田村参院議員への厚労省資料で判明
75歳以上の人を対象とした後期高齢者医療制度で、保険料を滞納した人に対する差し押さえなどの滞納処分が、2017年度までの9年間で約8倍に増えていることがわかりました。厚生労働省が日本共産党の田村智子参院議員に提出した資料から判明したものです。
後期高齢者医療制度が施行・実施された翌年の09年度に滞納処分を受けた件数は834件でしたが、17年度には6816件と約8倍になりました。
一方で、保険料の滞納者数は31万3113人(10年度)から、22万2238人(17年度)へと減少。滞納額も80億803万円から77億804万円へと減少しています。
17年度に滞納処分の割合が最も高かったのは、滞納者1582人に対して454件の滞納処分を行った宮崎県の28・7%で、滞納額は1人当たり1万9千円でした。次いで長崎県が15・2%で、同4万6千円。福島県は14・5%で、同3万4千円。滞納額が10万円未満の人に対しても処分が行われている状況がみられます。
解説
特例廃止でさらなる負担増狙う
後期高齢者医療の保険料は、約8割の人が年金から天引きされる「特別徴収」です。年金が年額18万円未満の場合や、保険料と介護保険料の合計額が年金額の2分の1を超える場合は、被保険者が保険者に直接支払う「普通徴収」になります。
保険料が払えず滞納になるのは、「普通徴収」の人です。月に1万5千円程度の年金か無年金などの低所得者が多く、後期高齢者医療だけでなく、介護保険料や消費税などで生活自体が厳しい実態があります。
滞納者数・額ともに減っているのに、滞納処分が激増している背景には、これまで自公政権がおしすすめてきた徴収強化や、「負担の公平性」などを口実にして、減免や分割など個々の状況に応じた対応をせず、機械的な滞納処分を行っていることがあると考えられます。
安倍晋三首相は「高齢者に負担を押し付けるものではない」と繰り返していますが、「全世代型社会保障の実現」の掛け声で、10月の消費税増税と合わせて後期高齢者の保険料を最大9割軽減している特例措置を廃止し、7割軽減にしようとしています。いまでも大変な高齢者の負担を増やすものにほかなりません。(北野ひろみ)
後期高齢者医療制度 2006年の医療保険法改悪で創設。75歳以上の高齢者を「後期高齢者」として74歳以下の人と切り離し、都道府県などでつくる広域連合が運営する別枠の医療保険に強制的に加入させ、負担増と差別医療を押し付けるものです。08年の制度導入移行、5回の保険料値上げを実施しています。
2019年8月11日(日)しんぶん赤旗より