国会会議録

国会会議録
文教科学委員会で学校施設のアスベスト問題について質問

日本共産党の田村智子議員は28日の参院文教科学委員会で、学校施設のアスベスト(石綿)対策について質問。健康被害を生じさせないために、専門家による調査を徹底させることなどを求めました。

 田村氏は、2012年に大阪府内の高校で発がん性が高い青石綿の飛散事故が発生したことを指摘。被害を起こさないために▽アスベスト使用の建材などが学校施設のどこに使われているかを認識し、適切に管理する▽計画的に学校施設の「ゼロ・アスベスト」を進める―ことが必要だと主張しました。

 下村博文文科相は、「学校施設等からアスベストを全廃していくことは重要」との認識を示しました。

 田村氏は、文科省が05年から毎年、吹き付けアスベスト等の使用実態調査に取り組んでいるにもかかわらず、「見落とし」や「分析ミス」が08年以降、65の公立学校で発覚していることを指摘。国家資格である「建築物石綿含有建材調査者」が全てのアスベストを調査し、記録することを提案しました。

 下村氏は、有資格者が少ないことから「現実的には難しい」などと述べ、これまで通り学校設置者の判断で専門家の活用を促す考えを示しました。

 

2014年10月28日 参議院文教科学委員会

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 今月九日、泉南アスベスト訴訟で最高裁は、初めて国の対策の遅れが被害を広げたことを認める判決を言い渡しました。原告の皆さんは、肺がんや中皮腫などの重篤な病気を抱えながら、謝罪、賠償とともに、アスベスト被害の根絶を命懸けで求めておられます。
   〔委員長退席、理事石井浩郎君着席〕
 私は、文教施設などでアスベスト被害を根絶させるためには、これは教育行政が責任を持って様々な対策を行うことが必要だと考えています。学校でのアスベストの暴露をさせない、発生させないためには、私、二つのことが大切ではないかと。一つは、アスベストを認識し管理すること。その認識というのは、飛散の危険性が著しく高い吹き付けなどですね、レベル1、これはもちろんですが、張り付けられている、巻き付けられている断熱材などのようなレベル2、そして封じ込められているから安全だと言われている建材なども、こうしたアスベストが学校のどこに使われているのかということを認識し、適切に管理するということ。そして二つ目に、やはり計画的にそうしたアスベストを除去していって学校施設のゼロアスベストを目指す、こういうことが必要だと思いますが、大臣の見解をお聞かせください。

○国務大臣(下村博文君) 文部科学省では、平成十七年度に学校施設等における吹き付けアスベスト等の使用実態調査を実施し、その後、毎年度フォローアップ調査を実施するとともに、本調査結果を含むアスベスト関係書類について保存、管理を徹底するよう要請しているところでございます。また、御指摘のとおり、学校施設等からアスベストを全廃していくことは極めて重要なことと考えております。
 しかし、石綿含有建材の除去を進めていくためには、教育環境の悪化や教育活動への支障等を生じさせないようにするため、封じ込めや囲い込み等も併用して暴露のおそれのない状態を維持しながら、大規模改修等を行う際に併せて除去していくことが効率的と考えております。
 文科省としては、学校施設者等の改修計画や要望を踏まえまして、アスベストの全廃に向け支援をしてまいりたいと考えます。

○田村智子君 私も、今すぐいきなり行えと求めているわけではなくて、ゼロアスベストを目指すという方向性が必要だというふうに思います。
 大阪府立金岡高校で、二〇一二年十月から十一月にかけて、発がん性が最も高い石綿、青石綿の飛散事故が起きました。大規模改修でひさしの天井板を剥がしたところ、青石綿が吹き付けられていたと。ところが、施工業者は石綿飛散の定期検査で指摘されるまで三週間にわたってこのことに気が付かず、青石綿をむき出しの状態としました。また、校舎内には落下した青石綿の塊も複数発見されるなど、生徒や教職員の暴露を起こしてしまったという事故です。さらには、二〇一三年五月、撤去されたはずの石綿含有の廃材、この工事で撤去したはずの廃材の破片が校内で発見されるなど、あってはならない事態が繰り返されました。
   〔理事石井浩郎君退席、委員長着席〕
 このように、既に把握していなければならない、そして飛散させてはならない吹き付けアスベストさえも認識や管理に瑕疵があるということを文部科学省は認識をしておられますか。

○政府参考人(関靖直君) 今お話のございました金岡高等学校では、建設時の校舎図面にアスベストを使用する旨の記載がなかったことから、十分に調査せず、アスベストの使用がないものとして工事を進めたため、吹き付けアスベストの小片が工事現場内の複数箇所に散乱するなどの状況があったと聞いております。この設置者である大阪府教育委員会では、その後、有識者を含む協議会を設置し、アスベスト飛散の原因となった工事、作業の内容、飛散状況、健康への影響及び再発防止策等について検証を行っていると聞いております。
 改修工事の過程におきまして吹き付けアスベスト片が散乱したことにつきましては大変遺憾であり、今後、検証結果等を踏まえ、同様の事故が起こらないよう調査を着実に行うこと及び施工時の確認等について注意喚起を行ってまいりたいと考えております。

○田村智子君 この金岡高校については、事故の原因解明と説明が不十分だということで、保護者の皆さんが今も運動を続けておられます。是非、原因解明と説明が行われるよう、また、長期にわたる生徒や教職員の健康観察がしっかりと行われるよう文科省としても必要な指導を行ってほしいと要望しておきます。
 こういう事故が起きる背景の問題、原因といいましょうか、先ほど大臣から御答弁あったように、文部科学省は二〇〇五年、平成十七年に吹き付けアスベスト等使用実態調査を行い、調査報告によりますと、公立小中学校、幼稚園の一〇〇%、公立高校、大学も二機関を除いてこの年度に調査が行われました。二〇〇八年には、新たに三種類のアスベストの分析が必要となり再度全機関調査が行われ、この調査も二〇一二年十月一日時点で公立小中高校は全て調査済みというふうにされました。それにとどまらず、フォローアップの調査を毎年行う、あるいは注意喚起や石綿分析機関や除去の工事ができる事業所の紹介など、ここにも置きましたけど、たくさんの通知も出されて文部科学省が努力をされてきたことは私も理解をいたします。しかし、残念ながら、こうして調査済みとされたにもかかわらず、見落としや分析ミスということが毎年のように指摘をされています。
 資料をお配りいたしました。NPO東京労働安全衛生センターが、報道されたものだけですね、これを基に調べたところ、二〇〇八年以降、公立の小中高校、幼稚園六十五施設で見落とし、分析ミスがあったとされています。
 今年を見てほしいんですね。今年六月、北海道釧路市、九つの小中学校で天井や天井裏で吹き付けアスベスト等が発見されています。実は釧路市は、先ほど言った〇八年の再調査のときにももちろん全小中学校の調査を行いました。そこでも二〇〇五年のときの見落としで四校発見したんです。今年発見された九校は、この二〇〇八年の調査でも見落としをしたんです。つまりは、二〇〇五年の調査時点から見ると、これはもう当時から見ると、廃校になった学校施設を含めると四十七施設のうち十三校、三割近い学校で見落としがあったということになるわけです。
 これは、岡山県倉敷市もフォローアップで見付けたんじゃないんです。ある中学校の耐震工事のときに音楽室、図書室の天井で吹き付けアスベストが発見された。そこで、百五十校を改めての調査を行ったら、二十二校で発見されたと。こうした事象は氷山の一角ではないかと指摘をされているわけです。
 こうした見落とし、分析ミスへの対策が必要だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(下村博文君) 御指摘のように、吹き付けアスベストの調査におきまして見落としや分析ミスがあったことは誠に遺憾であります。
 文科省では、毎年度、全機関を対象に繰り返しフォローアップ調査を行うことでアスベストに対する意識を維持しつつ、万が一見落としがあった場合には早期に対策を講じるとともに、フォローアップ調査、反映させるよう要請しているところであります。
 今後とも、着実にフォローアップ調査が実施されるよう、注意喚起をしてまいりたいと思います。

○田村智子君 これ、フォローアップ調査というのは、基本的にはまだ調査が行われていないところと吹き付けアスベストが見付かったところのその後がどうかという調査というふうに通知がされているんですよ。だから、私は、調査は終わったところで見落としが起きている、これがなぜなのかという分析が必要だと思います。
 今日は国交省さんにも来ていただきました。アスベスト対策に関わってきた方からは、専門的な知識を持たない人が調査を行えば見落としは起こり得るという指摘があります。国土交通省は、石綿調査の国家資格である建築物石綿含有建材調査者制度を昨年からスタートさせています。この制度が必要だとされた理由について、簡潔にお示しください。

○政府参考人(杉藤崇君) お答え申し上げます。
 国土交通省では、委員御指摘のとおり、昨年七月に建築物石綿含有建材調査者講習登録規程を定めまして、中立かつ公正に正確な調査を行うことができる調査者の育成を図っているところでございます。
 この調査者を設けた理由でございますけれども、建築物の石綿調査を適切に進める観点から、私ども国土交通省の社会資本整備審議会建築分科会アスベスト対策部会というところで、建築物とアスベストの双方について知識と技能を有し、公正中立である者、こういった者の育成が必要とされたことからこの制度を創設したものでございます。
 この調査者には、国土交通大臣に登録された講習機関で講習をしっかり受講していただくことにしてございますけれども、この講習の中では、建築物の中で石綿が使用されている可能性がある部分がどこなのかといったことに関する知識を有していること、あるいは石綿含有建材であるかどうか、またその劣化状態について適切に判断ができること、さらに建物所有者などに対しまして必要な対策について適切な助言ができること、こういったことにつきまして必要な知識と技能を修得していただくことになってございまして、今後ともこの調査者の育成を促進し、これら調査者の活用を図ってまいりたいというふうに考えてございます。

○田村智子君 今の御答弁のとおり、見るべき場所が分かると。それから、お聞きしましたら、虫眼鏡で見ても石綿なのかどうかというのの見極めが大体付くということなんですね、専門的なことを学んだ方は。この資料を見ますと、やっぱり見るべき場所の見落としということが決してレアケースではないということが私は言えると思うんです。
 そこで、私、大臣に今日は提案をしたいんです。実は今年七月、文科省は、断熱材などとして配管に巻き付けられていたり、あるいは煙突の内側に張り付けられているなどのレベル2についても、今まではレベル1なんです、吹き付けなんです、今回レベル2のアスベスト使用の調査を始めたんです。今年は、まずは目視で、アスベストかどうか分からないけど、とにかくこの配管のところが破損している、何か分からないけど、むき出しになっていると、こういうところを確認をして、取りあえずむき出し状態の応急処理をしなさいと、来年度以降、アスベストが使われているのかどうか、このレベル2についての調査を全施設で行っていくということになるわけです。せっかくの調査でまた見落としが起きたら同じことの繰り返しになるわけですね。
 この国家資格を持つ専門家という方は、まだ昨年始まったところなので、現時点で二百人程度と規模はまだ小さいんですけれども、国交省も鋭意育成に努めているとお聞きをしています。学校や幼稚園こそ専門家による調査が必要な施設だと思います。例えば、五年掛けてとか、優先順位を付けてとか、学校のアスベスト使用実態について国家資格を持つ専門家がレベル1からレベル3まで調査し、記録する、こういう対策が私は求められていると思うんです。
 これ、レベル1の調査は、実は国交省の交付金で、再調査であっても十分の十の補助金も出ます。こういうことも是非知らせてほしいし、各地でレベル1の見落としが発見をされているんだということも周知をして調査を呼びかけてほしいと思いますが、大臣、是非検討していただきたいんですが、どうでしょうか。

○国務大臣(下村博文君) 建築物石綿含有建材調査者につきましては、文部科学省としても、アスベスト関係の通知に本制度を紹介するなど、その活用を促しているところであります。
 しかしながら、今御指摘ありましたが、本制度は昨年の夏に創設したばかりで、登録者は現在百八十六名と非常に少数ということで、全国の学校施設等の石綿調査を本調査者のみに限定することはまだ現実的ではないという状況であるというふうに考えます。
 一方、従来の建築士や施工管理技士、施工業者等の専門家、有識者による調査でも精度の高い調査が実施できるということでもありますので、どの者に委託するかどうかについては、これは学校設置者等の判断を尊重すべきであると現在のところ考えます。

○田村智子君 是非、見落としがあるんだということを注意喚起をして、できる限り専門家を使った調査、長期に掛かってもやはり専門家が調査したというように、学校を一つ一つチェックしていくというふうなことを検討していただきたいと思います。
 私は、今の時点ではレベル3建材などについては調査対象にはなっていないんですよ、吹き付けとその囲われているアスベスト。建材は安全なのかということなんですけれども、これは阪神・淡路大震災、東日本大震災もその建材が破損をしてアスベストが飛散しているということが指摘をされていますし、それだけではなく、二〇〇八年に起きた川崎南高校の解体工事では、市民が危険性を指摘していたにもかかわらず、アスベスト含有の煙突筒が壊されて、校舎から複数のアスベスト成分が検出された。その上、この廃材がリサイクルされて、再生砕石にされてしまったということも分かっているわけです。
 また、近年、エアコンの設置あるいはインターネットの回線工事など学校でも行われていますが、建材に穴を空けるときに、アスベスト建材であることを知らずに労働者が暴露をするという事故も多発をしています。そしてまた学校は、子供が壁にボールをぶつけたりとか、あるいは自転車置場の屋根の上に乗っかっちゃって穴空けたとか、こういう事故が起きやすいわけですね。あの自転車置場の波形の板がアスベスト含有建材だということを私も最近知って、恐らく多くの方が知らないと思うわけですね。
 となりますと、やはりどこに、レベル3も含めて、学校のどこにアスベストが使われているのか、これきちんと調査をして記録をして、破損させないような日常的な管理を子供たちにも徹底していくような、こういうことが必要だと思いますけど、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(下村博文君) 文部科学省では、石綿障害予防規則、これは厚生労働省の省令でありますが、これに基づいて、従前からのレベル1、これ吹き付けアスベスト、これに加えまして、今年度より新たにレベル2、これは石綿含有保温材等でありますが、この調査を開始したところであります。まずは、これらの使用実態につきまして調査漏れが生じないよう、注意喚起を行いながら鋭意実施していくこととしているところであります。
 レベル3のこれは石綿含有成形板等でありますが、この調査の実施については暴露のおそれが少ないとされていることから、引き続き適切な管理及び除去の際の留意事項について注意喚起しながら、まずはレベル1、レベル2の調査及びアスベスト対策の進捗状況等を踏まえて検討していきたいと考えております。

○田村智子君 電気工事などで暴露しちゃった場合、それは設置者に責任があるわけですよ、アスベスト建材だって知らずに電気事業者がエアコン設置で暴露しちゃったら。こういうことも是非真剣に考えていただいて、レベル3についても調査広げていく方向を検討していただきたいと思います。
 最後に、教育委員会や教職員にアスベストについての正しい知識を是非普及していただきたいと思うんです。金岡高校の事件では、大阪府教育委員会が事故について保護者の説明会を開いたんですけれども、白石綿の百倍と言われる毒性を持つ青石綿について何の説明もない、むしろ安全性を強調するような説明だったということで、保護者の方からも疑問の声が上がっているわけです。
 是非、正しい知識を教育関係者が持つこと、そして、先ほど言いましたとおり、どこにアスベストが使われているかということを子供たちにも注意喚起をして、暴露を起こさないようにするということ、こうした管理も徹底していただきたいと思います。最後にお答えいただいて、終わりたいと思います。

○国務大臣(下村博文君) 教育委員会に対し、アスベスト対策に関する留意事項、アスベストに関する法令改正の趣旨や技術的事項について、通知や各種研修会、講習会により周知を図っております。また、教職員に対しては、これらを踏まえ、教育委員会においてアスベストに関する正しい知識の周知に取り組まれることが重要であると考え、促進をしていきたいと思います。

○田村智子君 終わります。


 |