国会会議録

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竹釘製作 国は支援を 田村氏 伝統技術継承へ

(写真)質問する田村智子議員=20日、参院内閣委

 日本共産党の田村智子議員は20日の参院内閣委員会で、京都御所などに使われている檜皮(ひわだ)ぶきに必要な竹釘製作の技術継承への国の支援を求めました。

 ヒノキ樹皮を使用した伝統的屋根ふき技術の檜皮ぶきを使用している国宝・重要文化財は全国821棟にのぼります。檜皮を打ち付ける竹釘は、兵庫県丹波市の石塚商会の3人が製造しているだけ。田村氏は「竹釘製作の技術継承を民間事業者や家族だけの努力に委ねるのでなく、生業として次世代に継承させる支援が必要」だと訴え、和紙などの文化財修理でも材料製造の継続が危ういとして、国の支援を求めました。

 また、文化財認定されずに費用負担が重いため銅板ぶきに変える建物が増加し、全国社寺等屋根工事技術保存会が今後の仕事量確保への不安を訴えていることなどを指摘しました。菅義偉官房長官は「政府の責任として文化財の従事者が生き生きと活躍できるよう環境整備をする」と答弁しました。

2019年3月28日(木)しんぶん赤旗より

 

【2019年3月20日 参議院内閣委員会議事録】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 先月、議院運営委員会で、京都御所、視察で伺いました。建造物の保存、植栽の剪定など、やはり日本の伝統技術が集積しているということを実感いたしました。特に、紫宸殿、清涼殿などのひわだぶきの屋根は本当に見事で、これヒノキの薄い樹皮を何重にも重ねた伝統的な屋根工事技術なんですね。三十年ごとにふき替えも必要となります。
 京都御所を将来に伝えるためには、こうしたひわだぶきを始め伝統的な技術の継承が大変重要だと考えますが、まず官房長官、お願いいたします。

○国務大臣(菅義偉君) 私も委員と全く同じ見解であります。
 京都御所を含め文化財は先人が築き上げた極めて大切な遺産であり、これまでも文化財保護法に基づき様々な取組が行われてきたと承知しています。その上で、こうした貴重な文化財を次世代に守り伝えていくためには、単に保存するだけでなく、修理して公開していく取組も一体的に進めることが重要であります。
 私も、官房長官になって所管になりましたので、視察しました。そうしたら、何と日曜日は休みだったんです。もちろん今は日曜日は開放させていただいていますけど、当時はそんな状況でした。そして、京都御所でも、予約制だったんですが、これを改めて通年公開を実は実現をして、そしてまた多言語化、こうしたことに取り組んだ結果、来訪者がちょうど五年前の三十八万人から七十万人に、三十万人ほど実は増えております。また、桂離宮でも、その際視察しましたけれども、昨年の秋から一日の定員を二倍以上増やしたり、また参観料徴収などの取組も新たに始めております。
 こうした取組を通じて、国内外のより多くの人々に日本のすばらしい文化に触れる機会というものを拡大することで、伝統的な技術、これも継承されるんだろう、このように考えております。

○田村智子君 多くの方に見ていただくためには、本当にそれらの建造物や美術品、工芸品のメンテナンス、保存ということが本当問われてくるんですね。
 出雲大社、厳島神社、清水寺、善光寺本堂など、国宝、重要文化財に指定されたものだけでもひわだぶきの建造物というのは八百二十一棟あります。それ以外にも、一九九九年当時で約二千三百棟という調査も私は目にいたしました。これら全て定期的に屋根のふき替えが必要で、これを支えているのがふき替えをする職人、ひわだを採取する職人、ひわだを打ち付ける竹くぎを作る職人などなんですね。こうした職人の養成、技術伝承は不可欠ですけれども、支援策はどうなっていますか。

○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
 職人の養成につきましては、文化庁では、文化財の保存のために欠くことのできない伝統的な技術又は技能であります文化財保存技術のうち、保存の措置を講ずる必要があるものを文化財保護法に基づき選定保存技術として選定いたしまして、その保持者や保存団体に対し、それらを行う伝承者養成、技術の向上等に必要な経費について文化庁から補助を行っておるところでございます。平成三十年度予算案においては三億五千七百万円を計上しております。
 また、文化財建造物に必要な修理用資材の安定確保に向けて、文化庁では、ふるさと文化財の森を設定いたしまして、森の管理業務、資材採取等の研修や普及啓発事業に要する経費について補助を行っており、平成三十一年度予算案においては五千三百万円を計上しているところでございます。

○田村智子君 今日、その文化庁のパンフレットのコピーしたものをお配りしていますので、こういう団体や個人にお金が補助金として下りているということなんですけれども、これ、ひわだぶきなどを支えているのは全国社寺等屋根工事技術保存会、ここに補助金が下りています。お話を伺いました。政府の補助による技術の研修が始まった一九七四年当時は技術者の平均年齢は六十歳を超えていたけれども、今は三十代にまで若返りを果たしていると。私も保存会のホームページを見ましたけれども、若い職人さんの仕事ぶりが動画で見ることができまして、非常にこれは努力のたまものだというふうに思います。
 一方で、このひわだぶきに欠かせない材料である竹くぎの製造の現状、職人の養成、今どうなっていますか。

○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
 ひわだぶきに用います竹くぎの製造につきましては、兵庫県丹波市に所在いたします有限会社石塚商店の一社が担っておりまして、国宝、重要文化財建造物の保存修理に用いるほとんどの竹くぎをここで扱っていらっしゃいます。
 現在は選定保存技術者として認定されておりました先代の代表者がお亡くなりになられましたので、今その御子息とお孫さんの計三名ということで竹くぎの製作を担っていらっしゃいますけれども、こうしたことから、全国社寺等屋根工事技術保存会、先ほど委員から御紹介ありましたこの保存会でも、ひわだぶき師の養成研修の一環として竹くぎ製作の実習を行うことによりまして、竹くぎの製作の技術が将来にわたってしっかり継承されていくよう職人の養成に努めているところでございます。

○田村智子君 これ、大変たくさんのひわだぶきなどを守っていくための竹くぎの職人さんは三人なんです。三人なんです。実は二十年以上前に、我が党、京都三区選出の代議士だった寺前巌氏が、文化財保護政策の拡充を文化庁に要請したときに、竹くぎ製作をしているのは一社だけだと、危機的な状況だと訴えておりまして、私、当時、文教分野を担当する議員秘書として同行しておりました。このときのことを鮮明に覚えていましたので、先日京都御所に伺ったときに宮内庁に竹くぎの方はどうですかと聞いたら、やっぱり一か所だけで作っているんだと。いや、二十年以上前に要請して本当状況が変わっていないのかということで驚いたんですね。
 改めて調べてみますと、この竹くぎは歴史的に兵庫県の丹波地域で手作業で作られていました。石塚商会が創業したのは一九二一年、この当時で四、五軒なんですね。しかし、手間が掛かる、その上、工賃は安い。石塚商会は一九七五年に五年がかりで機械化に成功しましたが、このとき既に一社だけになってしまったと。そして、現在、御家族三人で竹くぎの製作を担っているということなんですね。
 この竹くぎは、ひわだぶきだけでなく、こけらぶきにも使われます。桂離宮書院、金閣寺、法隆寺五重の塔などの屋根がこけらぶきで、これサワラや杉などの木材を割って厚さ三ミリの板にして、これを一枚一枚竹くぎで打ち付けていくわけです。職人さんは竹くぎをたくさん口の中に入れて、一分、数秒の速さで打ち付けていくんですね。口の中に入れますから、とても滑らかで細い、そういう作り方をしなければ駄目なんですよ。
 こういう竹くぎのように、文化財保護に不可欠な材料の製造、これを直接支援するということはとても大切だと思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
 文化庁といたしましては、文化財の保存修理に必要な材料、用具につきましてもその保護は重要だと考えておりまして、こうした材料、用具の生産に必要な技術、技能につきましても、文化財保護法に基づき選定保存技術として選定し、その保持者や保存団体が行う後継者養成、技術向上等の支援に取り組んでおります。
 委員御指摘の竹くぎにつきましては、近年の需給の動向ですとか事業規模を勘案いたしまして、現在のところ、ひわだぶき、こけらぶきの選定保存技術団体であります公益社団法人全国社寺等屋根工事技術保存会におきまして、ひわだぶき等とともに竹くぎ製造の技術継承の研修も併せて行う形で文化財保護法に基づく支援を行っているところでございます。
 こうした形で、引き続き、文化財の保存修理を支える材料、用具の生産に必要な技術、技能の伝承についても取り組んでまいりたいと考えております。

○田村智子君 屋根をふく職人さんとかに技術継承していると言うんですが、やっぱり竹くぎ継承を産業として支える方がどうしても必要なんですよ。それが民間の事業者の努力だけ、もっと言いますと、一つの家族の努力だけに委ねていいのかということが問われると思います。これ、ほかにも美術品、工芸品も、修復に必要な材料を作る職人、これ本当に次世代につながるのかが危機的状況なんですね。
 お配りした資料の中でも美栖紙というのが出てきます。掛け軸を作るときに裏打ちをする、その紙に使われる和紙なんですよ。これも七十代の方、たった一人になっちゃった。最近二十代の方が入ってくれて何とか継承できるかどうかということなんですけれども、これは技術が確実に継承されるよう、国としてちゃんとした支援を是非検討していただきたいというように思います。
 ひわだぶき、こけらぶきの仕事は仕事量の確保も課題で、文化庁からは需給バランス取れているという説明受けたんですけれども、屋根工事技術保存会からは、国の文化財指定を受けていない神社や寺院で費用負担が重いことから銅板ぶきに変えてしまうところが出てきていると、とても残念だと、今後職人たちの仕事の確保ができるのか不安だという声をお聞きしています。これ、ふき替えの費用だけじゃなくて、木材の建物と屋根ですので、消火栓とか、火災のときには水を送り出すディーゼルエンジンなどの設置も義務付けられていて、そのメンテナンスにも費用が掛かると。
 技術を絶やさないためには、産業として成り立つ仕事量が必要なんです。建造物の数としては国の文化財以外の建造物の方が圧倒的に多いわけで、そういうところでひわだぶきやこけらぶきなどが減るに任せていくのでいいのかということが問われるわけですね。
 これ、官房長官に是非お聞きしたいんですね。先ほど観光客も増えているというお話ありました。しかし、来ていただくためには歴史的建造物をいかに次の時代に伝えていくかということが大前提で、やっぱりそれぞれの職人がなりわいとしてその仕事が成り立つこと、そして次世代の方がやりがい持って産業として継承できるようにすること、そういう予算や施策が踏み込んで必要だと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(菅義偉君) 歴史的建造物を始めとして、我が国の宝である文化財を次の世代に守り伝えていくためには、文化財の保存、公開、活用の大きなサイクルを回していくことがこれ重要だというふうに思っています。
 こうした観点から、政府としては、国民はもとより外国の皆さんにも日本の文化を深く楽しんでいただけるよう、新たに導入しました国際観光旅客税、こうしたものを活用しながら、彩色や漆の剥げた部分の塗り直しといった文化財の美観向上、また分かりやすい多言語解説の準備など、新たな付加価値を創出してきた文化資源を磨き上げる取組を推進いたしております。
 こうした取組によりまして、文化財の保存、公開、活用の好循環を実現をしていくことを通じて、職人の方々などこうした文化財に従事する方々が生き生きと活躍できる環境整備をしていく、ここは政府の責任だというふうに思っております。

○田村智子君 是非、材料というところにも視点を置いて支援策を強めていただきたいと思います。


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