国会会議録

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保育補助見直し必要 企業主導型の不正で田村智子氏


(写真)質問する田村智子議員=18日、参院内閣委

 日本共産党の田村智子議員は18日の参院内閣委員会で、企業主導型保育事業申請者の不正を見逃した児童育成協会が再度補助実施機関に決定されたことについて、制度設計の問題点を指摘し、抜本的見直しを求めました。

 衛藤晟一少子化担当相は、「協会にちゃんとした体制を作ってもらいたい。指導も始めている」と述べ、選定を正当化しました。

 田村氏は、企業主導型事業を経営し利益相反の恐れがある1社と、保育ノウハウがなくチェック機能がない児童育成協会しか応募がなかったことに企業主導型保育事業の問題点・矛盾が現れていると指摘。新規募集の停止とともに、既存事業者の認可保育所への転換など、抜本的見直しが必要と強く求めました。

2020年3月24日(火)しんぶん赤旗より

 

【2020年3月18日 参議院内閣委員会議事録】

○田村智子君 今日、私、次に取り上げたいのは、企業主導型保育事業について、昨年の臨時国会に続いての質問というふうにしたいと思います。
 企業主導型保育事業の実施機関、実施機関というのは、事業所からの申請の受付、審査、交付決定、それから交付事業、さらには保育の中身の指導監査、これらを全て請け負う機関ですけれども、この実施機関、昨年公募が行われて、選定結果が三月六日発表されました。先ほどもありました、これまでと同じ児童育成協会だという報道を見まして、私は大変驚いたところなんですね。
 昨年十月、私は、いかに申請に対する審査がずさんだったかを示しました。また、不適切な事業者が保育士の一斉解雇を通知するなどして、混乱した保育現場にいかに無責任な対応をしていたかということも具体的に示しました。大臣は答弁の中で、民間だけの主導によると大変難しい問題が生じてくるということをお認めになり、そこまでチェック機能を持たなかった、児童育成協会も持たなかったし、内閣府も持たなかったとも言われました。そして、今これを全部精査をして洗い直して、実施機関というものを公募しているところだという答弁だったんですね。
 ところが、再び児童育成協会が実施機関として選定されると。一体これはどういうことなのか、簡潔にお願いします。

○国務大臣(衛藤晟一君) 児童育成協会や、児童育成協会だけではありませんが、全体に対して何とかこの実施機関に応募していただきたいということで、十月から二か月ほどを掛けまして、十分な期間を取った上で検討していただきたいということでそのことの通知を出しまして、応募していただいたのは実は二者でございました。
 片っ方の方は、企業名は挙げない方がいいと思いますけれども、一応自らが企業主導型保育所、保育事業を経営しているというところでありましたが、そこはちょっと整理していただかないと問題ですよねということを申し上げたんですが、それを続けるということでございましたので、基本的な要件に幾つか欠けておりました。
 そういう中で、客観的な評価として残ってきたのが児童育成協会でございました。それだけでは、お話しのように、我々も、御指摘いただきましたように内閣府の側のこの指導も足りなかったわけでありますから、そこをひっくるめて評価委員会の方から、いわゆる審査をして、点検・評価委員会の方からも、それだけでは困りますよということで、そして附帯意見を付けて条件整備をしてきたということでございます。
 それで、暮れにはこの実施機関、発表できるんではないのかという見通しを持っていましたが、暮れ若しくは年明け早々に持っていましたが、今申し上げましたように約二か月ずれ込んで、その間に条件について、この附帯条件について審査をやっていただいたということでございます。
 ここは点検・評価委員会は大変厳しく臨んでいただきまして、もちろん私どもに対しましても、政府側に対しましてもいろんな指摘をいただきまして、その指摘をちゃんとクリアする中で、私どもとしては、児童育成協会にちゃんとした体制をつくってもらいたいということで、その体制についての指導を始めているところでございます。

○田村智子君 もう選定のしようがなかったということなんですよね。
 私、本当にこれもう企業主導型保育事業そのものの矛盾が現れていると思うんですよ。だって、その保育の事業のことが分かっていてという事業者が公募に応じようとすれば、それは利益相反が疑われるようなことになっちゃうんですよ。今回そうだったわけですよね。企業主導型保育事業が分かっていると、分かっているのは自分も実施しているところだと。これ、利益相反があるから、そもそも選定の対象にはなり得ないと。そうすると、ノウハウもない、経験もない、このことでいえば大問題となった児童育成協会しかなかったと。
 そうすると、これ、やっぱり民間にこういう審査や指導監査を丸投げする企業主導型保育事業そのものが無理があるんじゃないかということをもう示していると思うんですが、いかがですか。

○国務大臣(衛藤晟一君) 全ての社会福祉法人とかもそうでありますけど、当初、やっぱり非常に厳しい状況の中からみんな出てきたんですね。それに対しまして、ちゃんと規制を掛けていくということをしながら一緒に育ってきたのが実情だと思います。大変大きな失敗でありましたけど、この失敗を教訓として、そして臨んでいきたいと思っています。
 しかも、この実はお金の出し方、拠出金は企業拠出に出しておりますので、それだけに、国がその金をお預かりしているわけですから、今後はこういうエラーのないように、より公正に公平に運営していけるように頑張っていけるという具合に思っておりますので。その代わり、我々もそういう中で、この児童育成協会に対しまして、そういう体制をつくり上げるように強く要求してまいりますし、それだけのことについてちゃんと指導してまいりたいというふうに思っております。

○田村智子君 点検・評価委員会からかなり意見が付いたということなんだけど、それもそのはずで、資料をお配りしました。これ、三年間でどうだったかということの本当の一部なんですけど、この助成の取消し二十五施設、その理由というところを見ていただければ分かるんですけれども、不正、不正、不正、不正、不正、不正と何か所も出てくるわけですよ。詐欺的手法で助成金を得ている事業者が幾つもあったということですよね。
 これ以外にも、取消しをされる前に自ら取下げをしたと。取下げをしたところも、現在、補助金の返還求めているところが八施設あるんですね。これらは本来、審査で落とさなければならなかったような事案です。また、この自主的取下げというのを含みますけれども、助成決定後に事業を取りやめたのは二百五十二施設。五十七施設についてはそのうち助成金の返還が必要な事案です。また、事業譲渡は四十四施設、破産・民事再生等が十施設、休止十二施設などなど、惨たんたるものなんですよ。
 児童育成協会が取り組んできた、私、児童館事業とかそういうのは本当に評価しているんです。だけど、企業主導型保育事業では、やっぱり審査や指導監査など、事業を健全に進める能力はなかったんですよ。そういう事業者しか選定のしようがなかった。これ、非常に深刻な問題だというふうに思いますけど、大臣、もう一度、これ見ていかがですか。取消しがこれだけと。

○国務大臣(衛藤晟一君) 児童育成協会の側にもやっぱり指導力がなかったし、そんな体制をちゃんと、我々から言わせますと、やっぱりつくらせなかったということにおいて我々も深く反省しているところでございます。ですから、今、裁判でこのお金を何とかちゃんと取り戻すところは取り戻すべき、やりたいというように思っております。
 しかし、こういう中で、全体の保育事業、この待機児童解消の中で、やっぱり企業側にも努力を求めながら、この拠出金でもって運営するというシステムをつくってまいりました。私は、今回の失敗を深く反省しながら、体制立て直しができるという具合に思って取り組んでいるところでございます。
 そして、こういう中におきましては、例えば、単なる書類審査だけで終わっていたというのをちゃんとヒアリングをするとか、将来の見通しについてもっと確たるものをちゃんと作らせるとか、それから、現地の視察もちゃんとやるとかですね。中には全然現地の場所も確保していなかったというような問題もありましたし、そういうことをやりながら。
 それから、今後は、地方自治体の関与についてももう少し増やしていかなければいけないと思っていますので、そういう意味での地方自治体に対して協力も要請しながら進めていくということを基本としながら取り組んでまいりますので、今までの反省を踏まえながら必ず改善していきたいというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。

○田村智子君 私は、制度上の欠陥があると思っているんですよ。
 この企業主導型保育事業の根拠は、子ども・子育て支援法の仕事・子育て両立支援事業にある規定なんですね。事業主が雇用する労働者の監護する乳児又は幼児の保育を行う業務に係るものの設置者に対し助成及び援助を行う事業を行うことができる、法律上はこれだけなんですよ、依拠しているのは。
 今回、公募の審査を行った点検・評価委員会は、児童育成協会を選定するに当たって附帯条件というのを幾つも付けています。その中で、審査基準を定めること、また、指導監査についても、保育面を中心とした全般的な指導監査に加え、財務面及び労務面に特化した専門的な指導監査の実施方針を検討することを求めています。審査基準、指導監査の基準の詳細な内容を作成するのも児童育成協会、つまりは民間の事業者。法令上の基準はないってことなんですよ、審査基準作ってくださいねというふうに意見が付いているんですから。
 認可並みに公費で助成を行いながら、法令上の根拠は極めて弱く、法令上も基準もないと。これ問題だと思いませんか。

○政府参考人(嶋田裕光君) 委員の御指摘のとおり、企業主導型保育事業における審査基準、指導監査基準については、実施機関が適切に助成金を助成するために設ける基準でございまして、法令上の根拠はありませんけれども、助成の要件を満たさない場合は助成は行わない、それから、実施要綱等の定めに違反し、指導、勧告を受けても改善が見られない等必要があると認めるときは助成決定の取消しを行うといった措置を講じることとしておりまして、また、これらの基準の策定においては、内閣府がきちんと指導、支援を行いますとともに、点検・評価委員会へこの結果を報告するということにしておるところでございます。
 また、法的な話でございますけれども、企業主導型保育施設において適正な保育内容とか保育環境というのが確保されたいというようなことが判明した場合には、これは認可外保育施設ということになりますので、児童福祉法に基づきまして、都道府県等による改善指導、あるいは事業停止命令、あるいは施設閉鎖命令等の措置の対象になるものと承知しているところでございます。
 このため、実施機関から都道府県等に対し、施設の運営上問題がある施設についての情報提供を徹底いたしまして、また、必要に応じて立入調査の合同実施を行うなど、十分な連携を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

○田村智子君 今、次の質問にまで含めて答弁をいただいたんですけど。これ、つまりは基準ということでいうと民間が作る基準だと。これは、やっぱり企業参入をしやすくするためという仕掛けでしかないと私は思うんですよね。認可のように、もちろん国が基準定めたら認可保育所になるわけで、それよりもっと企業が主導で参入できやすくなるようにというような緩い、やっぱり法律の根拠が緩くなっている、ないに等しいものになっている。
 それで、この児童育成協会が示した改善策には、指導監査で繰り返し指導を受ける施設が存在することに対する対策という項目があって、私はこの項目があること自体に驚いたんですね。繰り返し指導監査しても、つまり従わなかった、是正させることができなかった、そういう事例があったんだなということを示すようなものなんですよ。
 この改善策の中では、立入調査実施後、基準を設け特別監査の実施、必要に応じて巡回指導を実施、改善の見られない施設に対する新規利用者募集停止などの措置を導入するというふうにあるんです。
 でも、確かに指導監査というのは、やはり新規利用者募集停止、こういう措置とセットになってこそ、意味を持って断固として是正を求めることができるんですね。でも、これ法的根拠はないんですよ。先ほど御答弁聞いても、結局、助成金を出すための基準であり、助成金を出すための審査であると。だから、従わなかったら助成金をもう出さない。つまり、もうあなたは企業主導型保育事業はできないよというふうにするしかなくなるんですよ。企業主導型保育事業として是正を強く求めるという仕掛けはないということなんですよ。単なる認可外保育施設になりなさいということしかできないということになるんですね、先ほどの答弁聞いていても。
 こういう問題が山積みだということを指摘しているんですが、大臣、御理解いただけますか。

○国務大臣(衛藤晟一君) 一般の社会福祉法人である保育事業というのはあります。しかし、私も、この企業主導型の保育所も見に行きましたが、やっぱり従業員の皆様方は非常に喜んでいる方は多い、多かったです。だから、それなりのちゃんとした本当の運用をすればやっていけると、やっていけるというか、むしろ非常に喜ばれているという実態であります。
 そういう意味で、それ以外にないではないかと言いますが、元の資金の打切りがあるということは、事業やっていけないわけですから、それ自身は完全に潰れるわけですから、これを継続できないわけですから、これ以上の強いプレッシャーはないと思います。しかも、それだけではなくて、今からは財政面の指導だとかあるいは労務面の指導だとか、いろんなところに専門家の指導も入れてやりますし、それから、言わば県とか地方自治体とか市町村にもいろんな意味でこの枠をつくるときの相談も、それから、どの程度どういう運営すればいいかといういろんな相談もやらせていただくようにやっていきたいと、連携を取らせていただきたいということを申し上げているわけでございまして、だから、基準として、基準を守るためのインセンティブはないという具合には考えませんけれども。
 その上で、私どもは、ここまでやれば、もっと足りないところあればどう充実するかということについて御意見をお聞きさせていただきたいと思いますが、この制度そのものがあかんのやと言われますと、そんなことはありませんと。やっぱりそれなりのちゃんと喜ばれているところ、いろいろなところもあります。その効果を発揮しているところもありますので、そういう形でもってその使命を全うしていただけるように、そういう制度についての充実方について、私どもとしては頑張ってまいりたいというふうに思っております。

○田村智子君 私は、頑張っているところは認可保育所にしていくべきだというふうに思っています。その方が法的根拠があり、ちゃんと是正指導が自治体が責任を持って行える、それも法的根拠を持っているわけですから、そうしていくべきだというふうに思うんですよ。
 この企業主導型の指導監査業務について、児童育成協会は改善策の中で、外部委託を認めるが、資本関係やコンサル関係のある施設への指導監査の実施を禁止するというふうにあるんですね。
 これまでも、しかし、例えば外部委託しているんです、指導監査は。外部委託しているんですよ。ほとんど外部委託された、それはパソナですよ、パソナが行ったわけなんですね。それで、そのパソナが保育をやっているようなところ、あるいはパソナの関連会社がやっている保育施設については、さすがに利益相反が疑われるので、そこについてはこれまでも児童育成協会が直接指導監査を行っていたんですよ。これ、改善でも何でもないんですよ、言わば。改善じゃないんですよ。
 私は、外部委託を認めるということ自体がどうなんだろうかというふうに思うんですね。改善するというのならば、実施機関が、審査を行うところが、お金を出すところが体制ちゃんとつくって、自ら監査、指導監査を行うべきだというふうに思いますが、どうですか。

○政府参考人(嶋田裕光君) 実施機関が行います指導監査につきましては、全ての施設に対して原則として年一回の立入調査を行うこととしていることから、利益相反が生じないことを前提とした上で、外部委託を認め、行うことを認めているところではございます。
 実施機関の公募に当たっては、児童育成協会からは、保育面を中心とした全般的な指導監査に加え、財務面や労務面に特化した専門的な指導監査を実施するとの提案がございましたので、こうした提案を踏まえまして、附帯条件において、優先的に整備する必要がある新規施設の募集、審査に必要な実施体制を含め、事業実施に必要な人材確保の工程案の作成、あるいは指導監査について、人員確保の目途を踏まえ、外部への委託を含めた具体的な方針の検討を行った上で点検・評価委員会に報告することを求めているところでございます。
 外部団体への委託を活用はしますけれども、実施機関自体の体制の強化というのは、これはまさに基本でございますので、そうした認識の下で施設に対する指導監査を公正かつ効果的に実施できるよう、協会に対して内閣府としても指導、支援をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

○田村智子君 これ、外部委託ですからね。業務委託というのは、委託先が独立性を持って業務を行うのが原則ですよ。法令上は委託元が業務のやり方だとか内容を指示することできないですね。一体化してやっちゃったら、これ偽装請負と言われかねないですよ。独立性を持って行われなければ法令違反になっちゃうんですよ。そうすると、その委託されたところが、これは厳しい、何というんですか、指導が必要だというのが、児童育成協会の側から必要だよということになれば、これ密接に連絡取り合いながら一体でやるしかなくなっていきますよね。その業務委託というのの法令遵守をしようとすればするほど、おかしなことが起きてくるんですよ、矛盾が起きてくるんですよ。外部委託ということ自体がおかしいんですよ。
 パソナのように企業主導型に参入しているところが指導監査を行うということになれば、これ自分がやっているところは見ないかもしれないけれども、自分の見ている先が将来顧客になるかもしれない、パソナは関連会社がコンサルもやっていますからね。そうなれば、果たして公正な指導監査が本当に行われるのかと、こういう疑念も生じてくるわけですよ。私は、これ実施機関ができないのであれば、これ制度が欠陥だというふうに言わざるを得ないと思うんです。
 時間が来てしまうので、もう一点ですね。
 これ、来年度の予算案見てみますと、こういう様々な問題があって、それで体制が、児童育成協会、これから取りなさいということも評価委員会の中で指摘されているのに、来年度予算案では更に定員二・四万人分を増やそうと施設整備費が盛り込まれているんですよ。これは私は、体制もまだ取れてないですよ、評価委員会の意見で、これからというところ盛り込まれていますよね、それでこれからまた新しいところを増やすなんということ、あり得ないというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょう。

○国務大臣(衛藤晟一君) この一年間、実質的に募集を停止してきました。それで、まだ達成率は八割を、目標の七割ぐらいのところでございまして、残りのところについては、こういう体制を整える中でちゃんとやっていけると思います。
 それから、外部委託をするということでございますが、外部委託するところも、基本的にはこの実施機関、児童育成協会がちゃんと指導できるような体制をとにかく確保していきたいというように思っております。そのような指導を続けていきたいと。
 外部委託の方は、一部そういう面での指摘はいただいておりますが、最後のところの指導はやっぱりこれは実施機関がちゃんとやるということを取っていくと。それだけの人員の充実も、ちょっと若干の時間が掛かるかもしれませんけど、これを必ずさせていきたいというふうに思っているところでございます。

○田村智子君 これ、点検・評価委員会が付けた附帯条件、これ、何かこの条件クリアしなかったら選定できないという条件なんですよ、言わば。マネジメント体制を強化するために専任の理事を遅くとも今年の夏を目途に置くこととか、体制整備の工程表の作成と。こういう体制の不備があって、これからも報告を続けなさいと求められているところが、新たに作っていくことまで審査するなんてあり得ないですよ、本当に。
 これ、本当に、今あるところを認可にしていく、そして、責任あるやっぱり保育事業が行われるように国が責任持っていくということを強く求めて、質問を終わります。


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