国会会議録

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幼保「無償化」法案 参院委可決 「保育の質」掘り崩される 子の安全・命に無責任 田村議員が批判

 消費税10%増税を前提に、幼児教育・保育の一部を無償化する「子ども・子育て支援法」改定案が9日、参院内閣委員会で採決され、自民党、公明党、国民民主党、日本維新の会の賛成で可決されました。日本共産党、立憲民主党は反対。日本共産党の田村智子議員は、採決に先立つ質疑で、同改定案によって、保育のナショナルミニマム(最低基準)が事実上、掘り崩されかねない点などをあげ、「子どもの安全・命に対して、あまりにも無責任な制度設計だ」と批判しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(写真)安倍晋三首相(手前)に質問する田村智子議員=9日、参院内閣委

 同改定案では、国の最低基準を満たさない認可外保育施設を補助対象とし、認可外保育施設指導監督基準さえ満たさない状態の施設も5年間、補助対象としています。田村氏は参考人質疑で保育事故の当事者が「命を守る最低基準すら満たさない施設」「5年間の経過措置は受け入れられない」と述べたことを指摘。「認可外施設の指導監督基準は、保育の質の保証とはとてもいえない」と認識をただしました。安倍晋三首相は「無償化を契機として認可外保育施設の質の向上をはかっていく」などと弁明。田村氏は、認可外の企業主導型保育でも問題が相次いでいることをあげ、「安倍政権は『保育の質』をあまりにもないがしろにしている」と批判しました。

 さらに、田村氏は、安定した職を確保できない低所得者世帯は、認可保育所へ入所しづらく無償化の恩恵が低い上に、消費税増税の激しい痛みが襲いかかると指摘。「所得税や法人税の応能負担を強化する公正な税制によって、幼児教育・保育の無償化を行うべきだ」と強調しました。

2019年5月10日(金)しんぶん赤旗より

 

【2019年5月9日 参議院内閣委員会議事録】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 私も、例えば日米の貿易協定の問題もありますので、あるいは比較可能な賃金統計に穴が空いたままという状態もありますので、そういうことを質問したい思いはあるんですけれども、是非とも野党が一致して要求している予算委員会でたっぷりと時間を取って総理には御答弁いただきたいと、筆頭もいらっしゃるので改めてお願いをしておきまして、この場では法案の審議をさせていただきます。
 本会議の質問でも指摘をいたしましたが、この法案には、幼児教育、保育の無償化という条文はありません。法案で定めているのは、認可外の施設や事業に対して公的給付金制度を創設するというものです。御答弁あったとおり、待機児童問題があってやむなく預けている人がいるからだと言うんですけれども、では、法案は待機児童がいる自治体に限定しているかといえば、そういう限定もありません。
 歴史的に、我が国の保育制度というのは認可の最低基準をクリアするということが大前提だったはずなんです。最低基準を満たさない施設に対して恒久的な公的給付制度を法律の本則で定める、こうなると、私はナショナルミニマムを事実上掘り崩すことになるんじゃないのかと大変危惧をしているんです。
 例えば、認可外の施設について、認可に移行するまでの猶予期間に公的給付金を出しますよということだったら理解できるんですよ。ところが、そうじゃない。認可外の保育施設指導監督基準さえ満たしていない状態で五年間も給付金を出しますよ、これは余りにも子供の命や安全に対して無責任な制度設計だと思うんですけれども、総理、いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 本年十月から実施する幼児教育、保育の無償化に当たっては、待機児童問題によりやむを得ず認可外保育施設を利用せざるを得ない人がおりまして、こうした方々についても負担軽減の観点から無償化の対象としたところであります。
 また、こうした認可外保育施設の中でも、指導監督基準を満たさない施設については、五年間の経過措置期間を設けて、この経過措置期間において子供の安全が確保されるよう、児童福祉法に基づく都道府県等の指導監督の充実を図るとともに、認可施設に移行するための運営費の支援を拡充し、移転費の支援等も行うこととしております。無償化を契機に、まさに無償化を契機に、認可外保育施設の質の確保、向上を図っていく考えであります。
 引き続き、実務を担う地方自治体の皆様の御意見をしっかりと伺いながら、本年十月からの実施に向けて準備を進め、認可外保育施設において未来を担う子供たちの安全が確保されるように支援を行っていきます。

○田村智子君 私は、本当にこの認可外保育施設指導監督基準が新たな最低基準になってしまうんじゃないのかというふうに危惧しているんですね。
 これは、七日の日の参考人質疑では、保育の重大事故をなくすネットワーク共同代表の藤井真希さん、この方も、御自身が生後五か月の娘さんを預かり保育時のうつ伏せ寝による窒息で重体となって三年後に亡くなるという大変痛ましい事故を経験した方なんですけれども、これ総理にも是非聞いてほしいんですけど、次のように指摘しているんですよ。
 やはり五年の間、命を守る最低基準すら満たさない施設で過ごすということは、それだけ命が脅かされている、健やかな発達を保障するという観点からも、質の高い保育が受けられるという状況ではなくなってしまう、私たち遺族は、事故の教訓が生かされていないということに日々、本当に何ともやり切れない気持ちだ、五年の経過措置というのは、遺族の立場からは受け入れられないと。
 これ、認可外施設の指導監督基準というのは、保育の質の保障とはとても言えないんです。命の保障、最低限の安全の保障とも言える基準だというふうに思うんですけれども、総理にはそういう認識はおありですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 先ほども申し上げましたように、今回、幼児教育の無償化の中で、保育、そして保育園、幼稚園を無償化をしていくわけでございますが、その中で、まだ残念ながら十分にこの受皿が整備されていない中でやむを得ず預けておられる方々がいるわけでございますから、その方々に対する経済的な負担を軽減するということは重要であろうと、こう考えているわけでございます。
 それと同時に、先ほど申し上げましたように、我々、当然、質は極めて重要であると、こう考えているわけでございまして、だからこそ、認可外保育施設の中でも指導監督基準を満たさない施設については五年間の経過措置期間を設けました。この経過措置期間において子供の安全が確保されるように、児童福祉法に基づく都道府県等の指導監督の充実を図るとともに、認可施設に移行するための運営費の充実を拡充し、移転費の支援等も行うこととしているわけでございまして、そして、まさに現在ももちろん存在をするわけでございますし、残念ながら預けられない方々がそこを利用しているわけでございますが、今回、この無償化を契機として、認可外保育施設の質の向上、確保、向上を図っていく考えであります。

○田村智子君 五年は長過ぎますよ。本当に長過ぎると思う。
 では、本当に保育の質を上げていくという姿勢を確固として安倍政権取っているのかと、私、極めてここも懐疑的です。
 例えば、企業主導型保育、これ最低基準を満たさないことを前提として、公費を入れる仕組みを法改正までやってスタートさせたと。民間の創意工夫を生かして多様な保育を行うのだといって、市町村の関与がないということが大きな特徴とされたんですよ。しかし、そのことが定員充足率の低さや審査の不十分さに直結して、慌てて市町村関与の仕組みを模索するという事態になっているんですね。
 さらに、昨年は国家戦略特区の枠組みを用いて新たな規制緩和にも踏み込んでいます。四月二十五日の連合審査会でも取り上げましたが、地方裁量型認可化移行施設の創設です。これ、待機児童を理由に保育士配置の最低基準を緩和してほしいという大阪府、大阪市の提案への対応で、認可保育所を一旦無認可に移行させた上で、認可化移行事業の対象として公費支給を受けられるようにしようというものなんですね。
 待機児童対策として、総理は、市町村が認可保育所等を中心とした整備を進めることが重要だと、こう答弁されているんですよ。何で認可を無認可化してしまうと、そういうところにお金出すと、こんなことを認めるのか。これは矛盾していると思いますが、いかがでしょう。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 保育の受皿整備とその質の確保、向上を車の両輪として進めていくことが重要であります。
 地方裁量型認可化移行施設は、国家戦略特区において、時限的に、待機児童が多い都道府県が独自の創意工夫の下、その解消に取り組めるように設けたものであります。この施設は、保育士不足で運用、運営困難となっている緊急を要する場合に限り認可施設からの移行も可能となっておりますが、認可外保育施設であり続けることを許容するものではありません。計画した期間内に認可施設へ再移行することが前提となっているわけでございまして、また、職員研修など一定の要件を満たした場合に運営費の補助額を加算するといった質の確保のための仕組みも設けているわけでございまして、このため、認可施設を認可外施設に移行することを促し、保育の質を低下させるものという御指摘は当たらないものと考えております。

○田村智子君 今、計画した期間で認可に移行すると言いましたけど、その計画した期間は自治体の判断で延ばすことも可能なんですよ。緊急と言いながら全然緊急の仕組みになってないんですよ。事実上、認可保育所が最低基準を守らなくていいという規制緩和になっちゃうんですね。
 総理、このことを決めた特区諮問会議、六月十四日ですよ、昨年の。何て総理が発言されているか、読んで驚きましたよ。大阪府知事から提案のあった待機児童対策について、早速、政府として対応方針を決定いたしました、これによって、従来の認可保育園の枠組みでは実現しなかった、自治体の創意工夫による柔軟かつ適切な保育士の配置が実現しますとおっしゃっているんですね。さらに、関係大臣は様々な提案に対し、できない理由を詰めるのではなく、どうすれば実現するのかの観点で積極的に取り組んでいただきたいと、こういう指示もしているんですよ。最低基準を満たさなくてよい、確かにこんなの従来の認可保育園の枠組みではあり得ないですよ。
 保育士配置基準を割り込むことが柔軟かつ適切な保育士の配置なんですか。最低基準違反を認めろという提案に対しては、子供の命、安全、発達を保障するためにできないと回答するのは当たり前のことだと思いますが、いかがですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) これは、認可保育園が認可外に移っていくことを慫慂するものではもちろん全くなくて、先ほど答弁をさせていただいたように、一時的にこれは保育士が確保されないという状況になって閉園となっていいのかどうかという状況にある保育園が、しかし、この特区制度を活用することによって、一時的に、これは認可外保育施設であり続けることを許容するものではなくて、計画した期間内に認可施設へ再び再移行する、その間もしっかりと保育園としてお子さんたちを預かり続けることができるようにしていくものであるということであります。
 つまり、一時的な保育士不足による状況を何とかしなければならないという考え方の中から生まれたものであろうと、こう理解をしているところでございまして、その中において、まさにこれは都道府県の中で知恵を出して考えたのではないかと思いますし、会議の、会議での発言については、長年実現していなかった大胆な規制改革が国家戦略特区において次々と実現をしておりますが、自治体の創意工夫の下、保育の質の確保を図りつつ、保育士を確保して認可施設に移行することを支援するものとなっているといったことを評価したものでございます。

○田村智子君 こういう規制緩和をやるような国家戦略特区だったらもうやめた方がいいですよ。本当にやめた方がいい。子供の命と安全が懸かっているんですから。それに、認可保育園増やしていくという態度が、姿勢が疑われるようなやり方ですよ。何とかして認可を維持しなきゃ駄目でしょう。そうしなきゃ増えないじゃないですか。
 もう一点お聞きしたいのは、総理は、低所得世帯への段階的無償化は既に行っているんだと、今回の法案で一気に対象を拡大して幼児教育の無償化をやっていくんだと説明しているんです。しかし、認可保育所に入所できなければ保育料は無償にはなりません。果たして低所得世帯は希望者が皆認可保育所に入所できている状態なのかと。
 お配りした資料の一枚目は、行政福祉報告例から作成したものです。私立保育所の入所児童を保育料徴収階層別、つまり所得階層別にその割合を二〇一四年と二〇〇四年で比較したんですけれども、低所得層の入所割合が十年間で落ち込んでいることは明らかに分かるんです。
 資料二の方は、二〇一七年度に行われた沖縄県の未就学児を有する世帯に対する調査結果で、これも、低所得Ⅰ、貧困ライン以下の家庭で保育所を利用していない割合が高いことが分かるんです。
 三枚目は、その調査報告書の文章なんですけれども、特に低所得の家庭においては保育所の待機が深刻な状況にあることが推測されますという指摘があるんですよ。これ、一日の勤務時間が長くて、無期雇用契約、フルタイム、正社員、これいわゆるポイントが高くなるので認可に入りやすい。逆に、不安定な働き方をしている、あるいは安定した仕事を探している、こういう低所得層が入所の優先順位が低くなってしまう。こういう実態、現にあることを示しているんですね。
 そうすると、この実態を直視したとき、消費税を財源にというふうになると、低所得世帯は認可に入れず、入れなかった場合ですよ、無償化の対象にもなり得ないと。そして痛税感ですよ。まさに一〇%引上げによる痛税感が激しく襲いかかってくることになると思いますが、どうでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 低所得者の保育所等への入所のしやすさについては、各所得階層において、就業や家庭の状況等により保育の必要性が認められる家庭がどの程度いらっしゃって、その分布がどのように変化しているかなど併せて総合的に見る必要があることから、単に保育料階層別の利用者数を比較したこの御指摘のデータのみをもって判断することはできないと認識をしております。
 国としては、生活保護世帯や一人親家庭などについて、市町村による保育所等の利用調整に当たって優先利用の対象とする旨を示しています。また、経済的な負担については、今般、三歳から五歳の全世帯とゼロ歳から二歳の住民税非課税世帯の保育料が無償化されることから、低所得世帯の保育所等への就園がより容易になるものと考えております。

○田村智子君 やっぱり公正な税制ですよ。所得税や法人税の応能負担によって公平な子供に対する幼児教育の無償化、これをやるべきだと、このことを申し上げて、質問を終わります。

 


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