(写真)質問する田村智子議員=9日、参院内閣委
日本共産党の田村智子議員は、9日の参院内閣委員会で、国家公務員の定数削減による国立感染症研究所(感染研)の機能の「弱体化」について追及しました。
感染研は感染症の基礎・応用研究、ワクチンなどの国家検定、感染症の流行状況の監視など感染症対策の中核を担っています。研究者、職員が感染症の流行などの危機対応に直接あたることから、多くの国立研究機関と違って独法化はされず国の直轄研究所として維持されています。感染研にも一律の定員削減が行われ、特定の専門家が定年退職をしても新規採用がされず研究の継続性や弱体化が進んでいます。
田村氏は、感染研の外部評価委員会がいずれの感染症にも対応できる研究基盤の確立・維持向上が必要であり、希少感染症の専門家が定員削減によって維持されなければ、わが国からその分野の専門家が消滅する事態を招きかねないとしていることを指摘。国境を超えた人と物の移動拡大など感染症対策の重要性が高まっているにもかかわらず感染症対策が弱体化していると主張しました。
大口善德厚生労働副大臣は「感染研は国民の生命・安全に関わる危機管理業務を行っている。その重要性にかんがみ予算、定員を確保していきたい」と答えました。
2019年4月23日(火)しんぶん赤旗より
【2019年4月9日 参議院内閣委員会議事録】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
国家公務員の定員削減について、過労死水準の時間外労働が常態化し、非正規の職員が増大していることなど、私も繰り返し指摘をしてまいりました。しかし、定員削減は止まらず、二〇一五年度からの五年間、毎年二%、計一〇%の定員削減目標が各省に課せられています。行政機能が維持できるのかと私は大変危惧をしております。人事院の報告でも、定員削減、新規採用の抑制が若年層の大幅減少の要因となっていることを否定できなくなっています。
まず、宮腰大臣にお聞きします。
今年度がこの定削の目標期間の最終年度になりますが、その後はどうなるんでしょうか。
○国務大臣(宮腰光寛君) 国家公務員の定員につきましては、国の行政機関の機構・定員管理に関する方針に基づきまして、毎年二%、五年間で一〇%以上の合理化を行う一方で、内閣の重要政策への対応には重点的に増員を措置し、戦略的な定員配置を実現することとしております。現下の厳しい財政事情の中、限られた財源で内外の行政課題に機動的、戦略的に対応できる体制を整えていくためには、より効率的な仕事の仕方への転換を図りつつ、人的資源を新しい行政需要に振り向ける仕組みが必要であると考えております。
引き続き、閣議決定された方針に基づき、計画的な定員の合理化に取り組んでまいりますが、一方で、必要なところにはしっかりと定員を配置することも重要でありますので、各府省の現場の実情を始め、政策課題を丁寧に伺いながら定員管理を行ってまいりたいと考えております。
○田村智子君 これ、現実には一律の数値目標が各省に課せられているんですね。何が起きているのか、具体的な問題を指摘いたします。
国立感染症研究所は、感染症や病原体に対する国の対策、対応の中核を担う機関です。感染症の基礎研究及び応用研究、ワクチンの開発から検査、国家検定、国内外における感染症流行状況の調査、監視など、我が国の感染症研究や危機管理を行っています。実際に感染症が発生すれば、地方衛生研究所と一緒に実動部隊としても行動いたします。致死性の感染症のパンデミックが起きた場合は、職員や研究者は国家公務員として危機対応に当たるわけです。これはアメリカでいいますと、CDC、疾病予防管理センター、NIH、国立衛生研究所、FDA、食品医薬品局の三つの機関の役割を我が国では国立感染研が一手に担っているということになります。
このように、国の安全保障の一翼を担う機関ですから、独法化の対象にはならずに国の直轄機関として維持されています。二〇一六年二月に作成された、国際的に脅威となる感染症対策の強化に関する基本計画でも機能強化がうたわれています。
では、国立感染研、機能の体制確保するためにしっかりと定員確保する、これは極めて重要だと思いますが、宮腰大臣の見解はいかがですか。
○国務大臣(宮腰光寛君) 国立感染症研究所は、感染症を制圧し、国民の保健医療の向上を図る予防医学の立場から感染症に関する研究を行うという重要な機能を有していることは認識をいたしております。
したがいまして、エボラ対策など緊急性や必要性の高い課題に対応するための増員要求については、要求内容を精査の上、新規増員を措置してきているところであると認識しております。
○田村智子君 これ、直近の国立感染症研究所の外部評価報告書、資料でもお付けしました。ここで定員削減について次のように指摘しているんですよ。三ページ目の(2)研究開発分野・課題の選定というところです。新興・再興感染症、薬剤耐性菌対策など、科学的根拠に基づいた感染症対策が求められており、国家の中枢となるべき感染研の役割はますます重要となっている。その意味でも、適切な課題設定とともに、いずれの感染症に対しても対応し得る研究基盤の確立、維持向上が必要である。特に、希少感染症の専門家を維持し、研究を継続的に行い得るのは、現状では恐らく感染研をおいてほかにはないと思われる。このような分野の研究者が定員削減などによって維持されなければ、我が国からその分野の専門家が消滅する事態も招きかねないと。
私、実は二〇一三年、厚生労働委員会で感染研の体制について質問いたしました。強毒性鳥インフルエンザなど新しい感染症やウイルスへの対策、はしかや風疹の新たな流行などが問題となっていたときで、当時のとかしき厚労副大臣は、仕事の範囲が広がっているのに人数が減ってくるという厳しい環境にあるということを認め、必要な定員の確保には十分に努めていきたいと答弁をされました。
当時の研究者は三百十二人です。ところが今年度の定員は三百六人です。これはどういうことなんでしょうか。必要な業務が減ったとでもいうのかどうか、お答えください。
○政府参考人(佐原康之君) お答えいたします。
国の行政機関の定員管理につきましては、国の行政機関の機構・定員管理に関する方針において、行政改革の取組を具体的に推進しつつ定員の合理化を行うこととされ、五年ごとに合理化目標数を決定しているところであります。
国立感染症研究所においても、業務の効率化等を通じて、この合理化目標の範囲内で定員管理をしてまいりました。一方で、この間も薬剤耐性研究センターの新設を始め、新たな課題に対応するために増員を図るなど、必要な人員の確保に努めているところであります。なお、平成二十八年度からは定員、職員定数は減少しておらず、平成三十一年度の研究者定員につきましては、前年度よりも一名増員の三百七名となっております。
引き続き、必要な人員の確保に努めてまいりたいと考えております。
○田村智子君 実際の定員がどうなっているか、職員の数どうなっているか、私も資料一のグラフで示しましたが、明らかに減っているんですよ。
私が質問して以降も、国際的に脅威となる感染症の対策は一層求められています。国内でも、Hibワクチン、肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ウイルスワクチンの定期化、新たに承認されたワクチン導入の国家検定など、業務量も明らかに増加しているわけです。また、地方衛生研究所は人が減っているので、その人員不足を補う対応もしているとお聞きをしています。
研究者が退職しても、現実には新規採用がされないという事態が何年もありました。他の研究者が掛け持ちで対応することになるんですね。人が必要なエボラ出血熱とかは増やしたというふうにおっしゃるんですけれども、これ先ほど言った外部評価の報告書の一ページ目のところを見ていただくと、一体どういう研究部があるか。十五の研究部があり、四のセンターがあり、そして、部屋がウイルスだけでも三つの部があり、細菌で二つの部があり、そのほか、寄生動物部、感染病理部、免疫部、真菌部などなど、それぞれ担当部署、違うんですよ。
ところが、退職があっても新規採用しない、不補充になっている。だから、掛け持ちになっちゃっているんですよ。違う部の方がほかのところ担当するようなことまでなってしまっているわけですよ。国家検定、ワクチンの国家検定の業務などは期日もあって後回しにできないので、何が犠牲になるか。研究時間なんですよ。研究時間を減らさざるを得ないような事態が起きているわけです。
これ、外部評価報告書が指摘したように、希少感染症の専門家が消滅する事態が起こりかねないと、厚労省にはこういう認識はないんでしょうか。
○政府参考人(佐原康之君) 国立感染症研究所では、各種ワクチン、血液製剤について、有効性と安全性、均質性を保証するための国家検定業務を行っております。
これは、ワクチン等は高度の製造技術や試験技術を必要とし、製造過程において特に品質の影響を受けやすいことから、国立感染症研究所の重要かつ不可欠な業務の一つであると考えております。このほか、国立感染症研究所では、感染症に係る基礎・応用研究や感染症に係る国の健康危機管理のための様々な重要業務を行っております。
これまでも、これら研究業務に支障がないように配慮してきたところでありまして、今後も引き続き適切に対応してまいりたいと考えております。
○田村智子君 副大臣にもお越しいただきましたので、お聞きしたいんですね。
これ、今現場からは、業務量が増えて研究がまともにできないと。そうなれば、若手は去るんですよ。もっと魅力ある研究所に移っちゃうんですよ。そうなると、後継者となる研究者の養成、確保さえも危ういというのが現状だと思います。
これ、定員だけではないんです。資料でお配りしたとおり、感染研の予算そのもの、十年前の水準から比べると、約二十億円、三分の一減っているわけですね。
先ほど指摘したとおり、麻疹、風疹、そして梅毒などの再流行も国内では見られます。国境を越えた人と物の移動はますます拡大をしていて、新たな感染症が持ち込まれる、こういう危険性に対する対策も不断に求められるわけです。今、この体制が弱体化していけば、国民の生命や健康への重大な脅威となる、その危機感を私は強めざるを得ません。
感染症対策は国の安全保障政策そのものではないのかと。そのことから考えて、この定員や予算、長期にわたって削減されてきたこの現状をどう認識されておられますか。
○副大臣(大口善徳君) 国立感染症研究所は、国民の生命、健康を守るため、感染症に係る国の健康危機管理に直結する業務を行っております。
具体的には、委員御指摘のとおり、感染症の診断、治療、検査の方法の開発、重篤な感染症発生時の疫学調査などを行うとともに、ワクチンの国家検定などを担っており、重要な厚生労働省直轄の研究所と認識をしています。近年、AMR、薬剤耐性菌など新たな課題も発生しており、引き続き我が国の感染症対策に万全を期していく必要があると考えています。
予算や機構、定員の状況については、直近の三か年を見ますと、多少の増減があるものの、おおむね横ばいで推移しているものと認識していますが、今後とも感染症に関する中心的な機関としての役割の重要性に鑑み、必要な予算、定員の確保に努めてまいりたいと思います。
○田村智子君 これ、重要だという答弁は何度も繰り返されるのに、この事態を変えるという答弁出てこない。おかしいですよ。
宮腰大臣にもお聞きしたいんですね。これ、外部評価委員会は、直近三回の報告書で繰り返し、定員削減の対象外にすべきだと求めているんですよ。その危機感は、近くなればなるほど危機感増しているわけですよ。これ、是非、厚労副大臣や厚労省、現場に行って聞いてくださいよ、どうなっているのか。
宮腰大臣も、これ感染症対策というのはまさに安全保障なんですよ。やっぱり定員削減の対象外とする、こういう大きな方向は検討すべきだと思いますけれども、宮腰大臣からもいただきたいと思います。
○国務大臣(宮腰光寛君) 効率的な行政運営を実現するためには聖域なく業務の在り方を見直すことが重要でありまして、国の行政機関の機構・定員管理に関する方針に基づき、全ての府省において計画的な定員合理化に取り組んでいただいております。
一方、国の行政が適切に運営されるよう必要な体制を整備することも重要であります。そのためには、各府省の内部において業務量の繁閑に応じて柔軟に定員の再配置を進めていただくことも必要となりますが、内閣の重要政策の推進のために必要な定員については、各府省からの要求を受け、重点的に新規増員を措置する方針で定員管理に当たっております。
国立感染症研究所につきましても、マニュアルの整備や検査方法の見直しによる業務の効率化など、合理化の取組を積極的に行っていただいていると承知しておりますが、エボラ対策といった要求については重要性を認めて新規増員を措置しているところであります。
厳しい財政事情の中、引き続き計画的な定員の合理化に取り組んでまいりますが、一方で、必要なところにはしっかりと定員を配置することも重要でありますので、増員の審査に当たりましては、各府省の現場の実情を始め、政策課題を丁寧に伺いながら定員管理を行ってまいりたいと考えております。
○田村智子君 私、昨年十二月、参議院の重要事項調査団でタイを訪問いたしました。タイは、バンコクなど都市部に外国人労働者が増大しています。しかし、予防接種履歴のチェックができていなかったり、感染症の履歴が見過ごされていることなどからB型肝炎などの感染症が広がっていて、今問題になっているというんですね。
今、日本は、安倍政権が、東京オリンピックなどを契機としたインバウンド、しきりに旗を振ります。外国人労働者の新たな受入れ、これもやるんだといいます。日本で発生したことのないような感染症が持ち込まれるリスクは無視できないわけですよ。
これ、業務の合理化で研究がどうなっているのかということを是非とも現場で聞いていただきたい。現場は相当疲弊しているという声が聞こえてくるわけですから、是非とも定員削減の対象外にすることをここで強く求めて、質問を終わります。