国会会議録

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特措法改定案参考人質疑 法案不備は議論必要 田村智子氏


(写真)川本(左)、尾身(右奥)の両参考人に質問する田村智子議員(手前)=13日、参院内閣委

 参院内閣委員会は13日、新型インフルエンザ等特措法改定案の参考人質疑を行いました。政府の感染症対策本部の専門家会議の尾身茂副座長と同志社大法学部の川本哲郎教授が出席。日本共産党の田村智子議員が質問しました。

 田村氏は、同特措法制定時にも不服申し立てや不利益の救済措置がないことが問題になり、改定案にも盛り込まれていないとして、「緊急事態宣言をする状況ではないなら、今国会で不備を含めた議論が求められているのでは」と質問。川本氏は「その通りだ」と指摘しました。

 田村氏は「法律に照らして、現状をどう思うか」と質問。尾身氏は「現場の求めに応える法をつくってほしい」と語りました。

2020年3月25日(水)しんぶん赤旗より

 

【2020年3月13日 参議院内閣委員会議事録】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。よろしくお願いいたします。
 まず、川本参考人にお聞きをします。
 御指摘のとおり、やはり私も、二〇一二年の特措法の制定のときに、不服申立ての制度がない、それから不利益を被ったときの救済の措置がない、このことについてあれだけ附帯決議が付いて、しかし、今回、改正というときにその中身がないわけですね。また、私たちは、様々な緊急事態宣言などを行うときに専門家の意見を踏まえるという規定もないなどの不備があるというふうに思っているんです。
 そうすると、現状では、今、緊急事態宣言をするような状況ではないということであれば、今この国会でそういう議論を、この法の不備の問題も含めて議論をするということが求められているんじゃないのかというふうに思うんですが、御意見をお願いします。

○参考人(川本哲郎君) それはそのとおりだと思います。
 つまり、私が思っているのは、その緊急事態宣言、今回は政府は今は緊急事態ではないというふうにおっしゃっているので、これからの動きがどうなるかは問題ですけれども、先ほど申し上げたとおりで、著しく重大な被害とか甚大というのももうちょっと詰めて、どれぐらいの被害が出たかと、これ条文に書いてあるわけですから。それだけで、さっきの議論と同じなんですね、一万人が多いのは分かる、三人が少ないのは分かる、じゃ、それだけの幅があるんですかといえば、そんなことはないですよね。もうちょっと詰められると思うんですよね。そこはやっぱり頑張ってほしいし。
 それと、緊急事態、私が恐れているのは、緊急事態宣言が出なかったときですね。出なくてよかったと、済んだと。そうしたら、議論終わってしまうんですよね。
 二〇一二年なんかそうなんです。あの法律作ったけど、この法律が適用される状況はこの八年間なかったわけですね。そうしたら、その間にほとんど先ほどのような議論はなかったんですよ。八年もあるんだから、その救済手段どうするんですかとか、学校閉鎖はどうするんですかというような議論はできたと思うんですね。多数の者といったら、もうちょっと狭められないのかというような議論はできたと思うんですよ。
 だから、そういう点では、私は非常に残念だなというふうに思っています。

○田村智子君 もう一問、川本参考人にお聞きしたいんですけれども、今現実に全校、一斉休校の要請がなされるなど、私、本来この特措法で緊急事態宣言を行わなければできないようなことを総理がやっているなという問題意識を持っているんですね。
 このことについて、今、自粛の要請、全国一斉休校の要請、その他いろんな要請を今政府行っているんですけれども、この立法に関わった川本参考人から、法律に照らして、今行われていることをどう思われるか、率直に御意見を伺えればと思います。

○参考人(川本哲郎君) こういう事態ですので、政府が取っている行動が全く間違っているとは思いません。仕方がないところはあると思います。
 ただ、先ほどから申し上げているとおりで、全国一斉休校、そういう手段を取られるのであれば、この八年間でもっと考えるべきことはあったんじゃないのかと。それを踏まえて、それで幼稚園は対象外になっているわけですけれども、特措法では幼稚園入っているわけですね。だから、そういうところもやっぱりちゃんと考えられたのではないのかと。
 だから、私、先ほど申し上げた、法改正をもしやるのであればもっと早くやったらどうかというふうに申し上げたのは、実はその検討をする時間が取れただろうということなんですね。これも政治的な決断の問題ですから、どちらが正しいかというのはなかなか言えない問題だけれども、まとめで言うと検証ですね。
 ともかく、二〇一二年も検証はされているんです。検証は十分されているんだけれども、生かされていないんです。続いていないんですね。だから、そこをやっぱり今回は是非考えていただきたいということですね。

○田村智子君 ありがとうございます。
 尾身参考人にお聞きをしたいんですけれども、今もお話、短い時間で伺っても、大変私も改めて認識できる部分があったんですね。それは、重症者、死亡者を抑えると、ここに相当に国民の生命、健康に著しい影響を与えないための今の感染拡大防止のその大きな、何というんでしょうね、目的があるんだということを改めて私も認識をいたしました。
 何というんでしょうか、もちろん感染者は人数がぐっと抑えられる方がいい。だけど、一人も出しちゃいけない、一人も出しちゃいけない、出しちゃいけないんだ、出しちゃいけないんだ、そうではなくて、スピードを抑えるということを、重症者や死亡者をできるだけもう本当に極力出さないように努力をするんだという、済みません、この問題意識は、済みません、その専門家会議の中ではすごく議論されていると思うんですけど、今の政府対策本部がとられている措置との関係でこれ本当に共通の認識になっているのかということが、その先ほど来問題になっている一斉休校との関係でも、ちょっと私は危惧を覚えているんです。
 率直なところ、尾身参考人から見ていかがなのか、御意見ください。

○参考人(尾身茂君) まず、今の先生の重症者の対策を、なぜ死亡者を減らすということと感染の拡大の、これは実はもう政府の間とか関係者の間で認識が一致しているかどうかという意味では、もう簡単に言えば三本柱ということが極めて重要。
 それは、まず一番目は、実は今回は、先生方もう御承知だと思いますが、クラスターで起きますから、クラスターの連鎖を抑えるということですね。これはインフルエンザとは違います。これは明らかにインフルエンザと違う。このクラスターの方の集団感染を早く見付けて次の連鎖を断つというのが一本柱。二本柱は、高齢者を含めてこのコロナウイルスに感染して肺炎を起こしそうな人を早く見付けてちゃんとした治療を行うというのが二本柱。クラスターと治療、医療の体制。それから三本柱が、実は若い人だけじゃなくて我々、まあ先生方はお若いですけど、我々年寄りの行動も含めた行動変容ですね。この三本柱という意味では認識は共有されています。
 しかし、私は、先ほど運用という話がありましたけど、実は、これを実行するために実は是非先生方に知っていただきたいのは、現場で困っていることがあるんです。特措法、もしやるんならそういうものに、先ほど運用という話をされていますけど、私も大賛成で、過去の話は今してもしようがないので、反省は後でやればいいと思いますけれども、今これで闘いの最中ですから、そういう意味で現場で困っていることは大きく分けて二つです。
 一つは、この例えば保健所なんかは、今まで三重苦、まあ二重苦と、ヘレン・ケラーみたくなっていまして、なぜかというと、片っ方では相談窓口から疲弊している。と同時に、この今クラスターをどうやって抑えて、いわゆるこれには物すごいエネルギーが、この相談窓口とクラスターのあれでもう保健所関係の人はもう疲弊しています、自治体の人も。これに対して、特措法がもし仮に、緊急事態宣言あるいはしなくてもしても、こういうリーガルフレームで緊急事態に何かできるということで、私たち専門家としての希望は、こういうリーガルないい意味でのパワーですね。権威、権限というのをそういうものに、そこに人的な、人が足りない、十倍、二十倍必要ですよ、それが一点。これを特措法でやっていただければと、そういうことができれば。だから、私は、早いうちから、先生、今のうちに、まだ緊急事態宣言出ていないうちにどんなことがやるべきかを整理しておくことが必要というのは、冒頭申し上げたとおりです。
 二番目の方は、実は医療の方も、実はこのままいくと医療機関はパンクしますから。そうすると、一部の一般の、今パンクという意味は感染症指定病院ですね、今二千ぐらいの、これはパンクします。もう今回はクルーズ船で既にパンクしそうになっている。その上にどんどん新しい発症者が出れば、パンクするのは目に見えていますから。そうすると、一般病院、ふだん感染症指定にされてない病院でも患者さんを受け入れる必要がありますけど、その病院はこういうことを想定していませんから。そこにやるためには財政的、人的、物的な支援が、これは今のそういうものも多分特措法でやればできるはずなんですよね、そういうことが。
 あとは国民への、三本目は、一般の我々、年に関係なく、変容については細かく余り範囲を広げない、最低限ここだけはやると感染防止に役立つというところをはっきりして、それについては丁寧にお願いすると。
 こちらは特に法律とは関係ないかもしれませんけど、特に二つの方は、私は、今まだ緊急事態宣言がないので、政治家の先生たちのリーダーシップはそこなんじゃないかと私は思います。

○田村智子君 終わります。

 


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