八十万円の緊急小口の資金、これはまさに返済免除の特例も付いておりますので、こういうものも活用しながら、積極的に今回の特別な施策等も活用していただきたいと思います。
○田村智子君 自民党ではないとおっしゃって、私あえて今日は具体に出さなかったんですけど、民主党政権のときにワーキングプアを救おうということで生活保護の受給者増やしたときに、それを攻撃したのは自民党なんですよ。自民党の議員、何人もバッシングやっているんですよ。そのことへの反省もないというのはちょっとどうかなというふうに思うんですが、今日は建設的に提案します。
 これは、長野県のホームページにも掲載されている長野県が作成したパンフレットの一部なんです。「コロナの影響から県民の命とくらしを守る長野県の取組」というパンフレットなんですけれども、生活が立ち行かなくなることは誰にでも起こり得ることです、憲法二十五条の生存権の理念に基づく最後のセーフティーネットが生活保護です、しかし、生活保護に対するある種の偏見や誤った認識などにより相談や申請をちゅうちょしてしまう場合があると指摘されています、生活保護は国民の権利を保障する全ての方の制度ですので、ためらわずに御相談ください。
 実は、この下にまだ続きがありまして、まだ書いてあるんですよ。相談や申請が難しいと思われている方へということで、相談時に書類は不要、事前に扶養義務者に相談していなくても申請が可能、申請時に通帳の写しなど収入や資産等の状況を確認できる書類を提出できない場合、後日の提出でも可能という、こういう対応も書かれていて、これはまさに加藤大臣が言った、厚労省が四月に自治体に通知したことを自治体が県民に対して知らせているんですよ。
 ここが大切だと思うんですよ。健康で文化的な生活、食事ができて、お風呂にも入れて、清潔に暮らせる、そういう当たり前の生活が立ち行かないときには、生活保護はあなたの権利ですと、誰にでも認められている権利です、ためらわずに相談し、申請してほしい。
 私は、こういう広報を政府がコマーシャルもやって呼びかけるべきだというふうに思うんですけど、いかがでしょう、総理。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 当然、これは、田村委員がおっしゃるように、これ文化的な生活を送るという権利があるわけでございますから、是非ためらわずに申請していただきたいと思いますし、我々も様々な手段を活用して国民の皆様に働きかけを行っていきたいと、こう思っています。
 また、現下の状況を踏まえて、例えば新たに就労の場を探すことが困難な場合には稼働能力を活用しているかどうかの判断は保留し、また通勤用自動車、先ほど船の話をされましたが、通勤用自動車等の資産の保有を柔軟に取り扱うなど、運用の弾力化等を自治体に依頼をしているところでございまして、自治体とも緊密に連携しながら対応していきたいと思います。
○田村智子君 住まいを失ったり所持金ゼロになる前に相談してもらえたら、もっとちゃんと生活の立ち直りできるという声、相談者の中からいっぱい出てきているんですよ。これまでの福祉行政、この新型コロナの対応で大きく変える必要がある、このことを求めまして、質問を終わります。


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