国会会議録

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認可外お墨付き批判 参院委 保育「無償化」で参考人 田村議員が質問

 

 

 

 

 

 

(写真)参考人に質問する田村智子議員=7日、参院内閣委

 参院内閣委員会は7日、幼児教育と保育の一部を無償化する「子ども・子育て支援法」改定案の参考人質疑を行いました。

 保育士の配置数など国の指導監督基準を満たさない認可外施設や、無資格者が担う託児事業も「無償化」のための財政支援の対象となっていることについて、「保育の重大事故をなくすネットワーク」の藤井真希共同代表は、「子どもの安全を脅かす」と批判。独自の分析を元に「認可外施設での死亡事故の発生率は25倍以上だ。基準違反をしている施設での事故が多い」と指摘しました。

 また、生後5カ月の娘を、大阪府八尾市のファミリー・サポート(ファミサポ)事業利用中の事故で亡くした経験を語り、保育士資格のない人が担うファミサポやベビーシッターなどの託児事業について「基準さえない施設や事業は『保育』として適切ではない」と強調。「保育内容の差をそのままにして全てを無償化の対象とすれば、国が『どれも同様に安全だ』とお墨付きを与えることになる。本来は認可保育所が十分に整備されるべきだ」と述べました。

 「みらい子育て全国ネットワーク」の天野妙代表は「待機児童が多数いるなか、現状の無償化が少子化対策として有効なのか大きな疑問だ」と述べました。

 日本共産党の田村智子議員は、「認可外施設への5年間の経過措置がどういう意味をもつか」と質問。藤井氏は「それだけの間、子どもの命を危険な状況にさらすことになる。保育事故の遺族の立場からは受け入れられない」と答えました。

 東京大学大学院の秋田喜代美教育学研究科長は、保育士配置基準の意義を尋ねた田村氏に対し、「子どもの安全を守り、夢中で遊べる環境をつくるために手厚い基準が重要だ」と述べました。

2019年5月8日(水)しんぶん赤旗より

【2019年5月7日 参議院内閣委員会議事録】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。今日は本当にありがとうございました。
 まず、秋田参考人にお聞きをします。
 私も、良質の幼児教育、保育を全ての希望する子供に保障する、そのことを前提に無償化をすると、これは大賛成なんです。ただ、この法案は、事実上、認可外施設や認可外の事業に対して恒久的な公的な給付制度を創設するという中身になっているんですね。
 それで、この間の国の保育に対する政策を見ていると、認可に対する考え方を拡大して小規模保育や家庭的保育にも拡大をしていった、それから、最低基準をそもそも満たさないことを前提としている企業主導型保育を法律にも書き込んで制度化していくと。非常にこの最低基準ということに対する考え方がどんどん曖昧にされているというふうに思えてならないんです。
 それで、お話のあった格差、落差、段差なく良質な幼児教育、保育を保障していくという、とても大切な、まさにそのスタンスで政策というのは進めていかなければならないと思うんですけれども、その立場に立ったときに、今のこの最低基準の位置付け方とか、それから最低基準の中身について、これでいいんだろうかと、どうしていったらいいのかということを、国際比較もされて研究もされていらっしゃるので、是非御意見をお聞きしたいなというふうに思います。

○参考人(秋田喜代美君) まさに言われたところだと思います。その意味で、やはり参考人の皆さんが話されているように、やはり基本は、認可以上のやっぱり幼児教育や保育というものがあらゆる子供たちに保障されるような仕組みをどうつくっていくのか。
 ただし、現在、待機児童がいたり、やむを得ない様々な状況においてこうした事態が生じているので、それをできるだけ速やかに、可及的速やかに解消できるようにやはり取り組んでいただきたいと思いますし、それから、そういうところがもっと底上げをするための仕組みというんでしょうか、認可外を認可にしていくための今動きというのが、厚生労働省の方でもそういう政策はされていますけれども、是非その辺りをより強化していただきたいというふうに思っております。
 日本の、先ほどもありましたように、一人当たりの幼児の担当の数というのは非常に多い。幼児教育無償化するんですけれど、こんなに保育者一人当たりの子供の数が多い国はほかにはないというようなことがありますし、やはり負担軽減というようなところからも、もう少し小規模に、少人数のクラスや担当にしていくとか、配置基準を考えて、よりいろいろなところで、保育士さん等が具合が悪くなったり手厚くしなければならないときに応援に回れるような、そういう人材の確保ということがやはり必要であろうというふうに私も思います。

○田村智子君 もう一点、関連でなんですけど、秋田参考人に、最低基準といったときに今やっぱり焦点となるのが保育士の配置、これがなかなか難しくて、結局、保育士が足りないから認可外みたいな形になっているところも多いと思うんですね。
 そこで、だから、日本の現状というのはいろいろ深刻だというのはちょっとここおいておいて、目指すべき方向なんですけれども、なぜ保育士の配置を充実させていくことが大切なのか、その中身的なことですね、なぜ幼児教育にとって、子供たちにとって保育士の配置ということが大切なのかということを、少しその研究で得られた知見などをお示しいただければと思います。

○参考人(秋田喜代美君) ありがとうございます。
 子供たちにとっては、安心感、安全、安心、居場所感があるということと、夢中になって遊び込める、そういう環境が保育の中でつくられるということがもう重要だということは国際的に言われていて、そういう環境をつくり出すためには、やはり保育者自身が心にゆとりがあるとか、やっぱり働きがいを感じられるような、追われるような形ではない、そういう環境を労働環境としてつくるということが重要だから、やはりその配置基準ということが必要になると思います。
 あえて今申し上げていませんが、実は、施設の面積基準を始め、それから戸外の例えば園庭なし保育所がいいのかとか、もう言い始めればいろいろなことがあります。でも、まず一番は、安全が守られて子供が安定できる、そういう環境のために、やはり保育者、保育士の手厚い基準ということが重要だというふうに思います。

○田村智子君 ありがとうございます。
 次、藤井参考人にお聞きしたいんです。
 ずっともう皆さんから意見を聞いていて、本当にやっぱり認可がまさに最低限の条件なんだというのは本当に思うので、私は、もう時限的に認可外に公的給付制度をつくって認可への移行を促すという法案であるならば分かるんですけれども、認可外の指導監督基準さえ満たさない、これに五年間、このことについて、恐らく重大な保育の事故の被害に遭われた家族の方々は物すごく言いたいことがいっぱいあると思うんです。
 認可外の指導監督基準すら満たさないということがどういう意味を持つのか、そこに五年間給付がされ続けるということがどういう意味があるのか。是非もう少し、少し長めでも構いませんので、お話しいただければと思います。

○参考人(藤井真希君) ありがとうございます。
 事故が起こっている実態、その事故情報の分析から、やはり基準を満たしていない施設での死亡事故が多いということを見ますと、本当に、基準を満たさない施設もいわゆる無償化、上限ありの補助の対象にすることは、それだけの間、子供の命を危険な状況にさらし続けるということになるんじゃないかなと思っています。
 確かに、実際そこに行っているからとか、入れない子がいるからという意味で、入る入れないの観点では公平ということになるのかもしれないんですが、そこに行った子供がどういう状況でその後、毎日毎日の積み重ねで一年、二年過ごすのかということを考えますと、やはり五年の間、基準すら、最低基準、命を守る最低基準すら満たさない施設で過ごすということは、それだけ命が、命の危険が脅かされている。さらに、それだけでなく、健やかな発達を保障するという観点からも、質の高い保育が受けられるという状況でなくなってしまうというふうに私たちは捉えています。
 特に、御指摘いただいたように、私たちの赤ちゃんの急死を考える会の遺族は、本当に認可外の保育施設での事故が多いんです。事故の教訓が生かされていないということに日々、本当に何ともやりきれない気持ちを持っておりまして、今回のいわゆる無償化の法案についても、驚きを隠せないといいますか、もうどうしてという気持ちでいっぱいですので、やはり、子供の安全なんて本当はお願いしてしてもらうことではないと思っているんです。
 保育施設や事業では命や安全は守られて当たり前であるべきなので、やはり五年の経過措置というのは、私たち特に遺族の立場からはもう受け入れられないということをお伝えしたいです。

○田村智子君 ありがとうございます。
 それで、この間の質問でも、だから、そういう劣悪なところがどうしたら排除できるのかということで、和光市のようにもう条例で排除しますと言ってくれれば安心なんですけれども、なかなかそうではないだろうなという自治体も出てくるだろうなということでいろいろ質問しましたら、都道府県が認可外施設としても不適切だと判断をしたと、そうすると、その判断を受ければ市町村は給付の対象施設の認定を取り消すことができるんだという答弁までは出てきたんです。やっと出てきたんです。
 ただ、問題は、自治体がそういう判断を積極的に行えるかどうかということだと思うんです。指導監督に入って基準違反が分かっても、それが正されるかどうかが分からなかったり、じゃ、それでもう不適切だという判断が本当に都道府県がするんだろうかということも含めてなんですけど、その辺り、自治体が劣悪施設に対して、経験も踏まえてでもいいんですけれども、皆さんの会の経験なども踏まえてなんですけれども、現実にどうなのかと、その辺りを少しお話しいただければと思います。

○参考人(藤井真希君) ありがとうございます。
 私の活動の中でのいろんなエピソードが出てきて、どれをお話しすればと思ってしまったんですけど、大阪市の認可外の保育施設で起こった事故がありまして、基準を満たしていなかったところがあったんですけれども、その裁判、結局裁判になったときに、大阪市なんですけれども、大阪市が、認可外保育施設だったり基準を満たしていない施設でも、一定そこに通っている人がいるから、だからといって閉鎖をするとか業務停止の命令を出すとかいうことは、その子たちのためにもできないんですみたいなことを裁判で見解として出したことがありまして、何て、何というか、ずるいといいますか、何か子供を盾に取ったようなやり方だなと正直思ったことをすごく覚えています。
 おっしゃるとおり、なかなか指導監督が強く行われていないことが現状なのかなというふうには思いますね。
 命を守るためには、やはり違反に対しては厳しく対処していただかないといけないと思いますし、都道府県は監査や指導を行った結果をきちんと市町村に共有して、本当に劣悪なところとか不適切なところをきちんと取り締まっていく仕組みでないといけないと思うんですが、私たちが目の当たりにしている現状からも、そこまできちんと、まずは指導を行って、さらに共有して、本当に駄目なところを排除するというところはやっていただけるのかなと。それをしっかり規定するようなものがないと、お願いしますねのレベルではやはり難しいんじゃないのかなというふうに懸念しています。

○田村智子君 ありがとうございます。
 やっぱり、例えば、もうそれで給付金出せなくなりますよとかというのがあれば少しきつく出られるのかなというふうには思うんですけどね。ありがとうございます。
 最後に、松本参考人になんですけど、今のように、自治体の役割、確かに大きくなるんですけれども、例えば認可外施設の指導監督基準を満たしているかどうかというのは都道府県が入りますよね。それで、そうすると、和光市が条例で排除しようと思ったときに、果たしてどこが指導監督基準を満たしていて、満たしていないのかと、これはなかなか判断を、市町村の側が今度は条例では判断することになりますから、何というか、都道府県との連携とか、全部に入れていない状態で、どこを排除し、どこが排除されないのかとかというのは非常に複雑な問題が出てくるんじゃないのかなというふうに思っているんですけれども、その辺りはどういうふうに今お考えになっているのか、お聞かせください。

○参考人(松本武洋君) 先ほどから情報共有の話が出ております。ここをしっかりと判断、情報共有していく仕組みというのがまず大前提としてあるわけでありますし、あとは、指導監督基準を実際満たしていないかどうかというところでいうと、私ども、今回の、お金を市を通してお支払をするという形になりますので、その中でいうと、いわゆる監督権限があるなしにかかわらず、その確認というのは、これはやはり市町村がやらざるを得ないというふうに考えております。
 実は、その事務負担が非常に多うございまして、ここに関してやはりそれなりの手当てをしていただくことが本当に重要だというふうに思っております。手当てなくても我々はやらざるを得ないわけであります。例えば、和光市が保育園の監督権限を県から受ける以前も、いろんな苦情があった際に、任意ではありますけれど、私ども、立入りで職員を派遣して、そして中身チェックしていたわけですね。
 実際問題として、実態としてやらざるを得ないんだけれども、それに関しては、例えば地方交付税とかそういったいろんなお金が来る経費の対象になっていないものについては、結局、これ独自財源で人件費を投入して、それでやっていくことになりますので、これは国の新たな制度の導入において財源負担を求められているのと同じような形に結果的になります。
 ですから、是非ともお願いをしたいのは、そういった事実上やらざるを得ないようないろんな事業に関してのお金の手当てというのをやはりしっかり今後検討していただいて、我々は、何しろ権限がないから行けませんというわけにはいかないわけです。必ず手当てをいたします。これは、一番身近な、住民に一番身近なところにある行政として当然やるわけでございますので、そこについてしっかりと御支援をいただければと思っております。

○田村智子君 どうもありがとうございました。
 終わります。


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