10月16日、臨時国会が始まってから半月以上が経過して、やっと最初の質問の機会がやってきました。大臣の「所信的あいさつ」への質問ですから、テーマは基本的に自由。私は、こだわり続けている「子どもの貧困」への対策についてとりあげました。
「無料塾」への支援を後退させるな
高校進学率は全国的統計は98.4%、ところが、生活保護世帯では90・8%にとどまっています。中学卒業での就職は、様々な困難があるでしょう。大人になっても家計の苦しさが続く危険性が高いといえます。
この「貧困の連鎖」を断つために、子どもたちを直接支援しようというとりくみが、自治体のなかに広がり始めています。その一つが通称「無料塾」。目に見える成果に結びついていると評価されています。ところが、来年度、事業縮小になるのではという危惧が急激に広がっているのです。
私がこのことに気が付いたのは、9月、沖縄県石垣市の市議選挙応援に行ったとき。地元新聞の「無料塾 継続困難」という大きな見出しに、「えっ!」と驚きの声をあげてしまいました。今年度までは100%国の補助金が出ていたのに、来年度から補助率2分の1になってしまう、これでは「継続困難」という内容。この記事は県民にも衝撃を与えたようです。その後、実際に「無料塾」で学んだという青年たちが取材にこたえ、「将来に希望がもてたのは、無料塾で学べたから」などの声を紹介する報道が続きました。
先進的に「無料塾」にとりくみ、全国の自治体から視察も相次いでいるのが、埼玉県のとりくみです。チラシをみて参加する子どもは学習意欲がある、チラシをみても参加しないし、学ぶ意欲を持てなくなっている子どもたちへの対応こそ必要。この問題意識から、家庭訪問を大切にしています。これは、「無料塾」で教える人以外にスタッフを必要とする、ということです。ある自治体では、国の補助金が減るので、来年度からは家庭訪問はやらずに「塾」だけにする、という話も出ているとのこと。
国の補助を減らしたら、事業内容が縮小しかねない、またまだとりくんでいない自治体が財政上の理由で二の足をふみかねない。早急に対策をと求めました。実は、これは厚生労働省の予算でとりくんでいる事業。文教科学委員会に厚労大臣政務官を呼んでの質問となりました。橋本岳政務官は、直接補助は2分の1、残る2分の1を地方交付税で措置できないかと財務省と協議しているという答弁。事前の説明では、厚労省はそこまで言いませんでした。質問でとりあげることが、厚労省の背中を押すという意味を持つのです。来年度の予算案がどうなるか、引き続き注視しなければ。
スクール・ソーシャルワーカーの待遇は年収50万円余?
もう一つとりあげたのは、スクール・ソーシャルワーカーについてです。「困っている子ども」、学校から見て「困った子」への支援は、学校の中だけでは限界があります。注目されているのがスクール・ソーシャルワーカーです。
家庭訪問、時には卒業した小学校や保育園に行って、その子の成育過程について情報を集め、子どもの問題行動の背景にある要因に迫る。知りえた情報は学校の教員とも共有して対応を検討する。保護者や本人にどのように働きかけることが大切かなどもアドバイスする。ネグレクトなど虐待が疑われる場合には、行政機関とも連携する。専門的な知識と経験を必要とする仕事です。
学校の先生は、児童生徒を「評価する」「指導する」ことが求められる立場。これが、子どもとの距離になってしまうこともあるでしょう。保健室の先生ならば話ができるけれど、担任の先生には愚痴や悩みを話せない――私の娘(中学生)にも当てはまります。けれど、保健室の先生やスクール・カウンセラーは、家庭訪問まではやる立場にありません(娘いわく、しゃべってすっきりするから、それでいいんだけどね)。困難を抱える子どもの場合、家庭環境にも一歩踏みこむ支援が必要、それを担うのがスクール・ソーシャルワーカーなのです。
下村文科大臣は、その役割を認め、「非常に野心的な計画」をつくり配置をすすめる、というのですが、問題はその待遇です。文科省に聞くと、「1時間当たり3500円、週1回3時間」で計算して予算措置をしているとのこと。これは、年収にするとわずか50万4000円!1人で5校担当して週5日にすれば、その5倍の報酬になると文科省の担当者は説明しました。それでも、年収250万円程度。
来年度は「野心的に」、約1500人(今年度)→4000人という計画だと、文科大臣。それだけワーキングプアを増やすことになりかねません。必要な仕事は正規職員で雇い、仕事にふさわしい待遇にする、このことに誰が異を唱えるでしょうか。「これでは生活できない」という待遇ではスクール・ソーシャルワーカーになることを諦める人が多数いたら、4000人という計画も絵に描いた餅になってしまう。教育予算は、子どもの貧困対策にこそ優先的につかうべきです。