日本共産党の田村智子議員は9日の参院内閣委員会で、幼児教育・保育の一部を無償化する子ども・子育て支援法改定案では、子どもの命・安全・発達を保障できないと批判しました。
田村氏は、地域子ども子育て支援事業の一つであるファミリー・サポート事業も「無償化」対象となっている点について、参考人質疑でも危惧が表明されたことを指摘。事故発生時の苦情処理や損害賠償など、認可外保育施設の運営基準は、認可施設と同様の内容になるのかとただしました。
内閣府の小野田壮・子ども・子育て本部統括官は「同様の水準を規定することまでは必要ない」などと答弁。田村氏は「保育事故は認可外の方が起きている」として、ファミサポ事業でトラブルや事故が起こった場合、事業実施主体の市町村は「指導監督権限を行使できるのか」とただしました。厚生労働省の本多則恵・審議官は「事故が発生した場合、円滑な解決に向けて市町村が提供会員と依頼会員との間の連絡等を行う」と述べるにとどまりました。
田村氏は、企業主導型保育事業と認可化移行支援事業以外の認可外施設は、事業者の過失の有無にかかわらず補償金が支払われるJSC(日本スポーツ振興センター)の災害救済制度の対象にもなっていないと指摘。「事故が起こったらどれだけ遺族が苦しむのか。こういう施設にまで給付対象を広げるのは重大な問題だ」と強調しました。
2019年5月10日(金)しんぶん赤旗より
【2019年5月9日 参議院内閣委員会議事録】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。私も、七日の参考人質疑で、ファミリーサポート事業による託児、子供の預かり、これも利用料が施設等利用給付の対象とされるということについて、指導監督基準もないままいわゆる無償化の対象とするのかと、こういう指摘がなされたことについて私も取り上げたいというふうに思うんです。
元々、このファミリーサポート事業というのは地域の支え合い活動なんですね。保護者が通院が必要だとか、買物をするときに短時間子供さんを預ける、あるいは勤務時間の関係で保育所への送り迎えをお願いをするとか、非常に多様な預かり保育が提供されています。制度的には地域子ども・子育て支援事業のメニューの一つで、会員の登録やサービスの仲介等を行うファミリー・サポート・センター、これは自治体が設置をし運営をするのが原則で、自治体が社会保障協議会などに委託をするということもやっているようですけど、実施主体は自治体なんです。しかし、どういうサービスを提供するのかとか利用の料金も全部利用会員と援助会員同士で決めるということになるわけです。
ですから、厚労省が示している実施要綱も技術的助言という扱いであって、安全確保に不可欠な研修についても、預かり中の子供の安全対策等のため、参考として以下に示す項目、時間をおおむね満たした講習を実施し、これを修了した会員が活動を行うことが望ましいと、ただ括弧付きで、緊急救命講習については必ず実施することと、こういうことにとどまっているわけですね。
実際の講習、どこまでやられているか。これ、女性労働協会というところが調査をしていますけれども、実施要綱に定める二十四時間程度以上の講習を行っている自治体は三割弱、全く講習を行っていないという自治体も八・二%、約一割あるわけです。
施設等利用給付の対象事業というのは今後基準設けられるんだと、ファミサポについても基準設けるということはもう御答弁ありましたので、そこはもう繰り返さなくて結構です。私がお聞きしたいのは、救命救急講習や事故対応、これはやるという御答弁だったんですけど、それだけでいいのかと。国が定める二十四時間のこの講習、これ、保育士さんとか看護師さん、医師あるいは保健師さんとか様々な専門家による講習を二十四時間のメニューつくっているわけなんですよ。これを義務付けるということが必要だと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(本多則惠君) お答えいたします。
ファミリー・サポート・センター事業の趣旨などにつきましては、委員既に言及されておられますので繰り返しはいたしませんけれども、今般の無償化に当たりまして、このファミリー・サポート・センター事業における基準につきましては内閣府令において規定をすることとしておりまして、その内容につきましては、地方自治体を始め関係者の意見も伺いながら、子供の安全確保が図られるように施行に向けて検討してまいりたいというふうに考えております。
○田村智子君 そうすると、またこのことはちょっと後ろの方でもう一回聞くんですけれども、それじゃ、まず確認したいんですけれども、子ども・子育て支援法の教育・保育給付の対象である教育・保育施設、いわゆる幼稚園とか認可保育所等ですね、この運営基準には苦情処理や損害賠償を含めた事故発生時の対応等、これ盛り込まれています。じゃ、今回、法案によって施設等利用給付の対象とする子育て支援施設等、まあ認可外保育施設ですね、この運営に関する基準にも同じように苦情処理とか事故対応、損害賠償等々を含めたこういう対応等が盛り込まれることになるのかどうか確認いたします。
○政府参考人(小野田壮君) お答えいたします。
委員御指摘のとおり、特定教育・保育施設につきましては、苦情を受け付けるための窓口の設置、あるいは賠償すべき事故が発生した場合の損害賠償等につきましての規定がなされているところでございます。これは、認可保育所等に対しましては、公定価格の仕組みによりまして運営費全体を措置することも踏まえたものでございます。
他方、今般の認可外保育施設あるいはファミリー・サポート・センター等の無償化におきましては、利用料の補助にとどまる仕組みであることを踏まえますと、子ども・子育て支援法に基づく運営に関する基準といたしましては、認可保育所等と同様の水準の内容を規定することまでは必ずしも必要ないものと認識してございますけれども、保護者と密接な連携を取り、その意向を考慮した保育が行われることなどは非常に重要なことだと考えてございます。
○田村智子君 これ、保育事故は認可外の方が起きているという指摘なんですよ。それで認可と同じような中身まで定めることを想定していないというのは、これはちょっと本当いかがなものかというふうに思うんですね。事故はあっちゃいけないんですけど、現実に起きているんです。苦情やトラブルに対応するなんて当たり前のことなんですよ。これ、しっかりと運営に関する基準、定めるべきだと思うんですね。
それで、問題は、ファミリーサポートはもっと緩いんですよ。これ、事業者が保育を行うんじゃないんです。地域の互助会のようなものなんですよ。子供を一時的に預けたいという人、それから預かれますよという人などが会員になって、準委任契約によってサービスが実施される、だから預かり時間も料金も会員同士が話し合って決めるという仕組みなんですね。
そこで、じゃ、いざ事故が起きたときにどうなるかということで、七日にお聞きした藤井参考人、大阪府の八尾市のファミサポを利用して子供さんが重大な保育事故に遭ってしまったと。これ、八尾市は事業実施主体であるにもかかわらず、当事者間の問題だということで、事故の真相を明らかにしてほしいんだということをお願いしても全く動こうとしなかったわけですね。市の担当者は、依頼会員と援助会員の間で解決してくださいと、あるいは保険会社による事実認定等の手続を進めてくださいと、つまりあなたがやってくださいと言うにすぎなかったんですよ。だから当事者の方は裁判に訴えざるを得なかったということなんですね。
そうすると、この子育て支援施設等の運営基準をよりどころに適切なサービスが提供されるような指導監督が果たしてファミリーサポート事業で行われるんだろうかと。今の答弁だと認可外施設についても非常に不安になってくるんですけれども、トラブルになった場合の仲裁、これ、市町村はサービス提供する会員に対して指導監督、こういうことができるのかどうか、これお答えいただきたいと思うんですが。
○政府参考人(本多則惠君) ファミリー・サポート・センター事業におきましてトラブルがあった場合の対応につきましてですけれども、国庫補助の対象にしているファミリー・サポート・センター事業につきましては、その実施要綱におきまして、事故が発生した場合には円滑な解決に向けて市町村が提供会員と依頼会員との間の連絡等を行うことというふうな規定を設けているところでございます。
○田村智子君 今のも、改定、改定、改定を重ねてきて盛り込まれているところで、本当に藤井さんや保育事故の被害者の家族の皆さんが何度も厚労省に要請を行ったんですよ。私も同行しました。私も質問主意書も出しました。それで、市町村の責任をやや明確にするような内容が盛り込まれていったんですけれども、本当トラブルが起きてからのことなんですよね。これも、当事者間の連絡が取れるようにという中身なんですよ。だから、市町村が乗り出していって、その事故原因の究明であるとか、その事故に対してどう対処できるのかというのが果たしてこれで本当にできるのかどうかというのは、私、大変疑問なんですね。
これまでの答弁聞いていても、基準一定作りますって言うんですけど、厳しくすればするほど、これ互助制度だから、それじゃそういうサービス私提供しますよという人が名のり出なくなる危険性があるんですよ。だから、なかなか厳しくできないという事情もあると思うんですね、互助制度だから。だから、藤井参考人は、こういう制度も施設等利用給付の対象にするんですかって問題提起されたんですよ。当然のことだと思いますよ、基準厳しくするのにハードルがあるんですから。
でも、大臣、現実にファミサポで死亡につながるような重大事故が起きちゃったんですよ。だから、これ事業者によるサービス提供ではないと、それでこの利用料金も定めがないと、ここでどうやって施設等利用給付を出すのかって非常に疑問なんですけど、これは私、考え直すべきなんじゃないかと思うんです。それでも対象にするというのであるならば、こういう重大事故が起きたということも踏まえて、研修を義務付けるとか、適切なサービス提供の基準をちゃんと定めるとか、運営や事故に対して自治体がもっと責任を持つ仕組みをつくるとか、こういうこと必要だと思うんですけれども、大臣の見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(宮腰光寛君) 今般の無償化に当たりましては、認可外保育施設やファミリー・サポート・センター事業の利用者につきましても負担軽減の観点から対象としております。
子供の安全が確保されるための取組につきましては、児童福祉法上の観点から、厚生労働省を中心に取組を進めてまいることになっております。
その上で、無償化に係る給付を行うという観点から、改正法案におきましては、市町村長に対し、対象となる施設を特定する確認や、必要に応じた施設への報告徴収、勧告、命令、確認の取消し、さらには都道府県知事に対する必要な協力要請などの権限を与えるための規定を設けております。
児童福祉法の観点と子ども・子育て支援法の観点とが相まって、認可外保育施設等の質の確保、向上が図られるよう、しっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○田村智子君 ファミサポは事業って呼んでいるけど、事業じゃないですよ。互助会なんでね。ここは本当に慎重な検討を今からでもしていただきたいと、重ねて要望しておきます。
それから、やっぱりいざ事故があったときの賠償という問題を私も取り上げたいんですけれども、認可外保育施設も事業者の過失があった場合には賠償を行うという賠償責任保険の加入、義務付けられていますけれども、これ過失があった場合の賠償なんですよ。ですから、事業者の側が、施設の側が保険会社と一緒になって過失を認めない、謝らない、賠償金も支払われない、こういうケースは少なくありません。保険会社にとっては多額の賠償金支払うのかどうかというのは経営上の重大問題になりますのでね。そうすると、そういう保険会社からの意見を受けて、事業者の説明が事故直後から日を追うによってだんだん対応変わっていってしまうと、こういうことが実際に起きているわけなんですよ。そうすると、被害者にとっては、賠償金も払われない、何が起きたのかが隠されていくことになる、何重にも傷ついていくということになってしまうんですよ。
一方、今日、自民党さんからも質問のあったJSC、日本スポーツ振興センターの災害共済制度、これは無過失補償なんですよ。過失があったかどうかが問われずに、まず事故があったら事故の被害者に賠償金は支払いますよという制度なんですよ。その上で、もちろん事故原因をめぐって裁判になることあります。そのときにも、調整がなされるという仕組みもこのJSCの災害共済制度の場合にはなるわけなんですね。
企業主導型事業を導入するときに、私、法案審議で、これを災害共済制度の対象にしないのかということを厳しく追及しました。赤ちゃんの急死を考える会も、認可外施設をJSCのこの制度の対象にすべきだということを何度も強く要請をして、これで企業主導型と認可化移行支援事業の対象となる認可外施設というのは今加入対象になったんですね。でも、そこまでなんですよ。
今回、公的給付を広げるわけです。JSCのこの災害共済制度の対象をやっぱり拡大すること、これ必要になってくると思いますが、大臣、文科省と相談して是非広げていただきたい、いかがでしょうか。
○国務大臣(宮腰光寛君) 災害共済給付制度につきましては、学校における事故のほか、学校に準ずる程度に管理体制等について一定の基準を有し、かつ当該基準を満たしていることを地方公共団体の事前認可等により担保する仕組みがある認可保育所等につきましては、対象に追加されてきたところと承知をいたしております。
御指摘につきましては、災害共済給付制度を所管する文部科学省と認可外保育施設等を所管する厚生労働省を中心にまず検討を行っていくべき課題であると認識をいたしております。
○田村智子君 最後に一言なんですけど、非常にこれハードル高いと思うんですよ。今言われたとおり、学校に準ずるなんですよ。それは、加入対象にできるかどうかは、保育の質を担保する基準があるかどうかということをJSCが考えるのは当たり前のことなんですよ。
今回、認可外の指導監督基準さえ満たさない施設を給付の対象としちゃうんですよ、基準がないようなところを。そこで事故が起きたときに、JSCの対象になるわけないじゃないですか、こんなの。ここにまで給付を広げるのかということなんですよ。そこで事故が起きたらどれだけ遺族が苦しむことになるのか。こういう重大な問題なんだということを指摘して、取りあえず午前中の質問を終わります。