国会会議録

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保護実効性乏しい 改定個人情報保護法 田村智子氏追及


(写真)質問する田村智子議員=4日、参院内閣委

 参院本会議は5日、改定個人情報保護法を採決し、日本共産党以外の賛成多数で可決・成立しました。

 日本共産党の田村智子議員は4日の参院内閣委員会の質疑で、個人情報保護法改定案が「個人の権利利益を保護する」という法目的の実効性に乏しいままである点などをただしました。

 田村氏は、リクナビが就活生のインターネット閲覧履歴等から内定辞退率を予測し採用企業に販売していた問題を挙げて、個人情報を人工知能(AI)によって分析し個人の特徴を推定するプロファイリングは重大な人権侵害行為につながると指摘しました。

 リクナビ事件では、厚労省が業界全体に対して「就職活動を萎縮させるなど就活生の就職活動に不利に働くおそれが高い」として、本人同意があったとしても、内定辞退率予測のように個人情報を加工して企業に提供することは職業安定法第51条2項に違反するおそれがあるため行わないように、との見解を示しています。

 田村氏は「(個人情報の取り扱いについて)説明があり同意があればプロファイリングが自由に行うことができる。それでいいのか」と規制を求めましたが、衛藤晟一担当相は「プロファイリングは個人情報の利用形態の一つとしてその利用には期待が寄せられている」とし、利用目的の本人通知などを防止策としてあげるにとどまりました。

 田村氏は、プライバシーポリシーに包括的に同意しなければサービスを受けられないという実態を示し、さらに、内定辞退率予測や、人事評価をAIのみにゆだねることは、改正法案が新たに規定する「不当な行為の助長」にあたるかとただしました。個人情報保護委員会の其田真理事務局長は「該当する場合がありうる」との答弁にとどまりました。

2020年6月10日(水)しんぶん赤旗より

 

【20年6月4日 参議院内閣委員会議事録より】

○田村智子君 
 それでは、法案について質問します。
 まず、前提問題として、個人情報保護法の目的は何かということです。第一条、個人の権利利益を保護することを目的とするというのがこの第一条の条文の結論なんですね。よく、個人データをどう保護するのか、保護と利活用のバランスをどう取るのかと、ここに議論が集中しがちなんですけれども、法の目的は、明確に個人の権利利益の保護なんです。
 情報テクノロジーの急速な発展が個人の権利侵害を起こしかねない、これは相当早い時期から警鐘を鳴らされていました。一九七四年、国連事務総長報告書、人権と科学技術の開発、ここに、様々な分野、例えば雇用、職歴及び教育などで個人の権利、利益、特権についての決定がコンピューター化したデータや評価に基づいて行われており、このことが人権に対する脅威を生じせしめるという問題提起、これ、一九七四年に行われているんですよ。
 現在は、日進月歩で大量の情報の集積とコンピューターによる分析、それに基づく決定が大規模に行われていて、日本でもここから逃れられる人はまずいません。この下で、情報の集積、分析、活用が個人の権利や利益を侵害し、人権に対する脅威となってはならない、この脅威を除去することが法の目的なのではありませんか。

○国務大臣(衛藤晟一君) 個人情報については、前回の改正を行いました平成二十七年でございます、当時から、御指摘のとおり、情報通信技術の進展に着目をしておりまして、そうした技術の進展等にも機動的に対応できるように、法の施行後三年ごとの見直し規定を盛り込んでいます。この三年間の間、大量のデータの収集・分析技術を始めとする情報通信技術の進展によりまして、様々なサービスの登場によりまして、消費者の利便性の向上、ビジネスチャンスの拡大がもたらされた一方、国民の自分の個人情報の取扱いに対する懸念も増大してきたものと認識いたしております。
 個人情報保護法の法目的である個人の権利利益の保護を確保する観点から、こうした国民の懸念に対しては、同時に国民にとっての有用性が損なわれることのないよう配慮しつつ適宜適切に対応することが重要だと考えております。まさに今回提出いただきました改正法案は、そうした状況等に対応し、保護と利活用の両面で強化しようとするものであります。

○田村智子君 この目的に照らしたときに、リクナビ事件、これ、情報テクノロジーの進展の中で発生した、まさに個人の権利を侵害する事案なんですね。これをどう総括し、今回の法改正にどのように生かしているのかが問われなければならないと思います。
 学生の就職活動は、リクナビやマイナビなど就職情報サイトに登録するところから始まります。リクナビを運営する株式会社リクルートキャリアは、登録した学生の内定辞退率を計測するというリクナビDMPフォローというビジネスをしていたことが発覚して大問題となりました。資料一でそのおおよその報道が、お配りしたんですけれども、これ、簡単に振り返りますと、このDMPの利用企業は、自分の会社が持つ就活生の氏名を記号化してリクルートキャリアに提供すると。前年についても、入社したグループ、内定辞退や自社への就活を離脱したグループに分けて学生の名前を記号化して提供する。
 リクルートキャリアは、まず前年の学生について一人一人のクッキー情報、ネット閲覧履歴を、これを基にしてアルゴリズム、計算式を導き出して、就活中の学生のクッキー情報から、ネットの閲覧履歴ですね、ここから内定辞退率を予測して企業に提供していたということなんですね。
 個人情報保護委員会に確認します。
 リクルートキャリア及び利用企業に勧告及び指導を行っていますが、何が問題とされたのか、簡潔にお願いします。

○政府参考人(其田真理君) 第一に、リクナビ運営者は、商品を検討する際に法令遵守等に関して適切な判断を行っていなかったということなど、個人情報保護法第二十条で求められる必要かつ適切な安全管理措置を講じておりませんでした。また、二十三条で求められる必要な本人同意を得ずに個人データを第三者に提供しておりました。
 第二に、リクナビ運営者は、採用企業側では特定の個人を識別できることを知りながら、自らにおいては個人に当たらない形式で個人データの第三者提供の同意取得を回避するスキームで情報を提供するサービスを行っておりました。これは、本人の同意を求める二十三条の趣旨を潜脱するものであるというふうに判断いたしまして、これを踏まえて委員会から勧告を行いました。

○田村智子君 勧告、指導を行われたのはリクルートキャリアだけでなくて、利用企業として京セラ、トヨタ自動車、三菱商事、三菱電機、りそな、デンソー、NTTコムウェアなど、名立たる大企業が行政指導を受けたんですね。個人情報の取扱いの基本中の基本である説明と本人同意さえ、こういう大企業で適正に行われていなかった。このリクナビ事件というのは、私は氷山の一角ではないのかと思えてくるんですね。
 今日の議論の中でも、個人情報の保護と利活用のバランスということを言われましたけど、バランスというのなら、これ、保護の方に力点を置くことが求められている、このことをリクナビ事件は示したと思いますけれども、大臣、どうでしょう。

○国務大臣(衛藤晟一君) 個人情報保護法の法目的は個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することとされているところ、個人情報の有用性の配慮の前提として、個人の権利利益の保護がしっかりと確保されることが必要と考えています。
 本法案においても法目的に沿った内容となっており、利用停止、消去等の要件の緩和、漏えい等報告等の義務化、ペナルティーの強化、域外適用の範囲の拡大など、個人の権利利益の保護の確保につながる施策を多く盛り込んでいるところでございます。

○田村智子君 私は、保護ということ、あるいは個人の利益、権利の保護、こう考えたときに、余りにも議論が深まっていないように思えてならないんですよ。
   〔理事上月良祐君退席、委員長着席〕
 このリクナビ事件での個人情報保護委員会の勧告は、法令にちゃんと沿った取扱いを検討したかという根本的な問題もあるんですけど、つまりは情報の取扱い、手続論だけを問題にしているように見えるんです。それは現行法に基づく指導であり勧告だから、これは現行法の大きな弱点でもあると私は思います。
 一方で、このリクナビ事件を受けて、厚生労働省は職業安定局長名で全国求人情報協会理事長と人材サービス産業協議会理事長宛てに文書を発出しています。資料の二としてお配りしました二ページのものです。そのうち資料の三枚目、ですから二ページ目ですね、これを見ていただきますと、どういう中身で言わば要望をしてお願いをしているかが分かるんですが、中の一のところにこうあるんですね、収集した個人情報の内容及び提供先について、あらかじめ明示的に設定された客観的な条件に基づくことなく、募集情報等提供事業者の判断により選別又は加工を行うことは認められない、これについて厚労省さん、御説明をお願いしたいと思います、分かりやすく。お願いします。

○政府参考人(岸本武史君) お答えいたします。
 先生御指摘の昨年九月に行いました厚生労働省から人材サービス産業協議会及び全国求人情報協会に対する要請の内容の項目一でございますが、募集情報等提供事業は、労働者になろうとする方の依頼を受け、その方に関する情報を募集企業に提供するものであるということ、したがいまして、収集した個人情報の内容、提供先について、あらかじめ明示的に設定された客観的な条件に基づくことなく、募集情報等提供事業者の判断により選別又は加工を行うことは認められないこととしております。
 この趣旨でございますが、職業安定法に基づいて私どもとしては要請をいたしたわけでございますが、職業安定法との関係におきましては、個人情報のそのような選別、加工を行うことは募集情報等提供事業ののりを越えるものであり、職業紹介に当たる、当たり得るということを踏まえて、このような要請の項目一を行ったものでございます。

○田村智子君 だから、内定辞退率ということを予測することのために個人情報を使うこと自体がのりを越えていると、これ自体がもう個人の利益を損害するような、損するような、そういうものだという厳しい指摘をしているんですよ。
 二項目めについては後で取り上げたいんですけど、三項目め、学生等の他社を含めた就職活動や情報収集、関心の持ち方などに関する状況を本人があずかり知らない形で合否決定前に募集企業に提供することは、募集企業に対する学生等の立場を弱め、学生等の不安を惹起し、就職活動を萎縮させるなど学生等の就職活動に不利に働くおそれが高いとして、職業安定法第五十一条第二項に違反するおそれを指摘しています。
 これもポイントの説明をお願いします。

○政府参考人(岸本武史君) お答えいたします。
 同じ要請の中の項目三でございますが、これは、内容を今御紹介いただいたとおりでございますが、本人同意なく、あるいは仮に同意があったとしても同意を余儀なくされた状態におきまして、本人があずかり知らない形で合否決定前に就活生の個人情報を募集企業に提供することは、様々な形で就活生の就職活動に不利に働くおそれが高いのではないか、また、このことは、その本人同意があったとしても直ちに解決する問題とも言い難い側面があるのではないかというようなことから、御指摘のような要請、項目三項になったところでございます。

○田村智子君 これは、学生が様々な企業に興味や関心を持ってその情報を得ることは、憲法二十二条にある職業選択の自由の保障なんですよ。主体的な就職活動をする上でも不可欠のことなんですよ。
 ところが、その情報収集という行動履歴が、企業側が学生を評価するためにその分析の手段にされたと。たとえ本人同意があろうとも、これでは就職活動を萎縮させてしまう。学生と企業は対等な立場でもありません。圧倒的に強い力を持つ企業側が学生の内心の自由を含め権利侵害をもたらすような情報の利活用をすることは、自由な就職活動を阻害するということだと思うんですよ。
 これは、例えば、採用してもらうためには、ライバル社の情報は本当は見てみたい、だけどアクセスしないでおこうとか、本当は環境問題なんかにも関心があってそういう企業にアクセスしたい、だけど、そうするとそういう政治的関心を持っているのかなということが伝われば就職に不利に働くんじゃないか、となればアクセスができない。これ、もう就活はもちろんなんですけど、そこにとどまらない行動の萎縮、権利の侵害を引き起こすことになるんですよ。
 衛藤大臣、私は、これこそ個人情報保護行政が今検討すべき課題だと思いますよ。あなたの情報をこういうふうに使いますという説明があって同意があれば、個人の情報の分析、AIによるプロファイリング、自由に行うことができる、それでいいのかということです。
 そういう検討はこの法案の策定の過程で行われましたか。

○国務大臣(衛藤晟一君) いわゆるプロファイリングについては、個人情報の利用形態の一つとしてその利用には期待が寄せられているという具合に認識していますが、利用の方法については問題になり得るという具合に考えています。
 議員御指摘の内定辞退率のプロファイリングについても、その利用の方法については様々な議論があったところであります。
 その上で、個人情報保護法、プロファイリングを行う個人情報の取扱いに当たっても、利用目的の本人への通知、公表、第三者提供に対する、関する同意といった個人の権利利益の侵害を防止する仕組みという具合になっているところでございます。

○田村智子君 AIによるプロファイリングというのは、何でそう評価されたのかが分からないブラックボックスになるんですよね。評価の根拠となる事実認定が誰にもできないのに、膨大な情報から人知を超えた人工知能が評価したからだと絶対視されてしまう危険性が極めて高いんですよ。
 この内定辞退率予測も採用内定者への企業のフォローに役立てるためと説明されてきたんですけれども、私たちのしんぶん赤旗の取材でも、リクルートキャリアの広報担当は、合否判定に使用されたことが分かり、提供を停止した企業もあったということを認めています。AIの判断で学生をふるいに掛けることに何のためらいもない、企業の採用活動の労力がこれで省かれるというようなやり方ですよね。
 これ、人事評価にも使われたらどうなるんでしょう。労働者は、自分が何を根拠に評価されたのかも分からない。銀行の融資の個人に対する信頼評価、保険の加入で個人の嗜好や行動からの健康評価、これらもあずかり知らないところで評価されて、不利益をもたらされるというおそれがあるわけですね。
 個人の利益を保護するという法の目的に照らせば、プロファイリングの在り方について、こういうものはやっては駄目だぐらいのそういう規制が、これは検討必要だと思うんですけど、いかがでしょう。

○国務大臣(衛藤晟一君) 御指摘のとおり、プロファイリングそのものを全部否定するということには恐らくいかないんだろうと思います。
 ただ、そういう中で、例えば内定辞退率の算出とかいうような形でこれが利用されるということはおかしいということで、先ほどからお話を申し上げましたように、これについて一定の規制を掛けるべきだということで、利用目的の本人への通知、公表、それから第三者提供に対する、関する同意といった個人の権利利益の侵害を防止する仕組みということを考えて、ここに議論したところでございます。
 そういう意味をもちまして、それらの今までの懸念に対しまして、今般の改正においては、利用停止、消去等の要件の緩和、不適正利用の禁止、第三者提供記録の開示、提供先における個人データとなることが想定される情報の本人同意といった規律を導入したところでございます。

○田村智子君 その実効性をちょっと問いたいんですけど、例えば厚生労働省は労働者の個人情報保護に関する行動指針というのを二〇〇〇年二月には示していました。その中には、使用者は、原則として、個人情報のコンピューター等による自動処理又はビデオ等によるモニタリングの結果のみに基づいて労働者に対する評価又は雇用上の決定を行ってはならないとしていたんですね。つまり、人事評価をコンピューターに任せては駄目だと、コンピューターのプロファイリングに任せては駄目だというふうに書いてあったわけですよ。ところが、個人情報保護法が制定されたことで、この法律で包括的に保護されるからということで、この行動指針そのものが今は廃止になってしまったんですね。
 じゃ、今そういう法律になっているか、改正法でそうなるのか。今大臣が言われた十六条の二、改正法案、「個人情報取扱事業者は、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法により個人情報を利用してはならない。」、これは、内定辞退率の予測、コンピューター、AIによる自動処理での人事評価、雇用上の決定、これは不当な行為の助長に当たるということになりますか。
○政府参考人(其田真理君) 御指摘いただきましたような事例について、実際の個人情報の利用の態様、個別具体的な実態を詳細に把握した上で判断することが必要でございますので、一概にお答え申し上げることは困難でございますが、その上で、一般論として申し上げますと、そうした行為が法令に違反することを認識しているような場合において違法行為を助長し又は誘発するような個人情報の取扱いを行うことは、不適切な利用に該当する場合があり得るものと考えております。

○田村智子君 今の答弁だと、裁判で闘わなきゃ結論出ないということになりかねないんですよね。厚生労働省が指導した中身、ガイドラインで示していた中身、それさえも不当であると言えないんですよ。裁判で闘えということになるんでしょうか。
 改正法案では、個人情報の利用停止、第三者への提供の停止を請求できるという条項が加わります。では、例えば通販などを利用したことで事業者に取得された個人情報について、私はプロファイリングはしたくないと、通販で買物はしたかったんだと、でもそれ以上に利用してほしくないという理由で、利用の停止、第三者への提供の停止を請求することはできますか。

○政府参考人(其田真理君) いわゆるプロファイリングにつきましては、今回の改正で、利用停止、消去の要件の緩和、不適正利用の禁止、第三者提供の開示、提供先において個人データとなることが想定される情報の本人同意といった規律を導入したところでございますけれども、ただいまのような事例におきまして、停止してほしいことについて停止することを求めることはできると思いますけれども、そのお買物をすることと、あとはその利用すること、お買物をして、その契約を履行するために必要な部分については、利用は停止はできないというふうに思います。

○田村智子君 事業者任せになると思いますよね。
 それで、一番は、そこで同意をもうしちゃっているんですよね。そうすると、じゃ、一度同意したことについて、やっぱり不安になったと。じゃ、同意、プライバシーポリシーへの同意、これ不安だからということで同意の取消しはできますか。

○政府参考人(其田真理君) 個人情報保護法上、その同意の撤回という規定はございません。ただし、この提供してほしくないというお申出については多くの企業が事実上応じているという実態はございます。
 また、苦情を真摯に受け止めて、迅速に、適切に処理しなければならないという個人情報保護法上の義務も事業者にはございますので、そういったお申出については事業者が対応するというふうに考えております。

○田村智子君 法律ではなく事業者に委ねられているんですよ。
 その同意なんですけど、先ほどのリクナビ事件で、厚労省の文書の二項目めを見てほしいんです。本人の同意を取得する場合には、その判断が形式的なものとならないようにという指摘だけではなく、同意することをサービス利用の条件にすることで実質的に同意を余儀なくさせるような取扱いをしないこととあるわけです。これ、とても大切な指摘だと思います。
 リクナビやマイナビを提供している就職情報提供企業は、大学などの就職ガイダンスを請け負っています。ですから、ある大学の教員の方からそのガイダンスの様子をお聞きしたんですけれども、そのガイダンスにリクナビやマイナビの社員の方が来て、学生さんに、はい、皆さんスマホ出してください、この画面に入ってください、ここをクリックしてくださいってもう登録案内をさくさくさくっと進めるので、個人情報の取扱いについての長い文章を読む時間は全くなかったというんですね。恐らく大抵そうでしょう。
 じゃ、読めてもいない、だから保留したい、あるいは自分の情報がどう使われるか分からないから利用目的を制限したい、これも大変難しいです。プライバシーポリシー、リクナビのやつよくよく読んでみますと、クッキー、閲覧情報については、オプトアウト、利用の拒否ということを後から申告できるんですね。だけれども、それをやると、同意しなければサイト内のサービスが受けられないことがありますってただし書があるわけですから、それでもオプトアウトする学生というのはまずほとんどいないでしょう。これは、私がこれまで経験したネット上のサービス利用も全て同じですよ。個人情報の取扱いについてプライバシーポリシーに包括的に全部同意をしなければ利用ができないんです。
 まさに同意せざるを得ないという実態があるんですけれども、このこと、大臣はどうお考えになりますか。

○国務大臣(衛藤晟一君) 現行法上は、個人の意思を反映する仕組みとして、一定の場合に本人は利用停止、消去等の請求を行うことができます。また、今回の改正法案では、消費者の方々の御意見を踏まえ、利用停止、消去等の請求の要件を緩和し、本人の関与をより強化することとしています。
 同意しないとサービスが利用できないという場合が一部に存在するのは事実と認識していますが、まずは、事業者が個人情報を取り扱う場合に、個人に丁寧に説明いただき理解を得ることが何よりも重要と考えています。こうしたことを通じて、委員御指摘の不本意な同意を行うことなく本人が必要なサービスの提供を受けることができるようになっていくことを期待いたしています。

○田村智子君 まあ不本意といいますかね、同意せざるを得ない状況が相当に広くあると思うんですよね。それで、よく、じゃ、そういう個人情報の利活用を同意したくないなら、そもそもサービス利用しなければいいじゃないかという、そんな議論もあるんですけど、これ、とても乱暴な議論で、契約の自由をこれは阻害するということになるわけですね。
 就職活動では、これ利用しなかったら、同意しなかったら激しい情報格差が生じて、圧倒的な不利が生じます。キャッシュレスということも、決済データを利活用した商品開発、販売促進が急速に進んでいて、自分のデータがどんなふうに使われているのかよく分からないんですね。そのことがもたらす問題というのはほとんど議論もないままに、政府自身が、ポイント還元だ、あるいはマイナンバーカードでお買物ができるようになれば二五%還元だとかって政府が旗を振るわけですよ、オンライン決済に。これ、利用しない人と利用している人で経済的格差を政府がつくっていくんですよ。
 カナダのトロント、スーパーシティ計画中止になりました。この計画は、誰も住んでいないウオーターフロントに新しい町をつくるというものでした。ところが、そのエリアに監視カメラが大量に設置されて、エリア情報のビッグデータ化をするという計画だということが分かって、周辺の住民がこの地域を回避して移動するという問題が起きたんですね。それで、移動の権利が、何というか、阻害されると、私の行動は監視されたくないと、このことが大問題になって、新型コロナの問題とも相まって計画が断念ということに今なっているわけなんです。
 日本でも、スーパーシティ構想、これ、顔認証システムとかオンラインの更なる活用が政府の旗振りで急速に進められようとしています。スーパーシティ法案では、個人の情報の集積と活用がプライバシー保護と矛盾するんじゃないのかと、あるいは監視社会になるんじゃないのかという問題提起が幾つもされたんですけど、それらに対する答弁は全部、個人情報保護法にのっとってやるから大丈夫という、そういう答弁になっているわけですよ。しかし、実態は、プライバシーポリシーへの同意、ごめんなさい、実態は、個人情報保護法は、事実上その同意があればどのような利活用もどうぞという仕組みになっちゃっているわけですね。ただし、しっかり説明してください、同意を取ってくださいと。
 私、先ほど言いましたように、実態は、プライバシーポリシーへの同意というのはこれまで実に形式的だったと思います。読んでもいないで、とにかく早く通販で買物をしたいからチェックするとか、学生さんの就職活動のように、とにかく登録を済ませなければ、同意をしなければ次に進めないですから、だからチェックをする。実に形式的だったと思います。あるいは、サービスを利用するためには包括的に同意せざるを得ないという状態がつくられてきたんだというふうに思うんですね。
 そうすると、ちょっと私、提案をしたいんですけれども、やっぱりそういう状態での同意なんですから、利用の停止とか第三者への提供の停止、この請求の権利、同意の撤回の権利、これどうするのかということをやっぱり考えるべきですよ。法に組み込んでいくべきですよ。それから、包括的な同意ではなくて、例えば、私が利用するサービスの範囲に限った、このサービスの範囲に限って私の情報は使っていいですよと、それを超えた、のりを越えたプロファイリング等々のは同意できませんと、こういう選択ができるようにするということも私は必要だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(其田真理君) その同意の取り方についての議論は種々ございまして、やはりリクナビのときもそうでございましたが、まず説明が全然なっていないと、個人が全然理解できないような同意、目的の指定の仕方は駄目でしょうというようなこと、あるいは、おっしゃるように、何でもかんでも全部同意しないとある一つのサービスを受けられないといった問題、様々な問題がありますけれども、こういった、これは法律にがちっと書くことはなかなか難しいわけでありますけれども、どういう場合に、どういったケースは、これはよろしくないですね、こういった形がグッドプラクティスですねというようなことは、個人情報保護委員会でもフォロー、検討して、お示しできるものをお示ししていきたいと思います。

○田村智子君 もう一点、クッキーの問題なんですよ。
 今日も議論ありましたけれども、やっぱりネット閲覧履歴は個人情報ではないというのは私は問題あると思います。EUではクッキー情報は個人情報として保護の対象とされています。日本で何でそうならないのと聞きましたら、デバイスはですね、インターネットを利用するもの、機械ですね、これはイコール個人ではないというふうに説明を受けたんですけど、一番今皆さんがネット検索するのはスマホじゃないでしょうかね。そのスマホが誰かと共有なんということあるでしょうか。スマホは限りなく個人ですよ。そこのネット閲覧履歴が記号が付けられていくわけですから、これがどうして個人情報じゃないのかと。やっぱりネットの閲覧履歴というのは一番内心に関わる問題です。何に関心持っているのか、どういう行動をしようと思っているのか、それが全部、インターネット上に全部まとめられていくわけなんですよ。
 これを今回の法制で、法改正で何で個人情報の保護の対象としないのかということを私大変疑問に思うんですけれども、いかがですか。

○国務大臣(衛藤晟一君) 個人情報保護法ではクッキー等の端末の識別子を単体で個人情報とは確かに定義をいたしておりませんが、特定の個人を識別できる形で取り扱っている場合は個人情報として個人情報保護法上の規律に服することになります。
 今回の検討では消費者や事業者双方から多様な意見が、御意見が寄せられましたが、端末識別子そのものについては、関連する技術、ビジネスモデルの実態が多様かつ変化が激しいことを踏まえ、まずは自主的ルール等による適切な運用が重要と考えたところであります。

○田村智子君 リクナビの事件でこれは法の潜脱だというふうに言われたのは、まさにクッキー情報によって個人の特定ができたんですよ。すごい汚いやり方をしたんですけれども、リクルートキャリアが自分が持っているクッキー情報が誰のものか分からないんですよ。その企業が欲しがっている個人のものとこのクッキー情報がどうつながるか分からないんですよ。だから、こっちの企業にアンケート、ダミーアンケートをさせるんですね。そのダミーアンケートに就活生が自分のスマホから入りますね。で、そのアンケートがリクルートキャリアに入るんですよ。そうするとそこに、企業の側のアンケートだと思って学生さんはアンケートに答えた。で、そこで記されたクッキーの番号とリクルートキャリアの中でサイトを見ていたクッキーの番号は一致しますから、これで個人が特定できたんですよ。
 クッキー情報って簡単に個人が特定できるんですよ。そのことを個人情報保護委員会も指摘をされていますよね。あたかも個人が特定されないかのようなやり方で個人を特定したんだと。クッキー情報なんですよ。
 そう考えると、これやっぱり遅れ遅れでは本当に駄目だと思うんですね。まさにこういう使われ方が現にされたんです。現にされて、そして個人情報保護委員会からの勧告まで受けた事例まで生じたんですよ。これ三年待つんですか、また。これ直ちにクッキー情報の扱いについては検討するということ求められていると思いますが、大臣、もう一度お願いします。

○国務大臣(衛藤晟一君) 先ほどから答弁を申し上げているとおりでございまして、個人情報保護法ではクッキー等の端末識別子を単体で個人情報とは定義していませんが、特定の個人を識別できる形で取り扱っている場合には個人情報となります。また、リクナビ事案については、今回の改正法で個人関連情報に関する規律を導入することで対応を行ったものであります。
 委員御指摘のように、今回の措置に加えて、クッキーそのものを個人情報として扱うべきだという意見があることは承知いたしておりますが、まずは今般、改正法の施行状況を踏まえて、クッキーの取扱いについて引き続き注視していきたいと考えています。

○田村智子君 一方で、政府は、先ほども言いましたけど、スーパーシティ構想だといって、もうまさに情報テクノロジーを最大限利用して、それでワンスオンリーですか、一人一人にあなたに最適のサービスを提供しますという町づくりまで目指しているんですよ。それ、どういうことかといったら、個人を特定してプロファイリングした上で、個人に、あなたにこういうサービスがいいですよねというのを提供するということまで構想としてあるんですよね。それで、中国の監視社会ということなんかも大分私たちは批判をしましたけれども、そういう中国の杭州市なんかも超えたものがスーパーシティだと。その情報テクノロジーをも超えたものがスーパーシティで、それを国内で五か所つくるんだと。そんな旗振りまでやっていて、個人情報保護法の改正がこの程度でいいのかということですよ。
 本当に、個人が丸ごとですよ、個人が丸ごとプロファイリングされて、自分の情報がどう分析されているのかも分からない、どこでどう活用されていくかも分からない。そういう社会がこのままだとどんどんつくられていってしまうんですよ。そのことに追い付いていないんですよ、個人情報保護法が。
 かつての名簿が云々とか写真が云々とか、そんなレベルじゃないんですよ、個人の情報って。個人の人格、個人の人生、個人の健康とかビジネスとか、あらゆるそういうことに対する分析が行われ、評価が行われていったらどうなるのかという、そういう問題を私たちはもっともっとこの個人情報保護の問題では議論しなくちゃいけない。そして、個人の権利利益を守るということはどういうことなのかと、そのことを議論しなければ駄目だと、このことを申し上げて、質問を終わります。


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