国会会議録

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特区より規制弱まる 入管法改定案 田村智子氏批判

日本共産党の田村智子議員は6日の参院内閣委員会で、外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改定案をめぐり、今年開始された国家戦略特区内での農業への外国人労働者受け入れ事業よりも、人権侵害や労働環境の監視等の規制が弱くなると指摘し、廃案を求めました。

 国家戦略特区における「農業支援外国人受け入れ事業」のガイドラインでは、外国人受け入れ企業に▽内閣府など4府省と受け入れ自治体でつくる「適正受入管理協議会」(管理協議会)へ1カ月に1回、派遣先の箇所数、所在地等の報告▽3カ月に1回、労働条件や安全衛生の確保、日本人従業員と同等以上の処遇であるかに関わる項目などの報告▽管理協議会による1年に1回の巡回指導、監査の受け入れ―などを義務付けています。

 改定案で監視等の規制が引き継がれるのかただした田村氏に対し、法務省の金子修審議官は「法律には明記されていない」と答弁しました。

 田村氏は「農業支援外国人受け入れ事業」の審議では与党議員からも人権侵害への懸念が表明されたとして、「このままでは特区の中が一番規制がきつく、全国がゆるくなる。こんなことは許されない」と批判しました。

2018年12月8日(土)しんぶん赤旗より

 

【2018年12月6日 参議員内閣委員会議事録】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 片山大臣の政治資金報告について、質問いたします。
 大臣が代表を務める政治団体と政治資金管理団体が政治資金収支報告書を今年十月末以降三度訂正したことについて大臣は陳謝をし、全てチェックした、訂正はこれ以上ないと十一月十四、十五の衆参の内閣委員会で答弁されましたが、その二週間後に四回目の訂正が行われました。
 赤旗日曜版十一月二十五日号は、これとは別で、自民党愛知県支部連合会の収支報告書には、片山氏が代表を務める自民党東京都参議院比例区第二十五支部が一四年からの三年間でパーティー券を二百九十四万円購入した旨の記載があるのに、二十五支部の報告書ではいずれも未記載だということが分かったと、このことを報道いたしました。
 赤旗編集局が愛知県連に取材をしたところ、報告書に虚偽はないという回答をいただきました。一方、片山事務所からの回答はありませんでした。
 その後の報道を見ていますと、報告書を訂正したのは何と愛知県連で、パーティー券は片山氏が個人で購入したと言われたので、領収書も改めて出し直し、収支報告書の訂正も行ったとのことです。これはどういう経緯なんですか。

○国務大臣(片山さつき君) お答えをいたします。
 自由民主党愛知県支部連合会に対するパーティー券代の支払、二〇一四、二〇一五、二〇一六年分につきましては私個人が支出したものであり、自民党愛知県連にそのことが確認できましたので、既に、保存義務のあるこの二〇一四、一五、一六の収支報告を愛知県連の方にて御修正をいただいたものと承知しております。当方の方は承知をしておりません。
 経緯としましては、現金でお持ちをいたしまして、そのときに宛名のない預かり証をいただいておりまして、そのまま双方ともその後のことを失念しておったんですが、こういう御報道がありましたので改めてきちっと確認をしたところ、これは私個人の方のお金から出ておりまして、個人のものであり、愛知県連さんの方もそれならばということで、実態に合わせてきちっと修正をさせていただいたということでございます。
 以上、よろしくお願いいたします。

○田村智子君 静岡の自民党支部四団体も、やはり二十五支部からの交付金としていたものを一斉に同じような訂正を行ったということで、報道には、こちらのミスと言われるのは心外だとのコメントも報道されているわけですね。まあ何といいましょうか、その収支報告の訂正が片山大臣を中心に波紋を広げているというふうな状況になっていると。
 赤旗が独自で調査し、指摘をしたのはこれだけではありません。二〇一三年以前の収支報告書に収入不記載があるということも報道いたしました。二〇一三年十二月、全国不動産政治連盟五十万円、二〇〇九年十二月、整形外科医政協議会十万円、これらは片山さつき後援会への寄附。自民党埼玉県支部連合会から二十五支部への寄附は、二〇一二年一月十万円、七月二十五万円、十一月二十万円、一三年に十二月十万円ある。これらの不記載をお認めになりますか。

○国務大臣(片山さつき君) お答えいたします。
 確かに、御指摘のしんぶん赤旗日曜版さんで御指摘がございまして、そういったもののうち、収支報告書の要旨公表日から三年以内のものにつきましては、前に御報告をいたしましたように、コメントを出させていただきましたように、帳簿等を一件一件確認の上、訂正の手続を取らせていただいたところでございます。
 一方、三年超のものにつきましては、今御指摘いただいたものでございまして、二〇〇九年というのは私はまだ衆議院議員でございましたので、ございましたんですけれども、そういったものも含めて、今となりましては、指摘どおりに記載漏れなのか、あるいは過去の一定の時期に訂正済みなのか等を確認することが不可能な状態になっておりまして、訂正手続の対象としていないところでございまして、それは御理解を賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。

○田村智子君 これ、二〇一三年以前に不記載があれば、公開中の二〇一四年以降の収支報告書に記載された前年からの繰越金が変更されなければならないわけですよ。確認できませんということで済ませるというのでいいのか。
 これ以上の訂正はないなどと断言できないという状態が今の実態だというふうに思いますが、いかがですか。

○国務大臣(片山さつき君) お答えをいたします。
 繰越しにつきましては、繰り越される場合もあるだろうし、そうでないこともあるでしょうから、必ずしもそうとは言えないのではないかなと今のお話を伺って思いましたけれども、いずれにしても、訂正をしなければならない案件があったということ自体、大変申し訳ないと思っておりますので、今後は決してそのこと、そのようなことがないように、きちっとした対応を心掛けてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。

○田村智子君 これ、収入不記載なんですから、繰越金の額変わるでしょう、そんなの。これ、不記載の訂正を受けながら訂正しないのならば、これはもう虚偽記載に当たるわけですよ。曖昧にすることは許されない問題です。
 これだけ繰り返し政治資金の不透明さ、報告の誤り、指摘された大臣というのは、恐らく片山大臣、初めてじゃないですか。国民に政治家不信を広げ、政治不信を大臣自身が広げている、そういう自覚はありますか。

○国務大臣(片山さつき君) いずれにしても、その訂正ということがあるような状況は大変申し訳ないと思っておりますが、御指摘をいただいたものにつきましては、主に二年半前の選挙で御推薦をいただいた団体及びその支部の関係のいわゆる陣中見舞いが、その領収書をお出しして明確にこちらとして受け取っているという意思を外に公開しているにもかかわらず、こちらの方で控えを取らなかったということはございましたので、それに合わせて全部チェックをして直したということでございますが、それ以前のものにつきましては、今申し上げましたように、三年超のものについては、今になってきちっとそれを確認して訂正することは不可能ということで訂正手続を取っていないということは、これは一般的にそういうことでルールでやっているということでございますので、御理解賜りたいと思います。

○田村智子君 では、ルール上訂正の必要はないけど、訂正が必要なような事態はこれあるということを否定できないわけですよ。これはもう、私、もう率直に申し上げて、通常国会までに大臣を辞任されまして信頼回復に努めるべきだということを申し上げておきたいと思います。これ以上、もうこの問題は質問しません。
 今審議中の外国人材の受入れに関わる問題で、これは国家戦略特区にも関わることですので、残りの時間で質問したいと思います。
 内閣委員会では、これまでに、国家戦略特区で家事支援外国人、農業支援外国人を受け入れる法案を審議してまいりました。二つの法案審議の中で、私も、技能実習生として受け入れた外国人への人権侵害の問題、あるいは派遣労働で受け入れるということの問題、日本人と同等以上の賃金がどう保障されるのか、結局最低賃金が基準になるのではないのかなど、厳しく指摘をいたしました。
 国会審議を通じて農業について国家戦略特区でどのような受入れの仕組みがつくられたのかを見ていきたいと思います。
 資料の一を御覧いただきたいと思うんですね。これは内閣府が出しているスキームの資料なんですけれども、これ、まず、適正受入管理協議会というものをつくりました。内閣府、法務省地方入国管理局、厚労省地方労働局、農水省地方農政局、そして関係自治体で構成されています。そして、外国人材を受け入れる企業、これ派遣会社なども想定されているんですけれども、これを特定機関として、様々な要件、これも定めました。さらに、派遣先農業経営体、これが就労場所になるわけですけれども、ここにも要件を課したわけです。これが農業支援外国人を受け入れる枠組みとなる機関とされました。
 まず確認したいのは、この適正受入管理協議会なんです。四府省と関係自治体から成る協議会、これはなぜつくることになったんでしょうか。

○政府参考人(村上敬亮君) お答え申し上げます。
 御指摘いただいたとおり、本事業では、事業の的確な実施及び外国人保護の観点から、労働時間や賃金等の労働条件を基準で決めてございまして、これを適切に管理するために、特区法を所管する内閣府、入管法を所管する法務省、外国人労働者の保護を所管する厚労省、農業を所管する農林水産省と地域の農業の振興をする立場の特定指定自治体、それぞれがそれぞれの有する権限を直接発揮し、必要な対応を取れるようにということで、国の関係機関と自治体が合同で協議会を設置し、国、関係機関及び自治体が直接受入れ企業を管理できるようにする仕組みということで、今回このような協議会をつくらせていただいているものというふうに承知をしてございます。

○田村智子君 それぞれの権限を実施できるように、そうなんですよね、派遣労働の問題を法務省の関係局がこれ指導はできないわけですから、こういう四府省からの言わば厳密な管理ができる体制を取ったということですね。まあ、これも実態としてそれが行われるのかというところで疑問が残るんですけどね。
 もう一つ、資料の二。これは、農業支援外国人受入事業における特定機関等に関する指針、こうした枠組みをいかにして動かしていくのかというガイドラインですね。
 特定機関、外国人受入れ企業を見てみますと、派遣先から三か月に一回報告を受けなければならないというふうに定めています。外国人材を送り出したところから三か月に一回報告を受けると。それだけじゃないんですね。適正受入協議会への報告も、この特定機関、外国人を受け入れた企業には義務付けています。派遣先の箇所数、その所在地、外国人農業支援人材の派遣状況、これは一か月に一回の報告です。労働条件の確保、安全衛生の確保、また日本人従業員と同等以上の処遇であるかに関わる項目、苦情や相談の件数と内容などは三か月に一回報告することが義務付けられています。さらに、管理協議会による一年一回の巡回指導、これは派遣先まで出かけていっての巡回指導ということが義務付けられている。同じく、一年一回、この特定機関は監査を受ける、このことも義務付けました。
 このように、何重もの報告や巡回指導、監査を義務付けたのはなぜですか。

○政府参考人(村上敬亮君) お答え申し上げます。
 本事業では、事業の的確な実施及び外国人材保護の観点から、先ほども御指摘いただいたような基準等を作ってございます。特定機関となった企業が当該基準や各種法令を遵守しているかどうか、それを確実にするために、こういった報告や巡回指導、監査を義務付けているというところでございます。

○田村智子君 国家戦略特区というのは、規制緩和を行う特別区域です。特区での成果を見て、これを全国展開することもあり得るという仕組みでもあります。
 昨年八月二十五日の特区ワーキンググループでは全国展開についても議論になっていますが、農水省はこのときにどのような見解を示しましたか。

○政府参考人(山北幸泰君) お答えいたします。
 御指摘のワーキンググループにおきましては、民間委員の方から、農業現場の実態を見て、このまま本事業を全国展開できる内容なのかどうかについて当省の見解を問われたところでございます。
 その際、当省の出席者からは、実際に事業を開始された中で活用状況を見ていかないと全国展開の可否についてはなかなか一概には言えないこと、また、業を所管する立場としては、強いニーズが相当程度あることから、全国展開できるような方向で必要な取組をしていきたいと考えている等について発言したところでございます。

○田村智子君 ここでは法務省も発言しているんですね。何と言っているのか。特定機関などにちゃんと管理をしていただくことが必要だと、特に問題がないという状況になれば、ちゃんと運営ができて、全国展開に向けた検討もできるかなと考えております。
 厚生労働省も、派遣労働の問題で何か問題が起きるかどうかということを危惧されるような発言もされていて、実績として問題がなかったということを説明していく必要があると、全国展開についてそういう見解を述べています。
 検証どころか、農業支援として外国人の受入れが始まったのは今年の十月です。まだ十二人しか来ていません。愛知で受け入れただけです。報告も巡回指導も監査もまだ行われていないでしょう。これでどうして農業で全国的に外国人労働者を受け入れると、こういう法案がこの国会に提出されているんですか。農水省。

○政府参考人(山北幸泰君) お答えいたします。
 特区事業につきましては、現在、先ほど御指摘ございましたように四地域で適正受入協議会が設置されまして、本年十月には一地域で外国人の受入れが実際スタートしておるというようなことで、円滑に実施されているというふうに我々承知しております。
 一方で、深刻な人手不足に対応するため、生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお労働力が不足する産業分野に限り、一定の専門性、技能を有し即戦力となる外国人材を受け入れる業種横断的な制度が創設される方向となったところでございます。
 農業を所管する立場の農林水産省といたしましては、農業現場において外国人材の受入れの強いニーズがありまして、また新制度への期待も高いことから、新制度においても農業分野の受入れが対象となることを希望しているところでございます。
 なお、新たな制度を特区制度の全国展開と見るか否かにつきましては、特区制度を所管する立場にないので差し控えさせていただきたいと思いますが、仮に新制度で農業が対象となる場合には、業を所管する立場として、一定程度の技能等を有する農業人材、農業支援外国人材の在留資格の付与というのは段階的に新しい制度に移行すべきと考えておりまして、現場で混乱等が生じることのないよう、今後、関係府省と連携しながら対応してまいりたいと考えているところでございます。

○田村智子君 これ、国家戦略特区でつくった枠組みだって即戦力と言われたんですよ。特別な技能を持っている人といって、受け入れると決めたんですよ。
 じゃ、法務省、お聞きしますけど、国家戦略特区では既にこういう枠組みをつくっています。それが動いています。では、今出されている法案、十四業種について全部、一年一回の巡回指導とか一か月に一回の報告、三か月に一回の報告、監査、立入監査、これやるというふうに決めるんですか。法務省。

○政府参考人(金子修君) お答えいたします。
 今御審議いただいている新たな受入れ制度におきましては、適正な受入れが行われるための規定を整備しております。具体例を申し上げますと、受入れ機関等による届出規定の拡充を行う。それから、受入れ機関等に対する指導、助言、報告徴収や立入検査、罰則で担保した改善命令などに関する規定を設けているところでございます。
 今、立入検査等の頻度について御質問がございましたが、法律上はそこまで明記がありません。ある程度の定期あるいは随時にそのような調査を行うということを今後検討しているということになります。

○田村智子君 じゃ、農水省、つくったんですから、十四業種の中に、農業つくっていると、入っていると。今の法案であっても、同じ仕組みで、一年一回の監査とか三か月一回の報告とか、また、関係府省四府省、ちゃんと立入りの調査とかやると、こういう枠組み、そのまま維持するということでよろしいですね。
○政府参考人(山北幸泰君) 現段階におきましては、農業がその特定の産業分野になるかどうかというのはまだ決まっていない段階ですから、なかなか私どもからはお答え難いんですけれども、今御指摘もございましたように、新しい制度において入国在留管理庁を基に法律に基づいて指導監督が行われるという枠組みがあるということも踏まえまして、今後、もし仮に農業がそういった分野になるということにおいては必要な体制というのをつくってまいりたいというふうに考えているところでございます。

○田村智子君 それじゃ、内閣府、既に動いているこの機関、提案されている法案が成立した場合、どうなるんですか。

○政府参考人(村上敬亮君) 新制度が想定している外国人材は、一定程度の技能等を有する人材という意味においては特区制度等と同等と言えることから、ある意味、新制度は特区の取組の全国展開と捉えることもできるというふうに考えてございます。
 このため、新制度がまず成立、施行されるまでは、国家戦略特区における農業支援外国人の受入れはこれまでと変わりなく行うことを予定してございますが、新制度が施行された後は、新制度へ段階的に移行することを検討してございます。ただし、新制度の施行状況等により、柔軟な対応が必要になることも考えられるため、両制度の連携の在り方については引き続き関係省庁とよく詳細を整理してまいりたいと、このように考えてございます。

○田村智子君 一つには、内閣委員会の審議をばかにしているのかということですよ。
 私たち、審議して、様々な人権侵害が起こり得る可能性があると。今度の法案だって、派遣労働を認めているような中身ですからね、直接雇用しかなんて規定ないですから。だから、派遣労働によって、派遣労働って難しいですから、外国人労働者自身がその仕組みを理解するなんて、とても難しい問題ですよ。だから、様々な懸念がいろいろ出された。
 実は、この農業支援の問題は、ちょうど加計学園の問題で文科省から様々な資料が出てきたところで、実は野党の側はほとんど質問できないままに法案成立しちゃって、熱心に質問されたのは上月議員ですよ。上月議員が懸念も示されて、確かに農業は人手不足深刻だけれども、その中で人権侵害のことがあってはいけないと、派遣会社がその労働者を使い捨てるようなことがあってはいけないと、こういう危惧も示されて、こういう仕組み、つくられているんですよ。与党からの指摘も受けてつくられているんですよ。
 国家戦略特区というのは規制緩和、ところが、このままいくと、特区の中が一番規制がきつい、全国はゆるゆるになる、今の法案だとね。こんなことは絶対許されないですよ。
 これは、私は、本来、内閣委員会との連合審査だって必要な案件が、この臨時国会で法務委員会で審議されているというふうに思います。この国会で成立させることのないように、是非、与党の皆さんも、内閣委員会が審議した問題なんですから真剣に受け止めていただきたい、このことを申し上げて、質問を終わります。

 


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