国会会議録

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依存症教育に不適切 田村智子氏 IR推進局パンフ批判

 

 

 

 

 

(写真)質問する田村智子議員=21日、参院内閣委

 日本共産党の田村智子議員は、21日の参院内閣委員会で、大阪府・大阪市IR(カジノを中核とする統合型リゾート)推進局作成の高校3年生向けパンフレット『将来、ギャンブルにのめり込まないために』を取り上げ、ギャンブル依存症教育としてふさわしくないと批判しました。

 同パンフレットはギャンブル依存症対策の一環として作成され、大阪府内の高校や特別支援学校に配布されました。「ギャンブルは、生活に問題が生じないよう金額と時間の限度を決めて、その範囲で楽しむ娯楽です」としており批判が出ていました。

 田村氏はギャンブル依存症を学校教育で教えるときギャンブルは適度に楽しみましょうと教えるのかとただしました。文科省の丸山洋司審議官は、学校での「ギャンブル等依存症」の指導では、欲求やストレスが心身に及ぼす影響を考えて、依存症について理解し、行動できるようにすることが重要だとして、「ギャンブルを適度に楽しむことを推奨するような“ギャンブルとの付き合い方”を生徒に教えるものではない」と答えました。

 さらに田村氏は政府のギャンブル依存症対策推進本部事務局の主要な職員がIR推進事務局兼務であることを指摘。「推進側と一体の組織がギャンブル依存症の予防や教育をまともにできるとは思えない」と体制を改めるよう求めました。

2019年5月29日(水)しんぶん赤旗より

 

【2019年5月21日 参議院内閣委員会議事録】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 先週、NHKのニュース番組で厚生労働省の働き方について取り上げていました。その中で、妊娠中の職員も月半分以上、午後十時以降まで仕事をし、深夜の三時まで残業もあった、上司も人員増を求めたが改善されなかったと、こういうことが報道されていたんですね。
 私も本委員会で何度も指摘をしてきましたけれども、国家公務員の定員削減の結果、人員体制に余裕がなく、職員に深刻な実態が広がっていることの表れだと思いますが、まず宮腰大臣の見解をお聞きします。

○国務大臣(宮腰光寛君) 御指摘の報道についての事実関係につきましては厚生労働省に御確認をいただければと考えておりますが、仮に妊娠中であることが配慮されず、報道されているようなことが行われているとすれば、ゆゆしきことであるというふうに考えております。
 公務という性格上、業務量のコントロールが難しい面もあることは事実でありますが、妊娠されている方だけではなくて、職員自身の健康や働きがいを両立させていくことも重要であるというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、厚生労働省において将来の働き方、休み方改革に取り組んでおられると承知をいたしておりますので、私としても政府全体の働き方改革を進める観点から支援してまいりたいと考えておりますが、職員の健康管理につきましては、まずは現場の管理職がしっかりと目配りをすることが大切であるというふうに考えております。そうした点についても取り組んでいただきたいというふうに考えております。

○田村智子君 この番組の中では、人員増の検討も必要だという指摘も専門家、研究家の方からされているわけなんですね。
 この方だけじゃないんですよ。その報道の中では、厚生労働省の中の資料だということで、今年二月、時間外在庁時間月百時間超は三百七十四人に上ったということも報道されているんです。
 私、今日これ取り上げたのは、こんな働き方がけしからぬじゃないかと、それだけ言っても解決しないんですよね。私、厚生労働省が、本省の全職員のパソコンのログイン情報を用いて毎月の在庁時間の集計を行っている、そして部局ごとに残業実態が分かる資料をまとめて全職員に配付をしている、だから、こういう現実が言わばNHKの知るところになって報道されて、私たちも把握ができるようになったと。こういうことに踏み出したことは大変評価すべきことだと思っているんですよ。これ、深刻な実態があるから、ばれちゃうからもうやめようよということにならないようにしてほしいから取り上げているんです。
 内閣人事局の検討の結論を待たずに、厚生労働省が言わば同時並行で組織活性化、働き方、休み方改革の見える化として行っていること、こういう集計、時間の把握。しかも、こういう部局ごとの在庁時間こうでしたよというのを職員に知らせるときには、そのメールで時々のトピックのお知らせをしたりとか、あるいは省内の職員の声を集めた理想のマネジメント上司をまとめた業務マネジメント集も作成、配付しているんだということもお聞きをしています。時間外労働の客観的把握、これ技術的可能だということもこれで明らかになったというふうに思うんですね。
 こういう労働時間の客観的な把握の取組、これは働き方改革に向けてもまず必要なことですから、直ちに全体で行うべきではないかと思いますが、大臣、いかがでしょう。

○国務大臣(宮腰光寛君) 本年四月の国家公務員の超過勤務の上限に関する措置の導入に伴いまして、この二月に人事院から発出された通知におきまして、超過勤務時間の確認を行う場合は課室長等や周囲の職員による現認等を通じて行うものとし、客観的な記録を基礎として在庁の状況を把握している場合は、これを参照することもできるというふうにされたところであります。
 国家公務員の長時間労働を是正するため、また職員の健康確保の観点からも、勤務時間管理を適切に行うことは重要であるというふうに考えております。その在り方につきましては、御指摘の厚生労働省の先進的な取組も参考にしながら勉強をし、各府省の運用状況を踏まえつつ、今後、人事院や各府省と連携して検討してまいりたいというふうに考えております。

○田村智子君 今、厚労省の先進的取組と言っていただきましたので、是非全省に広げていただきたいと思いますし、こういう実態把握したのに何も改善しないというのが一番いけないことですから、これ必要な人員増も含めてすぐに手だても取ることも求めて、次の質問に移りたいと思います。
 四月十九日に、ギャンブル依存症対策基本計画、閣議決定されました。法案審議のときにも取り上げましたが、高校生への予防啓発がどのように取り組まれるのかに絞ってお聞きいたします。
 この基本計画では、文科省の取組として、今年度は、まず高校の教師用指導参考資料を周知し、活用を促すと、子供向けの啓発資料は今年度中に作成し、活用を促すとしています。特に子供向けにどういう資料が作成されるのか大いに注目をしたいのですけれども、実は、昨年度から高校三年生に既にリーフレットを配付しているのが大阪府と大阪市です。
 資料をお配りしましたので、その二ページ目と三ページ目がその大阪府、大阪市が作ったものなんですけれども、「将来、ギャンブルにのめり込まないために」、これ振り仮名も付けてもうちょっと拡大をして特別支援学校の高等部三年生にも配られたとお聞きをしています。この中に、ちょっと驚いたのは、「ギャンブルとの付き合い方」という見出しがあって、「ギャンブルは、生活に問題が生じないよう金額と時間の限度を決めて、その範囲内で楽しむ娯楽です。」と書かれているんですね。
 文科省にお聞きします。ギャンブル依存症の予防啓発において、学校教育でギャンブルとの付き合い方を教えることになるんでしょうか。

○政府参考人(丸山洋司君) お答えをいたします。
 平成三十年三月に改訂をしました高等学校学習指導要領の保健におきまして、精神疾患の予防と回復として、アルコール、薬物などの物質への依存症に加えて、ギャンブル等についても新たに取り扱うことといたしました。ギャンブル等への過剰な参加は習慣化すると嗜癖行為になる危険性があり、日常生活にも悪影響を及ぼすことなどを学ぶこととしております。
 こうしたギャンブル等の嗜癖行動に関する指導については、保健体育科における指導だけではなく、学校の教育活動全体を通じて取り組むことが大切であると考えております。
 御指摘の学校におけるギャンブル等依存症の指導でございますが、将来的に子供たちがギャンブル等にのめり込むことにより、日常生活又は社会生活に支障が生じることがないよう、欲求やストレスが心身に及ぼす影響や適切な対処が必要であることなど、依存症について適切に理解をし、行動できるようにすることが重要であるというふうに考えております。ギャンブルを適度に楽しむことを推奨するようなギャンブルとの付き合い方を教えるものではございません。
 文科省といたしましては、今後も専門家等の知見も踏まえながら、子供たちが将来ギャンブル等依存症にならないような教育に関してしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

○田村智子君 今の御答弁は以前に回答でもいただいたので、今日、資料でも別紙としてお付けしています。是非この内容をしっかり学校現場に徹底していただきたいんですね。
 たばこもお酒も二十歳になったら違法ではありません。しかし、禁煙教育で体に気を付けて吸いましょうとか、アルコール依存症について教えるときに適度に楽しむ嗜好物ですとか、こんなことを教えるわけがないんですよ。特に、たばこについては喫煙者を減らす方向で、健康被害をリアルに周知することや未成年者の喫煙をなくすための取組というのが強まっているわけです。
 依存症というのは、若年時に経験することが将来の依存症リスクを高める、そこから抜け出すこともより困難になる、こういうことは既に様々な研究で明らかになっています。そのことこそ、学校現場でもしっかり周知啓発をすべきだというふうに思うんです。
 大臣にもお聞きしたいんです。未成年により悪影響が出ることが明白なものを健全な娯楽だと教える、一般論でいいです、これは依存症対策とは矛盾するんじゃないかと思いますが、御見解をお願いします。

○国務大臣(宮腰光寛君) 公営競技やパチンコといったギャンブル等は合法なものでありまして、我が国では多くの人が健全に楽しんでいるものであると考えております。その一方、中にはギャンブル等にのめり込むことにより、日常生活や社会生活に支障が生じている方もいることから、正しい知識の普及啓発によって依存症を予防する取組や、依存症に陥ってしまった方を支援する取組を講じることが重要です。
 このため、政府といたしましては、先月閣議決定をいたしましたギャンブル等依存症対策推進基本計画に基づきまして、依存症のリスクの普及啓発や、依存症に陥ってしまった方の相談、治療、回復の支援といった重層的かつ多段階的な取組を着実に実施することとしております。また、ギャンブル等依存症問題が多重債務問題とも密接に関連していることから、消費者教育を通じて若年層への金銭管理に関する普及啓発も推進しておりまして、成年年齢が引き下げられる二〇二二年までには全ての高校で消費者教育を行うこととしております。
 ギャンブル等依存症により不幸な状況に陥る人をなくし健全な社会を構築するため、政府一体となってギャンブル等依存症対策にしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。

○田村智子君 高校生にどう教えるか、あるいは大学生にどう教えるか。私は、リスクというのは、早くに始めるほどリスクは高まりますよということも含めてきっちり教えるべきだと、リスクこそ教えるべきだと、依存症対策については、このことを強く申し上げます。
 この大阪のリーフレット、どこが作成しているかクレジットを見ますと、大阪府・大阪市IR推進局なんですよ。作成したのはカジノを大阪に誘致しようとしている部局なんですよ。長年にわたって犯罪とされてきた民間賭博をこれから日本に普及しようという部局が依存症対策の啓発活動を行う。これでまともな教育や啓発ができるとは私には到底思えません。
 これ、大阪だけの問題じゃないんです。政府の取組についても指摘したいと思うんです。
 ギャンブル依存症対策推進関係者会議第一回の議事録を私読みました。全部読んだんですけどね、一回から四回まで。依存症の当事者の方も様々に発言する中で、第一回目のとき最後の方で、事務局の方、統括官の方がこう発言しているんです。我々の事務局ではIR制度の企画立案ということも併せてやってございました、九五%の方はレクリエーションとして健全にギャンブリングサービスを楽しむことができる、基本計画を作っていく中では、基本計画というのはギャンブル依存症対策基本計画です、五%のイエローカードないしは一%のレッドカードの方に着目した支援をきちんと作り上げていくということも本当に大事だと思いますけれども、やはり九五%の方を忘れることなく、九五%の方が九六%になり、九七%になり、九八%へというふうに、レクリエーションとして健全にゲーミングサービスを消費できるような環境なり啓発も含めてどのように取り組んでいくのかということは非常に大きな要素になる。
 カジノの議論してこうやって言うんだったらまだ分かるんですよ。ギャンブル依存症対策の会議の中で、言わば議論の取りまとめというような時間にこんなことを発言している。私ちょっと驚いて、この発言している人誰なのかと思ったら、カジノ推進法案の審議で何度も答弁に立った中川さんですよ。今もIR整備推進本部の、つまりカジノ推進の局長が、ギャンブル依存症対策の政策統括官やっているんですね。
 IR整備推進本部というのは、先ほども言ったように、これまで長年にわたって犯罪だった民間賭博をどうやって実施するかを具体化する部局ですよ。ギャンブル依存症の基本計画には、カジノについては一切記述ありません。パチンコ店内からATM撤去の方針というのを打ち出しましたけれども、もっと巨額のお金が動くカジノでは法律でお金を貸していいですよということまで認めている。こういう事務局のトップが、何でギャンブル依存症対策の政策統括官務めることになっているんですか。

○国務大臣(宮腰光寛君) 政府におきましては、ギャンブル依存症対策推進基本法に基づきまして、内閣官房にギャンブル等依存症対策推進本部事務局を設置しております。同事務局にはIR推進本部事務局の者を兼務させておりますが、IR推進本部事務局においては、IR整備法の立案に当たり、カジノ行為への依存防止に関し必要な調査研究を行い、万全な対策を推進し、整備してきており、そのような知見はカジノ以外のギャンブル等の依存症対策に十分に活用できるものであると考えております。
 私自身、先日、シンガポールに出張をいたしまして、依存症対策について関係閣僚や関係機関の代表と意見交換を実施してまいりましたけれども、IR導入を契機に強力に依存症対策を推進している同国の取組は我が国の依存症対策を推進する上で大変参考になると感じたところでありまして、カジノ行為への依存防止に関する知見等も踏まえながら、政府一体となって必要な対策を講じてまいりたいと考えております。

○田村智子君 これ、依存症対策のその本部というのは三十九名なんですけど、内閣府は十名なんですね。そこが実体的な事務局になっているんです、ほかは厚生労働省とか文科省とか消費者庁とか集まってきていますから。その十名全員IR推進本部なんですよ、IR整備推進本部なんですよ。見てみたら、IR整備推進本部の中にギャンブル依存症対策が言わば吸収されているような形で置かれているんですよ。これ、私おかしいと思いますよ。まともな依存症対策できるのかという重大な問題だと思います。
 今後も取り上げます。質問を終わります。


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