国会会議録

国会会議録
条文に「無償化」なし 子ども・子育て支援法改定案 田村氏ただす 参院本会議

 

 

 

 

 

(写真)質問する田村智子議員=12日、参院本会議

 幼児教育と保育の一部を無償化する「子ども・子育て支援法」改定案が12日、参院本会議で審議入りしました。日本共産党の田村智子議員が問題点をただしました。

 田村氏は、民主党政権が児童手当支給の拡充と高校授業料無償化を所得制限なく行ったことに対し、自民党が「バラマキ」「自助の考え方が欠如している」と猛反対したことを指摘。安倍晋三首相が突然、「少子化という国難」などと言い始めた点について「大きな違和感を抱く」として、「子育て支援は社会全体で行われるべきという立場に立ったのか」とただしました。安倍首相は正面から答えず、田村氏が求めた子どもの医療費無料化に対しても「財源の問題もあり慎重な検討が必要」と後ろ向きの姿勢しか示しませんでした。

 田村氏は、改定案では条文に「無償化」が明記されず、「負担軽減の配慮」としか規定されていないことをあげ、「時の内閣の政策判断、国の財政事情等で無償化でなくなることがありうるのか」と追及しました。また、無認可施設の指導基準すら満たしていない施設も5年間、無償化対象となる点について「『保育の質』をどう担保するのか」とただしました。安倍首相は「指導監督の充実をはかる」としか答えませんでした。

 田村氏は、消費税増税分の使い道を出発点に幼児教育無償化が打ち出されたことを厳しく批判。「子育て世帯の消費税の負担感はとても重い。消費税増税は子育て支援に逆行する」と強調しました。

2019年4月13日(土)しんぶん赤旗より

 

【2019年4月12日 参議院本会議議事録】

○田村智子君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました子ども・子育て支援法一部改正法案について、総理に質問いたします。
 法案審議の前提としてお聞きします。櫻田大臣、塚田国交副大臣の相次ぐ辞任について、総理はどのような責任を取るおつもりなのでしょうか。
 櫻田大臣は、五輪担当大臣でありながら五輪憲章を読んだことはない、サイバーセキュリティー担当大臣でありながらパソコンを使ったことはないなど開き直り、まともな答弁ができない場面が繰り返されました。大臣としての資質、資格を著しく欠いていたことは、就任直後から誰の目にも明らかでした。
 しかし、安倍総理は、適材適所と評価し、職務を果たしてもらいたいとかばい続けたのです。その中で、重篤な病に直面した五輪出場選手への心ない発言、被災地を傷つける発言まで繰り返されてしまいました。辞任は余りにも遅きに失したと言わなければなりません。
 総理、これでも大臣として適任だったのですか。御自身の任命責任をどう考えておられるのですか。
 下関北九州道路構想をめぐり、安倍首相や麻生副総理が言えないから私がそんたくしたと発言した塚田副大臣についても、総理は、四月四日の本院決算委員会で、職責を果たしてもらいたいとかばいました。
 ところが、仁比聡平議員が、安倍総理が関門会の一員として、この道路の早期実現を国土交通大臣に要望していたこと、また、官邸で吉田幹事長らと会談し、早期実現に向けた活動にしっかり取り組むようにと話をされたことを追及し、これがマスコミでも大きく取り上げられると、翌日、突如、副大臣辞任となったのです。これは、辞任で終わらせるわけにはいきません。
 総理は、決算委員会で、総理であり要望する立場にないと答弁された。ならば、なぜ御自身の名前が使われた要望書が提出されたのですか。そのことが国土交通省の判断に影響を与えたのではありませんか。総理の指示でこれらを調査すべきではないのか、併せてお答えください。
 それでは、子育て支援について質問を行います。
 子育ての不安を取り除く、お母さん、大丈夫だよなど、保護者に寄り添う、子供たちの豊かな育ちを保障する、私が二十年以上前から政治に求めてきた子育て支援です。保護者の皆さんや保育、教育の現場の方々から、幾度となく要望や意見もお聞きしてきました。
 その経験から、二〇一七年総選挙で、安倍総理が突然、少子化という国難に立ち向かうため、三歳から五歳の全ての子供の幼児教育を無償とすると掲げたことに大きな違和感を抱かざるを得ませんでした。民主党政権が児童手当支給の拡充と高校授業料無償化を所得制限なく行ったことに対し、ばらまき、自助の考え方が欠如していると猛反対したのが自民党だったからです。
 総理は、年々進行する少子化を目の当たりにして心を入れ替え、子育て支援は社会全体で行われるべきという立場に立たれたということなのか、お答えください。
 子育て支援、少子化対策として、毎年、国会にも請願署名として寄せられる切実な要求は多々あります。その一つは、子供医療費無料化を国の制度とすることです。全国の全ての自治体が何らかの子供への医療費助成を行い、全国市長会も国の制度とすることを提言しています。全ての子供の命と健康を国の責任で守るために、国の制度として、所得制限なく、子供の医療費無料化に踏み出すべきではありませんか。
 教育費負担が少子化の要因であることは明らかです。子供が社会人となるまでに教育費が幾ら掛かるのかという不安が、希望する子供の人数と実際に出産した人数の乖離を生んでいるという指摘は、二十年以上前から行われています。子供の貧困対策として、低所得世帯への授業料無償化を行うだけでなく、大学、専門学校の授業料そのものの大幅値下げを進めるべきではありませんか。
 少子化を国難と位置付ける内閣として、今後、これらの課題に真っ正面から取り組むのかどうか、答弁を求めます。
 総理は、衆議院本会議の法案審議で、三歳から五歳までの全ての子供たちの幼児教育、保育を一気に無償化することとしました、小学校、中学校九年間の普通教育無償化以来、実に七十年ぶりの大改革でありますと答弁しています。
 しかし、法案には、所得制限なく幼児教育を無償とすると書かれていません。改正案第二条に、「子ども・子育て支援給付その他の子ども・子育て支援の内容及び水準は、」「子どもの保護者の経済的負担の軽減について適切に配慮されたものでなければならない。」とあるだけです。
 民主党政権の高校授業料無償化法では、授業料を徴収しないと明記されました。なぜ同じように、無償とする、あるいは費用を徴収しないと規定しないのでしょうか。負担軽減の配慮では、時の内閣の政策判断、国の財政事情等で無償化でなくなることがあり得ると考えますが、総理の答弁を求めます。
 結局、幼児教育無償化は、子ども・子育て支援給付の支給額を政令にどう定めるかに委ねられますが、これは認可施設に通う子供に限定されます。そのため、無認可施設を対象とした施設利用給付制度を創設することが本法案の主な内容となっています。
 認可施設への入所を希望しても入れない子供が多数いる下で、無認可施設についても費用負担軽減を行うことは必要ですが、このことにより、無認可施設を政府の保育施策の柱としていくことにはならないのでしょうか、確認いたします。
 また、無認可施設の指導基準すら満たしていない施設でも五年間施設利用給付の対象とすることには大きな危惧を抱かざるを得ません。これは、保育士が一人もいない施設も給付対象となり得ます。劣悪な施設までもが無償化対象という国のお墨付きと公費を得て経営を続けることがあってはなりません。無認可施設での保育の質をどう担保するのか、お答えください。
 私自身は子供二人をゼロから二歳児まで無認可保育園に預けましたが、園庭もあり、ベテランの保育士さんが子供と親にしっかり寄り添ってくれました。無認可イコール保育の質が低いとは経験上も考えていません。しかし、多くの無認可施設は、ビルの一室で、外遊びにも苦慮していることは明らかです。企業主導型保育を導入したことにより、もうけを目的とした事業者が参入していることも看過できません。また、無認可施設では、本法案による費用負担軽減の措置がとられても、無償化にはならないでしょう。
 総理、保護者の要求、保育の質の確保のために、また、全ての三から五歳児の保育、教育を無償と言うのなら、企業主導型などではなく、認可保育所の増設で待機児童対策を進めると明言すべきではありませんか。
 私は、子供に対する給付や支援策は、家庭の状況にかかわらずひとしく行われるべきであると考えています。だからこそ、そのための費用は所得の再分配によって賄われるべきです。ところが、総理は、消費税増税分の使い道を出発点に幼児教育無償化を打ち出しました。なぜ財源は消費税に限定されるのでしょうか。
 子供はすぐに靴や服が小さくなります。成長とともに食費もかさみます。若い世代の収入を考えても、子育て世帯の消費税の負担感はとても重いことは明らかです。消費税増税は子育て支援に逆行するとは思わないのでしょうか。
 私たち日本共産党は、繰り返し、大企業、大富豪に応分の負担をと求めています。この真っ当な道で子育て支援を進める決意を述べ、質問を終わります。(拍手)
 

  〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 田村議員にお答えいたします。
 櫻田前オリンピック・パラリンピック担当大臣に関する任命責任についてお尋ねがありました。
 櫻田前大臣については、二〇二〇年の招致決定直後から文部科学副大臣として組織委員会の立ち上げなどに携わった経験等を踏まえ、オリンピック・パラリンピック担当大臣として任命しました。
 これまで問題を指摘された際には、その反省の上に立って職責を果たしていくことを求めたところですが、今回の場合は、被災地の皆様のお気持ちを傷つける発言を行い、辞任することとなりました。この発言について、私からも、被災地を始め国民の皆様におわび申し上げます。
 任命責任は、もとより内閣総理大臣たる私にあります。被災地に寄り添いながら復興に全力を傾ける、これは安倍内閣の揺るぎない方針であり、全ての閣僚が一層身を引き締め、しっかりと襟を正し、内閣の総力を挙げて東日本大震災からの復興を始め内外の課題に取り組むことで、国民の負託に応え、その責任を果たしてまいります。
 塚田前国土交通副大臣の辞任についてお尋ねがありました。
 下関、北九州にゆかりのある国会議員の有志により結成された関門会の懇親会に参加したことはありますが、これは地元選出議員の立場で参加したものであり、当然のことながら、内閣総理大臣の立場で参加したものではありません。
 また、関門会から要望書が出され、かつ、そこに私の名前が連なっていたことについては、先日の国会審議において質問を受けるまで承知していませんでした。
 そもそも、内閣総理大臣は要望や陳情を行う立場にはなく、また、石井国土交通大臣も総理から指示があったとは全く思っていないと答弁しており、私が国土交通省の判断に影響を与えるようなことはなかったと承知しています。
 このため、私の指示で新たな調査を行うことは考えていません。
 今般の無償化において所得制限を設けない点についてお尋ねがありました。
 児童手当は家庭生活の安定等を図るため、また、高校の授業料支援は教育の機会均等を図るため、いずれも家庭の経済状況を勘案し、一定の所得以下の方に対する給付として行っているところです。一方、幼児教育、保育の無償化は、少子高齢化という国難に正面から取り組むため、子育て世代、子供たちに大胆に政策資源を投入し、社会保障制度を全世代型へと変えていくという新たな考え方に基づくものです。
 特に、幼児教育は、家庭における教育と相まって、生涯にわたる人格形成の基礎やその後の小中学校における義務教育の基礎を培うものであり、保護者の所得にかかわらず、全ての子供にとって重要なものであります。
 さらに、少子化対策の観点からは、調査によれば、全ての世代において、理想の子供数を持たない理由は、子育てや教育にお金が掛かり過ぎることが最大の理由とされており、また、どのような支援があればあなたは子供が欲しいと思いますかとの質問に対し、所得階層にかかわらず、将来の教育費に対する補助との回答が最も多いとの結果が得られています。
 このため、これまで段階的に進めてきた幼児教育、保育の無償化を一気に進め、所得制限を設けることなく三歳から五歳までの全ての子供たちを対象に無償化を実施することにしました。
 子供の医療費無料化についてお尋ねがありました。
 子供の健やかな成長を確保することは重要な課題であり、既に医療保険制度において、未就学児は医療費の自己負担を三割から二割に軽減しています。そうした中で、自己負担を更に軽減するために自治体が独自に行っている助成制限を国の制度として、自治体が独自に行っている助成制度を国の制度として行うことについては、財源の問題もあり、慎重な検討が必要と考えています。
 大学、専門学校の授業料についてお尋ねがありました。
 大学、専門学校の授業料は、各学校における充実した教育研究環境を整える観点から、教職員や施設設備といった学校運営等に要する経費に充てられるものであり、基本的には、各大学、専門学校が適切に定めるものと認識しています。また、学生生活には授業料以外にも様々な費用が掛かり、こうした負担にも目配りすることが必要です。
 こうしたことも踏まえ、政府としては、授業料全体の引下げよりも、むしろ真に支援が必要な学生に対し、確実に授業料等が減免されるよう大学等を通じた支援を行うとともに、学生生活の費用をカバーするために十分な給付型奨学金を支給する高等教育の無償化を行うこととしているところです。
 このような取組を通じて、家庭の経済事情にかかわらず、子供たちの誰もが自らの意欲と努力によって明るい未来をつかみ取ることができる社会をつくってまいります。
 今般の改正法案の規定と無償化の実施についてお尋ねがありました。
 子ども・子育て支援新制度の保育所、幼稚園等については、これまでも、保育料の上限を定めた国の基準を変更することにより、段階的な無償化を進めてきました。
 その上で、安倍内閣としては、選挙でお約束した幼児教育、保育の無償化を実施するため、消費税率引上げの増収分を活用し、安定財源を確保することにより、恒久的な施策として実施することを担保するものです。
 こうした選挙でお約束した政策を恒久的な安定財源を確保した上で実現するという前提の下に、今回の改正案においては、基本理念に子供の保護者の経済的負担の軽減について適切に配慮する旨を加えた上で、様々な対象サービスについて無償化を実現するため、加えて、あっ、無償化を実現するため、例えば保育園等については、必要な費用を全て給付することにより無償化となるような法令の整備を行うなど、各々のサービスに即して無償化が実現できるよう規定の整備を行ったものであります。
 認可外保育施設での保育の質についてお尋ねがありました。
 本年十月から実施する幼児教育、保育の無償化に当たっては、待機児童問題によりやむを得ず認可外保育施設を利用せざるを得ない人がおり、こうした方々についても負担軽減の観点から無償化の対象とし、指導監督基準を満たさない施設が基準を満たすために、五年間の経過措置期間を設けることとしています。
 この経過措置期間において、子供の安全が確保されるよう児童福祉法に基づく都道府県等の指導監督の充実を図るとともに、認可施設に移行するための運営費の支援を拡充し、移転費の支援等も行うこととしており、無償化を契機に、認可外保育施設の質の確保、向上を図っていきます。
 引き続き、認可外保育施設の指導監督の実務を担う地方自治体の皆様の御意見をしっかり伺いながら、本年十月からの実施に向け、準備を進めてまいります。
 待機児童対策についてお尋ねがありました。
 保育の受皿については、保育の実施主体である市区町村が認可保育所等を中心とした整備を進めることが重要です。
 さらに、企業主導型保育事業により、従業員の多様な働き方に応じた保育を提供する企業等を支援するとともに、待機児童解消に貢献することが期待されています。様々な問題が指摘されていることは誠に遺憾であり、内閣府に設置された検討委員会で先般取りまとめられた報告を踏まえ、早速改善を進めさせます。
 引き続き、企業主導型保育事業による整備も含め、子育て安心プランに基づき、二〇二〇年度末までの三十二万人分の保育の受皿整備に取り組んでまいります。
 なお、認可外保育施設の利用料については、認可保育所の利用者との公平を図る観点から、認可保育所における保育料の全国平均額の三・七万円に限り無償化することとしています。
 消費税増税による今般の無償化の実施についてお尋ねがありました。
 幼児教育、保育の無償化の財源負担については、未来の世代に回すことなく、安定財源を確保した上で進めるため、消費税率引上げによる増収分を活用することにしております。消費税は、税収が景気や人口構成の変化に左右されにくく安定しており、勤労世代など特定の者への負担が集中しないことから、社会保障の財源としてふさわしいものであります。
 また、消費税率引上げに際しては、所得の低い方々など真に支援を必要とする層にしっかりと支援の手が行き届くよう、食料品等を対象に軽減税率制度を実施するとともに、所得の低い方々や小さな乳幼児のいる子育て世帯に対しては、税率引上げから一定期間使用できるプレミアム付き商品券を発行し、販売することとしています。(拍手)


 |